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2025年問題とは?介護業界への影響と備えを解説

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現在、日本は超高齢社会です。 超高齢社会とは、65歳以上の割合が人口の21%を超えた社会 を指します。日本では2005年に高齢化率20.2%となり、2010年には23.0%を示しました。つまり、2005年から2010年の5年の間に、超高齢化社会に突入したことになります。

いま2025年問題として、人口構造の変化がもたらす影響が、各企業・各業界において懸念材料となっています。なかでも高齢者に向き合う介護業界においては大きな影響をうけることが予想されます。

今回は2025年問題について社会の変化を探り、介護業界がどのように備えをしておくべきなのかを考えてみましょう。

2025年問題とは

2025年問題とは、第一次ベビーブームに生まれた 「団塊の世代」が後期高齢者に達するといわれている2025年に起こりうるさまざまな問題の総称 を指します。

現状でも日本は65歳以上の人の人口が全体の21%を超えた状態にあります。つまり超高齢社会です。約4人に1人が65歳以上の高齢者だということです。この状態はさらに進むと予測されています。

内閣府が示している「令和4年版(2022年)高齢社会白書」で分析されている高齢化状況をみると、2021年段階において、65歳以上の割合が28.9%、さらに細かくみると、65〜74歳までの人口割合が14.0%、75歳以上の人口割合が14.9%。65〜74歳までの人口を75歳以上の人口が上回っています。

この状況に追い打ちをかけるのが2025年です。

2025年には団塊の世代が75歳以上の後期高齢者となります。おおよそ800万人といわれています。つまり、日本社会は後期高齢者を支えるための対策を考えておく必要があるということです。

また、2025年問題に直面すると、下記のような社会問題が起こります。

  • 高齢者人口の増加による、少子高齢の深刻化
  • 労働人口の減少
  • 経済の停滞

上記の社会的問題に加えて、医療分野では、医療費の増大や社会保障費の増大が懸念されています。

高齢者が増えると医療分野への負担も増えてしまいます。

また、年金システムの中断など、大きな混乱を招きそうな状況も予想されています。

2040年問題とは

2040年問題とは、 高齢化率(65歳以上人口の割合)が30.0%を超える2025年に社会が直面する問題がさらに進むことにより、さまざまな影響が拡大すること を指しています。団塊ジュニア世代とよばれる1971年〜1974年生まれの人たちが65歳以上となるのが2040年です。そのこともあり、高齢化率は約35%にまで上昇すると考えられています。

一方、生産年齢人口(15〜64歳)をみると2025年には7,170万人であったものが、5,978万人に減少します。高齢者が増加し、生産年齢人口が減少を続けることで、社会保障制度の持続可能性が大きな社会問題となります。

医療や介護の分野においてもさらに深刻な状況になると考えられます。

超高齢社会の概要や対策については、下記の記事でも詳しく解説しています。

超高齢社会の現状と課題。国・自治体・企業の具体的な対策例を紹介

2025年問題で介護業界や現場はどうなる?

超高齢社会が進み、75歳以上の人口割合が増加する2025年以降は、どのようなことが懸念されるのでしょうか。

まず労働人口の減少が進むことで、各業界で労働力不足がさらに深刻度を増すと考えられます。また、高齢者の割合が大きくなるため、社会保障費の負担も大きくなるでしょう。

こうしたことを踏まえ、介護業界に絞って2025年以降を考えてみると、介護対象者は増加する一方で、介護する側の人材は確保しにくい状況になる、ということです。

もう少し具体的にみておきましょう。

介護サービスを必要とする要介護者数の増加

2025年には、65歳以上の要介護要支援認定者数は全国で716万人にも及ぶと推測されています。

2025年における高齢者割合を確認すると、65歳以上はおよそ3.3人に1人、75歳以上はおよそ5.6人に1人です。

すべての高齢者が介護を必要とするとは考えられません。生涯現役で活躍される人も多いのが現状ですが、高齢者が増えるということは介護を必要とする要介護者数も増えると考えられます。

要介護者数が増えるということは、介護現場では対応する人がさらに必要になるということです。

認知症患者の増加

認知症とひとくくりに表していますが、認知症にはその原因となる疾患によっていくつかに分類されます。「アルツハイマー型認知症」「血管性認知症」「レビー小体型認知症」が3大認知症とよばれるものです。また、認知症は加齢によって発症するものとイメージしがちですが、そうとは限りません。

別の病気の影響や脳の血管が詰まったことによる記憶障害や精神症状も認知症に含まれます。ですから、年齢に関係なく発症する可能性はあります。

とはいえ、加齢によって認知症発症率が高まるのは事実です。認知症の高齢者人数は2025年には高齢者の5人に1人といわれています。(内閣府「平成29年版高齢者白書」)

こうした背景から、介護現場では、認知症ケアのできる専門知識とスキルをもった介護人材の確保が必要になるといえるでしょう。

介護人材の不足

介護現場をとりまく変化の影響をうけ、介護業界では人材不足が深刻化すると考えられます。

厚生労働省が公開している「介護人材確保に向けた取組」のなかで、介護職員の必要数と不足の予測を出しています。

そのなかで、介護が必要な高齢者に対して、2019年度の介護職員数は211万人でしたが、今後の高齢者数の増加にともなって必要とされる介護職員数は2025年には243万人、2040年には280万人と推計しています。

これは入職/離職の人数が同程度で介護職員数が2019年度から変わらない場合には、2025年には約32万人、2040年には約69万人が不足するということになります。

介護財源の圧迫

介護を必要とする人の数が増えるため、介護保険の保険給付が増えます。そうなると、医療・年金といった社会保障費が増加すると考えられます。一方で介護保険の財源となる労働者人口は減少するわけですから、介護保険サービスの利用料や介護保険料は増加することになります。

これは、国民の経済負担が増加するなか、介護を必要としながら適切な介護を利用できない人が増えることにつながります。そうした状況をさらに深読みすると、要介護度が低いうちは家庭内で家族が介護をしていたとしても、要介護度が上がり、家族での介護が難しくなった段階で介護施設を利用することになります。

そうなると、介護施設には要介護度の高い利用者が集中することになります。つまり、介護現場では、専門的な知識にくわえ、身体介護に必要な体力、気力が充実した技術力のある人材が必要になるということです。

こうした人材確保はかなり難しくなることが予測されます。

2025年問題に対する政府・自治体の取り組み

2025年問題に備えた政府の動きや自治体の取り組みをみておきましょう。

政府の取り組み

2025年以降は、団塊の世代が75歳以上となり、国民に医療や介護の需要がさらに増加すること予想されます。

この状況を見越し、厚生労働省では、2025年(令和7年)までに、地域の包括的な支援・サービス提供体制(地域包括ケアシステム)の構築を進めています。

地域包括ケアシステムは、高齢者の尊厳の保持と自立生活の支援が目的です。可能な限り住み慣れた地域で、自分らしい暮らしを人生の最期まで続けられるようなシステムを検討しています。また、この地域包括ケアシステムは、市町村や都道府県が、地域の自主性や主体性に基づいて、地域の特性に応じた内容を創り上げる必要があるとしています。

各自治体における取り組み事例を全国で共有し、取り組みを推進することを目的として、取り組みのモデル例をまとめたものも公開しています。

自治体の取り組み

政府の取り組みに対して、各自治体ではどのような動きをしているのか、具体的な取り組み事例を見ておきましょう。

東京都世田谷区:5つの要素をバランス良く取り込んだ取り組み

東京都世田谷区では区独自に全高齢者実態把握調査を行い、一人暮らし高齢者や高齢者のみの世帯が約半数を超えている実態を把握しました。また、パブリックコメントで確認した住民からの意見には、身近な地域での健康づくりや介護予防の重要性などについてのものが多いこともわかりました。そこで5つの分野においてバランスの良い取り組みを進めています。

  • 医療: 在宅医療の充実に向けた連携体制をつくります。
  • 介護: 安心できる高齢者の在宅生活を実現します。
  • 予防: 高齢者の居場所と出番の創出をします。
  • 住まい: 社会資源の有効活用による低所得高齢者などの居住の場を確保します。
  • 生活支援: 公的サービス以外の地域活動・資源の活用を進めます。

三重県四日市市:社会福祉法人と地域組織の協働による日常生活支援体制の構築

2012年4月より大型団地の中心にある商店街の空き店舗を活用して「孤立化防止拠点」を運営しています。

運営団体は「社会福祉法人青山里会」で、総合相談・食の確保・地域住民の集いの場としての機能を併せ持った拠点です。

また、その取り組みと連動して、地域住民・自治会が主体となって地域完結型の日常生活支援を目的とした会員制組織『ライフサポート三重西』を発足しました。2013年3月より65歳以上の高齢者など向けに、地域住民による安価な日常生活支援サービス提供システムとしてスタートしています。

2025年にむけて介護業界が取り組むべき対策

国や自治体が2025年問題へのさまざまな取り組みを進めているなか、介護業界では、介護人材の不足に対する対策を最優先に考えるべきでしょう。そのための労働環境を改善して、入職者を増加させることと、離職者を減らすことをめざしましょう。たとえば、次の施策への取り組みが考えられます。

働きやすい環境構築を進める

たとえば、施設内の保育所を設け、子育て中の介護職員が働きやすい環境を構築することもひとつです。

また、介護職は体力的に厳しい職種であるともいわれるように、体調不良(腰痛など)により離職をする職員も少なくありません。そのため、介護ロボットといったデジタル機器の活用や要介護者の見守りをIoT技術を活用して自動で行う環境を整えるなど、介護職員の業務負担に取り組むことが重要です。

正職員への登用制度を充実させる

介護職においては、非正規雇用やパートタイムで働く職員もいます。

そうした場合、正職員と比べると収入面に不安や不満が生じやすく、職場への定着率が下がることが考えられます。正職員への登用制度を充実させることで、働くことの意欲向上や将来的なキャリアプランが描ける環境を提供することも大切です。

研修制度を充実させて、キャリアップの機会を設ける

介護職においては、実務経験を踏まえさまざまな資格を取得することによって、キャリアアップができます。

キャリアアップによって収入面の安定を期待できるでしょう。

また、身体的に負担を感じるようになった場合でも、ケアマネージャーとして活躍するなど、長期的なキャリアの可能性が広がります。

研修会や資格取得に向けた支援体制を設けるなど、介護業界でキャリアアップができる機会を提供することも重要です。

デジタルツールを導入して業務負担軽減を促進させる

介護現場の仕事は幅広い業務をこなしています。身体介護や各種イベント企画、介護ケアの記録など、業務負担は大きいと考えられます。

少しでも業務負担を軽減するためには、 デジタルツールを活用し、積極的に業務負担の軽減・効率化を進めることが重要 です。

たとえば、日報を手書きして利用者の管理や申し送りを行っている場合、システムを導入することで事務作業の大幅な時間短縮や工数削減が実現できます。

多様なデジタルツールの中から、課題解消に適したものを選ぶことで、効率的に業務を遂行できる体制の構築が可能となります。そして、 業務負担の軽減・効率化は働きやすさにつながります。 さらには 利用者のケアの充実にもつながる でしょう。

NTTデータ関西では、行政機関で働く介護認定業務を担う人をサポートするデジタルツールとして 「ねすりあ」「Aitice(アイティス)」 を提供しています。

介護現場の業務と同様、 介護認定業務も要介護・要支援認定者の急増やアナログな業務フローにより、人手不足と個々の業務負担の増大が課題 となっています。これらを解決する手段として、デジタルツールの導入は非常に有効です。

「ねすりあ」は、調査員(自治体職員等)が 要介護認定者への訪問調査から調査票作成までの一連の業務を効率化し、迅速かつ正確に行うことができるツール です。このような業務効率化により、職員は本来の「人」と向き合う専門業務に時間を費やせるようになります。

また、「Aitice」は、これまで担当者が一つひとつ目視で確認していた要介護認定調査票の記入内容を AIがチェックして判定することで、確認にかかる業務時間の大幅カット を実現できるツールです。

「ねすりあ」と「Aitice」を活用することで、 介護認定業務にかかる負担を軽減しつつ、業務の質を向上 させることができるでしょう。

各ソリューションの詳細については下記をご覧ください。

▼ ねすりあの詳細について

介護認定支援アプリ「ねすりあ」|NTTデータ関西

▼ Aiticeの詳細について

要介護認定支援AIサービス Aitice |NTTデータ関西

まとめ:介護業界の2025年問題を乗り切るには労働環境や制度の見直しが鍵!

2025年以降には団塊の世代が75歳以上となり、高齢化はさらに加速します。

それにともない、介護業界では介護対象者の増加と介護人材の不足が大きな課題となるでしょう。政府や自治体でもさまざまな取り組みを実施していますが、介護現場における業務効率化と人材確保への対策は急務であるといえます。デジタルツールの活用による労働環境の改善や、研修制度の充実によるキャリアアップ支援など、働きやすく魅力的な職場をめざした施策を迅速に進める必要があるでしょう。

また、こうした医療・介護分野の問題を最新のデジタルテクノロジーで解決する「ヘルステック」という概念にも注目が集まっています。以下の記事で詳しく解説していますので、参考にしてください。

ヘルステックの活用が医療分野の課題解決につながる