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社内DXの推進が企業全体のDX実現のカギ

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さまざまな企業や自治体、団体などにおいてDXの実現をめざした取り組みが加速しています。一方で、どこから手をつければスムーズに進められるのか、検討に時間がかかっている企業も少なくないようです。2025年の崖問題や慢性的な人材不足が深刻化するなか、DXの実現は早急に成し遂げたい課題といえるでしょう。今回は企業全体のDX実現のために社内で進めるDXに注目をして考えてみましょう。

DXの実現は、部分から全体へ

DXは、IT技術やデジタルデータを活用して、従来のビジネスモデルや体制、組織構造を見直し、社会の変化に柔軟に対応できるように、より良い方向へと変革していくための取り組みです。一方で、企業それぞれに抱えている課題やDXが進まない要因が違うように、DX推進の手段も異なり、そのプロセスも異なります。つまりDX実現には多様なプロセスや方法があるといえるでしょう。

しかし、どの立場でのDX実現であっても、現状で抱えている課題を解消するために、IT技術やデジタルデータを活用して、ムダを省き、ムリのない状態を構築し、競争力や提案力を付けることを目的としています。そのためには、 すべての業務内容を対象にして同時進行的にDXを進めていくよりも、各部署・部門といった小さな単位で、一つひとつの課題を明確にし、具体的な対策を打ち出し、課題解消をするための取り組みとして進めることが必要 です。

DXとは?や成功のポイントを理解しておきたい場合はこちらの記事を参考にしてください。

DX(デジタルトランスフォーメーション)とは?定義と導入時の課題、成功へのポイントについて

https://www.nttdata-kansai.co.jp/media/001/

DX推進の成功事例や実施のヒントについてはこちらで紹介しています。

DX推進・成功事例から実施のヒントを探る~国内・海外成功事例22選~

https://www.nttdata-kansai.co.jp/media/015/

社内DXとは

どの立場でDXの実現をめざすにしても、部分的なところから課題を洗い出し、対策を講じ、それを全体へと拡大していくことが確実にDXを実現する方法だといえます。

企業であるなら、まずは社内におけるそれぞれの部署で業務(システムや人的リソースを含め)課題を明確にし、その対策としてDXに取り組みましょう。このように社内の部分的なところからDXへの取り組みを推進していくことを社内DXとよびます。

具体的には社内DXを推進することで、小さな単位、それぞれの部署においてデジタル化を進め、プロセスの見直しを行うことになります。その結果、業務が効率化され、新しい付加価値の創出ができる体制を整います。そうした各部署での取り組みが結果的に企業全体の取り組みに拡大していくのです。

つまり、 社内DXは現場での業務改善や働き方改善が実現されるだけでなく、企業全体で推進しているDXの一歩となる取り組み だといえるでしょう。

一例として顧客との接点が大きい営業部門でのDX推進は、サービスや製品開発や売上にも直接影響をおよぼす取り組みです。さらに営業力の強化をもたらすDX実現は、企業のビジネスモデル改革と競争力強化にも直結します。営業部門でのDXについては以下の記事を参考にしてください。

営業部門でもDX化を推進。導入の具体策と成功事例

https://www.nttdata-kansai.co.jp/media/032/

社内DXの必要性

なぜ企業全体でDXへの取り組みを進める際に、小さな単位、つまり社内の各部署・部門でDXへの取り組みを進めるのがよいのか、その必要性を以下の点から理解しておきましょう。

人材不足への対応

現在、日本社会は少子高齢化が深刻化し、労働人口の減少が現実問題として企業の人手不足を引きおこしています。また、価値観の多様化にともない、どのような働き方や生き方を理想とするかは人によって違うことが受け入れられやすい社会になりました。それは社会として理想的なことなのですが、企業単位で考えると、転職機会が増えたともいえ、優秀な人材を確保することが難しくなったともいえます。こうした状況は今後継続すると考えられています。そうしたなか、 企業が適材適所に人的リソースを配置し、長く自社で活躍してもらい、キャリアアップをめざしてもらうためには、ムダ、ムリのある業務を改善することが重要 です。

現場におけるシステムを刷新し業務効率をアップさせることで、少人数でも業務が回せるようになります。さらに、自動化できる作業と人が対応すべき作業を明確にすることで、より 従業員の能力を発揮する機会が増え、モチベーションやエンゲージメントが向上する と考えられます。

そのような働きがいのある環境、働きやすい環境を整えることで、優秀な人材を確保しやすい組織へと変わることができます。

レガシーシステムの刷新

限られた人材で業務を回している企業においては、同じ人が同じ作業を長年担当することが少なくありません。古いままのシステムを使い慣れた担当者が、自分なりのやり方でうまく作業をこなしていた状況が続くと、さらに担当者を入れ替えることは難しくなります。こうした状況は作業の属人化を招き、問題点の発見が遅れることにもなります。

また、レガシーシステムのまま使い続けることにも、やがて限界がきます。システムのサポートが終了する、新しいアプリケーションを稼働させることができない、現状のシステムを維持するためにはメンテナンスに費用も技術も必要になるなど、レガシーシステムを使い続けるメリットはないといえます。

しかし、企業全体のシステムを一気に刷新するのはかなり危険な挑戦でもあります。システムが今までどのように保守されてきたのか、またカスタマイズされてきているのか、全体を把握するのは難しいものです。まずは各現場で使用しているシステムやアプリケーションを確認して、刷新できるところから手をつけましょう。

新しいシステム構築については、ある程度ITスキルを持った担当者が必要ではありますが、たとえば、ローコード開発といったシステムやアプリケーションの開発が容易な方法もあります。 こうした開発方法を選べば、専門的なITスキルがなくても、だれもが現場に即したものを構築でき、その後の保守やアプリケーションの変更も可能になります。また、作業の属人化防止やIT人材不足への対応もしやすくなります。

システムやアプリケーションの開発については以下の記事を参考にしてください。

DXを促進させ、「2025年の崖」回避にもつながるローコード開発とは

https://www.nttdata-kansai.co.jp/media/029/

多様な働き方への対応

それぞれの部署で業務の見直しや効率化が進むと、勤務時間の自由度が高まり時短勤務やフレックスタイム制が導入できます。 また、テレワークが可能な体制が整うことで、子育てや介護など、環境に変化がある社員がキャリアを継続させやすくなります。

このように多様な働き方への対応ができていると、企業の魅力も高まり、結果的に人材確保においても優位な要因にもなるでしょう。

社内DXを成功させるための具体策と事例

具体的に社内DXの進め方をみていく前に、社内DXが進まない課題としてあげられる主なものを理解しておきましょう。

社内DXが進まないのはなぜ?

大きく分けて2つの原因が考えられます。1つめは理解不足、2つめは人材不足です。

1.DXの必要性が理解されていない

経営層、社員ともにDXの必要性を理解して、積極的に取り組むことが必要です

2.DX人材の不足

DXを進めるうえで必要となるデジタル技術をもち、DXへの理解、さらに自社の業務についての理解と把握ができている人材が必要です。

こうした2つの「不足」状況を改善するには、まずは経営層と社員が十分な情報を共有し、現状を見つめましょう。そのうえで必要な資金提供を行い、DX人材の確保をしなければなりません。同時に、社内での人材育成体制の強化も必要になるでしょう。

社内DXへの具体策

社内の各部署でDXへの取り組みをはじめるにあたり、以下を確認し、順に進めていきましょう。

  • 推進リーダーとなる人材を見極める
  • 優先度の高い業務を見極める
  • 当該部署の社員が変化に順応できるように、一部の業務から進める
  • 一部の業務から進めると同時に、情報共有し、部署の社員全員の意識向上を図る
  • 既存業務をデジタル化し、新しい業務プロセスへと進める

事例紹介

では、自社のヒントを探るために社内DXへの取り組みで成果をあげている企業の事例をみていきましょう。

KAKUICHI:老舗企業における意思決定のスピードアップへの取り組み

農業用資材から太陽光発電などの環境事業までを手がけて130年の歴史を誇る老舗企業。社内のコミュニケーションはメールや電話、FAX、口頭といった1対1の閉じた形式が使われていました。いいかえれば情報共有が不足していたのです。その結果、意思決定が必要な状況でも、判断するための情報がなかなか集められず、意思決定スピードが落ちていました。そこで、コミュニケーション・情報ツール(Slack)を導入し、1対1であったコミュニケーション形式を「1対多」へ変更し、いつでもどこからでも会話に参加できる状況をつくりました。その結果、現場からの情報がいち早く意思決定権限のある担当者に届き、意思決定スピードが格段に速まりました。

さらに、事例共有がしやすい環境が構築できたことによって、顧客対応速度が上がっただけでなく、問題解決のための知恵も必要なところに集まる構造が生まれました。

ウチダ製作所:IoT技術で同業他社を含めた金型メーカーのモデル変革への取り組み

金型設計・製作している企業の多くは、繁忙期と閑散期の差が大きいことと、金型受注量が安定していないことによる経営の不安定さを抱えています。こうした状況で廃業する企業も多く、メーカーが減少した結果、需要をまかない切れないことや金型設計の技術者不足という深刻な問題が起こりました。

そこで自社内のビジネスモデル変革のみならず、同業他社を巻き込んだ金型メーカー全体のモデル変革に取り組み始めたのです。活用したのはIoT技術です。

IoTデバイスによって自社の稼働状況だけでなく、協力・提携している他社の稼働状況をリアルタイムで把握し、共有し、各社で得意な工程を担当する仕組みを構築しました。

この分散型の金型づくりという新しいビジネスモデルには、さらに3次元CADを導入したことで、金型設計の精度を向上させただけでなく、工程の負担軽減を実現させ、金型設計人材の若手育成にも成果を上げることができました。

セイブ:業界の景気変動に対応するため、検品工程をAIロボット活用で自動化

電線とその支持物との間を絶縁するために用いる器具「碍子(がいし)」を製造販売している企業において、変量生産への対応や、品質管理体制の変革、人手不足への対応は大きな課題でした。

それらの課題解決をきっかけに、デジタル化、データ活用を進め、スマートファクトリーをめざした取り組みをスタートさせました。

景気変動に対応しやすくするための変量生産への体制構築は、まず、AIロボットを用いた検品工程の自動化を進め、検査時間を大幅に短縮することに成功しました。また、IoTセンサーを製造工程のさまざまな部分に活用して、データを見える化し、不具合がどこで起きたのかをリアルタイムで察知。工程の見直しや、製造の効率化も図ることができました。

デジタル技術やデータ活用を進めたことで、従業員の負担軽減が実現と生産性の向上、品質の安定化が実現しました。

まとめ : 企業のDXは社内DX推進によって達成される

2025年の崖問題や労働力人口の減少など、企業を取り巻く状況にはきびしいものがあります。政府も推進しているDXへの取り組みを強化させ、既存の体制を改革して新しいビジネスモデルや働き方を創造することで、情勢の変化に柔軟に対応できる競争力、組織力をもつことができます。そのための 具体策として、全体を対象にDXに取り組むのではなく、優先的な業務における課題、部署における課題を把握し、小単位でのDX推進が有効 です。自社でのDX実現のひとつのプロセスとしてご検討ください。