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健康サポートのデジタル化から行政のデジタル化へ。「アスリブ®」の向こうに見えるもの

 |  インタビュー

スマートフォンのアプリでポイントを貯める、スマートウォッチで買い物の支払いをするなど、身の回りがデジタル化することで便利になったという方は多いのではないでしょうか。各地の自治体が取り組む健康づくり事業も、そうしたデジタル化の恩恵を受けているもののひとつです。

今回は、NTTデータ関西 第二公共事業部 第一ソリューション担当 課長の杉、同じく第二公共事業部 第一ソリューション担当 課長の濱部にインタビューしました。2人が手掛ける健康サポートアプリ「アスリブ®」は、自治体の保険者努力支援制度を支援するアプリ。自治体が住民の健康行動にポイント付与をする健康づくり事業を実施する際に、必要な機能やサービスを搭載しています。話を聞いてみると、そこには健康づくりを超えた壮大なビジョンもあるようで……?

プロフィール

株式会社NTTデータ関西 杉 のぞみ

杉 のぞみ (すぎ のぞみ)

株式会社NTTデータ関西 第二公共事業部 第一ソリューション担当。健康サポートアプリ「アスリブ®」など、自治体様のヘルスケア領域に関する行政課題ソリューションの営業を担当。

株式会社NTTデータ関西 濱部 圭子

濱部 圭子 (はまべ けいこ)

株式会社NTTデータ関西 第二公共事業部 第一ソリューション担当。健康サポートアプリ「アスリブ®」など、自治体様のヘルスケア領域に関する行政課題ソリューションの開発マネージャーを担当。

場所や時間に縛られない健康づくり事業がデジタル化で実現できる

第二公共事業部と、各々で担当されているお仕事について教えていただけますか?

:第二公共事業部のミッションは、大きく言えば自治体様の行政課題を個別SI型ではなく、主にソリューションという切り口で解決するというもので、私たちはその中でもいわゆる「ヘルスケア領域」を担当しています。ヘルスケア領域とは、病気の治療を行うといった「医療領域」ではなく、健康管理や予防を中心とした分野です。具体的には、大阪府様の健康サポートアプリ「おおさか健活マイレージ アスマイル」の提供を皮切りに、現在では全国の自治体様向けの健康サポートアプリ「アスリブ®」を手掛けています。私自身は営業を担当していますので、NTTデータ関西のヘルスケアビジネスを発展拡大させていくこと、それを通じて健やかな社会と、暮らしやすい街づくりをITの力でサポートすることがミッションだと考えています。

濱部 :私は杉と同じ領域でシステム開発のマネージャーを担当しています。「アスリブ®」のようなスマートフォンアプリそのものの開発はもちろん、アプリでサービスを提供する自治体様がお使いになるシステム、例えばアプリにコンテンツを届ける管理サイトの開発なども手掛けています。

健康サポートアプリ「アスリブ®」は、どのような課題を解決するために開発されましたか?

:人生100年時代を迎えた今、自治体様にとって住民の健康寿命を延ばすことは、自分らしくいきいきと暮らしてもらうという意味でも、限られた医療資源を有効に使う意味でも重要なことかと思います。もともと健康に関心の高い方であれば自ずと取り組まれるので、行政の抱える課題としては「健康に関心がない人にどうやって興味を持ってもらうか」だと考えています。それが、NTTデータ関西で開発した健康サポートアプリを通して、電子マネーや電子ギフトに交換できるポイントの付与など「健康であること+αのメリット」をもたらす健康づくり事業につながったのかなと。

なるほど、「アスリブ®」の機能や特典が「健康に関心がない人」にも使ってもらうきっかけになったのですね。

:そうです。今、高齢者の方でも60代~70代前半くらいまでであれば、多くの方がスマートフォンを既にお持ちです。デジタルデバイスにもさまざまなものがありますが、スマートフォンはその中でも特に毎日触れられる方が多く、より身近なものですよね。

ひと昔前ですと、健康づくり事業も「紙のスタンプカードを配布し、スタンプがたまったら賞品を役所に受け取りに行く」など、所定の場所で限られた時間にお越しいただかないと参加できなかったり、インセンティブがもらえなかったり、といったやり方が一般的でしたので、働く世代にはなかなか難しかった。デジタルであれば、スマートフォンでいつでもどこでも参加することができるところは大きなメリットだと思います。

濱部 :行政・自治体の側から見ても、記録があらかじめデジタルデータになっていることで、入力作業などに煩わされることなく集計や分析に活用の幅を広げられるのはメリットですね。集めたデータの分析結果から、次の取り組みへと展開していくこともできますし。

さまざまな分野のセキュアな情報を扱ってきたNTTデータ関西の実績が活かせた

「アスマイル」、「アスリブ®」は本人確認書類による個人情報登録が必須になっています。こうした情報の取り扱いにおいて、自治体やアプリユーザーの懸念をどのようにして払拭されたのでしょうか?

:アスマイルでは、事業当初から行政サービスであるため、確かな本人確認を行い、対象者を意識してサービスを行うようにすることが挙げられていました。そのため、事業スタート前に、3省2ガイドライン(厚生労働省の「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン」と、経済産業省・総務省の「医療情報を取り扱う情報システム・サービス事業者における安全管理ガイドライン」)に沿った形でどのように運用していけばいいか、私たちからご提案しながら大阪府様のご理解を求めていきました。NTTデータ関西はこれまで健康分野に限らず、さまざまな分野のセキュアな情報を扱ってきた実績がありますので、そういったノウハウが十分活かせたと思います。

アプリユーザー様にとっても、個人情報登録は確かに心理的ハードルが高いはずですが、自治体の事業であるということが安心につながっていたのではないでしょうか。その点では、いち民間企業よりも、行政がやるべき意義を感じました。

健康サポートアプリの「本人確認」サービスにより、利活用の幅が広がった

本人確認ができるサービスであることでメリットに繋がったことはありますか?

:はい。2020年に厚生労働省が大阪府・東京都・宮城県の住民を対象として大規模な抗体検査を実施したことがありました。各都府県で参加者を募ることになったのですが、期間が短く、広く一般住民を対象にするので募集方法を工夫する必要がありました。「アスマイル」に白羽の矢が立ちまして、アスマイル上で応募から抽選に当選した方へのお知らせなど一連の流れの大半を担ったのです。

吉村知事が「アスマイルの参加者を対象に大規模抗体検査をやります」と大々的に告知をしたところ、抗体検査自体に興味のある方はもちろん、ポイントももらえるということで、一気にアスマイルの参加者が増えました。

さまざまなツールがある中、なぜ「アスマイル」に白羽の矢が立ったのでしょうか?

濱部 :参加条件などのチェックがスムーズだったことは大きいですね。まず、アスマイルはすでに本人確認ができているサービスのため、アスマイル会員であれば、大阪府民であることを確実に把握できます。また、抗体検査はお住まいの地域や年代、性別が偏らないように実施しなければならなかったのですが、これもアスマイルがすでにデータを持っているので、より短期間で集計できたはずです。

:アプリを応募そのものに利用したのは大阪府だけだったようです。おかげさまで、3都府県で最も幅広く募集者をつのり、応募者数も多かったと聞いています。

アプリやシステムは作るだけでなく「どう使うか」がとても重要

2022年には兵庫県三木市様でも「三木市版アスリブ® みっきぃ☆健康アプリ」をリリースされていますね。

:三木市様はコンセプトとして「健康」に加え「行政のデジタル化推進」を大きく打ち出しておられました。住民の皆さまに、まずは「健康になる」、「ポイントでお得」というメリットを訴求して、アプリ利用を始めてもらいつつ、マイナンバーカードの利活用など行政のデジタル化へつなげていきたいと。また、最終的なインセンティブを電子マネーや電子ギフトにすることで、キャッシュレス決済に慣れていただきたいと明確な方針をお持ちでした。しかも、それに対して「必ず成功させる」という強いお気持ちを感じ、NTTデータ関西としてもぜひご一緒させていただきたいということになりました。

アプリやシステムはあくまでツールですので、作ればなんとかなるというものではなく「どう使うか」がとても重要です。三木市様はそこを深く理解されていて、「どうやって使ってもらうか」に心を砕かれていました。

三木市様のデジタル推進課様と医療保険課様を中心に、特に高齢者を意識して「やりたいけれども、できない」人が脱落してしまわないためのサポートを非常に熱心に取り組んでいらっしゃいました。それもあり、初年度の目標であったユーザー3,000人を、スタートから1~2か月でスピード達成され、私たちも感動いたしました。

健康づくり事業以外の打ち出しはまだこれからですが、例えば、マイナポータル連携や、出産子育て応援交付金など個人への電子マネーでの給付、SDGsの取組みとの連携などのさまざまなサービスを私たちも考えています。今後、行政サービスとアスリブがもっとつながっていけば、三木市民の方がさらに使っていただけるアプリになるのではないでしょうか。

マイナンバーカードの取得率が高まり、これからこういった取り組みはもっと広がっていくと思います。実際、三木市様には他の自治体様からアスリブについて問い合わせが入っています。「三木市版アスリブのような形でやりたい」ということで、近隣の自治体様もご紹介いただきました。

三木市様がこうした取り組みの先駆けとなられたこと、そこに私たちが寄与できたことは冥利に尽きます。これからも一緒にデジタル化の推進を目指していくパートナーでありたいですね。

行政のニーズを読み取る力、ソリューションの豊富さはNTTデータ関西ならでは

健康サポートアプリを手掛ける企業も少なくない中で、NTTデータ関西や「アスリブ®」ならではの強みはどこにあると感じていますか?

:やはり会社としてこれまで行政との長いお付き合いを続けていますので、行政の方々が何に悩まれているのかといったことを察知する力、そこに力点を置いた組み立てができること、そこが強みではないかと思っています。マイナンバーカードの利活用のように、国の方針に応じて行政が取り組むべきことなどを踏まえたご提案もできます。

例えば「アスリブ®」の場合、歩数や体重を記録するなど、健康づくりに関する機能は当然と考え、もう1つNTTデータ関西ならではの提案として「行政からの発信ができるツール」を盛り込ませていただきました。行政の方々が「住民の方にアスリブを利用していろいろなことに取り組んでほしい」と考える中で、お知らせやアンケートといった「住民の方とコンタクトを取るツール・機能」が必要であろうと考えたわけです。

濱部 :開発担当としては、NTTデータ関西としても、NTTデータグループとしても、豊富なソリューションを持っていることが強みになっていると感じます。

例えば、健康サポートアプリを手掛けるベンダーはたくさんありますが、マイナンバーカードで公的個人認証をするアプリを持っているとなるとそう多くはありません。つまり、健康サポートアプリでマイナンバーカードを使おうとすると2種類のアプリをインストールしなければならないケースが多いのです。当然「2つは面倒だし、1つにできないの?」ということになりますよね。三木市様のケースでは、NTTデータグループがマイナンバーカードを使った公的個人認証のソリューションを持っていましたので、これを「1つにできた」わけです。

行政の方々をサポートする視点ではありますが、アプリユーザーにとってもうれしいことばかりですね。まさにアプリの利用促進につながる発想だと感じます。今後、「アスリブ®」をどのように展開していきたいですか。

:私たちの部署ではヘルスケア領域のビジネスをやっておりますし、健康やヘルスケアは確かに生活の中で重要な位置づけではあります。でも、だからといって行政も、住民の方々も、「健康のことだけを考えていればいい」ということはまずありませんよね。そこで、毎日使う健康サポートアプリを入口、そしてハブとして、そこから健康に限らずさまざまな行政サービスとつながっていく。「アスリブ®」にはそういった存在になっていくことを望んでいます。その結果、行政のデジタル化もより進みますし、住民の方が暮らしやすい社会、街づくりが進むのではないかと思います。

生活の一部として利用できるようなアプリ開発から行政のデジタル化が進み、住民の生活が快適になる。住民とのコミュニケーションを取りながら健康維持をサポートする「アスリブ®」も社会のインフラの役割を担っていくツールとして、今後の展開がますます楽しみです。