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DXとデジタル化は何がどう違うのか。具体的な例で詳しく解説

 |  DX

DXを推進するためにさまざまな取り組みが進められています。デジタルツールを導入し、自動化できる作業の洗い出しや業務フローの見直しを行うなど、目的や状況に応じた対策がされています。しかし一方で、DXの目的であるビジネスモデルの変革や、新しい価値観を創造して競争力を高めるにはいたらず、中途半端で取り組みが止まっている状況もあるようです。そこには、DXとデジタル化の違いを正しく理解できていない、という原因があるのかもしれません。今回は、DXとデジタル化の違いについて事例を含め紹介します。

DXとデジタル化の大きな違いは目的

DXを進めるにあたり、デジタル化を図ることは必須ですが、DXとデジタル化には大きな違いがあります。それはDXの目的と、デジタル化の目的が異なることです。

デジタル化はDX推進には必要な手段

デジタル化とは、いままで手作業で行っていたアナログな作業をデジタルに切り替えることです。たとえば、紙で毎月の請求書を送付していた作業を、Excelで請求書を作成し、メールなどでの送信に変更することもそのひとつです。また、デジタルツールを導入して業務プロセスを自動化することも、デジタル化の一例です。

デジタル化は業務を効率化したり、人手不足を解消するために作業を自動化したりすることを目的 に行われます。

一方、 DXは、データやデジタル技術を活用して、ビジネスを変革する ことです。重要なのは 「変革」により、より良い状態、競争力の強化へとつながるような体制になる ことが目的であることです。

DXを推進するために、デジタル化は必要な手段であるといえます。

アナログからDX実現へ。その第一歩がデジタル化

たとえば、「広告業務」を事例にデジタル化前、デジタル化が進み始めた段階(デジタイゼーション、デジタライゼーション)、ビジネスにおける改変が行われる段階(DX実現)では具体的にどういうことが変わるのかみていきましょう。

1.デジタル化前
顧客が購入した商品を梱包して発送する際に、広告やアンケートを同封し、返信してもらったアンケート結果を集計して、直接的な意見や感想としてまとめ、次の営業・製造・広告活動に生かします。この段階はすべての広告業務が手作業で行われています。
分析の方法にも精度にもムラがあり、蓄積した結果を総合的に判断して、顧客の消費傾向を探るのにも時間と手間がかかります。手作業で収集し分析した情報は紙の資料として保存されます。
こうした紙の資料は部署をまたいで活用することが難しく、たとえば、営業部が顧客の意見や要望をまとめた資料を保存していても、開発部がリアルタイムで活かせていなければ、顧客が求めている商品やサービスの開発は遅れることになります。
2.デジタイゼーション
Web上に設けた企業サイトから商品の購入ができ、購入者が商品評価や意見を投稿することも可能になります。
顧客データを紙で管理していた段階から、Webサイトでの顧客データの入力により、データで管理ができるようになりました。こうすることで、顧客ごとの検索や購入履歴を管理しやすくなります。
ひとつのデータをリアルタイムで情報共有するまでにはいたりませんが、必要な情報を検索し、活用できる環境は整いつつあるといえます。
3.デジタライゼーション
Web上の企業サイトや他の通販サイトで顧客が商品を購入した情報が集積され、どういった顧客がどのような行動パターンで購入にいたるのか、あるいは、どういった背景のある顧客がどの商品に興味を持っているのかなどの分析を膨大なデータから行い、その結果を商品開発や営業戦略に活用できます。
ひとつの情報を必要な担当者、部署が活用し、部署をまたいで情報共有ができる環境が整った段階です。こうした環境構築により、部署ごとに集積していたデータも一元管理できます。
4.DX
マーケティングにおいては、同じ商品を購入した顧客の共通点を見いだし、顧客へ新たな商品を紹介して購買意欲を高めることも、別の顧客が興味を持っている商品を紹介し、興味を引くことも戦略的に行えます。
市場の動きや顧客情報、消費パターンの変化などを膨大なデータから分析し、どういった戦略が必要なのかをデータから考えて経営方針を打ち出すデータドリブン経営が可能になります。
また、分析結果を基に、ビジネスモデルの変革や、新しい価値を創造するための商品開発、新規事業の立ち上げなど、より競争力を高めるための変革が行えます。
データドリブン経営を実現させるために活用できるデータ分析ソリューションについては、以下のサイトが参考になります。
データを「攻めの活用・守りの活用」をするために適切な分析を行うことはとても重要です。ぜひご参考ください。
データ分析・活用ソリューション | ソリューション | 株式会社NTTデータ関西

デジタイゼーション、デジタライゼーション、DXの中身を知ろう

上記のデジタイゼーションからデジタライゼーションへ、そしてDX実現への流れをさらに詳しく、内容と具体例を確認しておきましょう。

デジタイゼーション

アナログな情報をデジタル化することを指します。デジタルツール導入によって業務の一部をデータで管理できる状態になります。たとえば、以下がデジタイゼーションの一例です。

紙書類を電子化する
請求書や納品書、稟議書や会議の議事録のほか、カタログや企業パンフレットなど、企業内で使われている紙書類は膨大です。こうしたアナログな情報をPDF化して、必要な場合はメールで送付するとペーパーレス化につながります。
また、FAXで受信した帳票の原本保管についてもどのように保管をしておくかが問題になります。こうしたFAX受信の書類に関してもペーパレス化を検討する必要があります。
たとえば、「BIZXIM SmartFAX」では、 受信したFAXを電子化し、電子帳簿保存法に対応したクラウド型ドキュメント管理ソリューションへの保管まで一気通貫で処理可能な機能を提供する ことで、「ペーパーレス」と「電子帳簿保存法」への対応を同時に実現します。
▼「BIZXIM SmartFAX」の詳細について
BIZXIM SmartFAX | ソリューション | 株式会社NTTデータ関西
デジタル化した書類をクラウド上に保存
紙書類をデジタルへ変更したら、クラウド上に保存するようにします。そうすることで、情報を活用したい従業員は、クラウドにアクセスして情報を確認でき、また、 プロジェクトメンバー間で情報を共有 して作業を進められます。
紙書類のままで作業をしている現場は少なくないでしょう。たとえば、貿易関連企業においては、貿易事務は依然として紙の書類をやり取りして、情報を保存したり、次の業務へと受け継ぎをしたりしています。しかし、国際物流を担う際には、荷主企業を中心に複数の貿易関連企業の間で綿密な情報の連携を行う必要があります。連絡手段がFAXやメールのままでは、情報の修正が発生した場合、最新の情報を把握するのに手間取り、大きなトラブルへと発展するおそれもあります。こうした現場のストレスを解消するためにも、書類情報のデジタル化は必要であり、その デジタル化された情報をいつでも使える状態でクラウド上に保存しておくことは、業務フローの効率化 につながります。その一例が、NTTデータ関西の提供する「B2B TradeCloud」です。
▼ 「B2B TradeCloud」の詳細について
共同利用型貿易書類プラットフォームサービス B2B TradeCloud | ソリューション | 株式会社NTTデータ関西
NTTデータ関西の「B2B TradeCloud」担当者のインタビューも是非ご覧ください。
ステークホルダーの多い貿易物流業界の情報連携を迅速にする、NTTデータ関西の打ち手とは?
会議をオンライン化する
会議室を用意し、資料を配布して、関係者が集まらないと開始できない会議を、オンライン会議へと変更します。Web会議ツールを利用したオンライン会議なら、社内にいなくても会議に出席できます。また、会議室の用意、資料の準備も不用です。必要な書類はあらかじめクラウド上に保存しておき、会議参加者がアクセスして必要書類をダウンロードします。こうすることで、時間や交通費、準備にかかった費用が削減できます。
アナログ広告をデジタル広告にする
チラシを印刷して新聞に折り込む、雑誌に掲載する、街頭で配布するといったアナログ広告をデジタルへと変更します。たとえば、ダイレクトメールやWeb広告を活用したり、デジタルサイネージを利用したりします。こうすることで、ターゲットを絞って多くの人に告知でき、消費者のニーズや行動データの収集も行えます。
事例:デジタルカタログを導入して、常に最新の情報を顧客に提示。紙の削減、カタログ作成にかかる時間・労力も削減
たとえば、新商品の入れ替わりが激しい化粧品や健康食品などを扱う企業において、紙のカタログや商品説明用の資料を使用していると、営業担当者は新商品発売のたびに紙のカタログを持ち歩き、顧客との打ち合わせに出向く必要がありました。カタログを電子カタログに変更すると、営業担当者はタブレットを持ち歩くだけで、常に最新の情報を掲載した電子カタログを閲覧してもらえるため、すべての商品の最新情報を提示できます。
また、カタログを企業のWebサイトに公開しておけば、情報を知りたい顧客はいつでもWebサイトから確認ができ、カタログ請求の手間も省けます。
カタログ制作においても、版下作成、印刷所への入稿作業、校閲作業、色校正など、いくつもの行程を行うことに比べると、デジタルで作成し、責任者がデータ上で確認をするなど、かなりの行程が軽減できます。
デジタイゼーションを進めることで、こうした業務負担の軽減やムリ・ムダ・ムラの削減が実現できます。

デジタライゼーション

デジタイゼーションもデジタライゼーションもデジタル化するという意味においては同じです。デジタイゼーションがアナログで行っていた作業をデジタル化するという段階であったのに対して、 デジタライゼーションはデジタル化することで、部署同士が別々に行っていた業務を連携させたり、業務全体を効率化させたりして、新しい価値観創造へとつなげられる環境を整える ことです。

こうした環境を構築すると、DXの推進が加速されます。

具体的にどのような取り組みがデジタライゼーションなのかをみておきましょう。

製造機器をIoT化して、製造中の情報を一元管理できる体制を整える
ものづくりの現場となる工場にはさまざまな機械があります。製造工程ごと機械化されている工場では、製造中の情報を別の管理システムに入力して管理することになります。しかしこの状況では、ひとつの製品がどの段階にあり、仮にトラブルが発生したときに、次の工程にどのような影響がでるのかを即時に判断することは難しいでしょう。
そこで、それぞれの工程の機器をIoT化して、全製造工程を可視化できるようにすると、製品がどの段階にあるのか、どれくらいの作業工程で完成するのか、トラブルの発生状況はどうか、などの情報が一元で管理できます。その結果、納期の見直しや作業時間の短縮も可能になるなど、生産管理の精度が向上します。
売上予測が可能になり、発注のタイミングや在庫の適正化が図れる
たとえば小売業においては、POSレジやクラウド型カメラを顧客の来店、注文データ収集に活用し、収集したデータを分析することで、マーケティングの精度を高められます。雨の日には、どの商品の売り上げが伸びるのか、時間帯によって来客数が変わるのか、どういった条件でどの商品の売れ行きがどのように変わるのかに関するデータが分析できます。
これらのデータ分析結果を基に、売上予測を立て、適切なタイミングで発注をかけることで、売り逃しや過剰在庫のリスクを軽減できます。また、どういった商品が注目されているのかを把握することで、商品展開の変更や商品の並べ方の変更といった店舗デザインの見直しを行い、営業戦略にも活用できます。
電子契約を活用してリモート業務の可能性を広げる
いままで紙と印鑑を使った契約書を作成し、取引先へ送付していた書類を電子契約システムに変更して活用することで、コスト削減や業務の効率化が大幅に向上します。たとえば、紙代、インク代、輸送代は削減でき、事務作業に必要であった時間と労力も軽減されます。
また、押印が必要であったところを電子印に置き換えることでリモートでの契約業務が可能となります。担当者が社内にいなかったり、上司に押印を求めたりする作業もシステム上で行えるようになるので、取引先との契約成立までの時間も短縮できる可能性が高くなります。さまざまなところで、ムリ・ムダを削減できます。
事例:世界各国にある工場をIT、IoT技術でつなぎ、需要に合わせた生産変動に即座に対応(株式会社デンソー)
大手自動車部品メーカーの株式会社デンソーでは、世界各国にある130の工場をIoTでつなぎ、工場のさまざまな機器からデータを収集し、ひとつのプラットフォーム(Factory-IoTプラットフォーム)に集積させ、活用しています。こうしたシステムを構築することで、世界の需要の変化に即座に対応しながら、生産量を変動させています。
また、作業者の動きや生産設備の稼働状況などをリアルタイムで分析し、作業者の業務効率の向上や設備異常の情報通知に活用しています。こうしたIoT化を図ることで、安全性の向上と品質の保持が実現されています。
  

デジタイゼーションとデジタライゼーションの違い

デジタイゼーションとデジタライゼーションの内容を詳しくみてきたところで、まずこの2つの違いを理解しておきましょう。

デジタイゼーションはアナログ業務を、デジタル技術を使って効率的に行えるようにすることを目的に実行します。作業の効率化によって、作業のムリ・ムダ・ムラが軽減できるように業務のやり方を変えるわけです。

一方、デジタライゼーションはデジタル技術を使って、データを業務に生かし、個別に行われていた業務を連携させ、顧客の要望や社会の変化に対応して、より求められる価値あるサービスを生み出せる体制を構築するために行います。

では、DXはどのようなことを目的に進めるものなのか、内容を確認していきましょう。

DX

デジタル化を進めることでビジネスモデルや企業文化も含めた変革を促し、新しい価値創造をし、競争力を高めることを目的としているのがDXです。 DXを実現することで、企業が理想として描いている企業像への変革が可能 になります。そうした企業が行う活動全体に、より良い変革を起こすために取り組むのがDXだといえます。

デジタイゼーションがアナログからデータ利用ができる環境への移行 であり、 デジタライゼーションが業務フローや戦略を含めた長期的な視野と総合的な範囲でのデジタル化を図る ことであったのに対して、デジタルを活用した DXは企業のビジネスモデルの改革だけではなく、社会へ提供する価値創造 といったところにまで及ぶ概念なのです。

つまり、DXはより良い企業の姿へ、あるいは、より暮らしやすい社会の創造に貢献する企業を目指して、企業のあり方を含めた大きな変革をもたらすために進められます。

情報の分断された生産プロセスをシステムで連携させ、ビジネスを変革
たとえば、生産や販売計画を企画開発部が立案し、製造を実行する製造部の工程計画を立て、さらには生産現場の機械の現状把握まで、さまざまな場所でそれぞれのデータが存在しています。それらの情報が分断されたままの状態では、需要の変化にすばやく対応することも、生産効率を改善することも思うように進みません。 それぞれのデータを連携させることで、生産・販売計画から生産現場の状況までを一元化して管理 できます。また、原価の変化や受注予測、品質管理もデータ分析によって可能になれば、製造に関わるすべての段階がチェーンのようにつながり、経営全体の最適化が図れます。
効率化された業務フローや時間や場所に縛られない働き方ができる労働環境が実現すれば、従業員のライフワークバランスも整い、仕事においても、プライベートな時間においても、十分に能力や実力を発揮できる可能性も高まります。
さまざまな企業や自治体、組織においてもDXが実現すれば、生活者がより安心して暮らせる社会が実現される可能性も高まります。こうした社会全体の改変を目的にDXは進められているといえます。
DXの定義の詳細に関しては、以下の記事も参考にしてください。
DX(デジタルトランスフォーメーション)とは?定義と導入時の課題、成功へのポイントについて
事例:リアルとデジタルを融合させることで、イノベーションの加速を目指す(株式会社ブリヂストン)
大手タイヤメーカーの株式会社ブリヂストンが行ったDXの取り組みは、「より大きなデータで、より早く、より容易に、より正確に」をテーマとし、長年現場で培った「リアル」としての匠の技と、「デジタル」の融合によりイノベーションの加速を目指す、という方向で進められました。
具体的には、「技能伝承システム」を開発して、新人技能員などの技能訓練に活用しています。このシステムによって、確実に、そして効率的に匠の技を伝承する仕組みを構築しました。
株式会社ブリヂストンが扱っている商品のひとつである航空機用タイヤや鉱山・建設車両用タイヤは、過酷な使用環境に対応する高度な技術力を反映する商品でなくてはなりません。その成型工程の作業ステップ数は、一般的な乗用車用タイヤの15倍以上です。このステップそれぞれに熟練のスキルが求められます。そこで「技能伝承システム」を利用し、技術を属人化させない環境を構築したのです。システムでは、成型作業の動きをモーションカメラや慣性・圧力センサーで計測し、新人と熟練技能員の差を作業ステップごとに可視化し評価しました。そして、低評価のステップについて繰り返し訓練することで効率的に技能を習得できるようになりました。
高度な熟練のスキルが標準化されることで、生産性を向上し、高品質な商品を安定的に供給することが可能です。
また、航空会社の持つ航空機に関する知見・フライトデータと、同社の持つタイヤに関する知見・AIなどのデジタルを活用した摩耗予測技術を総合的にかけ合わせることで、タイヤの交換時期を予測し、精度の高い計画的なタイヤ交換を可能にしました。
この技術の導入で、ホイール・タイヤ在庫の削減、航空機整備作業の効率化といったオペレーションの経済価値の最大化を実現しています。この技術によって、タイヤ生産・使用過程での二酸化炭素排出量削減にも貢献しています。
DX推進に関する取り組みを紹介した以下の記事も参考にしてください。
DX推進にクラウド活用は必須。活用事例を紹介
金融業界に新たなビジネスモデル創出とデータドリブン経営を実現するためにもDXは必要
DXを単なるIT化で終わらせないために。失敗例から成功のカギを探る
DXで業務効率化も実現!成功20事例を紹介
   

まとめ: DXは単なるデジタル化ではないことを理解し、目的を達成するための取り組みを継続しよう

DXを進めるうえで、業務を見直し、アナログで対応してきたものはデジタル技術を活用した作業へと移行し、さらにはデータを多様な業務で活用できる環境を構築することが必要です。しかし、そこまでの取り組みで辞めてしまうと、単にデジタル化によって業務改善をした、という段階に過ぎません。

DXの目的は、企業の理想とする姿、あるべき姿へと改変していくことです。デジタル化することとDXでは目的が違うことを改めて意識をし、自社の目指す姿を明確にしたうえで、DXへの取り組みを継続していきましょう。