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「全体最適視点のローコード開発が業務変革と効率化の鍵」NTTデータ関西が見据える「DX推進」とは?

 |  インタビュー

「ローコード開発」は、必要最小限のソースコードを記述し、そのほかの多くの部分では視覚的に理解しやすく直感的に操作できる画面を用いて、あらかじめ用意された機能単位(コンポーネント)を組み合わせながら開発する手法。IT人材以外でもアプリケーション開発ができることから、DX推進の潮流として注目されています。

今回は、ローコード開発プラットフォーム(以下、LCP)の特性を持つ「intra-mart」を提供・開発しているNTTデータ関西 第二法人事業部 第三ソリューション担当の吉本、篠原にインタビューしました。DX推進の救世主として歓迎されるLCPですが、長年LCP「intra-mart」に携わってきた2人に、実際に使われている現場の声などを踏まえ、有効な導入・活用について聞いてみました。

プロフィール

株式会社NTTデータ関西 吉本 昌美

吉本 昌美 (よしもと まさみ)

株式会社NTTデータ関西 第二法人事業部 第三ソリューション担当課長
基幹系システム、財務会計パッケージ、販売購買システムの開発・保守担当を経て、2020年よりLCPを担当。業務改善プラットフォームとして、またローコード開発ツールとして、様々な利用シーンを持つintra-martを活用したシステム開発に携わる。

株式会社NTTデータ関西 篠原 誠

篠原 誠 (しのはら まこと)

株式会社NTTデータ関西 第二法人事業部 第三ソリューション担当課長代理
NTT西日本、NTTデータを渡り歩き、NTTデータ関西へ。NTTデータ関西では、システムエンジニアやマーケティング、営業と複数の業務経験とNTTデータイントラマート社への出向時に得た知見を活かし、現在は、intra-martを中心としたLCPの営業に携わる。

経験もない手探りの取り組みを「スピーディーかつ柔軟に」というジレンマ

ローコード開発の特性を持つ、プラットフォーム「intra-mart」について、あらためて教えてください。

篠原:intra-martは、1998年NTTデータの社内ベンチャープロジェクトによって製品化されたプラットフォームシステムです。その後、このプロジェクトは株式会社NTTデータイントラマートとして独立しました。リリースから25年、ワークフローツールとしては16 年連続でシェアNo.1(※1)を獲り続けています。

NTTデータ関西は、intra-martのプロジェクト立ち上げ当初より関西地域での販売パートナーとして開発・販売に携わっています。製品化された当時はちょうど社内の情報共有ツールとしてイントラネットが脚光を浴びていた頃でしたので、intra-martにも社内の情報共有や承認を行う「ポータル」、「ワークフロー」、「グループウェア」といった機能を求めて、多くのお客様よりご相談をいただきました。

「社内稟議や決裁類は、紙の書類を持ち回って押印やサインをもらうこと」が当然だった時代に、当初からワークフローツールとしてデジタル決裁に取り組んでいたのは斬新だったのではないでしょうか。それでいて、ペーパーレスとワークフローの組み合せはお客様としてもわかりやすいですよね。「紙をなくしてデジタル化し、時間や場所に囚われることなく稟議や決裁ができるようにしよう」という。現在もintra-martは、「ワークフローツール」用途として導入要望をいただき、販売するケースが少なくありません。

intra-mart自体は年数回のペースで機能追加を続けていまして、その中でローコード開発機能、ビジネスプロセスを管理する機能、AI・RPAなどさまざまなデジタル技術や外部システムとの連携機能などを備えるようになりました。

そして、ようやく「社内決裁はデジタル」も当然になりつつあるわけですが、企業のDX推進はどのような現状にあり、どのような課題を抱えているのでしょうか。

篠原:DX自体は国を挙げて取り組んでいるということもあり、私たちのお客様でも、構想段階の企業様から、DX認証を取得されている企業様まで、何かしら取り組んでいらっしゃいますね。ただ、その中でも多くのお客様はまだ試験的な取り組みの段階にあるのではないかと思います。

DXは変革、イノベーションですから「こうすれば間違いない」という確証がないのです。お客様も、これまでは経験を活かし、ある程度の効果が予測できる上でやっていたことを、DX推進となると手探りでやらざるを得ません。例えば、従来のシステムに関わる取り組みはシステム部門中心で進められるものでした。ところが、DXは全社を挙げて取り組むことになります。お客様にとってはそれだけでもチャレンジングな試みですが、さらに将来予測が困難な時代(VUCA時代)背景を踏まえてスピーディーかつ柔軟な対応を求められています。

吉本:例えば、システム部門には単に「DXを推進するように」という上層部からのお達しがある。DXに関する社内認知が進んでいて、エンドユーザーの共通認識が構築できていれば直ちに取り組めますが、多くの場合、そうではないところから全社的にDXを推進しなければならない。もはや「どこから取り組めばいいのか」という状況です。しかも、そこでじっくり取り組めるかというと、スピーディーかつ柔軟に対応しなければ時代に取り残されてしまいます。こうしたジレンマは、どのお客様にもあると感じています。

LCPを導入しただけでは「DXを推進した」ことにはならない

こうした中で、お2人はどのようにお客様をサポートしているのでしょうか?

篠原:お客様のチャレンジをサポートするためにも、システムを開発して提供するだけでなく、ビジネスパートナーとしてお客様と共に、内製化開発を軸に据えてシステムを構築していく、いわゆる「共創パートナー」を目指しています。

吉本:人・モノ・ノウハウをセットで提供するようなイメージですね。LCP、情報基盤を提供するだけではなく、ローコード開発、ひいてはDXを進めていくためにどういった取り組みを実践しなければならないかといったノウハウも提供しますし、その中で必要な人材が足りなければ、人も提供しましょう、と。

篠原:DXという言葉自体は広く認知されて、その意味では成功しているかもしれません。ただ、DXの本質を捉え、自社の事業に対して取り組めているか?というとまだまだといった印象です。

全社的にDX推進へ取り組む必要がある中で、システム部門だけではなく現場部門と一体となって内製化をすることにより、迅速に業務変革を行ったり、新しいイノベーションを起こす形の業務を展開したり、一つの形にこだわらず改善を重ね、より磨きをかけていく取り組みが必要ですね。

そのためには開発を自社のリソースで行う、つまり内製化の仕組みづくりをしなければならない。LCPがあれば、とても簡単に業務アプリケーションを作れますので、全社的な取り組みを補完するための強力な支援ツールになるのではないかと思っています。

LCPは非常に便利なイメージがありますが、その役目はあくまで「補完」であると。

篠原:DX、ローコードといった言葉が先行してしまったせいか、LCPを導入しただけで「DXを推進した」と思い込んでしまうケースも散見されます。しかし、LCPは有効であることは確かですが、「魔法の杖」ではないのです。

吉本:巷には「ローコード開発はいろいろなことが簡単かつスピーディーにできる。だから内製化もすぐできるし、DX推進もお手のもの」といったアピールが溢れていて、「ローコード開発といっても万能ではない」という認識が抜け落ちている印象です。それを鵜吞み(うのみ)にしてLCPを導入しただけで安心していると、おそらく「アプリケーションはたくさんできたけれど、一向に業務効率が上がらない」という結果になってしまうのではないかと。

篠原:実際には、LCPを導入するだけではなく、その先に自社の目指すDXがあるはずなのです。例えば、業務の特性によってはローコード開発だけで完結できないこともあります。そういった場合はローコードと対極にあるプロコード、いわゆるスクラッチ開発などを念頭に置いて「ローコードで作るべきか、プロコードで作るべきか」を適宜判断しなければならない。ただし、以前から開発に携わっていないと、この見極めは難しいのです。「ここにツールがあるから」と安易に全部ローコード開発で作ってしまうと、形にはなったものの「表示が遅い、レスポンスが悪い」といった性能や品質での問題や、「画面が使いにくい」などユーザビリティでの問題が生じて、逆に業務効率を下げてしまいます。

また、誰でも使えるということは、あらかじめルールを定めておかないと統制が取れず、「それぞれ勝手に業務アプリケーションを作ってしまい、知らぬ間に似たようなアプリケーションが大量発生して管理しきれない」といった、いわゆる「野良アプリ」問題も起きてしまいます。この通り、LCPは「導入するだけでなんでも魔法のように解決できる」わけではないのです。そこで、当社が提供する「内製化支援サービス」では、内製化に向けたアセスメントやプランニングから実施いただくことにより、早期にお客様が目指す姿になるよう支援しています。

内製化の勘所とは「作ったアプリケーションの運用やメンテナンスも含めて考える」こと

LCPで内製化を行っていくには、使いこなすためのノウハウが欠かせないのですね。

吉本:これまでシステム開発を外部パートナーに任せていた企業であれば、自社のシステムがどういった構造で、どうやって保守性を担保しているのかといったことは、なかなか意識されていないのではないでしょうか。「内製化する」ということは、ただ単に業務アプリケーションを作成すればよいだけではなく、運用方針やメンテナンスなども含めて考えていかなければなりません。

そういった意味では、ローコード開発は実はハードルの高い取り組みだと思っています。お客様が一からノウハウを積み上げて対応していくのは、正直難しいはずです。そこで、当社としては今までに蓄積したノウハウを提供することによって、お客様がスムーズに内製化を進めていけるよう支援していきたいですね。

例えば、「ローコード開発に向かない業務」には、どのようなものがあるのですか?

吉本:ローコード開発は、その開発ツールで「できること」にある程度制約があるのが一般的です。その業務でそれを許容できるか、できないかの差が大きいですね。

篠原:例えば「画面構成がある程度決められていて、自由に変えられない」といったものですね。現場部門とシステム部門ですり合わせをする中で、現場部門が「この画面構成では仕事にならない」と主張するようなら、スクラッチ開発で現場部門の業務に合わせた画面構成にしていくしかありません。

吉本:つまり強い特性を持つ部門ほど、ローコード開発では賄えない部分が出てきやすく、スクラッチ開発が必要になります。もう一つは業務要件が複雑なケースですね。1つの画面に対してさまざまな要件をたっぷり盛り込みたいとなると、ローコード開発には向かないことが多いです。ローコード開発でいくなら、どこまで要件をシンプルにして、ローコード開発に合わせられるか検討する必要があると思います。ただ、最初は「こちらが合わせるから、ローコード開発で」と言いながらスタートするものの、やがて要求事項がどんどん出てきて、結局、従来と同じようなアプリケーションが完成する……というパターンはよくありますね(苦笑)。

NTTデータ関西自体も変革し続けていかなければならない

LCPとしてのintra-martや、LCP担当の強みはどこにあると考えていますか。

篠原:ある程度の規模を持つ企業であれば、「今まですべて紙ベースでした、まっさらな状態でDXを始めます」ということはまずありません。その中で私たちがintra-martを通じて提供しているのは、お客様がそれまでセクションごとに個別で導入されてきたさまざまなシステム、つまり「個別最適」が寄せ集まっている状態を、全社的ないわゆる「全体最適」へと変えていく取り組みです。クラウド製品が数ある中で、intra-martはさまざまなシステムをシームレスに連携させることに長けています。そこで、従来の個別に導入されたシステムを繋いで業務全体として一貫した形で最適化するのです。とはいえ、いきなりすべてを変えるのは難しいはずですから、必要なものを見直し、古いものはバージョンアップしながら、段階的に全体最適に向けて統合していくお手伝いをしています。

吉本:「なんでも簡単に~」というシステムやツールをいわば「買わされて」しまい、活かしきれずに苦労されている企業様も少なからず、いらっしゃるのではないでしょうか。当社は、「できること」はもちろん「できないこと」も正直にお伝えしながら、泥臭くやらせていただくところが強みだと思っております。成長されていくお客様の隣で、一緒に仕事ができるパートナーとしてやっていければと。

「DXの伴走者」としてのNTTデータ関西について、どのように考えていますか。

篠原:DXは全社的な取り組みになりますので、「経営層からのトップダウン」だけでも「現場からのボトムアップ」だけでもうまくいきません。「現行業務と並走して行う横断型のプロジェクトである」ことを理解していないと、DXの本来の目的である会社自体の変革は成し遂げられません。しかも、「ここでゴール、プロジェクト成功です!」ということもなく、「常に変革し続ける」ことが求められる取り組みでもあります。

LCP担当として、お客様の変革について共に考えサポートすることはもちろん、私たち自身も変革をし続けていかなければなりません。「いきしきした組織で『創る力』と『つなぐ力』により、社会・お客様から選ばれ続けるパートナーへ」。そうしたメッセージを持って取り組ませていただいています。

お客様だけでもなく、自社だけでもなく、共に変革し続けていくパートナー同士でありたいということですね。現状ではまだ課題も多い日本企業のDX推進ではありますが、DX本来の目的への理解が進み、発展していくことを切に願っています。

※1 株式会社富士キメラ総研発刊『ソフトウェアビジネス新市場2023年版』の「ワークフロー市場」分野において市場シェアで1位