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注目されているAI-OCRの精度とその効果について

 |  業務効率化

多くの企業が作業効率化を図るためにOCRを導入しています。OCRを使うと人が手入力をしていた作業が読み取り機能を使って自動処理ができるようになるため、多くの現場で時間削減、人的リソースの有効活用における効果が実感されています。しかし、一方で現状のOCRの使い勝手については「読み取り精度が低い」こともあり、処理したデータを校正する必要があったり、自動では読み取れず、人が手入力によって処理や修正をする必要があったりすることも少なくありません。その結果、期待通りの効率化が図れないということもあります。

今回は、そうした現状を改善することが期待されているAI−OCRについて、その特徴と精度を探っていきましょう。

AI-OCRに注目が集まる背景

労働力不足が常態化している現在の日本において、各企業が自社の特性を生かし成長していくためには、いままでの業務のあり方を見直し、人的リソースの有効活用ができる体制を構築しなければなりません。そのためには、業務の効率化を図るために作業を自動化することが必要です。たとえば、 RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)の導入やOCRを活用することで、いままで人が手動で行ってきたさまざまな作業を軽減したり、自動で処理されたデータを有効に活用するシステムを構築したりする、 などがそれにあたります。こうした効率化への動きは加速し、確実に広がっています。そしていま、作業の自動化に対して、より作業精度を高め、確実に業務効率化が実現できるための取り組みが求められるようになりました。なぜ、作業の自動化に対して精度を求める動きが強まっているのか、その背景を確認しておきましょう。

電子帳簿保存法改正への対応が迫られる

電子帳簿保存法というのは、帳簿や決算書、請求書などの国税にかかわる経理関連の帳簿書類を電子データとして保存することを認めるという法律です。この法律は1998年に施行されて以降、2005年に一部改正され、さらに2022年に大きく改正されました。この改正で2年間の宥恕(ゆうじょ)措置を設けてはいますが、すでに義務化する動きが見えています。 電子帳簿保存の義務化は、これまでの紙でのファイリング作業や整理する手間が省け、データ化により検索性が向上し、書類を探し出すといった手間がかからなくなることから、経理関連業務の効率化や生産性向上が期待できます。

ただし、電子帳簿保存には様々な要件があるため、各企業では必然的に経理業務を大幅に見直す対応に迫られるでしょう。

業務効率化と作業ミスの軽減

総務省が公表している「令和4年 情報通信に関する現状報告の概要」のなかで、生産年齢人口の減少についてまとめています。それによると、日本における生産年齢人口(15〜64歳)は1995年をピークに減少を続け、2050年には5,275万人(2021年比で29.2%の減少)になると予測しています。これにともない、労働力の不足が懸念されています。現在でも日本の企業の多くは業種を問わず人材不足に直面しており、この傾向が今後も続くと考えられるのです。

こうした現状から多くの企業は自社の人的リソースは必要なところに注入できるようにRPAを導入し、それぞれの業務を効率化する必要性を実感していることが想像できます。

それぞれの具体的な対策をみてみると、たとえば、 書類を扱うことが多い経理関連業務では人による作業が多く発生するため、多くの企業がOCRを利用したりRPAと組み合わせたりして、契約書、納品書、請求書といった紙の書類を自動でデータ化できる体制を構築 してきました。

ところが、 現状の課題として、OCRを活用してデータ化したものが、そのまま保存データとして活用できないケースも少なくありません。クセのある手書き文字、文字の歪みといったデータとして読み込みができないケースが多々あり、どうしても人による確認と入力が必要なのです。

現状のOCRだけでは業務効率化をさらに進めるのは難しいこともあり、さらなる精度を求める動きがでてきました。

OCRとAI-OCRではどう違うのか

より精度を高めた業務を求めて、AI-OCRに注目が集まっていますが、具体的にどう違うのか、その精度の差はどれほどのものなのかをみておきましょう。

OCRとは

OCRは、Optical Character Reader(またはRecognition)の頭文字をとった略語です。画像データのテキスト部分を認識して、文字データに変換する光学文字認識機能のことを指します。

多くは請求書や契約書などの紙の書類をスキャンして、文字部分を読み取り、データに変換するために活用されています。

AI-OCRとは

AI -OCRは、OCRにAI技術を加えたものです。

AI(人工知能)は自動運転技術やスマートフォンなどにも活用され、身近な技術になりました。AIの特徴は機械学習やディープラーニングによって知識を蓄積し、実行精度を高めていけることです。

OCRにAI技術を組み合わせることで、機械学習による文字認識率の向上や、帳票フォーマットの設計をせずに、項目を抽出することが可能になりました。

OCRとAI-OCRの文字認識精度の差

ではOCRとAI-OCRとではどれくらい文字認識において精度の差があるのでしょうか。

株式会社MM総研が2019年に実施して公表した「国内法人のAI-OCR導入実態調査」を参考にすると、 AI-OCRを使って手書き文字識字率を調べた結果、何機種かのAI-OCRのなかで手書き文字識字率の高いものでは、歪みのある書類であっても96%の認識が可能であったとしています。

OCRにおいて同様の調査をした結果では、歪みのある書類は読み取ることができず、歪みがない書類であっても手書き文字識字率の最高値が34%でした。

つまり、 AI-OCRを利用すれば、かなり高い確率で手書き文字が認識されるといえそうです。ただし、AI-OCRであれば読み取りが完璧にこなせるという結果ではないことを理解したうえで活用することが必要です。

AI-OCRにできること

手書き文字識字率については前項で触れましたが、それ以外にも、従来のOCRでは読み取りが難しいとされていたケースでもAI-OCRではクリアできることが多くなりました。それは AIのディープラーニングによるものです。

ディープラーニングによって精度を高めていける

たとえば取引先によって フォーマットが異なる請求書であっても、必要な箇所の数字を読み取ることが可能 です。文字枠からはみ出して書かれた文字も、訂正印や取り消し線などで修正された数字も読み取ることができます。これらは、AIが作業を実行するなかで、ケースを学び、精度を更新していくからです。

ヒューマンエラーを防ぎ、OCRで必要であったチェック作業も軽減できる

OCRにしても導入の目的は人的リソースの有効活用の可能性を高めるためです。従来、人が手作業で入力していたものを自動的に文字認識させてデータ化することで、人はもっとコアな業務に時間を割くことができます。しかし、OCRでは識字率がさほど高い状況ではなかったため、最後に人がチェックしたり、読み取れない部分は人が入力したりする必要がありました。

こうした 人が対応しなければならない作業を極力減らすことによって、時間の余裕が生まれ、人でしか対応できない作業に費やすことができます。 また、作業の軽減によって少ない人数で、同等の作業効率を上げることが可能になります。

人材不足への対応、働き方改革への対応など、就労環境の改善につながることにもなります。

まとめ: AI-OCRとRPAとの連携を視野に、業務改善を進めよう

AI-OCRの導入は経理関連業務の手書き書類のデータ化において、画期的な成果を発揮すると期待されます。 作業負担が軽減されることで、少ない人数でも膨大な書類を扱うことが可能になります。ただ、 AI-OCRの導入の利点はそれだけに留まりません。RPAと連携をさせることで、たとえばFAXで送られてきた手書き資料からデータとして読み取り、保存するプロセスを構築することも可能です。 ファイリングした資料は、必要に応じて検索し、呼び出し、分析に使用することもできます。

さまざまな書類をデータとして保存し、経営戦略の構築やマーケティング分析に活用することができれば、より具体的で的確な方向性を打ち出せるようになる でしょう。

AI-OCRの導入を、単に経理関連業務の効率化だけではなく、企業活動全体の業務改善をめざして考えてみてはいかがでしょうか。