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ヘルステックの活用が医療分野の課題解決につながる

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超高齢社会を迎えた日本において、医療分野の課題は喫緊の課題で、医療業界のみならず自治体や企業にも影響のある問題です。その課題解決の方法のひとつとして注目されているのがヘルステックです。

今回はヘルステックとはどういったものなのか、また、ヘルステックを利活用することで、なにができるのかについて紹介します。

ヘルステックとは

超高齢社会を迎えた日本において、ヘルステックが注目され、市場も急拡大しています。国内市場の伸びをみると、2016年比で2025年市場は1.3倍の33兆円という調査があります。(平成30年4月18日 次世代ヘルスケア産業協議会 事務局:経済産業省)

では、ヘルステックとはどういったものなのでしょうか。

ヘルステックは健康をサポートするための最先端技術

ヘルステックとはヘルス(健康を意味することば)とテクノロジー(最先端技術を意味することば)を組み合わせた造語です。

最新の技術を活用して、医療や健康維持・増進に関する今までにないサービスや価値を創造すること、またはそのためのシステムを指すことばとして使われています。

ヘルステックの明確な定義は示されていませんが、医療分野に最先端のデジタル技術を活用することで、新たな価値あるサービスを生み出し、人々の健康な暮らしを支援するためのシステムといえるでしょう。

医療分野が抱えるさまざまな課題

医療分野の現状をみると、高齢化にともなう医療サービス提供量の増加、それにともなう医療費の増加、さらには医療分野での人材不足など、さまざまな課題を抱えています。さらに、都市部と地域における医療サービス提供格差も深刻な問題です。

もう少し詳しく課題をみておきましょう。

医療費の増加

医療費の増加が懸念されています。医療費は人口増加、社会の高齢化、医学や医療の進歩による新技術の導入、疾病構造の変化などを原因とする増加が考えられます。とくに高齢化が進む日本においては、今まで以上に多くの医療案件に細かな対応が必要です。なかでも認知症患者の増加にともない、医療、福祉分野の対応は増えていきます。これは自然増と呼ばれるものです。

もうひとつ、日本特有の医療費増加の原因があります。たとえば、病床数が多く、在院日数も長い傾向にあること。薬剤単価が高く、薬剤使用量も多い傾向にあること。医療材料価格が高く、検査が多いこと。日本は国民皆保険制度をとっているため、ほとんどの人が医療機関を必要なときに利用できる環境です。これは非常に優れた制度である一方で、受診回数の増加につながりやすく、医療費の増加を招くことにもなっています。

2025年問題
医療の2025年問題が早急に対処すべき課題として取り沙汰されています。
総務省が公表している日本の人口推計によると、2022年10月現在で、15歳未満人口は1450万3000人、15〜64歳人口は、7420万8000人、65歳以上人口は3623万6000人です。65歳以上の人口比は約29.0%。つまりおよそ3人に1人が高齢者です。
団塊の世代(1947年〜1949年生まれの人)が2025年に後期高齢者(75歳以上)になることで、日本は世界に類を見ないほどの超高齢社会になります。そのことで、医療や介護、社会保障などの利用が増加し、対応も煩雑化することで深刻な影響がでると懸念されています。この大きな影響を2025年問題と呼んでいます。
医療従事者の人材不足
日本の労働力人口は減少傾向にあります。その影響は各業界においても人材不足の深刻化というかたちで現れています。医療業界も例外ではありません。医師数の動向だけをみると、増加傾向にあるのですが、医療現場においては人材不足感が強くなってきています。厚生労働省が公開している「労働経済動向調査(令和4年8月)の概況」をみると、労働者の過不足状況は「医療、福祉」において、とくに人材不足感が高いことを示しています。また、未充足求人の状況をみても、「医療、福祉」分野では70%が充足されていない状況であることがわかります。厚生労働省白書(令和4年版)には、2040年には医療、福祉分野の就業者数が96万人不足する見込であることが示されています。
地域および診療科医の偏在
医療、福祉の業界全体で人材不足ですが、さらに医療従事者の数の地域格差は深刻な状況です。厚生労働省白書(令和4年版)には都道府県別医師偏在指数として人口10万人に対する医師数が示されています。それによると東京都が332.8人であるのに対して、岩手県や新潟県では172.7人と約2倍の差があることがわかります。
また、診療科によっても医師の数には偏りがあり、外科、産科・婦人科、小児科に携わる医師数は少ないと報告されています。

医療従事者の人材不足

日本の労働力人口は減少傾向にあります。その影響は各業界においても人材不足の深刻化というかたちで現れています。医療業界も例外ではありません。医師数の動向だけをみると、増加傾向にあるのですが、医療現場においては人材不足感が強くなってきています。厚生労働省が公開している「労働経済動向調査(令和4年8月)の概況」をみると、労働者の過不足状況は「医療、福祉」において、とくに人材不足感が高いことを示しています。また、未充足求人の状況をみても、「医療、福祉」分野では70%が充足されていない状況であることがわかります。厚生労働省白書(令和4年版)には、2040年には医療、福祉分野の就業者数が96万人不足する見込であることが示されています。

地域および診療科医の偏在
医療、福祉の業界全体で人材不足ですが、さらに医療従事者の数の地域格差は深刻な状況です。厚生労働省白書(令和4年版)には都道府県別医師偏在指数として人口10万人に対する医師数が示されています。それによると東京都が332.8人であるのに対して、岩手県や新潟県では172.7人と約2倍の差があることがわかります。
また、診療科によっても医師の数には偏りがあり、外科、産科・婦人科、小児科に携わる医師数は少ないと報告されています。
離職率の高さ
厚生労働省の「令和4年上半期雇用動向調査結果の概況」のなかに示されている令和4年上半期の労働移動者を産業別にみると「医療、福祉」業界への入職者数は77万8000人で、離職者数は78万1500人です。他の産業に比べると決して高いとはいえませんが、簡単に人材補充ができる業界でないこと(未充足求人数22万8200人)を考えると医療、福祉人材の不足が深刻化することが懸念される数字だといえるでしょう。

医療機関の経営状態

一般社団法人日本病院会、公益社団法人全日本病院協会、一般社団法人日本医療法人協会が協会に加盟している病院のうち630 病院からの回答をもとに、2023年に調査した「医療機関経営状況調査」によると、医業利益、経常利益ともに、赤字であると報告した医療機関は増加傾向にあり、2022年度では医業利益では77%、経常利益では51.6%と半数以上が赤字経営であることが明らかになりました。背景には複雑な要因が絡み合ってのことですが、ひとつには超高齢社会になり医療機関を利用する人が増加している一方で、医療費の抑制が政府によって進められており、病院経営を厳しい状況に追い込んでいるといえます。

ヘルステックができること:医療分野の課題解決への期待

医療分野においては、医療費の増加、医療機関の経営状態の悪化、医療従事者の不足など多様な課題が存在しています。こうした状況を打開し、どこに暮らしている人でも同等の優れた医療が提供できるような環境を構築するためには、医療分野のDXでもあるヘルステックの活用がひとつの策となりそうです。

では、ヘルステックでなにが変わるのか、みていきましょう。

電子版お薬手帳
お薬手帳は服薬している薬剤名、服用方法のほか、アレルギーや副作用の履歴などを記入しておく手帳です。電子版お薬手帳は、お薬手帳に記入している服薬情報をクラウド上で保管しておきます。そして、服薬情報や服薬指導歴といった情報は利用者本人がスマートフォンで確認することができるほか、医師や薬剤師が服薬履歴や副作用、アレルギー履歴を確認して、より適切な服薬指導をしたりするために活用されます。また、電子版お薬手帳なら利用者が携帯していなくても、医療機関でネットを通じて情報確認ができるので、緊急時にも適切な医療サービスが提供できる可能性を高める仕組みだといえます。
電子版お薬手帳を活用することで、調剤業務の効率化や遠隔での服薬状況確認などにもつなげることができます。
遠隔診療サービス
医療の地域格差を解消することにもつながるのが遠隔診療サービスです。遠隔診療サービスを活用することで、医療機関から遠い地域や離島に居住している患者、通院できない在宅患者が医師に診察・診療してもらうことができます。スマートフォンやタブレットを利用して、オンラインやビデオチャットで診療を行うほか、診療予約、処方箋の受取り、薬の受取りといったことも、完結できるサービスもあります。
また、遠隔診療サービスは地域に専門の医療機関や専門医が不在といった状況でも、専門治療が受けられる可能性を広げるサービスでもあります。
AIによる診断支援や病気進行予測
医療機器が飛躍的に高度化し、多くの疾患においてCT(コンピュータ断層撮影装置)やMRI(磁気共鳴画像装置)が活用されています。こうした先端機器を活用することで早期発見早期治療も実現されてきています。一方で、病理医をはじめ多くの医師たちは膨大な医療画像を確認し、診断しなければなりません。こうした状況のなか、より正確な診断につなげ、医師の負担軽減を図るためにAI技術が応用されています。AIが診断のサポートをすることで、見落としがちなかなり早期な症状も確認することが可能になってきています。
さらに、健康診断データや治療内容を分析し、将来の発病予想や進行予測にもAIの活用によって進んでいけば、健康維持を促し、病気予防になる情報を提供できるようになると期待されています。
IoMT
IoMTというのは、Internet of Medical Thingsの略でヘルスケアIoTと呼ばれています。モノのインターネットであるIoTと同様に、センサー、マシンベースのインテリジェンスを活用して、医療処置や監視業務を自動化できるシステムです。
IoMTを活用することで、体に着けたコンピュータ「ウェアラブルデバイス」から日々の健康状態をデータとして保存し、医療情報を患者本人が確認できる以外に、医者、薬剤師、福祉サービス提供者など必要な専門技術や知識をもった関係者に共有することができるようになります。たとえば、通院する時間が確保しにくいビジネスマンがちょっとした気になる体調に関して、通院しなくても掛かり付け薬剤師に相談したり、遠方の専門医に相談ができるようになります。
健康経営を充実させる多様なサービス
企業では従業員のストレスチェックが義務化されてこともあり、健康へのサポートや福利厚生の充実を図る企業が増えています。たとえば、従業員がオンライン診療を利用して、体調管理やメンタルヘルスの維持ができる環境を整えたり、従業員の食事や運動、睡眠といったフィジカル面の情報やメンタル面の情報をデータ化して、改善方法の提案をしたりするために、ヘルステック提供企業との連携が進められています。
介護支援ロボット
超高齢社会の日本では、介護・福祉分野での人材不足も深刻です。施設での介助・介護にともなう負担軽減や、在宅における老々介護においても介護支援ロボットが注目されています。
自治体による健康支援の可能性拡大:健康サポートアプリの活用
健康長寿を図るために各自治体は、住民の健康維持・増進へのサポートを充実させています。たとえば、スマートフォンのアプリを活用した取り組みとして、健康イベントに参加するとポイントが付与され、そのポイントは地域の買い物に使えるといったサービスを提供しているところもあります。
こうした仕組みを可能にするソリューションのひとつとして、アスリブ®があります。
アスリブは、住民の健康行動を促進するためのクラウドサービス版のアプリケーションです。このアプリはまちの健康づくりをサポートするためのコミュニケーションツールとしても機能します。住民の健康行動だけでなく、健康以外の様々な活動にもポイント付与ができます。そのため、まちのポイント一元化プラットフォームとしても機能し、住民に対するインセンティブとして、電子マネーや地域の名産品など、多様な特典と交換できる仕組みを提供しています。
▼ アスリブ®の詳細について
「健康サポートのデジタル化から行政のデジタル化へ。「アスリブ®」の向こうに見えるもの

まとめ: ヘルステックの活用で健康を守る。その視点は新しい価値を作り出す可能性がある。

企業や自治体にとって、従業員や市民の健康を維持するための取り組みはさまざまな価値を作り出す可能性を秘めています。

医療分野の課題を解決すると同時に、患者の利便性も向上させることもできるでしょう。こうした課題解決を図るためのテクノロジーを活用する先に、新しい価値、ビジネスモデルがあるとも考えられます。

今回紹介したヘルステックを使うことで、自社の健康経営を充実させるだけでなく、医療や健康分野、行政の健康支援など、さまざまな切り口でサービスを生み出すことも考えられます。

新たなビジネスチャンスを広げるヘルステックがどのように利活用できるのか、探ってみるのもいいのではないでしょうか。