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自治体が知るべき都市OSの3つの特徴。スマートシティ実現に向けた課題と解決策

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都市OSという言葉を耳にする機会が増えてきましたが、具体的にどのようなシステムなのか、イメージを掴みづらいと感じる方も多いのではないでしょうか。

都市OSは、 自治体のデジタル化を進め、市民サービスの向上や行政の効率化を実現するための重要な基盤 です。

しかし、その概要や導入方法、実際の効果など、まだ十分に理解されていない面もあるでしょう。

本記事では、都市OSとは何か、スマートシティ実現に向けた課題にどう立ち向かえるのかについて解説します。都市OSを活用し、持続可能で魅力的なまちづくりを目指すご担当者の皆さまに、ぜひ参考にしていただきたい内容です。

都市OSとは

都市OSとは、都市に存在するさまざまな分野のインフラを支えるデータ連携基盤です。

都市OSの目的と自治体における役割

都市OSの目的は、都市内で生成されるさまざまなデータを収集・分析し、行政サービスの効率化や市民の利便性向上、都市の課題解決につなげることです。自治体にとって、 都市OSは単なるITシステムではなく、まちづくりの戦略的ツール として位置づけられます。

都市OSとスマートシティの関係

スマートシティとは、 ICTを活用して都市の機能やサービスを高度化し、市民の生活の質を向上させる取り組みのこと を指します。都市OSは、スマートシティを実現するための基盤であり、都市内のさまざまなデータを連携・統合する役割を担います。都市OSなくして、真のスマートシティは実現できないと言っても過言ではありません。

スマートシティ実現に向けた課題

都市OSの特徴やその特徴がスマートシティ実現にどのように貢献するのかについて解説する前に、まずは現時点でスマートシティ実現に向けてどのような課題があるのかを見ていきます。

以下の課題が代表的です。

  • サービスの再利用と横展開の困難さ
  • 分野間データ連携の難しさ
  • システムの拡張性の不足

一つずつ詳細を見ていきましょう。

サービスの再利用と横展開の困難さ

日本のスマートシティ実現における大きな課題の一つが、サービスの再利用と横展開の困難さです。従来の情報システムは、各分野や組織ごとに個別最適化されているため、他組織での再利用が難しい状況にあります。そのため、同じような機能を持つシステムを各組織が独自に開発・運用することになり、非効率な投資が行われています。

スマートシティの実現には、優れた取り組みを他の組織でも容易に導入できるよう、サービスの標準化と共通プラットフォームの整備が求められます。

分野間データ連携の難しさ

分野間データ連携の難しさも重要な課題です。スマートシティでは、 行政、交通、エネルギー、ヘルスケアなど、さまざまな分野のデータを横断的に活用し、新たな価値を創出する ことが期待されます。しかし、現状では、各分野のデータが独立したシステムで管理されており、他分野のデータと連携させることが困難です。

データの相互運用性を確保し、分野を越えたシームレスなデータ連携を実現する ことが、スマートシティのポテンシャルを最大限に引き出すための鍵となります。

システムの拡張性の不足

スマートシティは、都市の成長や市民ニーズの変化に合わせて、継続的に進化していく必要があります。しかし、従来の個別最適化されたシステムでは、機能拡張や変更に多大なコストと労力がかかり、柔軟な対応が難しくなっています。

スマートシティの実現には、 拡張性と柔軟性に優れたシステムが不可欠 です。

都市OSの3つの特徴

前項で解説した、スマートシティ実現に向けた課題解決に都市OSはどのような役割を果たすのでしょうか。

内閣府が公開している「スマートシティリファレンスアーキテクチャ」から、都市OSの代表的な3つの特徴について解説します。

相互運用(つながる)

都市OSの重要な特徴の一つが、相互運用(つながる)です。これは、異なるシステムやサービスが互いにデータやリソースを共有し、連携して機能する能力を指します。

相互運用の対象となるサービスや機能がAPIを備えることで、同一都市・地域内の多様なサービスや機能と連携できるようになります。さらに、APIを介せば、都市・地域外や他の分野のサービスや機能とも相互運用が可能です。

この相互運用においては、 セキュリティやプライバシー、信頼性を確保することが重要 です。

データ流通(ながれる)

都市OSのもう一つの重要な特徴が、データ流通(ながれる)です。

データを流通させるために、まず都市OSに集約されるデータをデータ管理システムで蓄積・保存・管理します。そして、この データを各種サービスやアプリケーション、インフラに適用させることで、データ流通が実現 します。

ただし、プライバシー上の理由で共有できないデータや他の組織が管理するデータは都市OSに集約できません。その場合は、地域内連携システムや地域間・分野間の連携システムを活用しながら、APIを経由したデータ流通を行う必要があります。

拡張容易(機能を広げられる)

都市OSの3つ目の特徴は、サービスやシステムの拡張容易性です。この拡張容易性は、都市OSを基盤としてスマートシティのサービスを作り上げていく過程で実現されます。

地域内連携システムや地域間・分野間の連携システムによって、 サービスや機能を連携することで、新しい機能を構築して拡張することが容易 になります。

また、スマートシティで共通的に利用されるサービスや機能は、都市OSの運用支援システムや共通サービス機能によって提供されます。そのため、サービスやアプリケーションの提供者は、0からサービスや機能を開発する必要がなく、労力を最小限に抑えられます。

さらに、機能を広げた後も、不具合や障害を招くことなく稼働できるように、個別サービス管理システムやアセット管理システムがその支援機能を提供します。

都市OSの導入事例

都市OSの導入事例を紹介します。

導入内容とあわせて導入効果についても解説しているので、ぜひ参考にしてみてください。

東京都|都市OSでデータ駆動型都市の先駆けに

東京都千代田区の大手町・丸の内・有楽町地区では、IoTやAIなどの技術や都市のデータを活用し、「既存都市のアップデートとリ・デザイン」を進めています。行政と民間企業が協調・連携して課題解決・価値創造に取り組む「公民協調のPPP(官民連携)」の体制で実行しているのも特徴です。

この取り組みで、都市データを統合する「大丸有版都市OS(デジタルマップ・ツイン含む)」が活用されています。

大丸有版都市OSを活用したことで、位置情報やアプリの利用ログ、カメラ、センサーなど、ヒトやモノから取得したさまざまなデータを組み合わせられるようになりました。

その結果、再現性の高いデジタルツイン環境でのシミュレーションを容易にし、効率的に新たなサービスを創出する仕組みの構築を実現しました。

仙台市|「SENDAIポータル」で一人ひとりにあった情報を提供

仙台市は、 より快適に暮らせるまちづくりを目指す取り組みの一環として、地域ポータル 「SENDAIポータル」 を構築 しました。

このポータルの中核機能である「お知らせ配信」では、 都市OSを活用して利用者一人ひとりにカスタマイズされた情報を提供 しています。

具体的には、都市OSの導入により、幅広い行政情報を効率的に収集し、各利用者の属性や興味関心に基づいて適切に配信する情報を選別できるようになりました。これにより、市民は必要な情報を最適なタイミングで受け取れるようになり、日常生活における利便性が向上しています。

同時に、自治体側にとっても、市民の行動データを蓄積・分析することで、地域の活性化策や効果的な施策立案に役立てられるという点で大きなメリットがあります。

SENDAIポータルは、NTTデータ関西が提供するスマートシティアプリ「EYE-Portal」をベースに開発されています。特長やユースケースについては以下をご参照ください。

▼ EYE-Portalの詳細ついて

EYE-Portalの特長|NTTデータ関西

都市OSを導入する際のポイント

都市OSを導入する際のポイントは以下の4つです。

  • 明確なビジョンと戦略の策定
  • 庁内の意識改革と体制整備
  • 市民や関係者との共創
  • 連携ツールの活用

最短で導入を進めたい方は、ぜひ一つでも多く実践してみてください。

明確なビジョンと戦略の策定

都市OSの導入には、明確なビジョンと戦略が不可欠です。目指すべき都市の姿を描き、その実現のために都市OSをどのように活用するのかを明らかにする必要があります。

都市OSは単なるツールではなく、まちづくりの根幹を支える存在であるという認識が重要です。

庁内の意識改革と体制整備

都市OSの導入には、自治体職員の意識改革と体制整備が欠かせません。特に以下を意識しながら取り組む必要があります。

  • トップダウンでの強力なリーダーシップ
  • 部署間の連携強化
  • デジタル人材の育成・確保

また、外部の専門家や先進自治体からの支援を得ることも有効です。

市民や関係者との共創

都市OSは、自治体だけでなく、市民や企業、大学などの関係者との共創により、その真価を発揮します。利用者視点に立ったサービス設計、オープンイノベーションの推進など、多様な主体の参画を促すことが重要です。都市OSは、まちづくりの新たなプラットフォームとなり得ます。

連携ツールの活用

スマートシティの実現には、都市OS導入だけでなく、さまざまな連携ツールを効果的に活用することも一つの選択肢です。

都市OSとの連携ツールは、都市内のさまざまなデータを集約・連携・発信するための重要な役割を果たします。国内でも、パーソナルデータとの連携に特化したサービスをはじめ、多様なデータ連携基盤サービスが提供されています。

NTTデータ関西でも、 防災・エネルギー・医療介護などのさまざまなアプリを連携・融合して生活者ひとりひとりにあったサービスを届けられるスマートシティアプリ「EYE-Portal」 を提供しています。

EYE-Portalは、 「地域活性化のハブ」として、自治体、地域企業、生活者をシームレスにつなぎ、 幅広い情報をより便利に活用できます。

概要や機能の詳細、活用事例は以下で詳しく解説しています。

▼ EYE-Portalの詳細ついて

EYE-Portalの特長|NTTデータ関西

まとめ:都市OSで実現する持続可能なまちづくり

都市OSは、都市のインフラを支える強力な基盤となるツールです。

スマートシティ実現に向けた課題の解決、市民サービスの向上、都市の持続的発展など、その可能性は計り知れません。一方で、都市OSの導入には、以下のように多くのポイントをおさえる必要があります。

  • 明確なビジョンと戦略の策定
  • 庁内の意識改革と体制整備
  • 市民や関係者との共創
  • 連携ツールの活用

都市OSは万能薬ではありませんが、これからのまちづくりに欠かせない存在であることは間違いありません。ぜひ都市OSを活用して持続可能なまちづくりを実現しましょう。