製造業におけるDX実現にむけて、工場のIoTを考える
モノがインターネットを経由して多様なデータ収集に活用されるIoT技術は、さまざまな製品に搭載されるようになりました。DX(デジタルトランスフォーメーション)を進めるうえで必要なIT化のひとつとしてもIoT技術は重要です。
技術力のある人材の不足が課題となっているいま、DXを実現するためには、効果的な人的リソースの活用が必須だといえます。製造業においては、それを可能にするひとつが工場のIoT化を図ることでしょう。
今回は、製造業において、工場のIoTを切り口に、DXとの関係性やIoTの効果についても紹介します。
あらためてDXとは
多くの企業や自治体、教育現場において、DXへの取り組みが進められています。そうしたなか、DXが業務の単なるIT化ではないという理解も広がってきています。 DXはいままでにないビジネスモデル(サービス提供体制や教育環境)を創出することで、競争上の優位性を確立したり、利用者の利便性を向上させたり、より快適な生活環境を実現するためのものです。 DXを実現するには業務や企業文化の見直し、組織やプロセスを変革していくことを含めた全社での取り組みが重要であると認識されてきています。
ここであらためて意識しておきたいのが、 DXは単なるIT化ではありませんが、IT化を進めることはDXを実現するために必要なことであり、プロセスである、 ということです。
DXを実現するために必要なこと
DXを実現させるためにはいくつかポイントがあります。
- 目的を明確にしておくこと
- 小さな部分からはじめて、レガシーシステムの刷新に取り組みつつ、全体の取り組みへと進めていくこと
- DXに必要な知識やスキルを共通化し、デジタルリテラシーを高めていくこと
などがそれにあたります。また、IT人材の確保が必要になります。企業、自治体、教育現場などさまざまな現場でDXが進められていくなか、組織全体のデジタルリテラシーを高めることが重要です。とくに専門的な知識と技術で直接的にデジタル環境の見直しや新しいデジタル環境を構築することのできる人材(IT人材)は不可欠です。
DX徹底解説。定義と目的、導入時の手順と課題のほか、成功事例を紹介
https://www.nttdata-kansai.co.jp/media/001/IoTとは? DXとの関係を理解しよう
DXを実現するためにはIT化を推進する必要があります。ここでIT化の大きな流れのひとつであるIoTについて理解を深めておきましょう。
IoTとは
IoTは“Internet of Things”の略で「モノのインターネット」と称されるものです。モノがインターネット経由で通信することにより、社会の利便性を向上させる役割を果たします。
たとえば、テレビ、デジタルカメラ、デジタルレコーダー、スマートスピーカー、さらに冷蔵庫や電子レンジなどの家電がインターネットを活用した通信機能を搭載しているように、すでに多くのものがIoT製品として普及しています。
IoT製品が普及することで、IoT製品の販売企業はネット上の情報を収集し、顧客に対してより多彩なサービスを提供できるようになってきました。
また、各分野でセンサー付きのIoT製品の開発が進んでいます。たとえば、工場や建設現場など人が直接作業をするには危険を伴うような場合、離れた場所からリアルタイムで状況を把握し、必要な操作をするためにIoT技術が活用されています。自動運転、自動制御可能な工業機械によって作業が行える製品などがその代表的なものです。
以前から機械同士の通信であるM2M(Machine to Machine)といった、機械間だけで使われる技術は知られていましたが、 IoTは「モノとモノ」の通信からさらに「人へ」データを受け渡すまでの、より広い概念といえるでしょう。
IoTとDXとの関係性
新たなビジネスモデルを創造し、より競争力のある企業になるためには、より多くのデータとデジタル技術を活用することが重要です。自治体や教育現場においても、データやデジタル技術を活用することで、より快適なサービスと充実した教育環境を構築することができます。
つまり、 DXの実現には、より多くのデータを収集し、それらを活用できる環境が必要 になるわけです。いいかえれば、 IoT技術をさまざまな製品に活用して、データを収集することはDX実現に不可欠 だともいえるでしょう。つまり、IoTはDXを実現する手段のひとつなのです。
IoT活用のスマートファクトリーの効果
さまざまな分野でIoTの導入が進んでおり、製造業においても例外ではありません。工場で使われている機械にIoTを導入することで、さまざまな情報を得ることができます。たとえば、 不良品の発生頻度、稼働時間と製品製造の割合、製造にかかるコスト、など膨大な情報を集め、それらを必要に応じて分析するために活用できるようになる のです。このようにIoTを活用し、さらにAI技術などを組み合わせることでスマートファクトリーを実現することが可能になります。 スマートファクトリーというのは、IoTやAI技術を活用して、収集したデータを基に最適な作業環境を実現させた工場のことを指します。
では、具体的にスマートファクトリーにすることでどのような効果が得られるのかみておきましょう。
データの見える化
多様なデータを収集し、蓄積し、必要に応じて分析をすることで、現状を数値で把握することができるようになります。
データ分析によるコストダウンと作業効率向上
分析データを基にして、現状の把握と見直しを進めることで以下のようなコストダウンと効率化が図れます。
- 材料の使用量の見直しから余剰材料を削減することができる
- 材料を発注するタイミングや量、生産ラインの稼働率などを適切にすることで、在庫を含めた総合的な生産管理ができる
- 作業プロセスを全体に見直すことで、人が作業をする必要のあるところと、自動化できるところを明確化できる
品質向上(不良品発生率の低減と製品の安定化)
人や機械の作業内容を情報としてデータ収集することで、ミスの発生、トラブルの発生について把握することが可能になります。 また、不良品の発生率を把握することも可能です。
こうした品質にかかわるデータを収集し、分析することで、事前の保守点検頻度を見直すことや、作業条件の再確認、製造プロセスの見直しなどを進めることができるようになります。
これらの工程が改善されれば、製品の品質が安定し、不良品の発生率も低減させることができるでしょう。
従業員の作業軽減と技術継承
人材不足は製造業においても深刻な課題です。効率的に人的リソースを活用し、つねに安定した高品質の製品を生み出すためには、人にしかできないコアな業務に時間が割けるように作業の効率化を図る必要があります。
工業機械や工場全体をIoT化することで、製造工程を自動化し、少ない人数で管理運用ができるようになれば、新製品の開発や顧客対応といったところへもリソースが割ける ようになります。
また、業務にかかわる高い技術者の行動もデータで把握できるようになれば、その技術をデータ化し、分析することで、ノウハウとして後継者への継続がしやすくなるほか、工業ロボットに学習させて技術を標準化していくことも可能です。
そのほか、生産ラインの構築が短縮化され、生産量の増加・削減など状況に応じた対応が迅速に行えるようにもなります。さらに、製品の仕様を変更する場合でも、部品のデータ連携や開発データの一元管理を行うことで、迅速に対応できるようになります。
つまり、 人材不足の時代にあって、製品の品質を向上させながら、多様化するニーズにも迅速に対応できるような環境を作ることができるのがスマートファクトリーのメリット だといえるでしょう。
まとめ: 工場のIoTを実現し、製造業におけるDXを進めよう
労働者人口が減少するなか、製造業においても人材不足は切実な課題になっています。なかでも技術者の不足はとくに深刻な問題です。その対策として生産性の向上や作業効率の向上、人的リソースの有効活用が進められています。製造業におけるDXを積極的に進めていくうえで、工場のIoT活用は不可欠でしょう。 多様なデータを自動で収集し、現状を把握することができるようになれば、改善する箇所やその効果もみえてきます。
そのためには、 データを収集するだけではなく、いかに使うか、といった経営的な視点を持った分析も必要 になります。さまざまなソリューションとの連携も考えながら、まずは工場のIoTを実現させ、競争力を向上させるためのDXを進めていきましょう。たとえば、NTTデータ関西が提供するIT構想策定サービスの活用は、自社のIT構想をまとめ、経営戦略に効果を出すことができます。システム導入の前段階にあたる企画や要件定義をする工程において、現状分析や改革テーマを設定することができます。
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