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DXとIoTの関係|製造業の現場改善を実現する導入ステップと事例

製造業 スマート化 DX

DX(デジタルトランスフォーメーション)とIoT(Internet of Things)の関係を一言でいうと、製造業のDXを実現するために、現場のデータを集めて活用するしくみがIoTです。工場の機械や設備にIoTを取り入れると、稼働状況や品質のデータを自動で集められます。そのデータを分析すれば、現状が数値で見えるようになり、生産性の向上やコスト削減、人材不足への対応につながります。

この記事では、DXとIoTの基本的な関係から、工場への導入ステップ、実際の活用事例、つまずきやすい課題とその対策までを順を追って解説します。

DXとIoTの関係とは?製造業で両者が結びつく理由

DXとIoTの関係は「目的と手段」の関係です。DXが目指すゴールだとすれば、IoTはそのゴールに近づくためのデータを集めて活用するための手段にあたります。製造業では、工場の設備をIoT化してデータを収集し、それを分析・活用することでDXを前に進めます。

モノがインターネットを経由して多様なデータ収集に活用されるIoT技術は、さまざまな製品に搭載されるようになりました。DXを進めるうえで必要なIT化のひとつとしても、IoT技術は重要な役割を担います。

技術力のある人材の不足が課題となっているいま、DXを実現するためには、効果的な人的リソースの活用が欠かせません。製造業においては、それを可能にする手段のひとつが工場のIoT化です。

製造業でDXへの取り組みが急がれる理由

DXとは、デジタル技術を使って新しいビジネスモデルや価値を生み出し、競争上の優位性を確立する取り組みです。単なる業務のIT化ではなく、業務や企業文化、組織のあり方そのものを変革する点に特徴があります。

製造業のDX推進については、次の記事もあわせてご参照ください。

製造業DXの実践ポイントと成功事例 - 課題解決から競争力強化までの具体策

深刻化する人材不足と技術継承の問題

製造業がDXを急ぐ背景には、深刻な人材不足と既存システムの老朽化があります。労働人口が減るなかで、熟練技術者の引退によるノウハウの喪失が現実の問題になっています。

また、長年使い続けてきた古いシステム(レガシーシステム)が、データ活用や新しい仕組みの導入を妨げるケースも少なくありません。こうした課題を放置すれば、競争力のある立場を保つことが難しくなります。だからこそ、製造業ではDXへの取り組みが急がれているのです。

製造業の課題については、次の記事もご参照ください。

日本の製造業の現状と課題、解決のカギはデジタルシステムの導入にあり

DXを実現するために必要なこと

DXの実現には、明確な目的設定、スモールスタートからの段階的な刷新、デジタル人材の確保という3つのポイントが重要です。やみくもにツールを導入するのではなく、順序立てて進めることが成功のポイントです。

具体的には、次のような点が挙げられます。

  • 目的を明確にしておくこと
  • 小さな部分から始めて、レガシーシステムの刷新に取り組みつつ、全体の取り組みへと進めていくこと
  • DXに必要な知識やスキルを共通化し、デジタルリテラシーを高めていくこと

加えて、IT人材の確保も欠かせません。企業や自治体、教育現場などさまざまな現場でDXが進むなか、組織全体のデジタルリテラシーを高めることが重要です。特に、専門的な知識と技術でデジタル環境の見直しや構築を直接担える人材(IT人材)は不可欠な存在です。

レガシーシステムの刷新やIT人材不足という課題に向き合い、基幹システムの更改に取り組む担当者のインタビュー記事をご参照ください。

「2025年の崖」を乗り切るだけでなく、その先も見据えた基幹システム更改に

IoTとは?DXとの関係をわかりやすく解説

IoTとは「モノのインターネット」を意味し、モノがインターネット経由で通信してデータをやり取りする仕組みです。DXとの関係でいえば、IoTはDX実現に必要なデータを集める入り口の役割を果たします。

IoTの定義

IoTは "Internet of Things" の略で、「モノのインターネット」と呼ばれます。モノがインターネット経由で通信することにより、社会の利便性や効率性を高める役割を果たします。

たとえば、テレビ、冷蔵庫、電子レンジなど、インターネット通信機能を備えた電化製品が増えてきているように、すでに多くのものがIoT製品として普及しています。IoT製品が広がることで、メーカーはネットから情報を収集し、製品やサービスの改善に役立てるようになりました。

また、各分野でセンサー付きのIoT製品の開発が進んでいます。工場や建設現場など、人が直接作業するには危険を伴う場面では、離れた場所からリアルタイムで状況を把握し、必要な操作をするためにIoT技術が活用されています。

以前から、機械同士の通信であるM2M(Machine to Machine)という技術は知られていました。これに対して、IoTは「モノとモノ」の通信から、さらに「人へ」データを受け渡すまでを含む、より広い概念だといえます。

IoTとDXの関係性

新たなビジネスモデルを生み出し、競争力のある企業になるためには、より多くのデータとデジタル技術を活用することが重要です。自治体や教育現場でも、データやデジタル技術を活用すれば、より快適なサービスや充実した環境を構築できます。

つまり、DXの実現には、多くのデータを収集し、それらを活用できる環境が必要になります。言いかえれば、IoT技術をさまざまな製品に活用してデータを集めることは、DX実現に欠かせないといえるでしょう。IoTは、DXを実現する手段のひとつなのです。

IoT活用によるスマートファクトリーの効果

工場の設備をIoT化すると、不良品の発生頻度や稼働時間、製造コストなど膨大なデータを集め、分析に活用できるようになります。さらにAI技術と組み合わせることで、収集したデータをもとに最適な作業環境を実現した工場、すなわちスマートファクトリーを構築できます。

ここでは、スマートファクトリーによって得られる効果を4つの観点から紹介します。

スマートファクトリーについては、次の記事もご参照ください。

スマートファクトリーとは?製造業を変革するロードマップと必要な技術

データの見える化

多様なデータを収集・蓄積し、必要に応じて分析することで、現状を数値で把握できるようになります。勘や経験に頼っていた状態から、客観的なデータにもとづく判断へと移行できる点が大きな変化です。

データ分析によるコストダウンと作業効率の向上

分析データをもとに現状を把握し、見直しを進めることで、次のようなコストダウンと効率化が図れます。

  • 材料の使用量を見直し、余剰材料を削減できる
  • 発注のタイミングや量、生産ラインの稼働率を適切に保ち、在庫を含めた総合的な生産管理ができる
  • 作業プロセス全体を見直し、人がやるべき作業と自動化できる作業を明確にできる

品質向上(不良品発生率の低減と製品の安定化)

人や機械の作業内容をデータとして収集することで、ミスやトラブルの発生を把握できるようになります。不良品の発生率を可視化することも可能です。

こうした品質にかかわるデータを分析すれば、保守点検の頻度の見直しや、作業条件の再確認、製造プロセスの改善を進められます。これらの工程が改善されれば、製品の品質が安定し、不良品の発生率も下げられるでしょう。

従業員の作業軽減と技術継承

人材不足は製造業においても深刻な課題です。安定した高品質の製品を生み出すには、人にしかできないコアな業務に時間を割けるよう、作業の効率化を図る必要があります。

工業機械や工場全体をIoT化して製造工程を自動化し、少人数で管理・運用できるようになれば、新製品の開発や顧客対応へもリソースを割けるようになります。

また、熟練技術者の動きをデータで把握できれば、その技術をデータ化・分析し、後継者へのノウハウ継承がしやすくなります。工業ロボットに学習させて技術を標準化していくことも可能です。

そのほか、生産ラインの構築期間が短縮され、生産量の増減など状況に応じた対応も迅速になります。製品の仕様変更の際も、部品データの連携や開発データの一元管理によってすばやく対応できます。

つまり、人材不足の時代にあって、製品の品質を高めながら多様化するニーズにも迅速に応えられる環境をつくれる点が、スマートファクトリーのメリットだといえるでしょう。

スマートファクトリーの効果一覧

効果の種類 具体的な内容 得られるメリット
データの見える化 設備の稼働状況や生産実績などのデータを収集・蓄積し、数値やグラフで可視化する。 勘や経験に頼らず、客観的なデータにもとづいて現状を把握・判断できる。
コストダウンと作業効率の向上 材料の使用量や発注量、生産ラインの稼働率を分析し、作業プロセス全体を見直す。 余剰材料や在庫を削減し、人がやるべき作業と自動化できる作業を切り分けて効率化できる。
品質向上 人や機械の作業内容、不良品の発生率をデータとして収集・分析する。 ミスやトラブルの原因を特定し、不良品の発生率を下げて製品の品質を安定させられる。
人材活用と技術継承 製造工程を自動化し、熟練技術者の動きをデータ化・分析する。 少人数で管理・運用でき、コア業務にリソースを割けるうえ、ノウハウの継承や技術の標準化が進む。

工場へのIoT導入の進め方

工場へのIoT導入は、「目的の明確化 → スモールスタート → データ基盤の構築 → 分析と改善 → 全体展開」という5つのステップで進めるのが基本です。いきなり全社展開を目指すのではなく、小さく始めて成果を確かめながら広げることが成功への近道です。

工場のデジタル化アプローチについては、次の記事もあわせてご参照ください。

工場DXの進め方|課題・メリット・最新トレンドと成功事例を解説

ステップ1:目的と課題を明確にする

最初にやるべきは、「何を解決したいのか」をはっきりさせることです。不良品を減らしたいのか、設備の故障を防ぎたいのか、人手を減らしたいのか。目的があいまいなまま機器を導入すると、データは集まっても活用されないまま終わってしまいます。

ステップ2:小さな範囲から始める(スモールスタート)

次に、特定の生産ラインや設備に絞って、小さく試すことをおすすめします。一部の機械にセンサーを取り付け、データ収集と分析を試すことで、効果と課題を低リスクで見きわめられます。この段階では、短期間で改善効果が出やすいテーマを選び、「どの指標がどれくらい良くなったか」を確認できるようにしておくと、その後の全体展開もしやすくなります。

ステップ3:データを集める基盤を整える

集めたデータを活用するには、データを蓄積・連携する基盤が必要です。センサーで取得したデータをどこに保存し、どう見える化するかを設計します。この段階で、既存システムとの連携も検討します。

ステップ4:データを分析して改善につなげる

データは集めるだけでは意味がありません。分析して改善のアクションにつなげてこそ価値が生まれます。可視化したデータから課題を見つけ、作業プロセスや保守計画を見直していきます。

可視化したデータから課題を見つけ、作業プロセスや保守計画を見直していきます。特に、不良率や稼働率、リードタイムなどの指標を継続的に追うことで、改善効果を定量的に確認できます。

ステップ5:成果を確認して全体へ広げる

小さな範囲で成果が確認できたら、ほかのラインや工場全体へと段階的に展開します。ステップ1〜4で得た知見を生かすことで、横展開がスムーズになります。

製造業におけるIoT活用例

製造業でのIoT活用は、設備の予知保全、稼働状況の遠隔監視、品質検査の自動化といった用途で広がっています。いずれも、データ収集と分析によって現場の課題を解決している点が共通しています。

予知保全による設備停止リスクの低減

設備にセンサーを取り付け、振動や温度のデータを常時収集することで、故障の予兆を早期に検知できます。突然の設備停止を防ぎ、計画的なメンテナンスへ切り替えることで、生産ラインの停止リスクを下げられます。

NTTデータ関西では、製造現場での品質管理や設備保全でAIを活用して自動的に異音を検知し、予知保全に役立つ「IoTone」を提供しています。

▼IoToneの詳細について

異音検知ソリューション IoTone/アイオートーン | NTTデータ関西

稼働状況の遠隔監視

複数の設備や拠点の稼働状況を、離れた場所からリアルタイムで把握できます。どの設備がどれだけ動いているかを一元的に見える化することで、稼働率の改善や無駄の発見につながります。

品質検査の自動化

カメラやセンサーで製品の状態をデータ化し、AIと組み合わせることで、検査工程を自動化・標準化できます。人による検査のばらつきを減らし、品質の安定と検査担当者の負担軽減を同時に実現します。

IoTの導入でよくある課題と対策

IoTの導入でよくある課題としては、目的のあいまいさ、PoC(実証実験)止まり、現場の抵抗、人材不足、セキュリティなどが挙げられます。起こりうる課題をあらかじめ想定して、対策をセットで準備しておくことでつまずきを防げます。

目的があいまいなまま進めてしまう

「とりあえずデータを集める」だけでは成果につながりません。導入前に解決したい課題と目標を具体化することが対策になります。前述の5ステップのステップ1を丁寧に行うことが重要です。

集めたデータを在庫の最適化や歩留まり改善といった成果につなげるには、分析から現場定着までを見通す進め方が有効です。NTTデータ関西のデータ分析・活用ソリューション」は、その道筋づくりを戦略立案から運用まで一貫して支援します。

PoC(実証実験)で止まってしまう

小さく試したものの、その先の本格展開に進めないケースは少なくありません。最初から「成果が出たら横展開する」前提で計画を立てることで、PoC止まりを避けられます。

現場の理解や協力が得られない

新しい仕組みは、現場の負担増と受け取られることがあります。導入の目的とメリットを現場と共有し、小さな成功体験を積み重ねることで、協力を得やすくなります。

デジタル人材が不足している

データの活用や仕組みの構築を担う人材が社内にいない場合もあります。社内人材の育成と並行して、外部の専門家やパートナーの支援を活用することが現実的な解決策です。

DX推進で求められる人材については、次の記事もご参照ください。

DX推進をリードするDX人材に求められる能力とは

セキュリティへの不安がある

設備をネットワークにつなぐと、セキュリティリスクへの配慮が必要になります。通信の暗号化やアクセス管理など、導入段階からセキュリティ対策を組み込むことが欠かせません。

IoTの導入にかかるコストと費用感の考え方

IoT導入のコストは、初期費用(機器、センサー、システム構築)と運用費用(通信費、保守、分析)に分けて考えるのが基本です。全社一括ではなくスモールスタートで始めれば、初期投資を抑えながら効果を確かめられます。

費用を検討する際は、金額だけでなく、「投資に対してどれだけの効果(コスト削減や品質向上)が見込めるか」という費用対効果の視点が重要です。データ収集だけが目的化すると、投資が回収できないまま終わるおそれがあります。

まずは小さな範囲で導入し、効果を数値で確認してから投資を広げる。この進め方が、コスト面のリスクを抑える現実的なアプローチです。

IoT導入のコスト構成

費用の種類 具体例 検討のポイント
初期費用(導入時)
  • センサー・通信機器などのハードウェア
  • データ収集・分析システムの構築費
  • 既存設備との連携や設置の工事費
  • 全設備を一度にそろえず、対象を絞ったスモールスタートで初期投資を抑える。
  • 将来の拡張を見据えた構成にしておく。
運用費用(導入後)
  • 通信費
  • システムの保守・更新費
  • データ分析やクラウド利用の費用
  • 運用を担う人材のコスト
  • 導入後も継続的にかかる費用として見込んでおく。
  • 集めたデータを活用して初めて効果が出るため、分析にかかる手間や体制も含めて考える。

まとめ:IoTを活用して、製造業のDXを進めよう

労働人口が減少するなか、製造業においても人材不足は切実な課題です。なかでも技術者の不足は深刻で、その対策として生産性や作業効率の向上、人的リソースの有効活用が進められています。製造業のDXを積極的に進めるうえで、工場のIoT活用は欠かせません。

多様なデータを自動で収集し、現状を把握できるようになれば、改善すべき箇所とその効果が見えてきます。ただし、データを集めるだけでなく、それをどう使うかという経営的な視点を持った分析も必要です。

さまざまなソリューションとの連携も視野に入れながら、まずは工場のIoTを実現し、競争力を高めるためのDXを進めていきましょう。とはいえ、「どこから手をつければよいかわからない」という声も多いはずです。そうしたときは、システム導入の前段階にあたる構想づくりから始めると、回り道を避けられます。

NTTデータ関西では、受注生産型製造業に特化したシステム導入の前段階にあたる企画や要件定義工程を体系化したサービス「IT構想策定サービス」を提供しています。システム導入に向けた目標設定、次期システムに対する期待効果など、自社のIT構想を迅速かつ明確にまとめることが可能になります。

IT構想策定サービス | BIZXIM(ビズエクシム) | NTTデータ関西

よくある質問(FAQ)

Q1. DXとIoTの違いは何ですか?

DXは「デジタル技術で価値や競争力を生み出す変革そのもの」、IoTは「そのために必要なデータを集めて活用するための仕組み(手段)」です。IoTはDXを構成する要素のひとつであり、両者は対立するものではなく、目的と手段の関係にあります。

Q2. 中小企業でもIoTを導入できますか?

導入できます。全設備を一度にIoT化する必要はなく、特定の設備やラインから小さく始められます。スモールスタートなら初期投資を抑えられるため、規模にかかわらず取り組みやすい方法です。

Q3. IoTを導入すれば、すぐにDXが実現しますか?

IoTの導入だけでDXが完成するわけではありません。IoTで集めたデータを分析し、業務やプロセスの改善につなげて初めて、DXとしての成果が生まれます。データの活用と組織の変革をセットで進めることが重要です。

Q4. 工場のIoT化は何から始めればよいですか?

まずは「解決したい課題の明確化」から始めるのがおすすめです。目的を定めたうえで、特定の設備にセンサーを取り付けて小さく試し、効果を確認しながら範囲を広げていく進め方が、失敗を避けるうえで効果的です。