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異常気象の増加で道路管理システムに求められるものはより高度に。安全安心な道路環境を提供するための責任感とさらなる可能性への挑戦

 |  インタビュー

大型の台風や豪雨、大雪などが予報されると、まずコンピューターやスマートフォンで道路交通や交通機関などの情報収集をするという方は多いのではないでしょうか。NTTデータ関西はその情報源、各地の道路に設置された気象観測センサーや積雪センサーから情報を収集し、自治体や一般市民へ向けて提供する「道路管理システム」を、関西圏を中心とした自治体様へ提供しています。

今回は、NTTデータ関西 第二公共事業部 第一ソリューション担当で道路総合ビジネスを担う藤原と廣尾に、NTTデータ関西の社会インフラへの取り組みについてインタビューしました。人々の生活に欠かせない「道路」を見守るシステムに対する思いや目指す先についての熱い思いを語ってもらいました。

インタビューに答えた方

株式会社NTTデータ関西 金融事業部 事業部長

藤原 浩司 (ふじわら こうじ)

株式会社NTTデータ関西 第二公共事業部 第一ソリューション担当部長
道路総合ビジネスのビジネスリーダーとして、お客様である関西圏の自治体様のご要望を叶える、または潜在的な課題を解決する方法の検討・提案から、実際のシステム開発・維持管理までを統括している。

株式会社NTTデータ関西 金融事業部 事業部長

廣尾 昌之 (ひろお まさゆき)

株式会社NTTデータ関西 第二公共事業部 第一ソリューション担当課長
道路総合ビジネスの営業マネージャーとしてチームを率い、道路管理システムの維持管理や機能拡張、新たなソリューション導入などの施策を提案している。

期待されるのは「いかに早く把握できるか」、「いかに正確に把握できるか」、「いかに早く伝えられるか」

道路総合ビジネスの業務や、お二人の担当について教えてください。

藤原:「道路に関わる全ての人に対し、先進的なIT技術を駆使し、快適な道路利用の環境を提供する」というビジョンを掲げ、道路管理業務を担っている自治体様を主なお客さまとして、「道路管理のシステム」を提供しています。 私たちが提供している「道路管理システム」とは、主に気象観測センサーの値を収集するものです。このセンサーの値に基づいて、自治体の職員様が意思決定をしたり、道路を利用する一般市民へ向けて情報発信をしたりしています。

例えば、山間部の道路に設置された積雪センサーが積雪を検知すると、自治体の職員様は除雪の指示を出し、除雪を進めます。また、台風などで大雨が降った際は、土砂災害の危険がある道路区間に設けられた雨量センサーの値に基づき、自治体様が通行規制をかけて一般市民の方々が被害に遭わないように対策を行います。

こうした例からは里山のようなエリアが連想されがちですが、都心部のアンダーパスでも大雨で冠水してしまった際は、自治体様が通行規制をかけ安全を確保しています。センサーの値だけでなく目視確認を必要とする場所では、カメラも併設し道路の状況を確認しているのです。

その中で私は、お客様からヒアリングした情報を基に、メンバーと実現方法を検討し、提供するシステムを提案します。採用された後は、システム開発を開始し、お客様の要望を実現するにいたるまでを取りまとめています。既存のお客様に対しては、保守業務を通じて、お客様の気づいていない潜在的な課題を当社から提案し、課題解決につなげることもあります。

廣尾:私はその営業担当として、お客さまの課題となっていること、取り組みたいと考えていることなどを伺い、実現方法を検討し、提案を通じてシステムの提供という形で実現しています。

昨今の社会インフラ、特に道路利用環境においてはどのようなことが特に注目されているのでしょうか。

廣尾:昨今は、異常気象に伴う道路管理の迅速性、的確性が一層求められるようになってきている印象があります。その背景として、台風の大型化、短時間における降雨量の増加、除雪が追い付かないような豪雪など、これまでの想定を超えるような、「気象災害」といっていいほどのケースが増えてきていることがあります。道路管理システムにも、その状況を「いかに早く把握できるか」、「いかに正確に把握できるか」、「いかに早く伝えられるか」といった働きが期待されているのを感じます。

またインターネットの定着、スマートフォンの普及などから、一般市民の方々も、より頻繁に細かく情報収集するようになっています。システム側でも、発信する情報の量や質を高めていくような機能強化を毎年実施しているところです。情報の取りまとめ役・発信者である自治体様も、より正確に情報収集できる新たなセンサーの仕組みやサービスの検討、圏域をまたがった、広域の情報連携、共有の仕組みつくりなどを日々検討されていますので、私たちもこうしたご要望に対応するべく動いています。

例えば「○○県の道路情報を提供します」といっても、実際の道路は隣の府県までつながっていますし、人々も移動します。「県境から先はお隣なので、ウチは知りません」というわけにはいきませんよね。ですから、情報連携して「この道路の先は今どんな状況になっているのか」まで把握する必要があると考えています。最近はこうした「双方向に圏域をまたがる情報提供」も行っています。

作業着にヘルメットで現場へ出向くのは、責任を持って「安全安心」を提供するため

NTTデータ関西の道路支援事業の歴史について、聞かせてください。

藤原:平成に入って間もなくですからもう30年以上になりますが、その頃最初のユーザー様として関西の自治体様とのお付き合いが始まったと記憶しています。当初は一部の道の駅を対象として情報提供システムを構築、続いて「雪道情報システム」という、積雪監視、除雪積算(除雪指示内容に応じた作業費用の算出・集計)などを実施する仕組みを構築しました。

このシステムを、まずは各種気象観測センサーの値を自動で取得し、道路管理業務の意思決定を実施する「道路防災システム」へ拡張し、さらには監視カメラや冠水監視、道路に散水して雪を溶かす「消雪ポンプ」制御と、システムへの接続機器も拡張、「道路総合システム」と呼ばれるようになりました。また現在は、長距離のトンネルなどで「監視カメラ映像を画像解析して異常事象を検知する」仕組みも導入されています。これは例えば渋滞や落下物、自転車の進入などといった事象を検知するものですね。これを契機に、近隣の府県様へも道路管理システムを展開していくことになったのです。

そういった中で、現在はどのような領域に注力しているのですか。

藤原:引き続き道路管理システムに取り組みつつ、これをさらに機能強化するような形で、「AI画像解析」や「気象解析」といった取り組みも進めています。 先の通り「画像解析で異常事象を検知する」実績はあるのですが、「AI画像解析」はさらに解析精度が高く、また多様な検知ニーズに応えられる可能性を持っていますので、お客様への提案を始めているところです。「気象解析」については、これまではセンサーからの値のみで運用してきたものを、気象庁の解析データの値も組み合わせて複合的に現地の事象を解析し、「将来の事象発生を予測」するところまでできる可能性が見えており、こちらも実証提案から取り組んでいます。

道路担当ならではの特徴的な仕事の仕方などもあるのでしょうか?

藤原:実は、センサーを設置する時は私達も現地に行くんです。この仕事には「現地センサーの設置やカメラの点検といった維持管理」といった、いわゆる現場工事も含まれています。

今はスーツ姿ですが、オフィスで作業着に着替えてヘルメットを携え、車には脚立を積んで現場へ出かける……といった状況があるのは、NTTデータ関西の中でも道路総合担当だけではないでしょうか。単に視察するというわけではなく、責任ある立場としてセンサーの設置現場で支柱を立てる、センサーやカメラを設置する、制御板を操作して現地機器が作動するか確認するというような役割もあります。

現場に行ってセンサーの設置や点検をするところまで手掛けているのですね?

藤原:はい。実際に自分たちでセンサーを設置することで、どこでどういう仕組みになっているのかを目にすることができますし、お客様との繋がりも広がっていきます。ですからそこは、業者さんにお任せするのではなく、私達が主管として責任を持ってやるところに意義があると考えています。私達の安全安心の前提の基になっているということは、社内でも常に話をしています。

これまでに、印象に残っているお客様との共創の思い出はありますか?

廣尾:現場ありきですから、スケジュール遅延の原因が「降雨・降雪のため」なんてことも珍しくありません。新たに開通する自動車専用道路で「トンネルの監視カメラ映像に対して画像解析処理を行い、異常事象を検知する」仕組みを納入した際の話があります。トンネル掘削工事、道路舗装工事といった、道路を作る事業のひとつとして私たちも開発作業を行いました。ただ、道路の開通時期は決められている一方で、工事は遅れがちになっていき、その後に控えていた私たちの開発作業、設置調整作業の時間が削られることに……最終的にかなり厳しいスケジュールで導入することになり、なんとか間に合わせたという恰好でした。

ただ、道路開通式の席上で「悲願の道路開通」という言葉を耳にした瞬間、その一翼を担えたことに誇りを感じました。万が一のトラブルに備えて開発メンバーも裏に控えていましたが、その手を煩わせることもなく、無事運用開始できてホッとした記憶がありますね。

責任重大な仕事ですが、やり遂げた時の達成感は何にも代えがたいものがありそうですね?

廣尾:そうですね。現場を回って仕事をしていると、システムを開発して提供するだけではなく、「この道路でこんなことができたらいいな」といった潜在的なニーズを肌で感じることができる。そういったところでインフラを支えている使命感ややりがいを感じられる仕事ではありますね。

藤原:自分たちで開発したものが、最終的に暮らしの中で目に見える形になるので、やりがいを感じられるのだと思います。そういえば、今年部署に配属されたメンバーも、帰省する際に見かけたカメラやセンサーの写真を何枚も撮って「こんな所にもありました」と言って見せてくれましたね(笑)。

異常気象、人手不足……次々と降りかかる課題に長年蓄えたノウハウを活かしたい

NTTデータ関西のインフラ支援事業における強みはどこにあると感じていますか。

藤原:長年のシステム維持管理を通じて「システムの機能についての理解はもとより、お客様である自治体様の業務についても理解している」点だと考えています。

組織の特性上、担当者様は数年ごとに異動されるのが一般的ですが、私たちは一貫したメンバーでシステムの維持管理に携わらせていただいています。それだけに、新たに赴任された担当者様以上に業務内容を把握している部分も当然あります。このノウハウを活かして、担当者様がまだ認知できていない潜在的な課題を仮説として抽出し、提案していく。そうすることで道路管理システムを成長させ、道路管理業務をより効率的、機能的に実施いただけるように努めています。

例えば最近の問題のひとつには、「自動検知のカメラやセンサー系の老朽化」があります。AIを活用できる最新型に差し替えていけば、今よりも高い精度で安全管理をしていただける。さらに年数が経ってもシステムをアップデートすれば「新しい」状態が保たれるようになります。これは来年度早々にも、専門メーカーとタッグを組んで取り組む見込みになっています。

今後は行政や道路管理のどのような課題に着目し、提案していきたいと考えていますか。

廣尾:異常気象が年々増えていく中、気象災害も今後益々大型化していくことが想定されています。そこで今後は、道路管理の範囲にとどまらず、以前D×KNOWLEDGEでもインタビューを実施した自治体向け総合防災情報システム「EYE-BOUSAI」のような防災システムとの連携も増えてくると考えています。また、災害が発生した際は「現地がどのようになっているか実態を見て判断する」という、いわゆる「目」の機能が求められますので、「ドローンを用いてカメラの映像から現地状況を把握し、防災システムへ連携する」といった仕組みも検討を始めていますね。

藤原:将来的な少子高齢化の流れで、多くの自治体様は「職員数が減っていく」ことに危機感をお持ちです。しかし、人がいないからと業務の水準を下げるわけにもいきません。この状況を打破するために、今後はより効率的で生産性の高いシステムが求められると考えています。業務面だけでなく、大掛かりな機器を設置せずに済むような仕組みにも取り組んでいって、予算面の課題も解決したいですね。

▼総合防災情報システム「EYE-BOUSAI」の詳細について
総合防災情報システム EYE-BOUSAI | ソリューション | 株式会社NTTデータ関西

「お客様の業務に詳しいのが強み」といっても、経験で前例をなぞっていくのではなく、「蓄えたノウハウをもとに次々と新しいご提案に取り組んでいく」ということなのですね。これからは、道路で監視カメラを見るたびに「どんなシステムにつながっているのだろう」と想像を巡らせることになりそうです。