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クラウド構築の基本ステップは?プロセスや注意点を紹介

 |  クラウド

クラウドの活用は企業のIT戦略の要となっています。従来のオンプレミス環境と比べ、クラウドはビジネスの俊敏性と柔軟性を大幅に向上させ、 コスト最適化とリソースの効率的活用 を実現します。しかし、適切なクラウド構築には綿密な計画と戦略が欠かせません。本記事では、クラウドサービスの現状や、企業がクラウド構築で成功するための具体的なステップと注意点を解説します。

企業のクラウドサービスの利用状況

近年、企業のクラウドサービス利用が一般化しています。総務省が実施した令和5年通信利用動向調査によると、クラウドサービスを活用している企業の割合は着実に増加し、現在では8割近くに達しています。

クラウドサービスの利用目的は多岐にわたりますが、特に「ファイル保管・データ共有」、「社内情報共有・ポータル」、「電子メール」といった基本的な業務ツールとしての利用が目立ち、これらの用途では5割を超える企業が活用しています。

企業がクラウドサービスを選択する主な理由として、「 場所、機器を選ばずに利用できるから 」という柔軟性が挙げられます。この理由は昨年と比べてやや減少傾向にあるものの、依然として約5割の企業が重視しています。さらに、 利用している企業の約9割が「非常に効果があった」または「ある程度効果があった」と回答 しており、クラウドサービスが期待通りの成果をもたらしていることがわかります。これは、リモートワークの普及や働き方の多様化に対応する上で、クラウドサービスが現代のビジネス環境において不可欠なツールとなっています。

多様な用途と高い効果実感は、クラウドサービスが企業の業務効率化やコスト削減、さらにはビジネスモデルの革新にまで貢献していることを示しています。

自社に適したクラウド構築を行う際のポイント

クラウド導入を検討する企業にとって、自社に最適な環境を構築することは重要な課題です。効果的なクラウド構築のための重要なポイントをご紹介します。

自社のニーズと要件、導入目的の明確化

クラウド構築の成功には、 自社のニーズと要件、そして導入目的を明確にすることが欠かせません 。目的が不明確なまま導入を進めると、投資に見合った効果が得られない、あるいは予期せぬ問題に直面するリスクが高まります。例えば、ITインフラの運用コストを抑えたい企業では、クラウドの従量課金制を活用してコスト最適化を図ることが主な目的となるでしょう。一方、リモートワークの推進や部門間の連携強化を目指す企業では、クラウドベースの協働ツールの導入による業務効率化が中心的な目標となる可能性があります。また、システムダウンタイムの最小化を重視する企業では、クラウドの高可用性機能を利用した安定的なシステム運用が重要な目的となるかもしれません。

セキュリティ要件

クラウドを利用すると、そのデータは、クラウド事業者の管理する施設で保管されることになります。このため、データの保護方法について慎重に検討する必要があります。取り扱うデータの種類や重要度に応じて、適切な保護対策を選ぶことが大切です。例えば、顧客の個人情報や企業の機密情報を扱う場合は、より厳重な対策が必要となります。具体的な対策としては、重要な情報を第三者に読み取られないよう特殊な方法で判読困難にするデータの暗号化や、データを閲覧や編集できる人を制限するアクセス制御があります。また、パスワードだけでなく、指紋認証やスマートフォンへの確認メッセージなど、複数の方法を組み合わせてユーザーを確認する多要素認証(パスワードに加え、指紋認証や確認コードを使用する認証方法)も有効な対策の一つです。自社のデータの重要性を考慮し、必要に応じて追加の対策を講じることが重要です。

リソースに応じて拡張

ビジネスは時流によって変動します。例えば、オンラインショップの季節的な売上増加や、スタートアップ企業の急成長などがあります。クラウドサービスの大きな利点は、このような変化に応じてITリソースを柔軟に調整できることです。この拡張性は、コスト最適化と事業成長の両立を可能にします。需要が低い時期は最小限の費用で運用し、繁忙期には必要な分だけリソースを追加できるため、無駄な投資を避けられます。同時に、事業拡大のタイミングで迅速にシステム規模を拡大できるため、成長の機会を逃さず捉えることができるでしょう。

既存システムの連携

多くの企業は、長年にわたって独自のシステムやアプリケーションを開発・運用してきました。これらの資産をすべて捨てて新しいクラウド環境に移行することは、コストやリスクの観点から現実的ではありません。そのため、 既存システムとクラウドサービスをいかにシームレスに連携させるかが課題 となります。例えば、基幹システムはオンプレミスで維持しつつ、新規開発や分析系のワークロードをクラウドで実行するハイブリッドクラウド戦略を採用するのも一つの方法です。

クラウド導入のメリットや詳細については、次の記事をご覧ください。

クラウド導入のメリット・デメリットとは?選び方のポイントも解説

企業におけるクラウド構築のステップ

クラウド構築プロセスの各ステップでの適切な決定は、プロジェクト全体を円滑に進め、最終的な成功につながります。クラウド構築の主なステップは、以下のとおりです。

全体ステップ

  1. ニーズの分析と実装モデルの選択
    具体的にどのような業務をクラウドで行いたいのか、どのような課題を解決したいのかを明確にします。
  2. ネットワーク構成図の作成
    クラウドシステムがどのように組み立てられ、どのように機能するかの構成図を作成します。システムの全体像を把握し、効率的な設計と運用を行うために欠かせません。
  3. 必要なリソースの確認
    選択したクラウドの種類によって、必要なリソースや自社で管理する範囲が異なるため、現在使用中のリソースを洗い出し、クラウド環境で必要となるリソースを特定します。
  4. 実装モデル別のクラウド環境の構築と移行
    選択したクラウドの種類に応じて、確認すべき事項や実施すべき作業が異なります。データの暗号化やアクセス制御の設定などを見極めましょう。
  5. 運用とモニタリング
    構築したクラウド環境の運用を開始し、パフォーマンスやセキュリティをモニタリングします。実装モデルによって、運用の責任範囲が異なる点に注意が必要です。

実装モデル別のアプローチや注意点

クラウドの種類によって構築ステップは異なります。構築のプロセスのなかで、それぞれどのような点に注意すべきかを紹介します。

クラウドの種類の詳細については、次の記事をご覧ください。

クラウド運用とは?DXに欠かせない基礎知識やメリットを紹介

パブリッククラウドの場合

  • 計画段階 :自社のニーズと要件を分析し、適切なクラウドプロバイダーとサービスを選定します。コスト、スケーラビリティ、セキュリティ要件を考慮します。
  • 設計段階 :クラウド上のアーキテクチャ設計、ネットワーク構成、セキュリティ設計を行います。既存システムとの連携方法も検討します。
  • 構築段階 :選んだクラウドサービス上で、必要な部品を組み立てます。コンピューター(仮想マシン)、データを保存する場所(ストレージ)、それらをつなぐ道(ネットワーク)などを準備するプロセスです。セキュリティ設定も実施します。
  • 移行段階 :既存のシステムやデータをクラウド環境に移行します。必要に応じてアプリケーションの最適化も行います。
  • 運用・モニタリング段階 :クラウド環境の運用を開始し、パフォーマンス、セキュリティ、コストを継続的にモニタリングします。
  • 最適化段階 :利用状況やコストを分析し、必要に応じてリソースの調整や最適化を行います。新しいクラウドサービスの導入も検討します。

パブリッククラウド導入時の主な注意点は、 責任範囲の明確化と適切なセキュリティ対策の実施 です。また、コストと性能の継続的な監視・最適化が重要です。データ保護とコンプライアンスの確保、ベンダーロックインの回避による柔軟性も検討しましょう。

プライベートクラウドの場合

  • 計画段階 :自社のニーズに基づいてハードウェアとソフトウェアを選定します。将来の拡張性も考慮しましょう。
  • 設計段階 :ハードウェア構成、ネットワーク設計、仮想化環境の設計を行います。セキュリティアーキテクチャも含めて、全体的なシステム設計を行います。
  • 構築段階 :ハードウェアの調達と設置、仮想化ソフトウェアの導入、ネットワーク構成の実装を行います。この段階で基本的なセキュリティ対策も実施します。
  • 移行段階 :既存のシステムやデータをプライベートクラウド環境に移行します。段階的な移行計画を立て、影響を最小限に抑えながら実行します。
  • 運用・モニタリング段階 :クラウド環境の運用を開始し、パフォーマンスやセキュリティを継続的にモニタリングします。問題発生時の対応体制も整えます。
  • 最適化段階 :利用状況や性能データを分析し、必要に応じてリソースの最適化や機能の追加を行います。セキュリティ対策も定期的に見直し、強化します。

プライベートクラウドでは、インフラストラクチャからアプリケーションまで全ての層の管理を自社で行う必要があります。そのため、 専門的な知識を持つIT人材の確保と、24時間365日の運用体制の整備が重要 です。初期投資とランニングコストが比較的高くなる点も考慮が必要です。

ハイブリッドクラウドの場合

  • 計画段階 :自社のニーズと要件を分析し、パブリッククラウドとプライベートクラウドの併用方針を決定します。どのワークロードやデータをどちらの環境に配置するか、慎重に検討します。
  • 設計段階 :パブリッククラウドとプライベートクラウドの連携方法、データ同期の仕組み、ネットワーク接続方式を設計します。両環境間のセキュアな通信経路の確保も重要です。
  • 構築段階 :パブリッククラウド環境の構築、プライベートクラウドのインフラ整備、両環境を接続するネットワーク(専用線やVPNなど)の構築を行います。データ同期メカニズムも実装します。
  • 移行段階 :既存のシステムやデータを、決定した方針に基づいてパブリックまたはプライベートクラウド環境に移行します。アプリケーションの分散配置も行います。
  • 運用・モニタリング段階 :両環境を統合的に管理・監視する体制を整えます。パフォーマンス、セキュリティ、コストの観点から継続的にモニタリングを行います。
  • 最適化段階 :利用状況やコストを分析し、必要に応じてワークロードの再配置や環境間のリソース最適化を行います。セキュリティポリシーの一貫性も定期的に見直します。

ハイブリッドクラウドでは、異なる特性を持つ環境を統合的に管理する必要があります。そのため、 両環境の特性を深く理解し、それぞれの利点を最大限に活かせる人材が必要 です。また、環境間のデータ同期や整合性の確保、統一されたセキュリティポリシーの適用が課題となります。コスト管理も複雑になるため、綿密な監視と分析が求められます。

クラウド構築をスムーズに行うには綿密な計画が重要

企業のクラウド利用は一般化しており、その効果の高さも評価されています。 クラウドの導入は単なるIT基盤の変更ではなく、ビジネス戦略に直結する重要な取り組み です。クラウド構築を成功させるためには、自社のニーズと要件を明確に理解し、それに基づいた多角的な計画を立てましょう。具体的には、セキュリティ要件の評価、将来の成長を見据えた拡張性の確保、既存システムとの効果的な連携などを慎重に検討する必要があります。

これらの要素を総合的に考慮し、綿密な計画を立てることで、クラウドの利点を最大限に活かしつつ、潜在的なリスクを最小化することができます。

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