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学費納付書をペーパーレス化。
日本初となる学生ポータルサイトと
ネットバンキングのシームレスな連携も導入し、
学費管理業務を効率化

マグロの完全養殖やネット出願など、時代を先取る取り組みで受験生や研究者のみならず、社会のさまざまな分野から熱い視線を集めている近畿大学。2019年3月には9年連続で志願者数日本一を達成した関西有数の総合大学である同大学は、教育・研究活動の充実と並行して、14学部約34,000人の学生という巨大組織を支える事務業務の革新にも取り組んでいます。その一つとして2019年4月、NTTデータ関西が開発した「学費納付書ペーパーレス化ソリューション」が導入されました。
※本文表記中の近畿大学様の部署名や担当者様は、取材当時(2019年)の名称であり、変更になっている場合がございます。

課題

3万人超えの学生へ年2回、学費納付書を書面で郵送。膨大な手間とコストが必要だった

振込時に情報を手入力するため、一定の割合でミスが起こることは避けられなかった

効果

  • 学費納付書をペーパーレス化し、ネット経由で配布。多額のコストを削減する
    書面による納付書の郵送を廃止。新たに、学生や保護者が個別にアクセスできる専用サイトにPDFをアップロードした。これにより、多額の印刷コストや郵送コストが不要に。納付書を紛失する心配もなくなった。
  • ネットバンキングまで一気通貫のシステムにより、入力作業が不要になり、ミスがなくなった
    学生や保護者が専用サイトにログインすると、そこからネットバンキングまでがシームレスに連携。学籍番号や氏名、学費などの情報が自動的に引き継がれていくので、振込時に入力作業が不要になった。日本初となるこのシステムにより、入力ミスをなくすことができた。
  • 「いつでも、どこでも、確実に」納付を実現。利便性を向上する
    学費納付書のペーパーレス化によって、書面の発送から到着までのタイムラグを解消。ネットバンキングと併せることで、「すぐに振り込みたい」「出先からでも振り込みたい」という要望を実現した。入金情報は銀行のシステムから学内のシステムを経由して専用サイトに通知されるため、「間違いなく入金できた」という安心につながっている。

導入以前の業務の状況は?

馬場氏

本学では前期と後期の年2回、新入生の場合は年1回、全学生に対して学費の納付書および案内文書を郵送しています。この業務では、書類の印刷、確認、封入、発送という作業が必要です。膨大な手間に加えて、多額のコストが必要でした。
納付書を受け取った学費負担者は、そこに記載された情報に基づいて振込を行います。このとき、学籍番号や氏名、学費など、いくつかの情報を入力する必要があります。ところが手作業で入力するので、どうしてもミスが発生してしまう。そこで私たち職員は、入金データを見ながらミスの発生箇所と原因を確認し、学費負担者等に連絡したうえでデータの修正を行ってきました。
入金データは、毎朝、銀行から前日の情報が届きます。これを本学の学費システムである「GAKUEN」に取り込み、学生ごとの情報と照らし合わせていました。

小畑氏

納付書を郵送すると、「まだ届かない」というお問い合わせが少なからず寄せられます。紛失してしまうケースもあります。また、引っ越しなどに伴って宛先不明になってしまうことも。となると、学生に窓口まで出向いてもらい、再発行などの手続きを行ってもらう必要がある。これも、郵送を行っている以上は避けては通れない手間でした。

渡部氏

これらの課題を解決し、学生や保護者には利便性の向上を、職員には業務効率の改善をというメリットを目指したのが今回のシステム導入プロジェクトです。具体的には、郵送を廃止してペーパーレス化し振込方法を多様化することと、突合処理の効率化を目標にしました。

システムやベンダー選定のポイントは?

馬場氏

学費納付書送付と入金にともなう課題は以前から顕在化していたので、銀行からも課題解決の提案をいただいていました。ただ、銀行が提案してくれるシステムは、どうしても自行のみの対応になってしまいます。本学学生の学費振込口座を一つの銀行に限定することは難しいですし、「近くにその銀行がないから振り込めない」という事態も起こりえます。そこが大きな壁になり、導入に至っていませんでした。

小畑氏

その点、NTTデータ関西が提案してくれたシステムは、特定の金融機関に限定されたものではありませんでした。もちろん、銀行のシステムと本学のシステムを連携させるためには個別に調整やシステムの設定が必要なのですが、その課題さえ解決すれば、学費負担者には多様な金融機関の利用を提示することができます。このことがNTTデータ関西を選定した大きなポイントになりました。

馬場氏

入力ミスをなくすには、本学のシステムと銀行のシステムがシームレスにつながる必要があります。具体的には、学生・保護者が「UNIPA」を経由し専用サイトにログインすれば、その段階で学籍番号や氏名、学費などが認識されます。そしてこの情報を、銀行のネットバンキングサイトにまで引き継いでいくのです。学費負担者からすれば、専用サイトにログイン以降はそれらを入力しなくても、情報に誤りがないかを確認しながら画面の指示通りに進んでいき、最後に「振り込む」のボタンを押すだけ、といったイメージです。

小畑氏

さらに、銀行のシステムは本学の学費システム「GAKUEN」とも連携しておく必要がある。そうすることで銀行が把握した入金情報がすぐに本学のシステムにも反映され、私たち自身も入金状況を認識することができます。

馬場氏

GAKUENはNTTデータ関西が導入し、保守しているシステムです。そのため、銀行のシステムへの連携にも対応してもらえました。このこともNTTデータ関西を選定するポイントになりました。

渡部氏

GAKUENの導入や保守を通して、NTTデータ関西は本学の業務やシステムのことをよく知ってくれていました。今回のプロジェクトも、具体化したのは2018年の4月ですが、以前からNTTデータ関西と「ここが課題ですよね」「こんなシステムがあればいいですよね」という話はしていました。そういった土台があったことも、ベンダー選定のポイントになりました。あと、運用開始時の感想になるのですが、NTTデータ関西は不具合に対して対応が非常に素早かったことが印象的でした。原因追及や要望に対しても、1日あれば何らかの対応をしてくれていたように思います。今回導入したシステムは5つの銀行に対応する仕様としました。システム連携に伴う調整が大変だったと思うのですが、非常によくやっていただけたと感じています。

システム導入後、どのような変化や効果が現れましたか?

小畑氏

納付書のペーパーレス化は、学生・保護者ごとにUNIPAを経由して専用サイトにPDFをアップロードするというかたちで実現しました。学費負担者はこれをダウンロードし、金融機関やATMに持っていって振込を行います。別の方法として専用サイトから銀行のネットバンキング振込画面に連携することを実現しました。ネットバンキングができる人は、ここで振込を行うことが可能です。郵便が届くまで待つことや、納付書を持っていなくてもネットで確認できることなどと相まって、「いつでも、どこでも納入」を実現できたと言えます。

馬場氏

ペーパーレス化による効果は、私たち学校側としては、先に述べた印刷や郵送のコスト削減が挙げられます。ネットバンキングでの振込を行ってもらった場合は、入力ミスが減少しました。
学費負担者側の効果としては、ネット上に常に納付書のPDFデータがアップされていますから、「まだ届かない」「紛失した」という心配がなくなりました。銀行のシステムと本学のシステムが連携したことにより、入金情報はすぐに学生ごとの専用サイトにも反映されるようになりました。つまり、入金したこと、金額に間違いがないことが、専用サイトで確認できるようになったのです。これは、ネットバンキングやATMなど無人で入金を行う際につきものの、「きちんと振り込めただろうか?」という不安解消に役立つ、非常に心強い仕組みだと感じています。

渡部氏

本システムは2019年4月、経営学部と短期大学部を対象にしてスタートしました。対象を絞ったのは、「まずはテスト的に」という意味もあります。幸いにも大きな問題などは発生せず、予定通り2019年の後期からは東大阪キャンパスに在籍する全学部・研究科の学生を対象に運用する方向で進めています。予定通りの導入を行えたことからも、今後見込んでいた効果が生まれてくると言えるでしょう。

今後の課題・目標は?

馬場氏

現在のシステムは、5つの銀行でネットバンキングに対応しています。ここにゆうちょ銀行を加えることが当面の大きな目標です。金融機関は地域ごとに偏りが避けられませんが、ゆうちょ銀行であれば、全国を幅広くカバーしています。そうなると、学費負担者の利便性はさらに高まると考えます。

渡部氏

利便性を評価いただく声がある一方で、「今までの通りの紙の納付書がほしい」という声が届いているのも事実です。また、ネットバンキングの利用率はまだまだ高いとは言えません。ただ、あらゆる分野におけるペーパーレス化と、金融機関の支店・ATMの削減、ネットバンキングへの移行は社会の変わらざる流れです。私たちとしては、ていねいな説明と不安・疑問への対応を行っていき、本システムの浸透に力を入れていきたいです。

馬場氏

ご存知のように本学は、出願のほとんどがネット経由、すなわちペーパーレスです。入学金もクレジットカードやネットバンキングでの支払いが可能。つまり、今回の取り組みが浸透しやすい土壌があると言えます。学費納入のペーパーレス化・ネットバンキング化を推し進めて、「入学から卒業までペーパーレスの近畿大学」を実現したいです。