ホーム  /  D×KNOWLEDGE  / 18の事例で探る、自治体のDX推進で何がどう変わる?

D×KNOWLEDGE

DX、IT戦略などITに関わる課題解決に
役立つコンテンツをお届け
~お客様とともに新しいしくみや
価値を創造する、オウンドメディア~

18の事例で探る、自治体のDX推進で何がどう変わる?

 |  DX

多くの企業がDX推進を加速させ、その効果を実感したり新しい価値観の創出に成功したりする企業があるなか、住民の生活を支える基盤である自治体にもDX推進の動きが出てきています。政府は、全国の自治体を新しいシステムに統一し、別の地域に転居した際にも同じサービスが受けられるよう、サービスや環境の標準化、システム化を進めています。この動きが自治体のDX推進に効果として表れています。今回は20の事例から自治体のDX推進で何がどう変わるのかをみていきましょう。

自治体が担う役割

地方自治体は議会で運営方針を決定、各種税金を管理し、まちづくりを推進したり、社会福祉を提供したり、教育環境を整えたり、インフラを整備したり、実にさまざまな役割を担っています。

地方自治体の取り組みには各自治体によって特徴があります。たとえば、子育て世代が多く暮らすまちでは、子育て支援に力を入れていたり、高齢化が進んだまちでは介護や医療体制の充実に力を入れていたりします。

また、地域の魅力を国内外に広く発信し観光客を呼び込んだり、地元産業の力をPRして企業誘致を進めたり、地元産業への補助金の提供など地域経済発展にも取り組んでいます。

こうした各自治体それぞれの特徴を考慮した取り組みは、そこに住む人々の生活を支えるためのものであり、その役割こそが地方自治体の存在意義だといえます。

現在、各企業がDXへの取り組みを進めていると同様に、各自治体でもDX推進を加速させています。それにより 組織力を高め、住民の利便性を向上させるとともに職員の働き方を改善し、より住みやすいまち、住みたくなるまちづくりを目指しています。

DXの取り組みについては以下の記事を参考にしてください。

自治体のDX実現で、誰一人取り残さない、人に優しいデジタル社会をめざす

DX(デジタルトランスフォーメーション)とは?定義と導入時の課題、成功へのポイントについて

DX推進・成功事例から実施のヒントを探る〜国内・海外成功事例22選〜

自治体のDX実現に向けて重点取組事項と期待できる変化

政府は自治体のDXを推進するために、2020年12月に総務省から「6つの重点取組事項」を明示しました。それぞれの項目をみておきましょう。

自治体の情報システムの標準化・共通化

現在、手作業で行われている基幹業務17について、2025年までに統一化されたシステムへと移行が進められています。

おもな基幹業務とされているのが「住民基本台帳」「選挙人名簿管理」「固定資産税」「個人住民税」「法人住民税」「軽自動車税」「国民健康保険」「国民年金」「障害者福祉」「後期高齢者医療」「介護保険」「児童手当」「生活保護」「健康管理」「就学」「児童扶養手当」「子ども・子育て支援」です。

統一化されたシステムを利用することで、自治体間のデータのやり取りも簡略化されます。たとえば、転居の際に住民が申請手続きをする必要もなくなります。また、職員にとっても転出先から転入する住民の情報を引き継ぐための手作業がなくなり、人的ミスの削減も期待できます。全国で情報システムが標準化・共通化されることで、住民にとっては転出・転入時の手続き事務が終わるまでの間、住民票の申請ができなかったり、他のサービスが受けられなかったりする不都合がなくなり、利便性が向上すると考えられます。

さらに、さまざまな行政サービスを利用する手続きがオンライン化され、窓口へ出向く必要がなくなります。

マイナンバーカードの普及促進

国民がマイナンバーカードを保有することで、多くのメリットを享受できる環境整備を進めています。

たとえば、住民票や印鑑登録証明などをコンビニエンスストアで交付できるサービスが利用できるようになります。また、確定申告や児童手当の申請、保育所の入所手続きなどがオンラインで行えるようになります。健康保険証としての利用も開始されました。さらに、運転免許証としての利用も予定されています。

自治体の行政手続のオンライン化

現状では、役所が業務を行っている平日の時間帯に、窓口に出向いて行う必要のある手続きがほとんどです。行政の手続きがオンライン化されることで、時間や場所にしばられず、必要な手続きをすることが可能になります。また、こうしたオンライン化によって、紙媒体による申請を手作業で対応していた職員の業務が効率化され、個別相談などの対応に時間を割けるようになります。

▼ 自治体サービスのオンライン化について

行政総合サービスモール「e-TUMO」~自治体のDXを推進 | ソリューション | 株式会社NTTデータ関西

自治体のAI・RPAの利用推進

AIやRPAシステムを導入することで、自治体の膨大な事務作業を自動化することが進められています。自治体においても人材不足は大きな課題です。限られた人的リソースを有効に活用し、それぞれの職員のパフォーマンスを最大限活かせる環境を整えるためにも、自動化できる業務はAIやRPAの導入を取り入れています。

テレワークの推進

多くの企業では働き方を見直し、優秀な人材がより自由に、快適に仕事を継続できる環境を整えるためにも、テレワークを導入しています。同様に自治体においても、情報システムの標準化・共通化や行政手続のオンライン化といった業務見直しを推進することで、テレワークを進める動きが加速しています。

こうした改革を実現することで、職員の人材不足改善に結びつけることも可能になります。

セキュリティ対策の徹底

自治体の担う業務は、住民一人ひとりの個人情報に関わります。こうした業務をデジタル化するには、万全のセキュリティ環境を構築する必要があります。

もし、サイバー攻撃の標的になってしまうと、住民の情報が漏洩するおそれもあります。こうした事態に陥らないように、職員のセキュリティに対する意識を高めるとともに、システムによるセキュリティ対策を構築することが不可欠です。

政府をあげてセキュリティポリシーガイドラインの改定を行い、自治体は情報セキュリティクラウドへの移行を支援するための予算を組んでいます。

このように全国のどの地域に居住しても同等で、さらにその地域の特徴に沿った最適な行政サービスを国民に届けられるようにすることが、自治体DX推進の大きな目的です。

具体的に取り組みを進めている自治体のインタビュー記事を以下に紹介していますので参考にしてください。

自治体のIT・DX課題解決に必要なのは「現場の声を反映した開発」

健康サポートのデジタル化から行政のデジタル化へ。「アスリブ®」の向こうに見えるもの

DXに取り組む自治体事例18

自治体が取り組んでいるDX事例をみていきましょう。

大阪府高槻市:電子申請サービスを導入し、住民の利便性と業務負担軽減を実現

行政サービスの事前予約や来訪時に住民の負担が大きかったこと、また、子育て関連部署における窓口対応業務が煩雑化して労働時間が長時間になる傾向があったことなどを解決するために、NTTデータ関西が提供するe-TUMOの利用を開始しました。2010年からの導入によって、イベントの参加申し込みや水道の開閉栓申し込み、住民アンケートなど、さまざまな業務で活用しています。さらに、子ども関連部署の利用として妊娠届の窓口予約や、オンラインによる子育て相談、保育施設に関する説明会参加予約などにも利用しています。電話での予約受入れをしていたときには、個別の対応に時間がかかりました。さらに電話での聞き間違いや記入間違いなどが発生していました。導入によってネット予約できる環境を構築したことで、ミスの軽減、業務の大幅な効率化が実現できました。

▼ 本事例の詳細について

高槻市様様 | 導入事例 | 株式会社NTTデータ関西

兵庫県神戸市:災害に関する多様な情報を一元管理。迅速な指示と行動を可能にする

海と山に囲まれた港町である神戸市は、風水害や土砂災害のリスクを抱えた街でもあります。しかし、従来の風水害監視や情報集約のやり方が煩雑化して、関係部署とリアルタイムでの情報共有が難しい状況でした。また、システム稼働後の運用コストや維持メンテナンスも課題になっていました。そこで、NTTデータ関西が提供するEYE-BOUSAIを導入し、迅速な情報収集と関係機関での共有の実現を目指しました。

▼ 本事例の詳細について

神戸市様 | 導入事例 | 株式会社NTTデータ関西

兵庫県三木市:健康サポートアプリを活用して、市民の健康づくりを支援

三木市では、18歳以上の三木市民を対象にNTTデータ関西が提供している健康サポートアプリ「アスリブ®」を活用し、住民がウォーキングなどの健康活動を行うとポイントを付与し、たまったポイントはマイナンバーカードで本人確認を行うと電子マネーに交換ができる仕組みを構築しています。

▼ 健康サポートアプリ「アスリブ®」の詳細について

アスリブ® | 住民へのインセンティブを簡単に!

茨城県大子町:見守りロボット活用で独居高齢者の生活サポート

大子町では、高齢者率が45%を超えており、独居高齢者の増加傾向が確認されていました。見守り支援が必要だと判断される高齢者が、必要とする形で支援を受けられる環境の構築は、人材不足のなか大きな課題でもありました。そこで行政が主体による見守りサービスの提供のみならず、多様な主体による見守りサービスの整備を検討し、ITを活用した見守りソリューションの実証を開始しました。実証をしたのは、テレビリモコンを活用した生活リズムモニタリング支援、見守りロボットを通じて、家族による見守り環境の充実と町からのお知らせの配信、遠隔みまもり看護用対話ロボットを用いた見守りです。今後も常に効果を検証し、新たなITソリューションの導入を検討しながら、見守り体制の強化を図っていくことを目指しています。

東京都府中市:高齢者同士をつなぎ、フレイル予防事業を推進

2006年に全国に先駆けて介護予防推進センターを設置した府中市では、2021年4月からスマートフォンを活用して高齢者同士がつながる、習慣化アプリによるフレイル予防事業を導入しました。

みんチャレHealthcareフレイル予防事業として取り組んだ事業の内容は、最大5人1組のチームを組んでウォーキングをして、チャットを通じて交流することで、フレイル予防に重要な運動と社会参加を楽しく続けてもらうものです。アプリを活用することでたまるコインを地域貢献活動に寄付することができ、高齢者の行動変容のモチベーションにもなると期待されます。利用者からは「歩きにいこうと思う」「初めて会った人たちでもアプリで和気あいあいと交流できている」「地域の情報を聞き、実際に聞いたところへ行ってみた」など、高齢者の交流や行動が活性化している様子がうかがえました。

神奈川県平塚市:プレミアム商品券を電子化することで事務経費・業務の改善へつなげる

2019年度は紙媒体で実施していたプレミアム商品券に係る事業を2020年度から電子化しました。この変更によって、事業規模がおよそ8億円であったものが約15億円に増えたにも関わらず、事務経費は1億4,800万円から5,400万円に縮減されました。

さらに電子化することで、消費者の消費行動をデータとして蓄積できるようになり、それを基礎とした分析も可能になりました。この分析結果は、施策を評価するうえでも重要なものであるとともに、企画立案にも有用な指標として活用できるものです。

経費を抑えながら、業務の効率化、行政サービスの充実へとつながる取り組みとなりました。

滋賀県米原市:防災情報伝達システムの導入で、運用維持コスト削減と住民の利便性向上を実現

従来、アナログ防災行政無線を活用していましたが、老朽化が進行していたことや、従来方式をデジタル化するにはかなりのコストが必要でした。また、合併前にそれぞれの地域で使用していた異なるシステムを統合し運用したことで、利便性も悪化していました。そこで、1万4,000世帯を網羅する防災システムを構築するために、NTTデータ関西が提供する減災コミュニケーションシステムを導入。スマートフォンアプリや携帯電話へメールなどで防災情報を送れる環境を構築しました。さらに、高齢者の見守りといった地域住民の生活を支えるサービスへの発展も視野に入れて取り組みを進めています。

▼ 本事例の詳細について

滋賀県米原市役所様 | 導入事例 | 株式会社NTTデータ関西

広島県呉市:学童保育関連の手続きのオンライン化。市の利便性を向上

自治体における多様な手続きをオンライン化することが、業務フローに多大な見直しを必要とすることになります。そのため、まずはスモールスタートで取り組むことにしました。学童保育の入会・変更・休会・退会といった基本的な手続き申請をすべてオンライン化しました。手続きはスマートフォンやパソコンからいつでもできるため、市民にとっての利便性も向上したと考えられます。また、申請を受け付ける各施設での受付事務は面接以外はゼロになり、施設側の負担も軽減されたといえます。

京都府:紙による出勤簿廃止でテレワークを促進

2020年以降の新型コロナウイルス感染症拡大に伴い、テレワークを実施するにあたり職員の勤務状況の管理が課題となりました。そこで、職員のパソコンへのログイン・ログアウト情報を既存システムへ連携させて、出勤状況を一元管理するシステムへと改修しました。この改修によって、出退勤状況が正確に管理できるようになったとともに、ペーパーレス化にもつながりました。

宮崎県都城市:避難所運営をデジタル技術活用によって最適化

災害発生時の避難所の運営は、自治体の重要な役割であると同時に、避難者の動線確保や高齢者の避難確認など課題の多い業務です。都城市ではITベンダーと連携をし、一連の業務をデジタル化することによって解決を図りました。導入したシステムは受付の迅速化を図るため、3つの方法で避難者情報を登録する仕組みを設けています。この結果、シミュレーションでは避難者情報登録において60〜80%の時間短縮効果を見込んでいます。また、各種情報を避難所と本部がリアルタイムで共有できるので、各避難所の混雑状況を即座に発信することが可能となり、住民を受入れが可能な避難所へと誘導できるほか、国のシステムと連携することで救援物資の調達や避難所間での融通を図ることも可能になります。

沖縄県石垣市:LINEの活用により住民の利便性を向上

以前から宜野湾市、名護市とともに沖縄自治体協議会を構成して、基幹系システムの共同利用を行ってきた石垣市では、2020年に沖縄自治体クラウド・デジタルファースト共同宣言を締結。行政手続きのオンライン化などを重点項目として推進してきました。そのなかで、サイバー窓口を導入し、窓口の混雑緩和と接触時間の短縮を実現しました。そのシステムはLINE上で動作するため、多くの住民が活用しているLINEで窓口申請が可能となったことで、申請手続きの選択肢が増えたこと、窓口での待ち時間が緩和されたことなど、利便性の向上にもつながりました。

佐賀県:モバイルワークの推進を核とした業務効率化と県民サービスの向上を実現

佐賀県では実証実験を経て全職員を対象としたテレワークを推進。業務環境のICT化や意識改革など、全体のDXを推進するうえでも有意義な取り組みといえます。

まず、テレワーク推進のためのICT環境を整備し、コミュニケーションに支障のないような環境を構築しました。労務管理については、労働時間は事前にメールで所属長に予定時間を報告し、業務終了後に実績時間とあわせ、業務内容や成果物を報告することで把握するようにしました。そのほか、制度の概要についてもルールと規定を明確化しています。

テレワークが可能な業務体制を構築することで、災害時や感染症拡大といった事態に遭遇した場合でも業務継続ができるので、住民へのサポートが途切れるリスクが軽減されます。さらに、職員のワークライフバランス向上にも効果がみられました。

愛知県39市町村:AIチャットボットの導入で総合案内サービスを充実

愛知県では県と全市町村の関係課長などで構成する「あいちAI・ロボティクス連携共同研究会」を設置し、AIチャットボットの導入などについて検討を重ねてきました。2020年11月の段階では39市町村が導入をしています。AIチャットボットによる問い合わせ範囲は住民生活(引越、妊娠、出産)に関連するもので、取り扱い内容は広範囲に及びますが、個人情報や非公開データは含まれないものとしています。県がベースとなるQAを作成し、各市町村で修正を加えて対応しています。AIチャットボットの導入によって、単純な問い合わせはAIチャットボットのみで対応ができるため、職員の対応時間が削減できました。また、住民にとっては24時間いつでも質問できるようになったことで、利便性が向上したと考えられます。

岩手県久慈市:職員減少が進むなかAI-OCRとRPAの導入で入力時間を約8割削減に成功

久慈市では災害の対応に追われる一方で、職員数が減少していました。職員の健康維持を確保しつつ、住民サービスの質向上が必要であり、業務効率化は喫緊の課題でした。そうしたなか、AI-OCRとRPAを組み合わせた業務効率化の提案を受けました。導入後はふるさと納税処理業務やアンケート集計業務に活用し、それぞれ約80%の作業時間削減を実現しました。

奈良県:会話ができるAI電話サービスで人手不足と高齢化社会に対応

奈良県庁の地域包括ケア推進室では、地域の高齢化と過疎化が進むなか、高齢者の暮らしをサポートするための新たな仕組みを整えることが急務でした。しかし一方で、高齢者のサポートを行うための人材確保が難しくなると予測されていました。課題解決のひとつのアイデアとして出たのがAI活用で自動的に電話をかけることで高齢者の見守りができないかというものでした。そこで、NTTドコモと連携してAI電話サービスの活用による高齢者支援の実証実験を開始。利用者に負担をかけることなく、安否確認ができること、AIとの会話や健康情報の発信によって、健康寿命延伸のための啓発ができることなどが確認できました。

長崎県:職員からのICT関連の問い合わせに関するナレッジ管理にAIを活用

長崎県では年間に1万件ほどの県職員からのICT関連の問い合わせがあり、これに冠する効率的な情報共有やナレッジの属人化防止への対策が必要でした。ベンダー側からのAIを活用したICTナレッジ管理を含む提案を受け、ナレッジ管理にAIを導入することにしました。導入前は、問い合わせをする職員はITのことがわからず、また、回答するICT関連の問い合わせ担当者は職員の業務のことがわからない状態であるため、職員からの問い合わせ趣旨が十分に理解できず、不十分な対応となることがありました。AI活用で、蓄積したナレッジのなかから、的確に関連する回答を提示することができ、両者の橋渡しが可能になりました。

兵庫県宝塚市:AIによる職員業務実態の分析・可視化で業務課題を発見

宝塚市では2018年に働き方を見直すために業務の可視化などについて検討しており、同年に財政課、給与労務課、行革推進課の3課の業務を対象に実証実験を開始しました。職員が使用するパソコンの操作ログの3カ月分をAIで分析。総業務時間に占める繰り返し作業の割合や、使用頻度の高いアプリケーションなどを洗い出しました。それを基に職員の業務の流れや働き方といった実態を可視化し、RPAを導入すべき優先業務を選定しました。そして、2020年に業務プロセスを自動化するためにRPAの導入につなげています。

三重県:AIを活用した児童虐待への対応支援システム導入でリスクの判断材料に

児童虐待は情報が表面化しにくく、情報が得られたとしても分析、判断、対応行動へとつなげるための判断がスムーズに行われず、自治体の対応が後手に回るケースが少なくありません。三重県では2012年度に発生した虐待による児童死亡事件を契機として検討会を立ち上げ、対応の見直しを進めてきました。そして2013年度に三重県版リスクアセスメントツールを開発、運用をしてきました。2020年度までの6年間の蓄積データの分析・研究を経て、AIによるリスク度や類似事例を参照できるシステムの実証実験を開始しています。AIによる支援システムを活用することで、過去の事例から分析されたケースのリスク度や特徴によって、児童を一時保護すべきかどうかといった判断の参考にできることや、シミュレーション機能を活用して、経験値の低い職員の自発的な勉強の機会にもなり、児童虐待対応の適格性向上につながると考えられます。

まとめ:住みやすいまち、住みたいまちづくりをDX推進で加速させる

地方自治体の業務はすべてその地域に住む人々の生活を支える基盤となるものです。教育、子育て、介護、福祉サービスなどの提供をはじめ、インフラの整備、企業誘致、観光資源の活用、地域産業の発展など地域経済の活性化も大事な役割として担っています。ところが、現状では職員による手作業での事務処理が多く、役所での申請手続きなどには時間がかかる、というイメージを強くもたれています。見方を変えれば、現状は職員の業務負担が大きく、人的ミスも発生しやすい環境にあるともいえます。

政府も推進している自治体DXによって、業務の自動化や全国的な情報システムの標準化・統一化などを行いうと、全国どこに暮らしても、同等の行政サービスを提供できるようになります。また、職員の業務負担も大きく軽減され、対面で行うべき作業に時間を割くことも可能になるでしょう。

そうした 自治体組織の働き方改革や業務改善が進めば、その地域の魅力は高まり、住みやすいまち、住みたいまちへと近づく のではないでしょうか。

人々の暮らしを支える基盤としての自治体であるからこそ、DXの推進はまったなしの状況であると考え、事例をヒントに進めていただければと思います。