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DX推進・成功事例から実施のヒントを探る~国内・海外成功事例22選~

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新型コロナウイルス感染症が拡大し、リモートワークへの取り組みが進んだこと、また、2025年の崖問題に対応するための取り組みが各企業や自治体で進んでいることなどを皮切りに、DX(デジタルトランスフォーメーション)推進が加速しています。一方で、DXへの取り組み方がわからないとする企業も少なくないようです。何をどのように進めていけばいいのか、効果的な進め方とはどういった方法なのか、具体的なヒントは成功事例のなかにあります。今回は、DX推進をする際の具体的なヒントを探るため、国内外の企業、自治体からDX推進・成功事例を紹介します。

改めてDX(デジタルトランスフォーメーション)とは

DX(デジタルトランスフォーメーション)推進のヒントを探る前に、改めてその概念を確認しておきましょう。

DX(デジタルトランスフォーメーション)の概念

DXは、IT技術が進化し、さまざまな分野に浸透することによって、より良い方向へと変化させようとする取り組みです。ただ、DXの捉え方は立場によってさまざまです。人々の生活、企業・自治体の活動におけるDXの概念をみておきましょう。

進化しつづけるテクノロジー(IT技術)によって、人々の生活をより豊かなものにする

DXは2004年にスウェーデンのウメオ大学の教授であったエリック・ストルターマンが唱えた概念で、 人々の生活はテクノロジー(IT技術)の進化に影響を受けているものであり、そのテクノロジーの進化の結果、人々の生活がより快適に、豊かになる方向へと変化する 、としたものです。人々の生活に視点をおいたこのDXの捉え方は広義の概念といえます。

データとデジタルテクノロジーを活用して、ビジネスモデルを変革するとともに、競争力を高める

ビジネスに視点をおいてDXを捉え、日本でDXが知られるきっかけとなったのは、2018年に経済産業省が公表した「DX推進ガイドライン」に記された定義でしょう。

「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」と記されています。

また、 現在、一般に使われているDXの定義が使い方や解釈も多様化してきているため、政府は「世界最先端デジタル国家創造宣言・官民データ活用推進基本計画」(令和2年7月17日閣議決定)におけるものを踏襲する としています。それには以下のように説明されています。

「将来の成長、競争力強化のために、新たなデジタル技術を活用して新たなビジネスモデルを創出・柔軟に変革すること。企業が外部エコシステム(顧客、市場)の劇的な変化に対応しつつ、内部エコシステム(組織、文化、従業員)の変革を牽引しながら、第3のプラットフォーム(クラウド、モビリティ、ビッグデータ/アナリティクス、ソーシャル技術)を利用して、新しい製品やサービス、新しいビジネスモデルをとおして、ネットとリアルの両面での顧客エクスペリエンスの変革を図ることで価値を創出し、競争上の優位性を確立すること。」

このように経済産業省および政府が記した定義や説明は、よりビジネスにおけるIT技術活用を視点においたものです。また、 現在は「社会」「公共」「民間」といった視点の違いによってもDXの定義や考え方が多様化しているとはいえ、DX推進がなされた結果、企業活動が活力を増し、さらに社会や人々の環境や暮らしが豊かで快適なものになることをめざすという点では、どの定義・考え方も共通している といえるでしょう。

一方で、DX推進が今後ますます重要性を増し、企業にとっても自治体にとっても必要なことだと理解はしていても、具体的にどのように推進していけばいいのかわからず、いっこうに進められていないという組織も少なくないようです。その主な原因はIT人材の不足、知識の不足、レガシー環境の存在など複数あります。

上記のようにDX実現には複数の課題が存在し、時間的にもコスト的にも、人的リソースの観点からもなかなか一気に進められるものではありません。まずは社内の業務や担当部署といった小さな単位で課題を洗い出し、DXを推進することが取り組みやすい方法です。取り組み当初は売上に大きく貢献することや、ビジネスモデルが大きく変革すること、あるいは新しい商品価値や企業価値の創出といっためざましい成果が現れなくても、焦らず続けることが重要です。その積み重ねで企業や組織全体のDX実現を成し遂げることが成功につながるのです。

そうした 小単位でのDXへの取り組みのことを社内DX といいます。たとえば、 営業部門でのDXを進めることで、製造部門や開発部門といった他部署との連携を広げ、全体的に業務プロセスの見直しやムダ削減を実現していく、 といった流れです。

社内DXや営業DXについては以下の記事を参考にしてください。

社内DXの推進が企業全体のDX実現のカギ

https://www.nttdata-kansai.co.jp/media/033/

営業部門でもDX化を推進。導入の具体策と成功事例

https://www.nttdata-kansai.co.jp/media/032/

また、DXがなかなか進まない企業も多いなか、DX推進に成功した企業があります。成功事例は自社における推進プロセスを考えるヒントになるでしょう。次項では国内外の成功事例をみていきましょう。

DX徹底解説。定義と目的、導入時の手順と課題のほか、成功事例を紹介

https://www.nttdata-kansai.co.jp/media/001/

2025年の崖とは?直面する課題と回避方法を詳しく解説

https://www.nttdata-kansai.co.jp/media/009/

国内の成功事例18選

2022年6月に、日本国内の企業における「DX銘柄2022」として経済産業省が33社を発表しています。 DX銘柄に選ばれた企業を中心に、各業種の企業や自治体での事例 を紹介します。各企業の取り組みは自社の課題解決はもちろんですが、社会貢献、顧客本位の体制強化といった視点が共通項として見えてきます。また、 自治体での取り組みにおいては職員の業務効率化や住民へのサービス向上を目的にDXを推進しています。

情報・通信業:株式会社エヌ・ティ・ティ・データ

株式会社エヌ・ティ・ティ・データはデジタルへの取り組みを加速度的に推進してきました。デジタル技術を用いた既存ビジネスの深化と新規ビジネスモデルの創出といった両方向の取り組みを実施しています。

中長期経営計画においては「未来に向けた価値をつくり、様々な人々をテクノロジーでつなぐことで、お客様とともにサステナブルな社会を実現する」ことを目標に掲げました。

具体的な取り組みとしては、デジタル防災プラットフォームを通じて、社会全体のレジリエンスを高め、危機・災害対応力の底上げに貢献しています。

頻発する自然災害に対して、対策業務で必要となる情報収集・意思決定・応急対応の各フェーズにAIや衛星・ドローンなどの当社が持っている先端デジタル技術を融合させ、サービスを高度化させました。自治体や医療機関などの関係機関とのリアルタイムな情報連携を可能にすることで、広域化・複合化対策が充実し、対応の迅速化・二次災害の防止に活かすことができます。

このほか、日本最大の金融APIエコシステムをめざしたシステム開発にも取り組んでいます。

機械製造業:株式会社K製作所

株式会社K製作所は「安全で生産性の高いスマートでクリーンな未来の現場をお客さまとともに実現する」という目的を掲げました。そのため2022年度から2024年度までの中期経営計画を開始し、サスティナブルな未来を次世代へつなぐための新たな価値創造に取り組んでいます。

まず、成長戦略の3本柱を次のように決定しました。

イノベーションによる成長の加速
現場を最適化し、新しい顧客価値を創造すること。カーボンニュートラルに向けた価値づくりに挑戦すること。これらに挑戦することで成長力を高めます。
稼ぐ力の最大化
コア事業をより強化させます。まず成長市場におけるプレゼンス拡大すること。バリューチェーンビジネスを進化させること。これらをさらに進めることで、自社の強みをより競争力のあるものへと高めます。
レジリエントな企業体質の構築
効率的な事業運営とリスクマネージメントを強化すること。多様性に富む人材基盤を充実させること。これらに取り組むことで経営基盤を強化するとともに、社会の変化に柔軟に対応できる企業体質を構築します。

この3本柱の共通テーマとして、あらゆる分野でのDX推進を実施しています。具体的には建設現場に携わる人・モノに関する情報をICTでつなぎ、建設現場の安全・生産性を向上させるためのビジネスモデル「DXスマートコンストラクション」を開始し、施工現場におけるDXを加速させています。

さらに、鉱山で稼働する無人ダンプトラック運行システムを導入し、2022年3月末時点で、4カ国17サイトで累計導入台数510台を達成しています。これは自動化・自律化、遠隔操作化の一環として実現したものです。

物流業:S社

S社は、2030年に向けた長期ビジョン「Grow the new Story. 新しい物流で、新しい社会を、共に育む」と中期経営計画2024を策定しました。必要とされ続ける物流を多様なパートナーとともに創造することで、新たな価値の創出をめざしています。そして「サービスの強化」「業務の効率化」「デジタル基盤の進化」の施策をとおして、持続的な競争優位性の確立と、社会・顧客が抱える課題解決に貢献することをDX戦略としました。

具体的なDX戦略の取り組みは次のとおりです。

サービスの強化
荷物と車のマッチングサービスの提供(TMSプラットフォーム)や企業横断型の物流の最適解を提供(GOALプラットフォーム)、グローバル一貫サービス(グローバルプラットフォーム)などによって、顧客や同業他社との連携を深める物流プラットフォームサービスの構築と拡充に取り組んでいます。
業務の効率化
AIによる配送ルートの最適化や、伝票のデジタル化などを実現し、セールスドライバー業務、庫内物流業務、バックヤード業務といった宅配便事業の効率化・自動化を図っています。
デジタル基盤の進化
2025年の崖として課題となっているレガシーシステムを撤廃することや、開発・保守、運用の内製化を実現することを継続的に行い、アジャイル開発を拡大するとともに、市場ニーズへ迅速に対応できる組織構築を進めています。

自治体のDX成功事例:千葉県

千葉県は、幕張新都心を中心とした業務地域や国際見本市会場として集客力のある幕張メッセ、国際旅客数、貿易額で日本トップを誇る成田国際空港、さらには日本三大漁港の銚子漁港や日本一の来場者数を打ち出しているディズニーリゾートなど、産業構造のバランスがとれた地域です。充実した産業を背景に、「県民の暮らしを豊かにする千葉県ICT利活用戦略」を打ち出し、2019年から取り組んでいます。

具体的には、IoTなどを活用するためのセミナーや、産業技術騒動研究所との連携の推進、ロボット技術やAI,ドローンを活用した農林水産業のスマート化、ビッグデータを活用したマーケティングを基盤にした観光資源のブラッシュアップなどに取り組んでいます。

こうした取り組みは県民の生活をより細かく、個別にサポートできる仕組みをつくるだけではなく、現状の産業基盤を強化するための施策としても活かされています。

建設業:S社

S社はDXを経営ビジョンに位置づけて、「ものづくりをデジタルで」「デジタルなサービスを提供」「ものづくりを支えるデジタル」を柱とする「S デジタルゼネコン」を中期デジタル戦略として打ち出しました。

そして組織のパフォーマンスを高め、保有資産の価値向上など既存事業の成長戦略にも貢献が期待できる新たなサービス提供を実現するための基盤づくりを継続しています。

取り組んだのは「自立型組織への転換」や「ワークエンゲージメントの醸成」「対話中心のリアルタイムオペレーションの場づくり」です。具体的なプロジェクト事業として実施されたもので、時間と場所に縛られない働き方を実現するネットワーク型ワークフィールドの構築です。

こうした環境実現のためには、コミュニケーション量の可視化やパフォーマンスの分析などが必須です。さらに高精度でリアルタイムな位置情報システムを活用しなくてはなりません。また位置情報による設備制御のシステムも構築する必要があります。それらを高度なデジタル技術を活用することで可能にしました。

また、位置情報システムを基盤としたサービス(BaaS)事業を中心にデジタルゼネコンの「デジタルなサービス」分野を拡充させ、非建設事業においても顧客との持続的な関係を構築するための取り組みを進めています。

S社は次世代につなぐデジタル技術を210年余りの歴史と「宮大工」であった創業者の匠の心を融合させた、社会の期待を超える価値の創造をめざしています。

医薬品:N社

ヘルスケアソリューションを提供するトップイノベーターとして活動するN社では、デジタルを活用した革新的な新薬創出に取り組んできました。まず、AIやロボティクスを活用して創薬プロセスを革新し、創薬の成功確率を向上させました。

新薬候補となる抗体の設計において機械学習を用いることで最適な分子配列を得るAI創薬支援技術を開発・活用しています。

また、デジタル技術を用いて疾患の有無や状態を評価する取り組みを推進させました。そのことは製品価値を証明することや、疾患理解の深化などによって、痛みの可視化やウェアラブルデバイスやアルゴリズムの開発、電子的な患者情報のアウトカム活用をさらに進めることにもつながりました。

N社では、創薬プロセスの革新という中心的な活動におけるDXをより確実に推進するために、営業プロセスの改革、定型業務の自動化といった営業部門でのDXや社内DXへの取り組みを進め、すべてのバリューチェーンでの効率化をめざしています。

銀行業:F社

2022年に新しい3カ年計画である第7次中期経営計画をスタートさせたF社は、DX推進本部を新設し、これまで推進を進めてきたDXをさらに加速させることにしました。

F社がDXへの取り組みを本格化させたのは2016年のiBank設立をきっかけとしています。そして2019年からスタートした前の第6次中期経営計画でDXを基本方針の一つに掲げました。

具体的には、来店数が減ってきていた窓口業務やデジタル技術の進歩を受け、「みんなの銀行(日本初のデジタルバンクとして2021年に誕生)」の事業を戦略的に開始しました。

みんなの銀行は新しい銀行のカタチをめざしたもので、1.全国の個人顧客を対象とした銀行サービスの提供、2.BtoB事業として金融機能・サービスをパートナー企業(法人)に提供、3.バンキングシステム提供事業を展開しています。

食料品:A社

A社は「アミノ酸のはたらきで食習慣や高齢化に伴う食と健康の課題を解決し、人びとのウェルネスを共創する」というビジョン実現に向けて、社会価値と経済価値を共創する取り組みを最大化することがDXの目的であるとしています。

DX0.0 働き方改革(自己変革)
DX1.0 全社オペレーション変革
DX2.0 エコシステム変革
DX3.0 事業モデル変革
DX4.0 社会変革

というそれぞれのレイヤー別にステージを設定して、それぞれのレイヤーが連動しながら企業文化を革新させ、顧客起点、全員参加、全体最適を基本にDXを推進する姿勢を打ち出しました。こうしたA社の事例は、全体を捉えてDXを一気に進めるのではなく、目的を具体的に小単位(レイヤー)にしてから、DX推進を図った好例だといえそうです。

保険業:T社

140年以上にわたり損害保険事業を展開してきたT社は、DXを推進するにあたって「損害保険が事前事後の領域でも貢献したい」という課題意識をもっています。たとえば医療の場合、病気になった患者を治療することは従来と変わらないのですが、病気にならないように事前に予防や健康維持のサポートを行うといったことにデータ化やデジタル化を加速させることで貢献できるのではないか、という発想が起点になっています。

こうした視点でDXを進めるということは、保険事業の再定義を経営戦略として掲げることにもつながりました。

具体的には保険事業から社会課題解決事業へとトランスフォームすることをめざしています。社会変化や課題起点でターゲットを定めて、データ活用やAI実装をはじめとするデジタル技術を集約させ、新しい価値を提供します。たとえば疾病発症における「保険金の支払い」はもちろん、その前後の領域である「早期検知・予防」「軽減・再発防止」といった領域でも役割を果たしていくビジネスモデルをめざしているのです。

また、社会課題解決事業の一例としては「防災コンソーシアム」を発足しました。防災・減災事業の共創を図るために多業種の参画法人から構成されたもので、2023年3月現在では94社が参画しています。

この取り組みは、テクノロジーやデータを活用して、防災の4要素である現状把握、対策実行、避難、生活再建における課題の抽出と対策研究、新たなビジネスモデルやビジネスの機会創出支援など、防災・減災事業の構築が目的の事業です。

繊維製品:W社

W社では事業環境の変化に対応して、再成長を実現するためにDXへの取り組みを進めてきました。生産や物流工程を効率化するとともに、顧客の消費行動や価値観の変化を分析して生活者の視点に合わせた価値へと認識を変革してきました。

DXを推進するにあたって重要視したのは顧客体験をよりストレスフリーに、より自由にするということです。インナーを提供している事業ゆえに、対面での採寸や接客では顧客側にストレスを与えるおそれがありました。そこで3D計測サービス「3D smart & try」を開始しました。

また、本事業をベースとして医療機関と共同研究を開始し、乳がんの罹患者の増加という社会課題への取り組みを展開しています。この取り組みはW社がいままで培ってきた商品開発やノウハウを活用し、オープンイノベーションを促進して新しい価値の創造へとつなげていくものと捉えています。

そして「オンライン、オフラインの融合」「顧客データの活用」「デジタルテクノロジーによる店舗サービスの革新」といったCX(カスタマー・エクスペリアンス)戦略を中心に、顧客一人ひとりとの深く、広く、長い関係性を構築することを目的として取り組んでいます。

不動産:S社

S社は不動産事業のスマート化を目的とした取り組みを進めてきました。事業領域は大きく分けて2つ。1つはAIクラウド&コンサルティングです。不動産仲介会社や金融機関向けに業界支援型のクラウドルーツを提供しています。具体的には自社で長年にわたり蓄積してきた取引データを基にして、不動産取引価格を高精度で自動査定するためのツールを開発し、提供しています。

もう1つは不動産テックです。IoTを活用したスマートホームやマンションの開発といったデベロップメント事業やインベストメント事業に取り組んでいます。

そのほか、不動産取引にかかせない資料の作成を効率化するためのツールを開発するなど、業務の効率化と標準化をめざした積極的な取り組み行いました。

こうした取り組みを加速させてきた背景には、「リアル×テクノロジー」で近未来(10年先)の当たり前を創造することをミッションとしているという企業姿勢がありました。また、不動産業は日本経済と国民一人ひとりの生活という二つの観点で重要な位置を占めているとの認識がありました。

今後も社会的意義を意識しながらさらなるDX推進を図っていこうとしています。

小売業:F社

コンビニエンスストアを運営するF社は店舗運営のコスト見直しとオペレーションの負荷軽減といった課題解消のために、無人決済システムの導入に取り組みました。背景にはデジタル化の加速と労働人口の減少、顧客ニーズの多様化、働き方の変化といった社会的な変化のなか、コンビニエンスストアに求められる役割が変化してきたことがあります。

そこで、無人決済システム導入店舗といった次世代のコンビニエンスストアモデルの実現をめざしたのです。また、AIアシスタントの活用や遠隔操作ロボットの導入などにより、店舗業務の省力化にも取り組みました。無人決済システム導入店舗は3つの要素技術の組み合わせによるシステムで成り立っています。

1.カメラによる人の追跡、2.商品認識センサー、3.対面無人決済です。

店内に設置したカメラによって客の来店から退店までを追跡します。そして、商品をセンサーで認識させ、選ばれた商品を出口付近に設置したレジで支払いを実行するもので、すべてをセルフで行うことのできるシステムです。利便性の向上と非接触ニーズにも対応した店舗の実現といえるでしょう。

これらの取り組みは顧客の満足度向上とともに、人手不足への対応や人件費削減といった経営課題の解消と持続可能性を高めることになると期待されています。

電気機器:H社

H社では激変する社会に対応し、サステナブルな世界の実現に向けて、さまざまな事業領域のパートナーとともに新しい社会に向けた新しい価値を創造することを目的にLumada(新しい価値創造のためのプラットフォーム)を立ち上げました。

変化の激しい時代にあっては、社会や顧客が直面する課題は複雑化しています。一社だけの取り組みでは解決が困難なケースも予想されます。そうしたケースを想定して、「つなぐ」施策となるのが、3つの機能を備えたLumadaです。

Lumada Innovation Hubでは知恵やアイデアをかけ合わせて、つなぎます。

Lumada Alliance Programはイノベーションを加速させるためのパートナー制度として機能します。

また、Lumada Solution Hub は基盤となるITプラットフォームで、ソリューションや技術をつなぐ役割を担います。

このように「つなぐ」施策を実行することで、「関係性の構築」「価値創出」「社会実装」という協創プロセスを通して、新しい価値、新しいビジネス、社会課題の解決に取り組んでいます。

精密機器:T社

医療、食料、インフラに関する社会的課題を、光学やセンシング・制御技術といった独自技術をベースに、グローバルな組織体制でDXソリューションを活用し解決することを中期経営計画に掲げ、具体的な取り組みを開始しました。

たとえば、医療・ヘルスケアの分野において、眼検診(スクリーニング)の仕組みを構築しました。加齢に伴って増加する眼疾患のなかで、三大眼疾患数(糖尿病性網膜症、加齢黄斑変性、緑内障)は病気の進行により視覚障害に至ってしまうと医療費も高額になるばかりでなく、QOLの低下が予想されます。こうした眼疾患の早期発見、早期治療を実現させ、医療費削減といった社会的課題の解決を図ります。

具体的な取り組みとして、世界中で300万拠点におよぶ、かかりつけ医、眼鏡店、ドラッグストアなどを活用して、眼疾患のスクリーニングを実施可能にし、早期発見された眼疾患についてはクラウド上に蓄積されたこれまでの経過データとともに、眼科医に連携できるプラットフォームを創ります。そして、眼科医での早期治療につなげ、データ連携によって医療効率を高めたシェアードケア・モデルの実現をめざします。

その他製品:A社

スポーツ用品を扱うA社は中期経営計画2023において、デジタルを軸にした経営への転換を目標に掲げ、デジタル戦略として3つの柱を建てました。

まず1つ目は、ランニングエコシステムを構築して、ランナー向けのビジネスをデジタル化することです。デバイスを活用して走行距離やスピードを測定する機能、レースのレジストレーションプラットフォームなどを提供しています。

2つ目は、デジタルマーケティングです。会員向けのプログラムを活用して、パーソナライゼーションを促進させ、マーケティングの投資対効果を高める施策としています。

3つ目は、ホールセール、Eコマース、リテールを統合するシステムによってオペレーションの効率化とコスト削減を図っています。

こうした方向性でデジタル化を加速させることによって、魅力的な価値の提供、直接顧客と接点をもてるDTC(Direct to Consumer)チャネルを強化しています。また、こうした取り組みを通じて利益向上をめざしています。

不動産業:M社

テクノロジーを活かして不動産業そのものをイノベーションすることを掲げているM社は、顧客に対して、不動産をモノとしてではなく、リアルとデジタルを融合したサービスとして提供するReal Estate as a Serviceの実現をめざしています。そのために顧客への価値提供のためのDX、ビジネスプロセス効率化のためのDXの2方向で推進しています。そうした姿勢の現れのひとつが「柏の葉データプラットフォーム」です。

これは千葉県柏の葉における取り組みで、行政、大学、医療機関、ヘルスケアサービス、IT、保険会社などとのエコシステムにより、オプトインの透明性を徹底しつつ、データが生み出す新しい価値をデータ提供者に還元するサービスとして行われました。プロジェクトのポイントは国立がん研究センター東病院敷地内の三井ガーデンホテル柏の葉パークサイドとの連携です。患者同意のもと、国立がん研究センター東病院での診療状況・生活留意事項をホテルなどで共有し、滞在する患者向けセンシングデバイスを貸与したり、バイタルデータ管理サービスや食事管理サービスを提供したりするものです。こうした環境を整えることで、利用患者にとってはホテル滞在中に適切なサービスと安心が得られることや、ヘルスケアサービスが優遇的に利用できるといった付加価値があります。

M社ではDXへの取り組みを推進することで、ハードとソフトの合わせ技でサービスを提供することをめざしています。

食料品:K社

2020年にDX戦略推進室を設立したK社では、食から医にわたる領域で価値を創造し、世界のCSV先進企業となることを2027年までにめざす姿として取り組みを加速させました。そして、長期経営構想「KV2027」においてイノベーションを加速する4つの組織能力の1つとして、「価値創造を加速するICT」を掲げ、グループ全体のあらゆる領域でデジタル技術を活用した業務プロセス変革を徹底的に行い、効率化や、顧客への新たな価値創造をめざしています。

たとえば、顧客情報をグループで共通化し、これまで事業部門ごとに構築していたシステムをフルクラウド環境に集約することで顧客とのコミュニケーションツールを一本化させます。さらに、ダイレクト事業で蓄積している健康領域と食領域の顧客データの連携にも取り組む予定です。

また、AIを活用したビール醸造計画として自動化システムを構築。各工場でベテランの担当者が1回につき最長6.5時間ほど要していた「濾過計画業務」を最短55分に短縮しました。

このシステムを全工場へ導入することによって、「仕込・酵母計画」「濾過計画」合わせて年間4,000時間以上の削減を見込んでいます。

さまざまな確度からイノベーションを加速させるために各業務でのDX戦略を進めています。

その他製品:D社

D社では印刷と情報の強みをかけ合わせて新しい価値を創出するため、DXへの取り組みを進めています。

教育関連事業においては、大学向け教育ICTプラットフォームを開始。全国の大学でサービスを提供し、学修の可視化、オンライン授業への対応、教科書や教材のデジタル化といった課題解決に取り組んでいます。たとえば、マルチデバイスからの教科書・教材の提供、購入、閲覧を可能にし、さらには学修情報管理などのサービスの提供によって、より質の高い教育を実現できるようになりました。

海外の成功事例4選

総務省が公開している「情報通信白書 令和3年版」では、国際指標でみる日本のデジタル化の現状を解説しており、国際競争力に関する指標としてデジタル競争力ランキングが示されています(国際経営開発研究所:IMD調査)。2020年のランキングでは63カ国・地域のなかで、アメリカが3年連続1位、シンガポール2位、デンマーク3位となっており、日本は27位という結果でした。また日本の状況を要因ごとの傾向をみると、「技術」「将来への備え」の順位が低下傾向にあることがわかりました。

海外の状況に比べると、日本においては、いまだIT技術の活用、浸透が進んでいるとはいえず、ビジネスモデルを変革し、市場での競争力を高めることで、社会や人々の環境や生活により良い影響をもたらすことができていないと考えられます。では、海外の企業のDX推進・成功はどうなのか、代表的な事例を確認しておきましょう。

IKEA

スウェーデンで創業したIKEAは全世界で20万人以上の従業員を抱える巨大企業です。独自の発想、感性で世界中から支持を受けているIKEAブランドの家具や雑貨をきわめてアナログな手法で販売し、成功を収めてきました。そのIKEAがDXを経営の主要アジェンダに据えました。そして、デジタル変革に着手したのです。

まず4つの主要分野を設定しました。

  1. 1.顧客との出会い
  2. 2.同僚にパワーを与える
  3. 3.デジタルファンデーション
  4. 4.デジタルDNA

たとえば、AIやデジタル技術、3Dモデル技術の活用で、IKEAの家庭用品がどこからでも試すことができるサービスを展開し、顧客に充実した体験を提供すること。また、新しいテクノロジーによって従業員の業務をサポートし、従業員を反復作業や単純作業から解放することで、新しい仕事を学ぶ機会や挑戦を増やすことに取り組んでいます。

Amazon

Amazonが掲げている理念は「地球上で最もお客様を大切にする企業であること」と「地球上で最も豊富な品揃え」です。しかし、Amazonはただ豊富な商品をWeb上で購入できる巨大なECサイトというだけではありません。

Amazonは世界中でもっともDXを実現している企業のひとつとされています。その理由は、「最高の顧客体験」の実現への取り組みが存在しているからです。高精度なデジタル技術を駆使して、商品を購入するという顧客行動に変化をもたらしたのがAmazonだといえるでしょう。

顧客が商品を購入するためのサービスをみても、顧客へ最高の体験を提供するための工夫が見て取れます。

ワンクリックで購入できる
顧客の潜在ニーズを把握し、商品を提供できる
リピートもスムーズ

こうしたデジタル技術による圧倒的な利便性を実現することで、他社との競争力を高め、選ばれるサービスを構築しています。これは、目標設定が明確になされていることによるもので、何をより高めていくのかが常に明らかになっている結果だともいえるでしょう。

Walmart

世界最大の小売業と称されるWalmartはデジタルネイティブな企業ではありません。日常的な商品を扱い、低価格で販売することで多くの人から支持されてきたアメリカのスーパーマーケットです。

その非デジタルネイティブ企業がDXを成功させた背景には、ミッションの再定義がありました。Walmartは販売だけではなく、顧客体験の質を高めることに注力し、さまざまな取り組みを実施したのです。

従来の低価格販売を実施する小売業としての事業は継続しながら、新たなビジネスモデルを打ち立て、サービスラインを再構築しました。カスタマーセントリック(顧客中心主義)を軸に再構築されたビジネスモデルは以下のとおりです。

販売するための顧客接点を構築
ストア、ピックアップ、デリバリー、サブスクリプションサービス(Walmart+)の4つを主要な接点とする
顧客に幅広く深くサービスを提供し、関係性を深め、健全なサービスミックスを維持する
EC、金融サービス、ヘルス&ウェルネスの3つのサービスを提供
低価格の維持
店舗における生産性を向上させ、サプライチェーンのデザインと自動化を図るとともに、DXを推進することや、サステナビリティ施策などを実行する
顧客価値に再投資
さまざまなサービス展開によって得られた利益を、顧客価値を高めるために再投資することで、ビジネスモデルを循環させ、さらに強化する

こうした新たなビジネスモデルを打ち出したWalmartの成功は、過去の成功体験にこだわらず、ミッションを再定義し、柔軟な戦略をとるなかで、DXをひとつの手段として取り組んだことによるものだといえるでしょう。

Nike

NikeのDX戦略は2006年に提供が開始された活動量測定のためのソフトウェアや小型センサーを内蔵したシューズを市場に出したことにはじまります。それらの商品によって、測定と分析が難しいといわれていたデータ利用によるトレーニングが個人レベルで可能になりました。

さらにNikeは消費者と直接的なつながりを構築し、深める戦略を打ち出しました。その背景にもデジタル技術の活用があります。

そのひとつがモバイルアプリです。商品の購入のみならず、商品を利用しているアスリートの声やデザイナーによる商品紹介、さらにどのように着こなせばよいのかといった利用方法のヒントも提供しています。またスニーカー専用アプリは新作や限定商品を購入することができるほか、商品のストリーミング配信を行うなど、購買体験も提供しています。

このように、消費者が直接メーカーと接点を持つことができるシステムを構築するためにDXを推進し、その商品価値に納得してもらえる情報を提供したり、価格の正当性、透明性が維持される環境を整えたりしています。

成功事例から成功へのキーワードを掴み、実践へとむすびつけることが重要

革新的なビジネスモデルを創造することや、より社会貢献できる事業を展開するためには、DX推進をさらに加速させデジタル競争力を高める必要があります。そうした状況を作り出すためには 「知識」「技術」「資本」を充実させながら、どのような事業を展開していくのか、といった将来へのビジョンや備えを明確にしておくことが欠かせません。 日本企業や海外の企業での成功事例から分析できる取り組みは、自社におけるDX推進のヒントになるかもしれません。