自治体DX推進計画の重点8項目と進め方|今、自治体が着手すべきこと

自治体デジタル・トランスフォーメーション(DX)推進計画は、総務省が策定した、自治体が重点的に取り組むべきDX施策と国による支援策・主な取り組みスケジュールを示す計画です。2020年12月の策定以降ほぼ毎年改定され、最新版では重点取組事項が8項目に整理されました。計画の対象期間は従来の「2025年度末まで」から、期限を設けない形へ変更されました。あわせて、別紙の「自治体の主な取組スケジュール」は5年間を目途に示し、毎年度更新する運用となっています。
基幹システムの標準化対応に人員や時間を割くなかで、窓口・申請手続きなど住民接点の改善に十分なリソースを配分しにくい自治体もあるのではないでしょうか。
本記事では、8項目それぞれの中身、進め方の5ステップ、実際の自治体の取り組みを整理します。
目次
自治体DX推進計画とは何を定めた計画か
自治体DX推進計画は、国のデジタル政策と自治体の現場をつなぐ役割を担っています。ただし、計画は国の動向などを踏まえて見直されており、数年前の理解のままでは、重点取組事項や取組スケジュールなどが現行版とずれることがあります。ここでは計画の位置づけを確認したうえで、最新版で変わった点を整理します。
国の方針と現場をつなぐのが、自治体DX推進計画の役割
政府は2020年12月、「デジタル社会の実現に向けた改革の基本方針」を閣議決定しました。そこで示されたのが、「誰一人取り残さない、人に優しいデジタル化」という理念です。この考え方は、その後の「デジタル社会の実現に向けた重点計画」にも引き継がれています。
ただし、国のビジョンを住民サービスの変化につなげるには、自治体での具体的な取組が欠かせません。住民と直接向き合うのは自治体だからです。そこで、国の方針のうち自治体にかかわる施策を具体化したものが、自治体DX推進計画です。
政府全体のデジタル施策の方向性を示す「デジタル社会の実現に向けた重点計画」も毎年度更新・改定されており、直近では2026年7月21日に閣議決定されています。自治体DX推進計画も、こうした政府の重点計画や関連施策の進捗を踏まえて見直されています。
計画は「何に取り組むか」、手順書は「どう進めるか」を示す
計画は主に重点取組事項や国の支援策を示し、手順書は主に進め方を示します。あわせて参照したいのが「自治体DX全体手順書」で、両者は主な役割が異なります。
加えて、窓口を含む住民接点の改革に関する「自治体フロントヤード改革推進手順書」も、2025年5月30日に公表されました。計画で重点領域を確認したうえで、全体手順書や領域別の手順書・ガイドラインを参照すると、必要な情報にたどり着きやすくなります。
策定当初と最新版で変わった3つのポイント
改定のたびに細かな文言は動きますが、実務に影響する変更もあります。ここでは押さえておきたい3点を、それぞれ自団体の進め方にどう響くのかとあわせて見ていきます。
1つ目は、筆頭項目が「システム」から「窓口」に入れ替わったことです。策定当初、先頭に置かれていたのは情報システムの標準化・共通化でした。最新版で先頭に立っているのは「自治体フロントヤード改革の推進」です。
これは、国が重視する対象が広がったことを示しています。庁内のシステム整備に加え、住民が行政に触れる場面を変えることも、より前面に位置付けられました。実務でいえば、DXの主役が情報システム担当だけではなくなったということです。市民課や各手続の所管課も、情報システム担当と連携しながら前面に立つことが求められます。
2つ目は、「標準化・共通化」がひとつの項目から2つに分かれたことです。従来は一体で扱われていましたが、最新版では「地方公共団体情報システムの標準化」と「共通化等の推進」が別の項目になっています。分けて整理された背景には、2つの性格の違いがあります。標準化は法律に基づく取り組みですが、共通化は義務ではなく、自治体の判断にゆだねられています。つまり、標準化と並行して、「何を共通基盤や共通サービスに寄せ、どこに個別対応を残すか」という判断が求められる、ということです。
3つ目は、計画期間を設けない形に改め、別紙の取組スケジュールを毎年度更新する運用に変わったことです。従来は「2025年度末まで」という終わりがありました。最新版ではこの区切りが廃止され、5年間を目途とする取組スケジュールを別紙で示し、毎年度更新する運用になっています。自団体への影響ははっきりしています。一度つくった推進計画を数年据え置くと、国の方針や取組スケジュールとのずれが生じる可能性があります。自団体の工程表も、年度ごとに確認・見直す運用へ切り替えることが重要です。
参考:自治体デジタル・トランスフォーメーション(DX)推進計画【第5.1版】
自治体DX推進計画の改定履歴
| 版 | 公表時期 | 重点取組事項 | 主な改定内容 |
|---|---|---|---|
| 第1版 | 2020年12月 | 6項目 | 計画を初めて策定。 情報システムの標準化・共通化、マイナンバーカードの普及促進、行政手続のオンライン化、AI・RPAの利用推進、テレワーク、セキュリティ対策を重点取組事項に設定。 |
| 第2.0版 | 2022年9月 | 6項目 | 「骨太の方針2022」や「デジタル田園都市国家構想基本方針」等を踏まえ、国の理念・支援策を反映。 |
| 第2.3版 | 2024年2月 | 7項目 | フロントヤード改革を筆頭項目に位置付け、公金収納におけるeLTAX活用を追加。 |
| 第3.0版 | 2024年4月 | 6項目 | 重点取組事項ごとの自治体DXの全国的な取組状況を新たに記載するなど、取組の進捗・実態を反映して改定。 |
| 第4.0版 | 2025年3月 | 7項目 | 「自治体フロントヤード改革の推進」を筆頭項目として位置付け、住民接点の改革を強化。「公金収納におけるeL-QRの活用」を独立項目として追加。 |
| 第5.0版 | 2025年12月 | 8項目 | 「自治体の情報システムの標準化・共通化」を、「地方公共団体情報システムの標準化」と「共通化等の推進」に分離。「AI・RPAの利用推進」を「AIの利用推進」に整理。計画期間を設定しない形に変更。 |
| 第5.1版 | 2026年1月 | 8項目 | 第5.0版で再編した8項目の構成を維持し、国庫補助・地方財政措置などの支援内容を更新。 |
※第2.1版(2023年11月)および第2.2版(2023年12月22日)は、主に政府方針、支援策、掲載データ等の更新を反映した改定のため、本表では省略しています。
自治体が直面する課題と、計画が示す打ち手
自治体を取り巻く主な課題は、人口減少、職員不足、財源の制約、住民ニーズの多様化という4つに整理できます。限られた人員・財源で行政サービスを持続させながら、窓口やオンライン手続きの利便性も高めるには、内部業務と住民接点を一体で見直すことが重要です。
限られた行政資源で、サービスを持続させる
住む地域にかかわらず、住民が必要な行政サービスを受けられるようにすることは、地方行政における重要な課題です。しかし、多くの自治体で人口減少や少子高齢化が進み、担い手となる職員の確保も、財源の確保も難しくなっています。
人口減少や低密度化が進む地域では、ごみ収集、上下水道、公共交通などの生活基盤サービスを限られた財源と人員で維持・更新していく難しさが増します。その結果、地域によって必要な行政サービスへのアクセスや提供体制に大きな差が生じるおそれがあります。
窓口の集約を進める場合も、オンライン手続や地域の相談窓口などの代替手段を十分に整えなければ、遠方の住民に時間や交通費の負担が生じかねません。同時に、行政サービスを担う人材の確保も、今後さらに難しくなることが想定されます。
こうした状況で重要になるのが、業務フローそのものを見直したうえでのデジタル活用です。定型的な受付、照会対応、振り分けなどを自動化・AI活用で支援できれば、職員は個別判断が必要な業務や住民への相談・支援に、より多くの時間を充てられます。業務効率化と住民サービスの利便性向上を両立させることが、自治体DXの重要な目的です。
住民の選択肢に「窓口へ行かない」が加わった
行政側の事情だけでなく、住民が行政手続に求める利便性も変化しています。平日の日中に来庁しにくい人や窓口での待ち時間に負担を感じる人にとって、手続きの利便性は以前から課題でした。手続きによっては「オンラインで完結できるようにしてほしい」という期待も高まっています。
オンラインでの本人確認や行政手続を支える基盤のひとつとして、マイナンバーカードの普及も進んでいます。2026年6月末時点で、マイナンバーカードの人口に対する保有枚数率は83.4%に達しています。マイナンバーカードによるオンライン本人確認を活用した手続きも、より現実的な選択肢になっています。ただし、カードを保有しない人やオンライン利用が難しい人への代替手段・支援をあわせて用意することが必要です。
参考:総務省「マイナンバーカードの保有状況について(令和8年6月末時点)」
課題と打ち手の対応図

これら4つの課題に対して、自治体DX推進計画は、窓口改革、システムの標準化・共通化、AI活用、テレワークといった代表的な打ち手を示しています。窓口改革は住民ニーズの高度化に、標準化・共通化は財源の制約に、AI活用とテレワークは職員不足に対応する打ち手として位置づけられます。
自治体DX推進計画の重点取組事項8項目
最新版の重点取組事項は、
- 自治体フロントヤード改革の推進
- 地方公共団体情報システムの標準化
- 「国・地方デジタル共通基盤の整備・運用に関する基本方針」に基づく共通化等の推進
- 公金収納におけるeL-QRの活用
- マイナンバーカードの取得支援・利用の推進
- セキュリティ対策の徹底
- 自治体のAIの利用推進
- テレワークの推進
の8項目です。
ここでは「住民との接点」「情報システムの土台」「職員の働き方」という3つのグループに分けて整理します。
住民との接点を変える3つの取り組み
①フロントヤード改革、④eL-QRの活用、⑤マイナンバーカードの3つは、住民が行政と接する場面を作り替える取り組みです。来庁回数や待ち時間、書類記入、納付の手間といった住民の負担を減らす効果を示しやすいため、庁内で取り組みの目的を共有しやすい領域です。
自治体フロントヤード改革の推進
フロントヤード改革は、窓口・電話・オンラインといった住民との接点全体を設計し直す考え方です。総務省の手順書では、3つのコンセプトが示されています。住民との接点を多様にすること、データ対応を徹底してフロントとバックヤードをつなぐこと、そして庁舎空間を手続きの場から地域の協働の場へ変えることです。
「書かないワンストップ窓口」はその代表例です。ただし、手順書はシステム導入を出発点にするのではなく、まず現状分析や業務の見直し、対象手続の選定を行ったうえで、必要なデジタル技術を活用する進め方を示しています。
窓口改革の具体的な進め方や、先行して取り組んだ自治体の成果については、次の記事をご参照ください。
窓口DXで実現する住民サービス改革 ~先進事例に学ぶ、効果的な自治体DX推進のポイント~
共収納におけるeL-QRの活用
eL-QR(地方税統一QRコード)は、2026年9月に大きな節目を迎えます。地方税で使われてきた統一QRコードが、2026年9月24日から地方税以外の公金にも広がるためです。対象となり得る公金には、国民健康保険料、介護保険料、後期高齢者医療保険料、道路占用料、水道料金、下水道使用料などがあります。ただし、実際の開始時期や対象となる公金は自治体ごとに異なります。
統一規格のeL-QRを活用することで、決済事業者ごとに個別契約や価格交渉を行う負担を抑えつつ、住民に多様な納付手段を提供しやすくなります。電子納付の利用が広がれば、金融機関における紙の納付書の受付・仕分けなど、収納事務の効率化も期待されます。ただし、財務会計システムなどの改修が必要で、2028年4月までの導入が推奨されています。改修経費はデジタル活用推進事業債の対象です。
マイナンバーカードの取得支援・利用の推進
マイナンバーカードは、普及を引き続き進めながら、行政・民間サービスでの利活用を一層重視する段階に入っています。保有枚数率が8割を超えたいま、問われるのは「持っている人が何をできるか」です。オンライン申請での本人確認、コンビニ交付、書かない窓口での情報確認・入力支援など、マイナンバーカードを活用できる手続きの設計が実務上の重要なテーマになります。ただし、カード未保有者やオンライン利用が難しい人に向けた代替手段・支援も、あわせて設計する必要があります。
情報システムの土台を整える3つの取り組み
①情報システムの標準化、③基盤の運用に関する基本方針に基づく共通化等の推進、⑥セキュリティ対策は、住民からは見えにくいものの、多くのDX施策を安全・継続的に進めるための基盤です。基幹システムの移行、データ連携、調達、セキュリティ対策などを伴うため、情報システム部門を中心に、全庁横断で大きな対応負荷が生じやすい領域でもあります。
地方公共団体情報システムの標準化
地方公共団体情報システムの標準化は、2025年度末を経ても継続する重要な取り組みです。標準準拠システムへの移行支援期間の終期は2025年度末、すなわち2026年3月末でした。しかし、デジタル庁の2025年度末の確定集計では、標準化対象34,366システムのうち、期限内に移行を完了できなかった特定移行支援システムは10,013システム、29.1%にのぼりました。
特定移行支援システムについては、デジタル庁・総務省・制度所管省庁が各システムの状況や移行スケジュールを踏まえ、標準化基準を定める主務省令に移行完了期限を設定します。そのうえで、概ね5年以内の標準準拠システムへの移行を目指して支援する方針です。移行後のクラウド利用料や運用・保守費をどのように見積もり、持続可能な形で負担していくかも、今後の重要な検討課題です。
参考:デジタル庁「移行支援期間における特定移行支援システムの数について」
共通基盤に関する基本方針の共通化
③の共通化等の推進は標準化の次に来る考え方で、「国・地方デジタル共通基盤の整備・運用に関する基本方針」に基づく取り組みです。ここでいう共通基盤とは、国と地方の団体が共通して使うシステムやサービス群を指します。自治体ごとの個別構築・個別保有を前提とせず、業務の共通性が高い領域では、共通の基盤やサービスを共同で利用する方向が示されています。
共通化には、対象業務やシステムの性質に応じて、いくつかの実現パターンがあります。代表としては、国・地方の協力の下で単一の共通システムを整備・提供する方式と、国・地方が標準仕様を定め、複数の事業者が標準仕様に沿ったサービスを提供し、自治体が選択する方式があります。共通化は原則として義務ではなく、自治体の主体的な判断にゆだねられています。その分、何を共通基盤に寄せ、何を自前で持つかという判断が求められます。
セキュリティ対策
セキュリティ対策は、標準化・共通化、クラウド利用、オンライン手続、AI活用、テレワークなど、多くの自治体DX施策を安全に進めるための横断的な基盤です。標準準拠システム等でクラウドサービスの利用が進み、住民情報を含む行政データを、庁舎外のクラウド環境で適切に保管・処理する場面も増えています。
従来の「三層の対策」によるネットワーク分離の考え方を維持・見直しつつ、クラウドサービス、オンライン手続、テレワークなどの利用環境に応じて、認証・アクセス制御、暗号化、通信制御、委託先管理を組み合わせた対策が必要になっています。
重点取組事項8項目 早見表
| # | 項目名 | 狙い | 主な関係部門 | 初動の難易度(目安) | 2026年度の着手ポイント |
|---|---|---|---|---|---|
| ① | 自治体フロントヤード改革の推進 | 窓口・オンライン・電話などの住民接点を多様化・充実化し、住民利便性の向上と職員の業務効率化を目指す。 | 市民課、各手続所管課、DX推進担当 | 中 | システム導入を出発点にせず、対象手続の業務フロー、庁舎動線、案内、手続チェックシート等を見直す。 |
| ② | 地方公共団体情報システムの標準化 | 標準化対象20業務の基幹業務システムを国の標準仕様に適合させ、原則としてガバメントクラウド上の標準準拠システムへ移行する。 | 情報システム担当、業務所管課、財政・契約部門 | 高 | 特定移行支援システムは主務省令で定める期限に沿って移行を進める。移行後もクラウド利用料、保守費、運用体制を含む中長期的な費用管理を行う。 |
| ③ | 「国・地方デジタル共通基盤の整備・運用に関する基本方針」に基づく共通化等の推進 | 共通性の高い業務・システムで共通基盤・共通サービスを活用し、重複投資や調達・運用の負担を抑える。 | 情報システム担当、企画部門、業務所管課、財政・契約部門 | 中~高 | 共通化は原則として自治体の主体的判断。共通化する業務、共同利用するサービス、個別対応を残す領域を整理する。 |
| ④ | 公金収納におけるeL-QRの活用 | eL-QR付き納付書により多様な電子納付手段を提供し、収納事務の効率化を目指す。 | 会計・収納担当、財政課、情報システム担当 | 中 | 2026年9月24日から地方税以外の地方公金でも活用可能。対象公金、納付書、収納消込、会計処理、システム改修・運用を確認する。 |
| ⑤ | マイナンバーカードの取得支援、利用の推進 | オンライン本人確認や情報確認・入力支援にカードを活用し、住民の書類記入や来庁の負担を減らす。 | 市民課、DX推進担当、各手続所管課 | 中 | 普及を継続しつつ、オンライン申請、コンビニ交付、書かない窓口などの利活用を検討。未保有者・利用困難者への代替手段も確保する。 |
| ⑥ | セキュリティ対策の徹底 | 住民情報を含む情報資産を保護し、クラウドやオンライン行政サービスを安全に活用できる状態を整える。 | 情報システム担当、CISO、個人情報保護・監査部門 | 高 | 「三層の対策」を維持・見直しつつ、クラウド、テレワーク、オンライン手続等に応じ、認証・アクセス制御、暗号化、通信制御、委託先管理を確認する。 |
| ⑦ | 自治体のAIの利用推進 | 文書案作成、議事録要約、検索・分類などにAIを活用し、職員の作業を支援する。 | DX推進担当、情報システム担当、全庁の業務所管課、AI統括責任者等 | 中 | 小規模なユースケースから始め、利用ルール、個人情報・機密情報の取扱い、出力確認、効果測定を整える。生成AIの導入率は自治体種別で差がある。 |
| ⑧ | テレワークの推進 | 柔軟な働き方を広げ、平時の業務効率化と感染症・災害時の業務継続を支える。 | 人事・総務担当、情報システム担当、各部門 | 中 | 在宅勤務を含むテレワークを、働き方改革と業務継続の両面から位置付ける。端末、認証、通信、情報セキュリティ、業務継続計画との整合を確認する。 |
職員の働き方を変える2つの取り組み
⑦AIの利用推進と⑧テレワークは、職員の業務効率化や柔軟な働き方、業務継続を支える取り組みです。
自治体のAIの利用推進
特にAIは、この数年で位置づけが大きく変わりました。
従来は「自治体のAI・RPAの利用推進」として位置付けられていましたが、第5.0版以降は「自治体のAIの利用推進」へと整理されました。生成AIの急速な普及も背景に、自治体におけるAI活用の重要性が高まっています。
ただし、生成AIの導入状況には、自治体類型による差があります。総務省の調査(2024年12月31日現在)では、生成AIを導入済みの団体は都道府県で87.2%、指定都市で90.0%に達する一方、その他の市区町村では29.9%にとどまりました。実証実験中・導入予定・検討中の団体を含めると、導入に向けた取り組みはさらに広がっています。
活用例としては、あいさつ文案の作成、議事録の要約、企画書案の作成、メール文案の作成などが挙げられます。いずれも、生成AIの得意な文書作成・要約・整理に関する業務です。個人情報や機密情報を扱わず、職員による最終確認を行える業務から試行することは、導入初期の選択肢のひとつになります。
一方で課題も明確です。主なものとしては、AI導入・活用を担う人材や知見の不足、生成内容の正確性・信頼性への懸念、費用対効果や業務削減効果の測定の難しさなどが挙げられます。こうした課題は技術面だけで解決できるものではありません。AIに限らず、自治体DXでは、推進体制、人材・スキル、利用ルール、効果測定をどう整えるかが共通して問われます。
テレワークの推進
テレワークは、都道府県では導入が進む一方、市区町村ではなお導入・定着に課題が残る領域です。ただし、目的を「在宅勤務の実現」に限定すると本質を外します。テレワークを、災害時や感染症流行時にも行政機能を維持し、非常時優先業務を継続しやすくする手段として、業務継続計画に位置付けることが重要です。
自治体によるAIの導入と活用については、次の記事をご参照ください。
自治体のAI導入と活用はどう進める? 導入手順、注意点、成功事例を解説
重点取組事項を補完する3つの取組と推進体制
重点取組事項に加えて、計画では「自治体DXの取組とあわせて取り組むデジタル社会の実現に向けた取組」として、3つの領域が示されています。「デジタル実装の取組の推進・地域社会のデジタル化」「デジタルデバイド対策」「デジタル原則を踏まえた条例等の規制の点検・見直し」です。
このうち、デジタルデバイド対策は、「誰一人取り残さない、人に優しいデジタル化」という理念を具体化するうえで、特に重要な取り組みです。オンライン化を進める際に、デジタルに不慣れな人への支援や代替手段を十分に整えなければ、必要な行政サービスへのアクセスに格差が生じるおそれがあります。窓口や電話などの代替手段を確保し、支援員による相談・操作支援、地域の身近な場所での申請支援などを、オンライン化とあわせて設計する必要があります。本人確認や電子署名を伴う手続きでは、本人による操作・意思確認を確保することも重要です。
計画は、取り組み内容だけでなく、DXを継続的に進めるための組織体制、人材確保・育成、全体方針、都道府県・市区町村の連携体制についても示しています。首長のリーダーシップのもと、CIO、CIO補佐官、CISOを含む全庁横断の体制整備が示されています。AI分野では、AIの利活用・リスク管理に係る責任者として、CAIOを設置することも選択肢として示されています。
また、都道府県と市区町村が連携し、デジタル人材のプール、課題把握、共同調達、知見共有などを通じて市区町村を支援する推進体制の構築も示されています。特に小規模な市町村では、単独で全領域のDX人材を確保することが難しいため、広域連携を実行力につなげられるかが重要になります。
デジタルデバイドの課題と対策については、次の記事もあわせてご参照ください。
デジタルデバイド対策の進め方|自治体担当者のための実践ガイド
自治体DX推進計画を進める5ステップ
自治体DX推進計画と自治体DX全体手順書を踏まえると、実務では、①DXの認識共有、②全体方針と優先業務の決定、③推進体制の整備、④取組の実行、⑤効果検証と改善、という5つの段階で進めると整理できます。すべてを同時に変えようとせず、住民・職員双方の負担が大きく、改善効果を見込める業務から着手することが現実的です。効果を測る指標は、取り組みを始める前に設定します。
以下では各ステップで、現場で実際に起きやすい失敗とともに説明します。
ステップ1〜2:認識共有と優先業務の決定
まず、DXを進める意義と目的について、職員全体が共通の認識を持つことが重要です。
ここで避けたいのは、DXを単なるシステム導入と同義にとらえることです。業務のやり方を見直さないままツールだけを追加すると、二重入力や二重運用が残り、かえって職員の手間が増えることがあります。システムの話に入る前に、「何のためにDXを進めるのか」を共有することが重要です。
次に、すべての業務を同時に進めるのではなく、優先する課題や取り組みやすい業務を選びます。絞り込みの判断軸は次の3つです。この3つが重なる手続きは、効果が出やすく、庁内でも成果を示しやすくなります。
- 申請・届出件数が多い
- 来庁が原則または実質的に必要になっている
- 特定の時期に申請・相談が集中する
ステップ3:推進体制とデジタル人材の確保
取り組みを進めるための体制を整えます。ただし、情報担当部門に十分な人員を確保することが難しい団体も少なくありません。
この前提に立つと、現実的な選択肢は3つです。外部デジタル人材の確保・活用、他自治体との共同調達、都道府県による市町村支援の活用です。自治体DX推進計画や全体手順書でも、都道府県と市町村が連携し、市町村を支援する体制づくりが示されています。自前ですべてを抱えないことが、体制づくりの出発点になります。
ステップ4〜5:実行と、効果の測り方
取り組みを実施したら、定期的に効果を検証し、改善点を見つけます。そのうえで次の取り組みに進みます。
ここで重要なのが、「導入したかどうか」ではなく「使われているかどうか」を測ることです。オンライン申請の窓口を設けても、利用率が低ければ、窓口業務や職員の処理負担を減らすことは難しくなります。
指標の例としては、オンライン申請率、窓口の平均待ち時間、1件あたりの処理時間、職員の時間外勤務時間などがあります。加えて、住民アンケートなどで、「同じ内容を何度も書かずに済んだか」「手続きに迷わなかったか」といった体感も確認します。
評価は総合的に行います。「職員の負担が減ったか」、「ITに不慣れな住民にとっても使いやすいか」、「人的リソースが適切に配分されているか」。この3つの視点を欠くと、住民または職員の片側だけの改善で終わるおそれがあります。
自治体DX推進計画に沿った取り組み事例
実際の取り組みは、住民との接点から始まる例も多く見られます。ここでは2つの事例を、8項目のどこに当たるかを示しながら紹介します。
自治体DXの取り組み事例については、次の記事もあわせてご参照ください。
【自治体DX】6つの先進事例から学ぶDXを成功させるポイント!
LINE連携で行政手続きをオンライン化(茨城県笠間市)
課題:公民館・地域交流センターなどの施設利用予約や、子育て・福祉相談の予約を含む行政サービスについて、来庁や電話に頼らず利用できる選択肢を広げる必要がありました。
対応:対象となる行政手続やサービスについて、オンライン申請・Web予約を利用できるようにしました。また、オンライン専用ホームページ「笠間市デジタル支所」を開設し、利用者がわかりやすく、申請しやすい環境を整えました。
取り組み内容:笠間市では、市の公式SNSでフォロワーが最も多いアプリがLINEであることに着目。2022年4月よりNTTデータ関西が提供する電子申請・オンライン申請サービス「e-TUMO APPLY」などを活用して、LINE公式アカウントから行政手続きのオンライン申請受付を開始しました。
LINEと電子申請を連携する取り組みは茨城県内初であり、全国でも先行して連携を進めている自治体のうちのひとつです。
効果・期待:窓口に来なくても、LINE経由で行政手続きのオンライン申請や、子育て・福祉相談ウェブ予約、公民館・地域交流センターの予約などができるようになりました。市民の使い勝手を考え、利用者にとって身近なLINEから電子申請へアクセスできる環境を整えました。
本事例の詳細については、次のページをご参照ください。
コンパクトシティ内の自動運転バス運行(北海道上士幌町)
課題:人口減少を一因として、地域における公共交通機関の維持が難しくなっていました。公共交通の確保は、高齢者を含む住民の移動手段や外出機会を支えるうえでも重要な課題でした。
対応:上士幌町では、大手通信関連企業と協働して、役場を中心とした半径1キロメートル以内に主要な施設や住宅が密集するコンパクトシティづくりを推進していました。そこに自動運転バスを導入することで、地域公共交通に関する課題の解決を図ったのです。
取り組み内容:自動運転バスの実証実験を重ね、雪や氷点下の環境においても、必要な対策を行うことで安全に運行できることを確認しています。そして、役場、病院、道の駅、交通ターミナルといった主要施設を結ぶルートで、1日4便の自動運転バス運行を開始しました。
効果・期待:住民の移動手段を確保し、暮らし続けやすい地域を目指す取り組みです。今後も、利用状況や地域公共交通の維持への効果を継続して検証することが求められます。
この事例は、重点取組事項とあわせて進める「デジタル実装の取組の推進・地域社会のデジタル化」に位置付けられます。
子どもから高齢者まで利用できる自治体給付サービス(茨城県守谷市)
課題:これまでの電子的な給付の仕組みでは、15歳未満への対応ができていませんでした。デジタル機器の操作に不慣れな住民への配慮も十分ではなく、給付にかかる事務の負担も課題となっていました。
対応:マイナンバーカードを使った15歳未満の本人認証に対応し、年齢を問わず申請できる形にしました。あわせて、デジタルの利用が難しい住民に向けて、市役所窓口でのアカウント登録支援と、紙の商品券による受け取りという選択肢を用意しています。
取り組み内容:守谷市では、NTTデータ関西が提供するスマートシティポータルアプリ「EYE-Portal」を活用し、2026年に給付サービスの運用を開始しました。給付の申請から受け取りまでを、アプリ上で完結できます。
効果・期待:2026年7月30日時点で、市人口の約75%にあたる約5万2千人が利用しています。守谷市は「誰一人取り残さない、人にやさしいデジタル化」を基本理念に掲げており、この取り組みはその実践例といえます。
この事例が対応するのは、重点取組事項⑤マイナンバーカードの利用の推進と、自主的取組事項のデジタルデバイド対策です。オンライン化の推進だけでなく、デジタルの利用が難しい人への支援を同時に設計しています。
EYE-Portalの詳しい内容は、次のページをご参照ください。
スマートシティポータルアプリ EYE-Portal|NTTデータ関西
まとめ:自治体DX推進計画は「読む計画」から「毎年動かす計画」へ
自治体DX推進計画は、重点取組事項が8項目に再編され、計画期間は設けない形に変わりました。あわせて、別紙の取組スケジュールを毎年度更新する運用へ移行しています。一度確認して終わりではなく、国の動向や自団体の進捗に応じて継続的に見直す計画になったといえます。
システムの標準化は、期限を過ぎたあとも続きます。しかし、住民向けの改善には、標準化の完了を待たずに着手できるものもあります。基幹システムの移行と住民接点の改善は、相互に連携させながら並行して進めることができます。
人口減少や過疎化のなかで自治体業務を維持し、行政サービスを安定して提供していくうえで、DXの推進は重要です。
ただし、最初から完璧な全体計画を描く必要はありません。住民の不便が大きく、改善効果を測りやすい手続きを選び、着手前の数字を記録してから始める。それだけで、次の一手を組み立てる材料が手に入ります。小さく始めて、測って、広げていく。それが自治体DXを着実に進める方法です。
行政手続きのオンライン化や、住民への情報の届け方について具体的に検討したい場合は、お気軽にご相談ください。
自治体DX推進計画に関するよくある質問
Q1. 自治体DX推進計画は何を定めた計画ですか。
総務省が2020年12月に策定した、自治体が重点的に取り組むべきDXの事項と、国による支援策・主な取組スケジュールを示す計画です。国のデジタル政策のうち自治体に関わる施策を具体化し、自治体の取組を支援する役割を担います。
Q2. 重点取組事項は何項目ありますか。
現行の第5.1版では8項目です。自治体フロントヤード改革の推進、地方公共団体情報システムの標準化、共通化等の推進、公金収納におけるeL-QRの活用、マイナンバーカードの取得支援・利用の推進、セキュリティ対策の徹底、自治体のAIの利用推進、テレワークの推進が挙げられます。策定当初は6項目でしたが、改定を重ねて現在の8項目に再編されました。
Q3. 計画期間はいつまでですか。
「2025年度末まで」という計画期間は廃止され、現在は期限を設けない形になっています。別紙では、自治体の主な取組スケジュールを5年間を目途に示し、毎年度更新します。
Q4. 自治体DX全体手順書との違いは何ですか。
計画は主に「何に取り組むか」を示し、手順書は主に「どう進めるか」を示します。窓口改革については、別途「自治体フロントヤード改革推進手順書」が2025年5月に公表されています。
Q5. システム標準化の移行期限を過ぎた場合はどうなりますか。
2026年度以降の移行とならざるを得ないことが具体化したシステムは、「特定移行支援システム」として扱われます。標準化基準を定める主務省令等で移行完了期限が定められ、概ね5年以内の移行を目指して支援されます。2025年12月末時点の見込みでは、これをひとつ以上抱える団体は1,788団体中935団体、52.3%にのぼりました。
Q6. eL-QRはいつから税以外の公金に使えますか。
2026年9月24日から、地方税以外の地方公金でもeL-QRを活用した電子納付が可能になります。対象となり得る公金には、国民健康保険料、道路占用料、水道料金などがあります。導入にあたっては、財務会計システム等の改修や運用見直しが必要になる場合があります。総務省は、2028年4月までの積極的な導入を自治体に呼びかけています。
Q7. 小規模な自治体は何から始めればよいですか。
まずは申請件数が多く、来庁が原則または実質的に必要で、繁忙期が集中している手続を候補に、改善効果と実現可能性を見ながら着手するのが現実的です。クラウド型の電子申請サービスであれば、基幹システムの移行完了を待たずに導入できる場合があります。こうしたサービスは複数の事業者から提供されているため、対応できる手続きの種類や既存の業務との連携のしやすさを比べて選びます。
NTTデータ関西では、住民向けの電子申請サービス「e-TUMO APPLY」を提供しています。スマートフォンやパソコンから各種行政手続きの申請が可能です。
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