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自動生成された高精度な予測モデルで
開発業務をスピードアップ。
AI活用がグループ全体に広まる

『ムーブ』『タント』などの人気車種を有し、スモールカー市場を中心に私たちの身近な暮らしを支えるダイハツ工業株式会社。
歴史をさかのぼれば、創業の年である1907年に日本で最初の国産エンジンを開発するなど、高度で先端的なモノづくりの伝統を受け継ぐ会社でもあります。同社では今、AIを用いた自動車の開発を推し進めています。モノづくりの仕組みを大きく変える可能性があるこの取り組みに、NTTデータ関西が提供するソリューション『DataRobot』が活用されました。

課題

高度化・多様化が加速する自動車開発に対応する新たな仕組みが必要

全社的にAIを展開するにも、ノウハウが少ない

AIの活用を進めるも、多数の部門でAI活用が進んでいない

効果

  • 半年間かかっていたモデル生成がわずか1クリックに

    機械学習が自動化されており、高精度な分析手法を短時間で生成することはDataRobotの大きな特徴。約半年間かけてチューニングしていた分析モデルを、DataRobotはわずか1クリックで生成した。
  • DataRobotによりハードルが下がり、機械学習が身近なものに

    モデル構築は専門知識やコーディングが必要で高いハードルであったが、DataRobotによってハードルが下がった。その結果、誰でも機械学習を試せるようになり、小さな成功が短期間で積み上がった。
  • AIの効果が社内に浸透。ボトムアップ型で導入の機運が高まる

    好事例を社内で共有したところ、短期間で他部署やグループ企業でもDataRobotを使ってみたいという機運が高まり、100件ものテーマが集まるようになった。その多くが現場の若手から寄せられたものであり、ボトムアップでDataRobotを活用して業務を改善していく土壌が生まれた。

DataRobotを導入する狙いは?

太古氏

燃費や安全性能に代表されるように、自動車に求められる性能はどんどん高度化しています。それに伴い、開発や製造の現場でも検討すべき事項や対応しておくべき事項は増え続けています。だからといって、開発に費やすことができる時間が増えるかというと、必ずしもそうではない。従来と同じような仕事の仕方では、競争力のあるクルマを生み出すことは難しくなっているのです。
そのような背景から、クルマづくりにAIを活用できないかと考えるようになりました。2017年のことで、当時は私が個人的に勉強をするという、ごくこじんまりとしたスタートでした。

AIについて学ぶにあたっては、データサイエンティストが集まる勉強会に参加したり、トヨタグループと滋賀大学が共同で運営しているAIの道場に参加したりしました。このなかで、私が所属するエンジン開発の部門においてAIが有効な手段となり得ることを知りました。そこで、エンジンのノッキング※1の抑止にAIを用いることを考えました。どのような条件のときにノッキングを抑えることができるのか、ノッキングを生じさせている因子は何なのかを、AIによって導き出そうと考えたのです。

DataRobotのことを知ったのは、これらの社外の勉強会の場を通してです。
NTTデータ関西は、当社が拠点を置く関西圏でDataRobotを扱っており、なおかつ、NTTデータグループ全体でのサポート体制(サイエンティストの配備)が構築でき、当社と一緒にAIを実現してくれる会社であるため、NTTデータ関西を選びました。

最初は私の個人的な活動だったAIに関する取り組みも、上司が賛同してくれて一緒にセミナーに参加するなど、徐々に広がりが生まれていきました。そういった社内的な背景もあり、2020年1月に、試験的にDataRobotを導入して効果などを検証するPoCを行うことになりました。

DataRobotを導入後、どのような効果が現れましたか?

DataRobotによる業務の効率化について教えてください。

太古氏

もっとも顕著な効果は機械学習の自動化です。
AIは予め作成した機械学習のモデルに分析したいデータを読み込ませることで、未来予想やシミュレーションなどの分析結果を投げ返してくれます。ここで大変なのは、機械学習のモデルを作ることです。精度の高いモデルを作るには専門家によるチューニングが欠かせません。私の場合、勉強会などで学んで試行錯誤しながら作った結果、半年もかかりました。

それがDataRobotは、わずか1クリックで高精度のモデルを作ってくれたのです。「モデルを生成する機械学習を自動化する」という、DataRobotの強みを感じずにはいられませんでした。同時に、DataRobotであればAIの専門的な勉強をしなくてもAIが使えるようになる、機械学習が誰にとっても身近なものになるとも感じました。

DataRobotの活用に向けた、社内での変化について教えてください。

太古氏

PoCでは、勉強会で知り合った他部署のメンバも加わり、1人が1テーマを持ってDataRobotの活用にチャレンジしました。私が取り組んだノッキングの抑止では、不具合を引き起こしている因子が何であるかを高い精度で導き出せることがわかりました。他のメンバも同様に、「DataRobotは業務に使える」という感触を得ました。これらの結果、2020年4月に本格導入を行うことになりました。

PoC以降、DataRobotを活用した事例を社内で報告する「共有会」というイベントを2回行いました。1回目は5月に開催し、そこでの発表を見て「自分たちも参加したい」という部署が6つも手を挙げてくれました。また、これらの活動が経営層の耳にも入り、高い評価をいただきました。その結果、2回目以降の共有会に経営層も参加するようになりました。
AI活動が全社的な活動となり、2回目は1回目の約3倍強に広がり、20の事例が発表されました。発表内容は、生産技術部門が行った製造工程における不具合の因子の求め方や、材料部門が行ったサビと地域との関係性など、どんどん広がってきています。グループ会社も工場での検査におけるAIというテーマで発表をするなど、ダイハツグループ全体にDataRobotが広まろうとしています。

DataRobotの現在の活用状況をお教えください。

太古氏

この動きをさらに加速させるために、「どんな業務でDataRobotが活用できるだろうか」を考える「テーマ創出ワークショップ」を企画しました。

ワークショップの開催に向けて、まず、テーマの基となりそうなアイデアを広く募りました。ここで寄せられたアイデアは100件にもおよびました。社内の多くの人がDataRobotに興味を持ってくれ、業務の改善に向けた期待を寄せてくれているのです。現在、これらのアイデアのなかから実現性の高さや業務に対する効果の大きさなどを精査し、取り組むべきテーマの絞り込みを行っているところです。

DataRobotの活用に参加してくれているメンバや、テーマ創出ワークショップにアイデアを寄せてくれたメンバは、大半が現場の最前線で業務に携わる若手社員です。トップダウンで「やらされている」のではなく、ボトムアップで若手が自らの意思で取り組んでいるところが、当社の特色かもしれません。また、そういった土壌が醸成できたことこそが、DataRobot導入の効果といえると思います。

仕事をしているとどうしても、目の前の業務や担当しているプロジェクトを優先してしまいます。AI活用のような「重要だけど緊急性は低い」業務は、後回しになりがちです。それに対して現在の当社は、AI活用を「今、取り組んでおくべきこと」として優先順位を上げることができています。これも、DataRobotを導入したことによる効果だといえます。

ちなみに、社内での勉強会などには、部門のトップや経営に携わる方々も参加されています。担当業務や役職の枠を越えて、「AIはどう使える?」を真剣に検討しているのが、現在の当社の姿です。

DataRobotの効果をより多く引き出すために、どのような取り組みを行っていますか?

太古氏

DataRobotは非常に優秀ですが、うまく使いこなすにはコツも必要です。
例えば、ある一定量のデータがないことには、予測や分析をすることはできません。また、DataRobotに読み取らせるためには所定のデータの取り方をしなければならないなど、一筋縄にはいかない部分もあります。DataRobotが導き出した分析結果も、読み取ったり業務に落とし込んだりするためには専門的な知識が必要です。
定期的に開催している勉強会は、これらの課題を解決する場になっています。勉強会ではNTTデータグループのデータサイエンティストが講師を務めてくれ、私たちのさまざまな疑問に答えてくれたり、データの集め方・読み取り方などをアドバイスしてくれています。
AIを上手に使うためのノウハウが蓄積しつつあること、それを自分の部署へ持ち帰って指導役を務めてくれる人材が育ちつつあることも、DataRobot導入による効果です。

今後の課題・目標は?

太古氏

AIの民主化※2、すなわち誰もが気軽にAIを利用できるようにすることです。
経営陣もこの点には大きな期待を寄せてくれており、「ダイハツグループ全体でAIを民主化しよう」と呼びかけてくれています。

現在、私が所属するパワートレイン制御開発部のなかに、DataRobotをはじめとしてAIに対する理解が深いメンバを増員しており、全社的なAIの一般化に向けた牽引役となっています。実装が進むと、エンジニアも増員していきたいと考えています。

業務のなかにDataRobotの活用を落とし込み、今以上に効果を実感しやすい仕組みを作り出すことも重要です。
AIは現在、社会的に大きな注目を集めています。多くの社員が興味を持って前向きに取り組んでくれているのは、目新しくて効果が「ありそう」だからという側面もきっとあるはずです。機運が盛り上がっているうちにしっかりとした効果を出せば、取り組みは継続します。
逆に、十分に効果が出せないと一過性のブームで終わる危険性もあります。そうしないためにも、PoCで効果が確認できたテーマは実装へ向けてどんどん進めていきます。また、効果が期待できそうなテーマには積極的にチャレンジしていきます。

効率化どころではなく、仕組みから根本的に変わるともいわれる今後のビジネスにおいて、AIは欠かすことができません。
当社がそのリーディングカンパニーとなることを、私は思い描いています。

※1 ノッキング
運転中のエンジンが「カラカラ」「カンカン」という金属音を立てたり、車体がガタガタと揺れる現象のこと。放置するとエンジンの破損につながることもある。
※2 AIの民主化
誰もが公平に利用することができ、かつ、その利用者自身で、適正および公平な運用、成長に参画する環境が実現している状態。
ダイハツ工業株式会社