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キーワードは「定型」「定期的」「大量」。
RPAは大学の業務との相性が抜群

関西を代表する私立総合大学である立命館大学。歴史ある京都・衣笠のキャンパスはもちろんのこと、京都・朱雀キャンパス、さらに滋賀や大阪へもキャンパスは拡大しています。また、学校法人立命館のもとには小学校から大学まで、九州から北海道まで、多様な学びの場を全国に展開し、次世代を担う人材の育成に努めています。そんな立命館大学も、少子化の現代においては魅力ある学校運営を推し進め、競争力を保つことは最重要ともいえる課題。そこで、業務を効率化するとともに経営に役立つ情報を抽出できる各種のシステム導入が進められてきました。
この過程で浮かび上がったのが、人手に頼らざるを得なかった単純ながらも大量で定期的に発生する定型業務。
ここにメスを入れることでさらなる業務の効率化を図り、職員の業務の軸足を「作業」から「創造的業務」へと移行することはできないか――。財務部において試行的に始まった先進的取り組みが、RPA(robotic process automation)の「WinActor」とともにスタートしました。

課題

職員の業務を、経営に有効な情報の抽出や分析などの「創造的な業務」に集中させたい

単純ながらも手作業に頼らざるを得ない「定型業務」が定期的に大量に発生する

効果

  • 年間25万件発生する定型業務を自動化
    支払手続きのための確定操作をWinActorに置き換え。1回あたり約3,000回繰り返していた「画面を確認してクリックする」という業務を自動化した。この業務は毎週必ず1回発生していたため、年間の作業数は約25万件に及んでいた。
  • 毎週1回・4時間かかっていたERP上のデータ調整作業が自動化
    運用しているERPでは、システムの上流にあるデータと下流にあるデータの調整が不可欠だった。この作業は毎週1回発生し、所要時間は約4時間。WinActorにより自動化されることで、業務は大幅に効率化された。
  • 全学的な展開とERPのさらなる有効活用に向けた足がかりを築く
    多種多様な定型業務があり、それらが定期的に大量に発生するという大学ならではの業務とRPAの相性の良さが実証された。さらには、将来の全学的な展開の可能性も。RPAが活用されることで職員は創造的な業務への集中が可能になるため、ERPを活用した経営を支えるデータの抽出や分析への道筋はさらに確かなものになった。

WinActor導入の背景は?

野口氏

本学では2017年度に会計システムをERPに入れ替えました。この新システムの活用を進めるために、仕事の中身や業務フローを見直すことになりました。その中で役立つツールとして検討に上がったのが、RPAです。

酒井氏

ERP導入の目的は、データの分析を行うことで経営に役立つ情報を抽出しようというもの。こういった業務に職員がより多くの労力を投入できるようになるために、単純作業ともいえるような仕事はRPAに移行させようと考えたのです。
そもそも、大学という組織はRPAと非常に相性がいいと考えています。大学には、定期的に行う大量で定型の業務が何種類もある。これらはRPAに置き換えやすい業務です。

三原氏

私はシステムに関してはまったくの素人で、いわば、「ユーザー代表」として今回のWinActor導入に携わりました。私がRPAを初めて実際に見たのは、2017年11月の展示会。日頃行っているような事務仕事をRPAが自動的に進めていく様子を見て、「こんなことができるんだ!これがいい!」と興奮したことを覚えています。

野口氏

もともと情報システム部門にいた私からすると、「安定して動くのだろうか?」など、疑問点もありました。ただ、WinActorには「スモールスタートしやすい」という強みがある。そのことも、導入の一つの要因になりました。

現在の活用状況と導入後の効果は?

三原氏

支払手続きを行う業務の中の、「確定」と呼んでいるプロセスをWinActorに置き換えました。これは紙ベースの業務でいうところの、承認が終わったものに点検印を押すプロセス。システム上では、画面に表示される内容をチェックし、「OK」ボタンをクリックする作業です。クリックすることで支払業務は、次のプロセスへ進みます。

酒井氏

“それだけ”ともいえる業務なのですが、まず、画面を最初から最後までスクロールダウンするのが非常に手間がかかる。しかも、1回に行う作業は約3,000件。この作業は毎週必ず行いますから、年間でいえば約25万回。それを自動化できるのですから、業務効率の改善という意味ではとても大きな効果を生むことができます。

三原氏

本学のERPでは、システムの上流と下流でデータを調整する作業が発生する箇所があります。この作業は手作業で行っていました。1週間に1回、1回あたり4時間ほどかかる作業です。これもWinActorに置き換えて自動化しました。

野口氏

運用を開始したのが2018年7月。今は効果の測定を行っている時期でもあるので、まだ、明確な数字としての変化は把握していません。ただ、感覚値としてはかなりの効率化が図られたように思います。先ほど紹介した2つの業務の他にも、現時点では2~3個の業務をWinActorに置き換えました。いずれも、定期的に必ず行っていた業務で、手作業で行うと5~10分程度かかっていたもの。1回の時間はわずかでも、積み重なればかなりのものになります。それに、毎日の作業から開放されるという、心理的な負担の軽減も大きいです。

導入にあたって心がけたことは?

野口氏

まずは、「どの業務をRPAに置き換えるか」をしっかりと議論しました。「定型」「定期的」「大量」というRPAの特性を生かせる業務であることはもちろんですが、万が一、意図しない処理をRPAが行ったとしても影響を最小限に留められるものを選びました。そのうえでRPA用のシナリオを作る難易度や業務そのものの重要性などを加味し、優先順位を付けて置き換えを進めています。

三原氏

「野良ロボット」、すなわち、私たち職員の知らないところで勝手に動いているロボットにならないようにも心がけました。具体的には、RPAが作動して自動処理を行う前と処理の完了後には、必ず私たち担当者にメールが入るようにしてあります。また、担当者が異動などで入れ替わっても適切に扱えるように、シナリオの設定などに関するドキュメントをしっかりと残すようにしています。

導入した感想は?

三原氏

WinActorは、とても使いやすいです。その理由の1つ目は、システムそのものが日本語であることです。導入に際して候補に上がった他のRPAはどれもが海外製。やはり、日本語だとストレスなく使えますね。マニュアルが充実していることも使いやすさの理由です。疑問があったときなども、問い合わせる前にマニュアルを見れば解決することが非常に多いです。あとは、シナリオの作りやすさです。シナリオを作るための画面がとても見やすく、直感的に作り方やシナリオの意味がわかります。シナリオを改良して別のシナリオとして使い回しすることも簡単にできるので、一度使い方を覚えればどんどん応用できていくように思います。

野口氏

先ほども少し触れましたが、スモールスタートに適しているところが非常に気に入っています。比較的低予算で導入できるうえに、サーバが不要。パソコンさえあれば導入できるのです。この点は、「システム導入」といっても、基幹系のシステムとは大きな違いがあります。
導入に向けた提案時も印象的でした。NTTデータ関西はこちらの疑問や問い合わせに対するレスポンスが早かった。プランも、本学にマッチするようによく精査されたものでした。

三原氏

WinActorを動かすためのシナリオを作るには、これまで私たちが感覚的に行っていたものを可視化する必要がありました。その過程で、「これって、実は無駄なのでは?」「もっとこうしたらいいのでは?」という、業務の見直しができました。これもWinActor導入による効果といえると思います。

野口氏

シナリオ作りにあたっては、業務を見直したうえでWinActorに置き換えるためのベストな方法を考えます。ときにはエクセルを活用したり、バッチを使うこともある。発想を柔軟にし、総合的なIT化が進むというのも、WinActorがもたらした効果かもしれません。

今後の目標は?

酒井氏

WinActorの活用範囲をどんどん広げることです。単純作業は機械に任せてしまい、情報の検討や判断といった、人間にしかできない仕事にできるだけ職員が集中できるようにしたい。そうすることで私たちの部署が作成する資料や指標のクオリティが高まり、今以上に経営判断に役立つ存在になれるはずです。それこそがERPの目標でもあるので、ここへたどり着くための手法として、RPAは大いに活用していきたいです。

野口氏

できるだけ早く実現したいのは、OCRとRPAの連動ですね。OCRを使って書類を読み込み、それをRPAで処理していくというフローを作り上げたいです。スピードアップはもちろんですが、この仕組みができると、人為的なミスも削減できるはず。速くて正確な仕事を機械がしてくれるようになれば、私たち職員は「考える」「判断する」というところにもっと集中できます。

三原氏

他の部署からも私たちの取り組みは注目されています。「使ってみてどう?」「便利になったみたいだね」という声をよく聞きます。

酒井氏

WinActorを導入してみて、RPAは事務業務の多い大学という組織にマッチすることがはっきりしました。これは間違いなく全学的に広げていくことができる仕組みだと思います。システムを活用し、業務効率を改善することや有益な情報を抽出して経営へと活かしていくことは喫緊の課題です。RPAを使う私たちがその先例となれるよう、活用方法のブラッシュアップを続けていきたいです。