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業務課題をみつけ、改善・効率化を実現するために活用したいフレームワーク

 |  業務効率化

いま、日本の企業や自治体など、さまざまな組織においてDXへの取り組みが進められています。政府は誰一人取り残さないデジタル社会を実現させ、一人ひとりの幸せを実現するために、デジタルが広く活用される環境の構築を目指しています。そうしたなか、何からどのように取り組めば、最適なプロセスでDXが推進できるのか、と思案している組織も少なくありません。今回は、取り組むべき優先課題をみつけるためにも、具体的に対策を進めるためにも、有用なフレームワークについて考えてみましょう。

業務改善とは何をどう変えること?

企業でも自治体でも、さまざまな組織が行っている業務というのは「ヒト・モノ・カネ」といった資源を使って製品やサービスをつくり出し、社会貢献を果たしながら社会に存在価値を認められるようになるための活動であるといえます。その業務を改善するということは、「ヒト・モノ・カネ」といった資源の流れを見直し、活動の目的を達成しやすい環境を構築するための行為です。

つまり、業務改善の目的は、現状で抱え込んでいる課題をみつけ、それらを解決する方法を探って実行し、より効率的に業務を遂行できる環境へと改変していくことです。そして、 業務効率化は業務改善の中心的な取り組みのひとつであり「ムリ・ムダ・ムラ」を削減することを指します。「ムリ・ムダ・ムラ」を削減することで「ヒト・モノ・カネ」といった資源が有効に活用されるようになると考えられます。

「ムリ・ムダ・ムラ」のある状態とはどういったものなのかを具体的にみていきましょう。

業務にムリがある

能力以上に成果を求めすぎて、負荷がかかっている状況です。たとえば、スケジュールが合理的に考えてムリだと判断できるほどタイト、対応人員の労力、稼働時間を超えるほどの作業量が集中しているといった状態です。

業務にムダがある

ムリの逆です。能力に比べ負荷が小さすぎる状況です。

たとえば、決算を仰ぐ際、一つひとつ紙の資料を確認が必要な上司に回覧し、押印をしてもらう必要がある状況にもムダが存在します。一人の上司が不在だとしたら、すぐに書類は回覧されません。一つの決裁を仰ぐだけでも時間のムダが発生するかもしれません。

また、会議の際に、事前に必要な資料を紙に印刷をし、人数分そろえて机の上に置いておくことが常態化している環境にもムダがあるといえます。

業務にムラがある

同じ作業において、担当者によって、あるいは時期によって作業時間や品質にバラツキがある状況です。たとえば、検品作業に対して、ベテラン担当者は正確な検品作業を短時間でこなせても、まだ作業に慣れていない担当者は同じ作業をしても時間がかかりますし、ミスが出るかもしれません。

このように「ムリ・ムダ・ムラ」を解消することが業務改善・効率化の目的だといえます。

DX推進と業務効率化の関係について知りたい場合は、次の記事も参考になります。

「DXで業務効率化も実現!成功20事例を紹介」

業務効率化の必要性を詳しく知りたい場合は、次の記事も参考になります。

「なぜ業務効率化が必要なのか?そのメリットと進め方を解説」

業務改善を進める手順

業務を改善していくには、広くて細かな視点で現状を見直し、さまざまな対策を打ち出し、実行しなくてはなりません。まず、大まかにいくつかのステップで業務改善の手順を確認しておきましょう。活用できるフレームワークについても触れていますが、フレームワークの詳細は以下で解説いたします。

現状を知る
現状の業務の流れを把握することからはじめます。たとえば、人材、設備、資金、情報といった要素ごとの状況を理解しておきます。BPMNといったフレームワークを活用して全体像の把握をするのも効果的です。
課題を洗い出す
いま何が問題になっているのかを明確にしていきます。QCDの視点を用いて現状の課題や弱点、バランスの乱れなどをみつけ出します。
課題の原因を探る
問題になっているのは何が原因なのかを探ります。根本原因を突き止めることが問題解決の第一歩です。ここで活用できるフレームワークの一つは、ロジックツリーです。
問題解決策を考える
原因が究明できたら、改善するための対策を練ります。このときに活用できるのが次に紹介するフレームワークのひとつ、ECRSです。
改善策の実行と効果の測定
改善策を実行したら、必ず経過観察をし、効果を測定します。改善策が効果的かを数字でわかるように記録していきます。
評価する
改善策の効果を測定して検証後、効果的であると判断できれば、さらに継続します。効果が期待したほど確認できないなら、改善策を修正し、新たに実施、経過観察、測定を繰り返します。

業務改善に使いたい4つのフレームワーク

業務改善を進めるにあたり、課題を明確にしたり、どのような対策が最適であるのかを考察したりするためには、フレームワークを活用すると便利です。

フレームワークとは、業務において抱え込んでいる課題を可視化するための枠組みのことです。業務改善のために活用できるフレームワークには代表的な4つのものがあります。それぞれ具体的に活用方法をみておきましょう。

BPMN(Business Process Model and Notation)

BPMN表記法というのは、業務プロセスを最初から最後まで図式化するフローチャート手法です。BPMNは国際標準規格に認定された表記方法で、四角形や矢印、丸といった標準化された図形を使って図式を作ります。

BPMNを活用するメリットは、視覚的に業務の流れを示すことによって、全体を把握しやすくなる点です。

たとえば、文章で業務プロセスを解説した場合、技術者と非技術者とでは理解度が異なるおそれがあります。また、管理職と現場担当者とでは同じ業務に対するイメージが違ったり、同じ説明が異なって解釈されたりするおそれもあります。こうした互いの齟齬をなくし、誰にでもわかりやすく業務の流れを伝えられるのが最大のメリットだといえるでしょう。

BPMNには大まかに分けて、目的に応じて3つのレベルがあります。

記述レベル
最も簡単な業務フロー図です。業務の流れを俯瞰することを目的として活用します。
分析レベル
業務フローのなかに例外的な内容が存在する場合、この分析レベルの業務フロー図を用います。業務内容を分析して、どのように改善するのが最適であるのかを検討するときに活用します。
業務システムの実装やプロトタイプの作成が可能なレベル
このレベルは最も複雑な業務フロー図です。業務システムで使われているデータ項目や、外部システムとの連携などを想定して図式化していく際に活用します。

QCD

QCDというフレームワークは、主に生産管理で重視される「Quality(品質)」「Cost(コスト)」「Delivery(納期)」の頭文字から名称がつけられています。QCDは品質・コスト・納期をバランス良く考えることで、顧客満足度の向上につなげるために用いられるフレームワークです。たとえば飲食店における「おいしくて、やすくて、はやい」という価値観もQCDの要素が担保された理想の価値観だといえます。

QCDの考え方を基本に業務改善すべきところを発見し、どのバランスが崩れているのかを明確にしていくことができます。また、業務に取りかかる前に関係者との認識のすり合わせを行う段階でも、QCDの視点で双方の考え方を確認しておくとトラブルの発生を抑えることができます。質・コスト・納期を確認し、理解を統一させておくことで、業務のムダ・ムリな状況を解消できるようになります。

QCDのフレームワークの具体的な3つの要素を、業務改善にどのように応用できるのか、見ていきましょう。

Quality(品質):仕事の質
現状の業務の質はどうであるのかを確認します。
相手とのす合わせ段階では、業務に対して、どれくらいの質が求められるのかを考えます。オーバースペックが良いように考えがちですが、使わないスペックを付加しても、顧客満足にはつながりません。
Cost(コスト):仕事にかかるコスト(時間・費用)
現状の業務でどれくらいのコストがかかっているのかを、数字で確認していきます。
相手とのすり合わせ段階では、どれくらいのコストをかけるのが最適かを考えます。たとえば試作段階で質にこだわり、時間をかけすぎたために、試作回数が少なく検証の余地が残ったのでは、試作の意味がなくなります。
Delivery(納期):仕事の納期
現状の業務で作業の締め切りや納期にムリはないかなどを確認していきます。
相手とのすり合わせ段階では、いつまでに終えなければならない業務なのかを検討します。納期が迫っていたにもかかわらず質を追求しすぎて期日に間に合わなかった、ということになれば契約違反になるおそれも出てきます。

ロジックツリー

ロジックツリーというのは、行動の優先順位を考えたり、問題になっている原因を探り、解決策をみつけたりするためのフレームワークです。

ロジックツリーを活用することで、問題の原因を特定し、解決策を考えやすくなります。また、どれから実施するのか行動の優先順位を明確にすることで、方向性と手順が共有されやすくなります。

実際の業務においては、たとえば、新しいツールを導入する際、候補のツールの各要素を分析していき、網羅的に把握するときなどに活用します。また、問題が発生した際に、根本原因が何であるのかを特定するときにもロジックツリーは有効です。さらに問題を解決するための対策をみつけるときにも活用できます。

ECRS(イクルス)

ECRSというのは、業務を効率化する際に足かせとなっている要因をみつけるためのワークフレームです。

「Eliminate(排除)」「Combine(統合)」「Rearrange(交換・再配置)」「Simplify(簡素化)」の4つの視点で業務を見直し、問題点を探ります。具体的な業務においては、まず「Eliminate(排除)」の視点で、重複している作業などは取捨選択をします。そして統合や再配置を検討し、最後の「Simplify(簡素化)」の視点で、たとえば自動化を進めるなど、ムダな部分を除いていきます。

それぞれの視点を具体的にみておきましょう。

Eliminate(排除)
最初に行うのは、排除です。現状の業務で排除できるところはないかを確認します。ここで重要なのは、一つひとつの業務に明確な目的があるのかを確認することです。そのうえで、本当に必要な業務なのかを問い直します。排除したとき他の業務に影響が出る場合は、排除できない業務である、もしくは他の業務との関連性に問題がある可能性を探ります。
具体的な例としては「定例で開催されている会議」の見直しをする際に活用できます。本当に必要なのか、現状の規模での開催が最適なのか、といった視点で「排除」できるかどうかを検討します。
出張の必要性を見直す場合も、この視点を用いて検討できます。たとえば、出張のかわりにWeb会議で同等の目的が達成できるのではないか、など排除できるかどうかの可能性を探っていきます。
Combine(統合)
次に取り組むのが統合です。業務にはいくつか似たような内容のものが存在します。
たとえば類似する作業を複数の部署が行っている場合、一元化できないかどうかを検討します。発注業務などがその例です。それぞれの担当者が必要な備品をそれぞれに発注するのではなく、発注担当者を決めて集約したものを定期的に発注するようにすれば、重複や漏れが解消されるだけでなく、作業負担も軽減できます。
一方、複雑な業務は分担することで簡素化できないかどうかを検討します。
Rearrange(交換・再配置)
交換・再配置というのは、現状の業務の優先順位を見直すことです。順番を入れ替えたり、手順や環境を変更したりして再配置することで、業務改善を図ります。
具体的には、紙で保存していた帳簿類をシステム化してデジタル帳簿を導入するなどが挙げられます。また、自社ですべてを行っていた作業を専門の外部業者に委託することで、業務効率化を図ることもこの段階で検討します。
Simplify(簡素化)
簡素化というのは、最後の視点です。複雑な業務ほどヒューマンエラーが発生し、仕事の品質を担保するのが難しくなります。そこで、たとえば人が行っていた業務の自動化を検討します。具体的には、繰り返し作成する書類はテンプレート化したり、作業マニュアルを作成したりして、担当者でなくても同じ作業が行える環境を整えることで、技術の属人化や人材育成の時間・コストを削減につなげるなどがあります。また、メールで情報共有していたものを、チャットツールを活用し、情報共有のしやすさや伝達漏れなどを防止する、というのもこの簡素化によって実現できることです。

業務改善のメリット

では最後に、上記で紹介したようなワークフローを活用して業務改善を行うメリットは、どういったものなのか紹介します。

最初に紹介したように業務改善によって「ヒト・モノ・カネ」といった資源の流れを効率的にすると、どのような改善が期待できるのでしょうか。

フレームワークのひとつであるQCDの視点を基に考えると4つのメリットが挙げられます。

品質の向上
製品やサービスの品質が安定し、向上していくと顧客満足度の向上につながります。
コストの削減
質・コスト・納期のバランスを整えることによって、ムリな体制での業務遂行が削減され、ムダな作業を省くことができます。その結果ムラのない品質を提供できるようになり、返品や不良品の発生を抑えることになります。つまり、さまざまな段階でコスト(時間・費用)を押さえる効果が期待できます。
納期の厳守・短縮
ムリすることなく、ムダのない体制で業務を行う環境が整えば、時間的にも余裕をもって作業に対応できるようになります。こうした変化は納期の短縮にもつながります。
働き方改革
ムリな体制で業務を行っている段階では、長時間労働になりやすい環境であったり、現場での対応を必要としたりすることも少なくありません。一部の業務を自動化したり、オンラインで作業を可能にしたり、業務の再構築をすることによって、従業員の負担軽減につながり、テレワークといった自由度の高い働き方が可能な就労環境が実現できます。
こうした組織体制が整うことで、従業員エンゲージメントが向上することも期待できますし、ひいては生産性の向上へのつながる可能性が高まります。

業務効率化の手法についてさらに知りたい場合は、次の記事も参考になります。

「業務効率化のカギはAIの有効活用。事例に学ぶ成功のポイント」

まとめ:

業務改善とは、現状の業務に潜んでいる「ムリな状況」「ムダな作業や状態」「ムラのある作業や環境」をみつけ出して、誰もが納得できる体制を構築しつつ、改善していくことです。このプロセスでは、デジタル化の導入によって業務のやり方を変更し、新たな業務プロセスを確立する必要も出てくるでしょう。また、属人化している作業を標準化し、担当者が変わっても、誰でも対応できるような仕組みを整えておくことも必要になります。

このような業務改善にむけた一つひとつの対策を実施することで、組織全体の業務環境が現状より効率化され、誰もが働きやすい環境へと改変されることが重要です。言い換えれば、業務改善に取り組んでも、どこかに新たなゆがみが生まれたのでは意味がありません。そうした事態を防ぐためには、対策を実施したら、必ず経過を見守り、評価をし、次の改善をすること。つまり業務改善のPDCAサイクルを回し続けることが重要なのです。

また、こうした一つひとつの 業務の見直しをすることは、組織全体のDX推進の一過程でもあるといえます。

それぞれの業務改善プロセスにおいては、さまざまな有効なフレームワークがあります。 具体的な課題解決にむけた対策として、業務のデジタル化やシステムの導入といった改善策がみえてきたら、専門的な知識や事例を豊富に有する企業、たとえばNTTデータ関西のような企業への相談も検討してください。 自社内だけで検討する以上に、効果的なアイデアや具体的な改善方法を知る機会にもなります。

まずは、自社の状況を把握するところから、フレームワークを活用して業務改善に取り組んでみてはどうでしょうか。