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業務効率化のカギはAIの有効活用。事例に学ぶ成功のポイント

 |  業務効率化

働き方改革やDXを推進するための施策を検討する際、必ずといっていいほど出てくる項目が「業務効率化」です。最近はAIの活用が業務効率化を促進させると注目を集めていますが、業務効率化とは具体的に何をどうすればいいのか、また、AIをどう活用すれば実現できるのかを十分に考察されているでしょうか。今回は業務効率化を図るための具体策を事例から学び、AI活用がなぜ有効なのかを考えてみましょう。

なぜ業務効率化を図るのか

長年、あたりまえのように行っている業務には、「ムリなもの」「ムダなこと・もの」「ムラのあるもの」が含まれています。業務内容やプロセスを見直し取り除くことで、労働環境を改善できます。こうした取り組みを実施するのが業務を効率化するということです。

では、なぜ業務を効率化することがこれほどまでに求められているのでしょうか。大きくは以下の理由が考えられます。

人材不足への対応をする

日本の生産労働人口は減少を続けています。多くの企業や自治体では、必要な人材が確保できない状況も起こりかねません。そこで必要となるのが、業務を効率化して、少ない人材を有効に活用する体制です。

業務の見直しを図り、 「ムダなこと・もの」を省くことで、同じ労働力をより多くの作業に割り振ることができます。 また 「ムリなもの」を省くことで労働負荷が軽減され、働きやすい環境へと改善されます。 そうした就労環境が整えば、従業員のモチベーションも高くなり、生産性の高い仕事に集中できる可能性が高まります。さらに、労働環境が整った企業や自治体であれば、就職希望者の増加も期待できます。

DXや働き方改革を進めるためのプロセスを構築する

働き方改革関連法(働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律)が公布され順次施行されています。労働者がそれぞれの事業に応じた多様な働き方を選択できる社会を実現するため、と政府はこの法案の意義を提示しています。またDXを推進して、ビジネスモデルや商品・サービスそのものを改革し、競争力を高めることも求められています。これらを実現するためには、現状の業務フローを見直し、「ムリなもの」「ムダなこと・もの」を省き、従業員の業務負担を軽減するとともに、労働時間の適性化を図ることが必要です。 業務効率化はDXや働き方改革実現のためには、達成しなければならない命題 だともいえます。

業務の属人化を防止し、生産性向上へつなげる

業務においては、長年同じ従業員が担当していたり、従業員によって業務効率や精度に違いが生じたりすることが少なくありません。これは属人化が発生し、情報共有されていないことが主な原因だと考えられます。

既存の業務を見直し、標準化を図ることで「ムラ」を解消できます。たとえば営業成績の良い、経験豊富な営業マンの業務フローを情報として共有できれば、経験が浅い営業マンであっても効率的で効果的な営業が可能になります。また、製品やサービスのムラがなくなれば、顧客満足度も高めることができ、生産性向上にもつながります。こうした 環境を整備するためには、既存業務の見直しと効率化が重要 です。

業務効率化の必要性と進め方については以下の記事も参考にしてください。

「なぜ業務効率化が必要なのか?そのメリットと進め方を解説」

またDXについては以下の記事も参考にしてください。

「DX推進・成功事例から実施のヒントを探る〜国内・海外成功事例22選〜」

「DX(デジタルトランスフォーメーション)とは?定義と導入時の課題、成功へのポイントについて」

AIとは?OCRやRPAで業務効率化はできるのでは?

業務効率化を図るうえで、注目されているのがAIの活用 です。しかし、業務効率化で有効な方法として多くの企業や自治体では、すでにOCRやRPAの導入を進めているところが少なくありません。業務効率化を図るにあたり、OCRやRPAを導入するだけで十分なのでしょうか。

OCR(光学文字認識)とは

OCRというのは、 紙の資料(帳票や請求書など)をスキャナーで読み取り、デジタル上で扱える電子データに変換する 技術をさします。OCRを導入することで、従業員が入力作業を行って電子データ化することに比べると、作業効率は格段に高まります。一方、 OCRによる識字率は改善されつつあるとはいえ、低いのが課題 です。最終的に従業員が確認作業をしたり、修正作業をしたりする必要があります。

RPA(Robotic Process Automation)とは

従業員がパソコンで行っていた定型作業を自動化・代行するためのシステム をさします。RPAを導入することで、手作業で行っていた単純作業から解放されるため、より生産性の高い業務に集中できるようになります。また、人的ミスの軽減になり、修正に費やしていた時間と労力の削減につながります。しかし、 RPAでは臨機応変な判断が求められる業務には対応できません。

AIとは

AIはArtificial Intelligenceの略語です。直訳すると人工的な知能です。総務省が「令和元年版 情報通信白書」のなかで明示しているAIと機械学習・深層学習の関係の項目内においては、「AIに関する確立した定義はないのが現状である」としながらも「あえていえば、AIとは、人間の思考プロセスと同じような形で動作するプログラム、あるいは人間が知的と感じる情報処理・技術といった広い概念」としています。

つまり AIの最大の特徴は、機械学習を重ねることによって作業精度が高まる ことです。そして、膨大な情報から必要な情報を集積し、分析して予測したり、ある結論を導き出したりできることです。こうした 処理能力と学習機能によって、非定型業務の自動化に対応することや、熟練者の技術をデータ化すること、正確な処理・予測を可能にするのがAI だといえるでしょう。

AIのこうした特徴とOCRやRPAとを連携させることで、OCRの読み取り精度を高めることや、非定型作業や判断が必要な作業に対しても自動化を進めることが可能 になります。

しかし、AIを十分に活用するためには、AIに学習させる必要があります。それが機械学習といわれるAIが動作するためのトレーニングです。また機械学習に使用するデータ(教師データ)を作ることも必要です。

AIに学習をさせるための教師データを作るシステムを活用しながら導入することが、効率化をさらに進めることになるでしょう。機械学習を効率化し、AIを活用したソリューションには次のようなものがあります。

DataRobot
高精度の予測と自動化を実現するための「機械学習自動化プラットフォーム」です。 従来であれば、データの準備、モデル生成、評価、業務実装までの作業にデータサイエンティストがおよそ1カ月かかっていたところを、このプラットフォームを活用するとわずか1時間ほどで達成できます。 大幅な時短が可能です。
▼ DataRobotの詳細
DataRobot | ソリューション | 株式会社NTTデータ関西
IoTone
異音検知ソリューションであるIoToneは製造現場の生産設備や鉄道の車両といった「設備」から出る稼働音を聞きわけ、正常な状態であるのか、異常が発生しているのかを検知するためのシステムです。このシステムにもAIが利用されています。AIが、検知対象物からの正常な稼働音を収集し学ぶことによって、異常度を計算し、予兆検知・故障検知・異常検知を高精度で行います。このAIを利用したシステムの特徴は、 収集された音のデータから正常である状態と異常が発生するおそれのある状態を学び、精度を高めていける という点です。そのことにより 従来ならベテランの作業者が音を聞きわけてメンテナンスを実施していた業務も標準化できます。 また、 製造品の品質検査の自動化や、故障発生による製造ラインの停止といったトラブル回避も可能 になります。
▼ IoToneの詳細
異音検知ソリューション IoTone®/アイオートーン | ソリューション | 株式会社NTTデータ関西

AI活用の6事例

AIを活用して業務の見直しと改善につなげた事例をみてみましょう。

AIを何の目的でどのように活用しているかを確認し、自社でのAIを活用して業務効率化を図るときのヒントにしてください。

異音検知システムを活用し、列車走行の安全性を高めると同時に作業の効率化を図る(西日本旅客鉄道株式会社)

西日本旅客鉄道株式会社ではNTTデータ関西が提供している IoToneを導入し、列車の走行音から台車異常を検知する業務の精度向上と効率化を図りました。

IoToneはまず正常な走行音を収録し、機械学習させます。正常な走行音を学習したIoToneは、検知対象の列車の走行音を分析・解析して正常な状態であるのか、異常が発生しているのかを判断し、通常と異なる音を検知すると通知してくれます。 走行音をリアルタイムで解析することができるので、安全運転の支援 になります。また 異音の特徴を抽出し、不具合発生の条件を分析することもできるので、車輌整備の効率化につながります。

社内の照会対応業務の効率化を目指してAIチャットボットを導入し、照会件数全体の13%をAIチャットボットで解決。(共栄火災海上保険株式会社)

共栄火災海上保険株式会社では営業店の業務効率化を目的にAIチャットボットを導入しました。社内に資料があるような内容についての問い合わせや定型的な照会を自動化し、従業員の負担軽減を図るためです。AIチャットボットの運用についても現場の要望を反映させながら進めることで、より使いやすいツールになるといえます。また、照会件数全体の13%をAIチャットボットで解決できたという効果を実感することで、現場での利用が浸透し、さらなる効果が期待できます。

自動生成された高精度な予測モデルで開発業務をスピードアップ(ダイハツ工業株式会社)

スモールカー市場を中心に多くの人気車種を開発しているダイハツ工業株式会社では、高度化・多様化が加速している自動車開発に対応する新しい仕組みとしてAIの活用を進めています。たとえば、エンジン開発部門においては、エンジンのノッキングの抑制を考える場合、ノッキング抑制の条件、またノッキング発生の因子をAIによって導き出し、優れたエンジン開発へとつなげています。

AIは機械学習のモデルにデータを読み込ませることで、予想やシミュレーションの分析結果を出してくれます。労力と時間がかかっていたのは機械学習のモデルを作ることでした。この作業は精度の高さが必要ですので、専門家によるチューニングが不可欠です。そこで、 NTTデータ関西が提供しているDataRobotを導入すると、高精度のモデルをわずかな時間で作ることができました。 さらに、 AIの専門的な知識がなくても、AIが利用できる ようになりました。

▼ 本事例の詳細について

ダイハツ工業株式会社様 | 導入事例 | 株式会社NTTデータ関西

配送網設計でのAI活用で最適化。商品を必要な時間にムダなく配送(株式会社ファミリーマート)

コンビニエンスストア大手の株式会社ファミリーマートでは商品の物流を効率化し、決まった時間に正確に届けることができるような体制を構築するとともに、輸送コストや二酸化炭素排出量の削減への取り組みを進めています。取り組んだのはAIを活用した配送ルートの最適化を図ることです。独自開発したAI技術を使い、全国の物流センター69箇所すべての配送網を作成しました。そして、AIが導き出す的確な配送ルートを設定することで、ドライバー不足への対策にもつながると考えています。

AIの業務量予測で配車や従業員の勤務シフトの最適化を図る(ヤマト運輸株式会社)

創業100年を超えるヤマト運輸株式会社は全国に配送ネットワークを広げて、次の100年を見据えた物流DXに取り組んでいます。そうしたなか、配送現場の生産性向上を目的として、荷物量予測システムを導入しました。

配送業務、集荷処理など多様な業務があるほか、通信販売の利用数の増加やドライバーの不足といった要因が従業員の業務負担を増加させていました。そこで配送センターで扱う荷物量を予測するデータ分析システムを導入。このシステムの活用で、配送センターごとに1日に扱う荷物量を3〜4カ月前に予測し、配達員の人数やトラックの台数を各センターに適正に配分できるようになりました。また、こうした体制が構築されたことで、配送センターで働く従業員やトラックなどの経営資源の最適配置が可能になりました。

茶葉の品質管理にAI画像解析を利用。おいしさの見える化で熟練者技術を標準化(株式会社伊藤園)

茶畑で摘んで生葉を新鮮なうちに「蒸す・揉む・乾燥させる」の一次加工を施した状態にした荒茶を扱っている株式会社伊藤園では、茶葉の品質管理にAI画像解析を活用しています。

従来、茶葉の品質を評価するのには、官能検査が用いられていました。官能検査は見た目、香りといった要素を含めて判断することになるため、熟練した技術者の経験が判断の決め手となります。最近では専用の成分分析機械を使用して客観的な品質評価を行う方法が確立されてはいるのですが、分析機器が高額で、規模も大きくなることもあり、限られた生産農家でしか導入できないのが難点でした。

そこで、AI画像解析による荒茶の品質推定技術を開発し、試験的に運用を開始したのが2022年の春です。

スマートフォンで摘み取り前の茶葉を撮影し、その画像によってAI解析を行います。そして摘採時期の判断指標となるアミノ酸量や繊維量を推定し、茶葉の摘み取り時期(収穫)の適性を判断します。

このシステムが本格的に運用されるようになると、高品質な緑茶原料を安定して提供できるようになるほか、従業員の属人化した技術を標準化することや、労務負担軽減も実現できると期待しています。

AIの活用で効率化できる業務と効果

AI活用の成功事例から、AIによって効率化できる業務とその効果がみえてきました。

顧客対応、チャットボットなど

住民や顧客からの問い合わせ対応にAIを活用している自治体や企業は増加傾向にあります。たとえば、住民票や住民税の問い合わせ、補助金についての質問などにチャットボットを導入する自治体が増えています。そうすることで、24時間いつでも問い合わせに対応することができるので、住民の満足度も高まります。また、職員の業務負担も軽減されると同時に、職員によって対応の仕方が異なるといったサービスの不均一も解消できます。

生産・品質の管理

AIを活用することで製造品質の向上を図ることができます。たとえば、製造工程を自動化することで、人為的ミスの発生を最小化できます。また、異常の検知や予測をし、保全を図ることも可能です。不良品の発生原因を分析し、製造工程を改善したり、検品精度を高めたりして、生産性や品質向上へとつなげられます。

保守・保全

AIを活用して設備保全や保守業務を高度化できます。AIを製造工程に導入することで製造ラインで異常が起こる予兆を検知したり、過去のデータを分析することで保全計画全体をより安全性の高い計画に改善したり、また、機械に不具合が発生した場合に確認し、その原因を改善につなげるために分析を行うことで、保守・保全の精度を高められます。

物流、倉庫の管理

ECサイトの市場拡大にともない物流業務の負担が増加傾向にあります。いち早く商品を正確に届けるために、運送ドライバーの長時間労働化が懸念されます。また、運送ドライバーの不足も大きな問題です。こうした課題を解決するために、配送ルートの最適化や積み荷の効率化などを図る必要があります。また、倉庫の保管においても、過剰在庫や在庫不足にならないように在庫数をリアルタイムで把握し、最適な仕入のタイミングを判断することが必要です。AIを活用すれば、物流の予測を高精度化させ輸送の効率化を図ったり、積載率を効率化したり、到着予定時刻の予測通知などにより再配達を減らしたりなど、ムダな作業を削減することが可能です。また、倉庫管理においての臨機応変な判断の必要な作業もAIを活用すれば、可能になります。

人事業務の効率化

AIを活用して、採用プロセスや離職予測、労務管理などを効率化できます。採用プロセスにおいては、応募者の書類選考を自動化したり、応募者データの分析をしたりすることで、自社において能力を発揮しやすい人材かどうかの判断材料の精度を高め、採用成功へとつなげられます。

営業スキルの標準化と戦略の充実

AIを活用することで、顧客データの分析や顧客対応の自動化を図るとともに、顧客の消費行動や属性データなどから、必要な情報を必要な顧客に的確に届けることが可能となり、顧客満足度の向上につなげられます。また、経験豊富な営業マンのノウハウをデータ化して共有することで、営業スキルを標準化できます。

まとめ: すでに実施している業務効率化対策にAIを連携させ、効果を高めよう

業務効率化はDXを推進し、データを活用することでビジネスモデルを改変し、より競争力の高い組織へと変革するためには必要なプロセスです。また、多様な事情をもった人々が能力を十分に発揮しながら、多様な働き方を選択できる社会を作るためにも、それぞれの企業において、業務を見直し、効率化を図ることは必須です。こうしたなか、すでに 導入が進んでいるOCRやRPAと連動させて、より効果を高めるAIの活用が注目を集めています。 今回紹介した成功事例を参考に、自社においてどのようにAIを活用すれば、効果が得られるのか検討してみましょう。