【事例あり】自治体が活用するスマートフォン用アプリとは?メリットや課題と対応策も解説
総務省の「令和4年版(2022年) 情報通信に関する現状報告の概要」に公表されているインターネットなどに接続するための端末についての調査では、2021年の情報通信機器の世帯保有率は、「モバイル端末全体」が97.3%です。
その内「スマートフォン」が88.6%、パソコンは69.8%です。いまやスマートフォンは多くの生活者にとって便利で身近な情報収集・コミュニケーションの手段だといえます。
そうしたなか、多くの自治体・行政機関はスマートフォンを利活用できるアプリの開発に力をいれています。
今回は、 自治体や行政機関が提供しているスマートフォンで利用できるアプリを「自治体アプリ」と表して、各自治体におけるアプリ導入のメリットや事例を紹介します。 また、自治体アプリの提供を実施する際の課題や対応策についても解説するので、ぜひ最後まで読み進めてみてください。
目次
自治体が活用するスマートフォン用アプリ(自治体アプリ)とは?
自治体アプリというのは、 自治体・行政機関がスマートフォン向けのアプリケーションとして開発したもの です。情報発信・行政サービスの質向上のための専用ツールとして住民向けに提供しています。
住民はスマートフォンにアプリをダウンロードして登録することで、自治体・行政機関からの情報を共有したり、自らの健康管理などに活用できます。
自治体アプリでできること
自治体アプリには、次のような機能が搭載されています。
日常生活を便利にするための情報提供
たとえば、ゴミ出しの日時やゴミの分別方法などを提供できます。また、市民税・所得税の納付期限のお知らせのほか、自治体主催の各種イベント情報なども発信できます。
住民への緊急・防災情報の提供
地震発生情報や、台風接近情報、および避難所の開設状況なども提供できます。
情報が途切れがちになる災害時においては、地域の状況やライフラインの復旧状況などのお知らせの発信にも活用できるでしょう。
観光情報の提供
地域の観光ルートや見どころ、イベント情報などが提供できます。大きなイベント開催時には、駐車場や会場への進入方法などの情報を提供することで、混乱・混雑を回避するのに効果的です。
健康生活のサポート
健康イベントへの参加呼びかけ、ウォーキングや健康診断受診でポイント提供など、住民が健康な生活を送るためのサポートが可能です。また、季節的な予防接種の情報など、病気予防につながる情報なども発信できます。
生活支援・子育て支援に関する情報提供
生活や子育て支援に関わる詳細な情報を提供できます。
たとえば、子ども向けイベントへの参加呼びかけや予防接種スケジュールの提供も効果的でしょう。
問い合わせへの自動応答
住民からの行政手続きの問い合わせ、転入転居届けの方法など、さまざまな問い合わせに対して24時間体制で自動応答できます。
自治体アプリを導入するメリット
自治体や行政機関が自治体アプリを導入することで、さまざまなメリットが期待できます。
情報を1つのツールに集約できる
自治体から発信される住民向けの情報は、広報誌やチラシ、公式ホームページ、SNSなどさまざまな手段が用いられています。
発信手段の多様化は、多様な住民への配慮でもあるでしょう。
しかし、情報を受け取る住民にとっては、どこからどのような情報が発信されており、どのように受け取る方法があるのかがわかりにくい状況だともいえます。
また、自治体職員も複数媒体で情報を発信する必要があるため、情報移行や運用管理の手間がかかってしまいます。自治体アプリを活用することで、すべての情報がひとつの媒体で得られるため、利便性が高まるメリットがあるのです。
情報を一つのアプリに集約できると、職員の業務効率も上がり、ほかの重要な業務にリソースを割けるようになるでしょう。
情報をタイムリーに提供できる
自治体アプリ活用の特徴のひとつは、タイムリーな情報を素早く発信できることです。
広報誌ではその日に起こったことをその日中に伝えることは難しいでしょう。
チラシや公式ホームページでも同様に、情報提供までに時間がかかります。特に、非常時・災害時の情報は重要なものなので、一斉に、タイムリーに住民に届ける必要があります。
自治体アプリであれば、オンライン上で簡単に情報発信できるため、リアルタイム性においても有効なツールだといえるでしょう。
情報発信のコストを削減できる
これまでの情報発信には、自治体発行の広報誌を活用していた団体も多いのではないでしょうか。
広報誌の配布には、住民への配布費用や印刷費用が発生します。
自治体アプリ活用すれば、情報発信の作業はすべてオンライン上で完結するので、手間・費用ともにコスト削減が可能です。
住民の満足度向上が期待できる
自治体アプリは情報発信のみならず、クーポンの発行、自治体で使えるポイントの付与など、多様な機能を利用できます。
そのため、これまでは地域行政に興味を持たなかった住民にも、自治体アプリをきっかけに、地域の魅力を発見し、暮らしやすさを感じてもらえる可能性が高まります。
職員の業務負担を軽減できる
自治体アプリを導入する以前は、職員が情報発信のためのチラシを作成し、配布の段取りをする必要がありました。また、行政サービスの対応の多くは、直接対面で行っていました。
自治体アプリを活用することで、情報発信やサービス対応をすべてオンライン上で手軽に行えます。
そのため、職員の業務負担を大幅に軽減できます。住民にとっても自治体窓口へ出向いて情報を収集したり、問い合わせを行ったりする手間とコストが削減でき、満足度が高まります。
自治体でも、アプリをはじめとしたデジタルツールの導入によるDX推進が進んでいます。
下記の記事では自治体のDXについて事例とあわせて解説しています。
自治体アプリの導入事例3選
自治体アプリの活用方法について、当社が提供するアプリの導入事例を3つ紹介します。
1.健康アプリの活用
兵庫県三木市では、スマートフォンアプリ「アスリブ®」を活用した「みっきぃ☆健康アプリ」を実施しています。 市民の健康づくりを行いながら、デジタル社会にも慣れ親しんでもらうことを目的 として、2022年10月に事業スタートしました。
「アスリブ®」は 健診受診をはじめ、毎日のウォーキングや体重の健康記録、健康イベントのほか、自治体が実施する様々なイベント等にポイントが付与でき、市民の行動変容を後押し しています。また、アプリを通じて、市民の意識調査や事業の振り返りのアンケートが行えるため、 健康施策の検討や事業検証に活用 できます。
さらに、マイナンバーカードを使った本人確認を実施しているため、なりすまし防止だけでなく、マイナンバーカードの利活用を推進しています。
アプリの概要やポイントのため方については、以下のリンクから詳しくご覧いただけます。
▼ 「みっきぃ☆健康アプリ」の詳細について
アスリブ®三木市版「みっきぃ☆健康アプリ」|NTTデータ関西
「みっきぃ☆健康アプリ」はNTTデータ関西が提供する健康アプリ「アスリブ®」を活用した健康促進の事例です。
▼ アスリブ®の詳細はこちらから
下記のインタビュー記事では、アスリブ®の開発背景や機能、活用シーンについて詳しく語っています。
▼ インタビュー記事
健康サポートのデジタル化から行政のデジタル化へ。「アスリブ®」の向こうに見えるもの
2.スマートシティポータルアプリ「EYE-Portal®」の活用
「EYE-Portal®」は、地域のさまざまなサービスやアプリを連携・融合し、ユーザーにあわせた情報提供を可能にする総合ポータルアプリです。
防災をはじめとしたスマートシティに関するサービスに加え、地域の企業や団体が提供する情報やサービスを連携できます。
AIが住民(アプリ利用者)一人ひとりの興味関心、志向を分析してくれるので、アプリ内の情報から適切な情報やサービスを提供できるメリット があります。
また、近年、内閣府が推進しているデジタル田園都市国家構想の施策の一環として、スマートシティモデルの構築にも活用でき、堺市・仙台市でも導入されています。
▼ EYE-Portal®の詳細について
スマートシティポータルアプリ「EYE-Portal®」|NTTデータ関西
3.こども相談チャットアプリ「ぽーち®」の活用
こども相談チャットアプリ「ぽーち®」は、 子どもが内面に抱えている悩みや問題を、匿名で気軽にチャット相談できるアプリ です。
子どもがアプリを通じて悩みを相談すると、各自治体の実情にあわせて自治体職員やスクールカウンセラー、外部機関などの必要な関係者にのみ共有されます。
一つの相談に対して、一人ではなく組織やチームで対応する仕組みになっています。
相談は、GIGAスクール端末を利用して行えるので、個人のスマートフォンを持っていない子供でも利用できます。また教育現場での業務が忙しくて、子どもの相談を丁寧に受ける時間がない教育者に子供と向き合うことも可能です。
▼ ぽーち®の詳細について
自治体アプリを導入する際の課題と対応策
自治体アプリを導入することで、多くの効果が期待できますが、同時に、導入するにあたっての課題や対応策を検討しておくことも重要です。
ダウンロードしてもらうために工夫が必要
自治体アプリを開発したら、すぐに住民が利用してくれるとは限りません。
ダウンロードしてもらうためには、どの媒体でどんなPRをするべきなのか、どうしたら利用者が増えるかを考える必要があります。
まずは、多くの住民が使いやすく、簡単な操作で利用できるアプリであることが前提です。また、アプリをダウンロードしてもアカウント登録が複雑で、何度もやり直しが必要なものだと利用者は増えません。
こうしたアプリの機能や操作性を利用者目線で整えたうえで、さらに利用者を増やすためには、丁寧な説明が必要です。
たとえば、 どのようなアプリケーションであるのか、どのような利用が可能なのか、利用することでどのようなメリットがあるのかを説明 します。また、利用方法やスマートフォンへのダウンロードの仕方などに加え、使ううえでの注意点なども丁寧に伝えなければなりません。
対応策:
WEBサイトやポスターを活用して、事前にアプリのリリースを広く伝え、期間を区切ってサポート体制も用意することが効果的です。
たとえば、健康サポートアプリの提供を広報する場合なら、健康サポートイベント会場の一角に、自治体アプリのダウンロードサポートブースを設けるのもよいでしょう。
使い方の説明やお得なキャンペーンを実施する機会を作ることで興味を持ってもらいやすくなります。
アプリを提供していても使われないままだと、効果がありません。少し手間のかかる作業でも長期的なメリットを考えて、ぜひ取り組んでみてください。
開発・運用にコストがかかる
自治体アプリを開発し、運用するためにはコストがかかります。
アプリの開発費用は、搭載する機能やコンテンツによって異なります。開発期間やエンジニアの単価の乗算で金額が決まるので、多言語に対応したものにする、マップと連携したものにする、アクセス解析機能をつけるなど、なにが必要な機能なのかを明確にしておく必要があります。
また、多くの住民が利用しはじめると、途中でアプリ提供を終了するなどの事態は避けなければなりません。開発しただけで終わりではなく、アプリを公開した後も、トラブルやメンテナンスへの対応、機能の充実と改善といった運用費用が発生します。
対応策:
中長期での運用計画を立て、運用をつづけられる予算の確保をしておきましょう。
また、自社開発での予算に不安がある方は、既存システムを利用することでコストを抑えやすくなります。自社完結にこだわらず、ROIを意識した上で、最適な導入方法を見つけましょう。
まとめ:自治体アプリで複数の業務をまとめて効率化!
自治体アプリは、さまざまな利便性向上や職員の業務負担軽減が実現できると期待されるツールです。
ただし、アプリを開発して提供すれば、思い描く利用状況が実現されるとは限りません。
アプリを有効活用するには、多くの住民に利用してもらえるように、住民の視点に立ち「使いやすさ」「便利さ」「手軽さ」が重要 です。
また、住民へのメリットを考慮したうえで、自治体職員のコストカットに結びつくかどうかも重要なポイントです。
自治体アプリの開発、導入を検討する段階で、多くの事例を手がけているベンダーへの相談は有効な手段のひとつです。
本記事の事例でもご紹介したように、NTTデータ関西では、健康サポートアプリ「アスリブ®」を提供しています。アスリブ®は、 単なる健康アプリではなく、住民と行政をつなぐ健康情報プラットフォームとして、行政からの情報発信やアンケート、住民とのコミュニケーションにも活用 できます。アンケートでは、市民の意識調査や事業の振り返りなどができるため、 健康施策の検討や事業検証に活かす ことができ、自治体にとって有効な情報収集ツールとしてご利用いただけます。
▼ アスリブ®の詳細について
下記のインタビュー記事では、アスリブ®の開発背景や機能、活用シーンについて詳しく語っています。
▼ インタビュー記事