ビッグデータはどのように活用されている?企業の活用事例を紹介
現代のビジネス環境は急速に変化しており、多くの企業がデジタル技術を活用して競争力を高めようとしています。DX(デジタルトランスフォーメーション)の重要な要素の一つとして、 「ビッグデータ」の活用 が注目を集めています。多くの企業が、このビッグデータを活用して、 顧客ニーズの把握 や 業務効率の改善 、 新しいサービスの開発 などに取り組んでいます。一方で、ビッグデータの活用には課題もあります。 膨大なデータから意味のある情報を見つけ出すには、高度な分析技術や専門知識が必要 です。また、個人情報の保護やデータセキュリティの確保も重要な問題として認識されています。本記事では、ビッグデータの基本的な概念から、具体的な活用事例について紹介します。
目次
ビッグデータの基礎知識
ビッグデータの活用事例を理解するためには、まずは基本的な特徴を押さえましょう。ビッグデータとは、文字通り「巨大なデータ」を指す言葉ですが、単に質量を示すものではなく、いくつかの特徴を持つデータのことを指します。総務省によると、
“デジタル化の更なる進展やネットワークの高度化、またスマートフォンやセンサー等IoT関連機器の小型化・低コスト化によるIoTの進展により、スマートフォン等を通じた位置情報や行動履歴、インターネットやテレビでの視聴・消費行動等に関する情報、また小型化したセンサー等から得られる膨大なデータ”のことと定義しています。
ビッグデータを構築する要素
ビッグデータを構築する要素として「3V」と近年追加された「2V」という指標があります。以下にそれぞれの要素について紹介します。
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Volume(量):ビッグデータの膨大な量
ビッグデータの最も顕著な特徴は、その膨大な量です。データはテラバイトからペタバイト、さらにはそれ以上の規模で生成されます。この膨大なデータ量は、企業や組織が意思決定を行う際に重要な情報源となります。例えば、SNSやIoTデバイスからのデータは日々増加しており、これを効果的に活用することで新たなビジネスチャンスが生まれます。 -
Variety(多様性):データの種類や形式の多様性
ビッグデータは、構造化データだけでなく、非構造化データや半構造化データも含まれます。これにはテキスト、画像、音声、動画などが含まれ、多様な形式で存在します。例えば、小売業では顧客の購買履歴やSNSでの反応を組み合わせてマーケティング戦略を立てることができます。 -
Velocity(速度):データの生成・処理・分析の速度
リアルタイムで生成されるデータを迅速に処理し、分析する能力が求められます。特に金融業界や交通管理などでは、即時性が求められるため、高速なデータ処理技術が不可欠です。この速度があることで、企業は市場の変化に迅速に対応できるようになります。 -
Value(価値):データから得られる価値や洞察
単なる大量のデータではなく、それを分析することで得られる知見がビジネスにおいて競争優位性を生むでしょう。例えば、顧客の行動パターンを分析することで、新たな製品開発やサービス改善につながる可能性があります。 -
Veracity(正確性):データの信頼性や正確性
ビッグデータには誤った情報やノイズが含まれることが多く、そのため正確な分析を行うためには信頼できるデータソースからの情報収集が必要です。
このように、ビッグデータはその量、多様性、速度だけでなく、それから得られる価値と信頼性によって、その活用方法や影響力が大きく変わります。企業や組織はこれらの要素を理解し、有効活用することで競争力を高めることができます。
ビッグデータの4つの分類
ビッグデータは、さまざまな種類のデータを含む大規模なデータセットであり、以下の4つの分類に分けられます。
- オープンデータ
- 政府や地方公共団体が提供する公共情報です。これには、交通情報や気象データなど、公共の利益のために広く利用可能なデータが含まれます。
- 知のデジタル化
- 企業が持つノウハウやビジネスプロセスをデジタル化・構造化したデータです。これにより、企業は効率的な運営や新たなビジネスチャンスを創出することが可能になります。
- M2Mデータ
- 機械間通信(Machine to Machine)から生成されるストリーミングデータです。工場の生産ラインやIoT機器からのリアルタイムデータがこれに該当します。
- パーソナルデータ
- 個人の属性情報、行動履歴、ウェアラブル機器から収集される情報などを指します。個人のプライバシーに関わるため、適切な管理と保護が求められます。
ビッグデータの詳細については、次の記事をご覧ください。
ビッグデータの種類や使い方を解説。有効活用して迅速な経営判断を
ビッグデータ活用がもたらす社会的影響やメリット
ビッグデータの活用は、データをいかに適切に流通させ、有効活用するかが鍵となります。
特に、オープンデータを活用したデータエクスチェンジの促進が挙げられます。 データエクスチェンジとは、異なる組織やシステム間でデータを共有する仕組み のことです。例えば、ある会社が持っている交通データと、別の会社が持っている気象データを組み合わせることで、より精度の高い交通予測サービスを提供できるようになります。このように、 データを共有し合うことで、単独では生み出せなかった新しい価値が創造される のです。
これらの多様なデータを組み合わせることで新しい洞察が得られ、その洞察から革新的なサービスが生まれ、そのサービスがさらに新しいデータを生み出すというサイクルが形成されていくでしょう。
また、下記はデータを活用したデータドリブンについて社内の担当者にインタビューした記事です。データドリブン経営のノウハウを語っていますので、ご参照ください。
構想から定着までデータ活用の道のり -お客様と共に歩むNTTデータ関西|NTTデータ関西
下記はお客さま事例としてビッグデータ活用実績の豊富なNTTドコモ様にインタビューした記事です。「全社データドリブン経営」について語っていただいています。
NTTドコモの「全社データドリブン経営」推進を支える、NTTデータ関西のダッシュボード開発、データマネジメント支援|NTTデータ関西
ビッグデータを効果的に活用するポイント
ビッグデータを効果的に活用するには、 技術的な側面だけでなく、組織文化や戦略的なアプローチを含めた総合的な取り組みが必要 です。企業がビッグデータを活用する際の重要なポイントについて紹介します。
明確な目的設定と組織全体での取り組み
ビッグデータの活用は、単なる技術導入ではなく、ビジネス全体の変革につながる可能性があります。そのため、経営層が主導して、会社全体でどのようにデータを活用していくのか、明確な方向性を定める必要があります。例えば、「顧客満足度を向上させる」や「生産効率を20%上げる」といった具体的な目標を設定し、それに向けてどのようなデータが必要か、どう分析するかを考えていきます。また、社員全員がデータの重要性を理解し、組織全体でのデータ活用文化の醸成も行いましょう。
データの品質管理とガバナンスの確立
どれほど大量のデータがあっても、そのデータが信頼できなければ意味がありません。信頼性の高いデータソースを選び、定期的に品質をチェックする仕組みが必要です。また、誰がどのデータに責任を持つのか(データオーナーシップ)を明確にし、データの管理ルールを整備することも重要です。
適切な分析ツールと技術の活用
AI(人工知能)や機械学習技術を活用することで、より高度な分析が可能になります。また、クラウドベースのソリューションを利用することで、大規模なデータ処理を効率的に行うことができます。例えば、NTTデータでは新たにSparkという最新技術を導入し、4000コア以上の処理能力を持つシステムを構築しました。この新システムにより、顧客の行動パターンをリアルタイムで分析し、パーソナライズされたサービスを提供したり、ネットワークの異常を即座に検出して対応したりすることができるようになっています。
データセキュリティとプライバシーの確保
個人情報保護法などの法規制を遵守しつつ、強固なセキュリティ対策を実施する必要があります。特に個人情報を扱う際は、データの匿名化や暗号化といった技術を使って、プライバシーを守ることが重要です。
多様なデータソースの活用と可視化
社内のデータだけでなく、政府や自治体が公開しているオープンデータ、あるいは外部のデータベースなども積極的に活用することで、より幅広い視点での分析が可能になります。また、パートナー企業とデータを共有し合うことで、新たな価値を生み出せる可能性もあります。そして、分析結果を効果的に伝えるために、データの可視化も重要です。グラフや図を使って直感的に理解しやすいダッシュボードやレポートを作成することで、データから得られた洞察を組織全体で共有し、迅速な意思決定につなげることができます。
ビッグデータのさまざまな分野における活用事例
ビッグデータの活用は様々な分野で広がっており、多くの企業や組織が革新的な方法でデータを活用しています。代表的な活用事例をそれぞれの分野に分けて紹介します。
小売業
日本の大手コンビニエンスストアチェーンのL社が、ビッグデータを活用して店舗運営の効率化を図っている事例を紹介します。この企業では、POSデータ(店舗での販売データ)と気象データを組み合わせて分析し、売り上げ向上を実現しています。
具体的には、天候や気温に応じて商品の発注量を調整し、売り切れや廃棄ロスを最小限に抑えています。また、オフィス街と住宅街では顧客ニーズが異なることに着目し、地域特性に基づいて品揃えを最適化しています。さらに、時間帯別の需要予測を行い、来店客数に応じて効率的な人員配置を実現しています。これらの取り組みにより、売上向上だけでなく、食品廃棄量の削減にも成功しています。
自動車メーカー
日本の大手自動車メーカーのA社が、ビッグデータを活用して製品の品質向上や新サービスの開発を行っている事例を紹介します。この企業では、車両から収集したGPSデータと走行データを分析し、顧客により良いドライビング体験を提供しています。
具体的には、収集したデータをリアルタイムの交通情報と組み合わせて分析することで、渋滞を回避する最適ルートを運転手に提案しています。さらに、このデータを活用して燃費効率の良い運転方法をアドバイスする機能も開発しました。これにより、ドライバーは目的地までの時間を短縮できるだけでなく、燃料消費も抑えることができます。このサービスは、単なる車両の製造・販売にとどまらず、顧客の日々の運転をサポートする付加価値の高いサービスとして評価されています。ビッグデータの活用により、自動車メーカーが従来の製造業の枠を超えて、より総合的なモビリティサービス企業へと進化している好例と言えるでしょう。
医療
医療分野におけるビッグデータの活用は、病気の予防や最新の医学研究が進んでいます。
B大学では、がんに関する膨大なデータを収集し、分析する取り組みを行っています。この研究では、多数の患者から得られた遺伝子情報、生活習慣データ、治療履歴などを総合的に分析することで、がん発症のメカニズムの解明を目指しています。この取り組みにより、特定の遺伝子変異やライフスタイルががん発症リスクを高めることが明らかになりつつあります。
さらに、個々人の日常的な生理計測データや医療情報をAIで解析する試みも進んでいます。例えば、ウェアラブルデバイスで収集した心拍数や活動量のデータ、定期健康診断の結果、そして日々の食事や睡眠の記録などを統合的に分析することで、個人の健康状態を総合的に評価し、生活習慣の改善提案や疾病リスクの早期発見を行っています。
スポーツ
スポーツ界でもさまざまな競技で、最先端の技術を用いたデータ収集と分析が行われています。
野球では、米国のメジャーリーグベースボール(MLB)が「Statcast」と呼ばれるシステムを導入しています。このシステムは、高性能カメラとレーダー技術を組み合わせて、打者の打撃、投手の投球、そして守備選手の動きを詳細に追跡します。例えば、打球の初速や角度、投球の回転数や軌道などを精密に測定し、これまで目視では把握できなかったような細かなデータを収集しています。これらのデータは、選手の技術向上や戦術の立案に活用されています。
サッカーでは、ヨーロッパの主要リーグを中心に、GPSとセンサー技術を用いた選手の動きや体力のリアルタイム分析が行われています。選手が装着する小型デバイスにより、走行距離、スプリント回数、心拍数などのデータがリアルタイムで収集されます。これらのデータは、試合中の戦術調整や、選手のコンディション管理、さらには怪我の予防にも活用されています。
経営分野
NTTデータ関西は、 NTTドコモ様の全社データドリブン経営推進を支援し、ダッシュボード開発とデータマネジメント支援 を行いました。
当初、NTTドコモ様は非効率的なデータ利用フローや、全国のドコモショップ数千店分のデータ加工作業の分散、データ到着のタイムラグなどの課題を抱えていました。これらの問題に対し、NTTデータ関西はBIツール「Tableau」を活用したダッシュボードの開発と、ユーザーが自由にデータを分析できる「セルフBI」の導入を提案しました。
この取り組みにより、ドコモショップ各店が簡単に自店のデータを確認できるようになり、スタッフのデータ活用意識が向上しました。さらに、 一部の業務では月あたりの作業時間が数十時間削減 されるなど、大きな効率化が実現しました。
ビッグデータの活用で企業と社会の共進化を
ビッグデータは、さまざまな産業分野で活用されています。単に業務の効率を上げるだけでなく、新しい価値を生み出し、より良い意思決定を可能にしています。これからは、人工知能(AI)やモノのインターネット(IoT)といった技術とビッグデータが組み合わさることで、さらに高度な活用が進むでしょう。その結果、私たちの日常生活や社会の仕組みそのものが大きく変わる可能性があります。今後、データの流通と利活用がさらに進み、新たなイノベーションや社会課題の解決につながることが期待されます。
NTTデータ関西では、構想策定段階から支援し、様々なソリューションを組み合わせたデータ分析基盤の提供、導入後の全社定着に向けた支援までトータルサポートする 「データ分析・活用ソリューション」 を提供しています。