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金融とヘルステックに新たなバリューを提供 - NTTデータ関西が目指すデジタル基盤とは

 |  インタビュー

植野の写真

NTTデータ関西は、2022年度から2024年度の中期経営計画達成に向けて、法人・公共・金融分野における従来の事業領域を整理し、ヘルスケア市場での事業拡大を目的として、2023年4月1日付で新たにヘルステック事業部を設立しました。

ヘルステック事業部とともに金融事業部を率いる取締役執行役員の植野に、今後のヘルステック分野および金融分野でNTTデータ関西が準備を進める「新たなバリューを生み出すデジタル基盤」について語ってもらいました。

インタビューに答えた方

植野 剛至 株式会社NTTデータ関西 取締役執行役員

植野 剛至 (うえの たけし)

株式会社NTTデータ関西 取締役執行役員
NTTデータにおいてコーポレート部門の人事労務分野に所属の後、2019年4月にNTTデータ関西の人事総務部長に着任。同年6月にNTTデータ関西の取締役執行役員に就任。コーポレート分野と金融・ヘルステック分野を所掌していたが、2024年12月より金融・ヘルステック分野の専任として金融とヘルステック分野の課題解消に向けて鋭意取り組んでいる。

金融・ヘルステック分野で培ったノウハウを生かし、官民が連携できるデジタル基盤の提供を目指す

金融・ヘルステック事業部が掲げるミッションについてお教えください。

植野: 金融・ヘルステック事業部は、その名の通り金融とヘルステックの分野で新たなバリューを生み出すことをミッションとして掲げています。ヘルステック事業部は2023年4月に新設された新しい事業部です。

私たちNTTデータ関西は、近畿関西圏の金融やヘルステックの分野で、数多くの実績を積み重ねてきました。たとえば、金融分野では地方銀行や信用金庫様へ各種システムの開発・保守・運用の役割を担ってきました。

また、ヘルステック分野では、国保連合会、製薬会社、生命保険会社様の開発・保守・運用、大阪府様等の救急医療情報システム、大阪府民の健康をサポートするアプリ(※1)の開発・運用を行っています。

これらの実績やノウハウを生かすことで、この分野で新たなバリューを生み出し、地域活性化に貢献できると考えています。

※1:おおさか健活マイレージ「アスマイル」

https://www.asmile.pref.osaka.jp/

新たに生み出すバリューについて、具体的な構想はございますか?

植野: 具体的なバリューとして検討しているものは、それぞれの分野に関連する企業や団体、そして官公庁などが互いに連携できるデジタル基盤の構築です。

金融業界を見れば、本業部分のデジタル化やDX化はかなり進展されています。しかし一方で、ユーザー側の視点に立つと、まだまだデジタル化が進まず、使い勝手が悪いと感じる部分が残っています。たとえば、「五十日(ごとおび)」(毎月の5と10の付く日)には銀行窓口が混み合う習慣がまだ残っています。これだけオンライン決済の仕組みが広がっているにもかかわらず、銀行や企業、そして官公庁それぞれの連携が十分に取れていません。そのため、わざわざ窓口に行って振り込みや引き落としをしなければならない状況が続いています。

保険業界や製薬業界でも情報のデジタル化は進んでいます。しかし、現場では契約書類やカルテなど紙の文化が残っていて、データ収集・連携の仕組みや蓄積したデータの活用が進んでおらず、業務の効率化やユーザーの利便性はあまり上がっていないのが現状です。

昨今、ヘルステックの分野は成長領域だと言われ続けていますが、その実態はなかなかカオスな状態に陥っているようです。もともとヘルステックの活用は医療費の低減をもたらすと言われてきましたが、現実としてはまだそうなっていません。

金融業界や医療ヘルスケア業界にしても、まだまだ不便で非効率な部分が多く残っています。なぜ、このような状況が続いているのか。それは、官民同士が互いに連携を取れる共有の基盤が存在していないことも大きな要因だと考えています。

デジタル基盤の構築には、どのような課題があるとお考えですか?

植野: 技術面と連携面、それぞれに課題があると考えています。

技術面では、特にセキュリティは重要です。お金や健康に関わる分野で扱う情報は非常にセンシティブなので、最高レベルのセキュリティが求められます。また、さまざまなシステムと接続する必要があるため、幅広い知識と経験が求められます。

連携面では、多くの人々からの理解と協力が欠かせません。どれだけ便利なデジタル基盤があっても、一部の企業・団体の参加では、利便性や効果は上がらず利用者も増えません。

私たちNTTデータ関西は、多くの金融機関の基幹システムや国民健康保険に関わるシステムの開発や運用の実績があります。ですから、技術面については私たち自身で課題を乗り越えることが可能だと考えています。

一方で、連携面は私たちだけでは乗り越えられません。多くの企業・団体、官公庁の方々のご協力が不可欠です。

現在、私たちは多くの皆さんからの協力を得るために奔走している最中です。おかげさまで、現場の方々からの反応は非常によく、「協力したい」というお言葉もいただいています。しかし、実際に参加していただくには、現場の皆さんだけでなく、上層部の方々からの承認が必要です。そして、承認を得るためには、構想や案だけではなく、具体的な裏付けが必要です。ですから、小規模でもいいのでまずはやってみることが大切です。

世の中のスピード感に対応するため、3年後の2027年までには形を作る

このプロジェクトの今後のロードマップがあればお教えください。

植野: まず、私たちが基盤を作り、環境を提供します。その基盤の上に、さまざまな企業や官公庁の方々がアプリケーションを載せてサービスを提供し、アプリケーション同士が連携できるようにします。現在は、そのための仕掛けと準備を進めている段階です。

その中の1つとして新しいサービスの提供を予定しています。近年増えつつある相続手続きについて、相続人の利便性や金融機関の業務効率化に寄与する各種サービスの実現のために、まずは小さなスケールでスタートし、徐々に広げて2027年にはある程度の形にしたいと考えています。

もし、2027年の段階でも目処が立たなければ、計画の見直しを検討しなければなりません。状況によっては、そのサービスを見切る可能性もあります。

3年で結論を下すのは早すぎると感じる方もいらっしゃるかもしれませんが、現在のビジネスにおけるスピード感はそれくらいが普通です。ビジネスとして成功させるためには、その速度に対応していかなければなりません。

もちろん、新しい試みなので成功するかどうかはやってみないとわかりません。しかし、成功しなかったとしても、そこで培われた経験と人との関係は失われません。やってみて、何も得るものがなかったということはないのです。

新しいチャレンジに燃えるチームメンバー この熱気あるプロジェクトに参加していただける方々を募集

このプロジェクトを推進する、金融・ヘルステック事業部にはどのようなメンバーが所属していますか?

植野: 金融・ヘルステック事業部には、あわせて約300人のメンバーが所属しています。ヘルステック事業部はまだ新しい事業部ですが、金融事業部は前身である「金融ビジネス事業部」の時代も合わせると20年以上の歴史があります。

これまで、金融事業部が行ってきた業務は、銀行の基幹システムなど、既存のビジネスモデルの中で業務効率化やコスト削減を目指す、いわゆる「守りのシステム開発」が主流でした。もちろん、既存ビジネスを支えるために「守りのシステム開発」が持つ役割は非常に重要ですし、このベースがしっかりとしているからこそお客様からの信頼が得られていることは私たちのバリューなのですが、それだけでは技術者のモチベーションは上がりません。

特に若い技術者は、「新しいことにチャレンジしたい」という気持ちを常に持っています。その気持ちが徐々にマグマのように溜まってきている、そんな雰囲気をひしひしと感じています。そろそろ、そのエネルギーを発散させないと爆発しかねないので(笑)、今回のプロジェクトは彼らにとっても良い機会となるはずです。

チームメンバーは、このプロジェクトに対してかなりやる気で、自ら積極的に提案をしてくれます。先ほどお伝えした、相続手続きに関するサービスも現場のメンバーがお客様との会話の中で課題を見つけ出し、自ら「これをやりたい」と手を挙げて動き出したものです。

この盛り上がった気持ちを無駄にしたくありません。今は、私と現場との考えと気持ちが完全に噛み合った状態です。だからこそ、すぐにやりたいのです。

最後に、この記事を読んでいる方に向けて、メッセージをお願いします。

植野: 最近は、DXという言葉が頻繁に使われていますが、それはあくまでもキーワードであり、誰に向けて何をするのか、その本質的なところはまだクリアに見通せていないのが実態だと思います。正直、私たちもDXで何が変わるのか、具体的な未来までは見えていません。

ですが、わからないままでは何も始まりません。ですから、まずはやってみる。そのために必要であれば、私たち自身が投資をします。私たちだけでできないのなら、周囲の方々に協力を仰ぎます。その際、座組みとして必ずしもプライムに拘りません。目的は、あくまでも金融とヘルステックで世の中にバリューを提供し、そこで新たな事業を生み出すことです。形や形式にはこだわっていません。

私たちは、『KANSAIから「いま」を支え「あす」を笑顔に』というパーパスステートメントを定めています。「KANSAI」から金融とヘルステックの世界を変えていきたい。今回のプロジェクトには、そんな想いが詰まっています。

繰り返しになりますが、このプロジェクトには他の企業様や官公庁の方々の協力が不可欠です。私たちには、これまでに培った金融とヘルステック分野におけるノウハウがあります。技術と熱意を持った人材も揃っています。そして、新たなバリューを生み出すための投資も行っていく意思もあります。あとは、皆さんのご協力があれば、絶対に良いものが生まれるはずです。ぜひ、一緒にやりましょう。

植野さんの言葉からは、金融とヘルステックの両分野で「新しいバリューを生み出す」という決意と熱意が感じられました。チームの方々のやる気もみなぎっているとのことなので、もしかすると2027年よりも早く形になるかもしれません。その時が来るのを心待ちにしています。