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申請管理システムで自治体DXを加速。導入効果と選定ポイントを解説。

 |  自治体 DX 業務効率化

自治体DXの推進により、住民サービスのデジタル化が急務となっています。特に申請管理システムの導入は、窓口業務の効率化と住民満足度向上の両立を実現する重要な施策です。しかし、システム選定から導入まで多くの検討事項があり、どこから着手すべきか判断に迷う担当者も少なくありません。本記事では、自治体の情報システム担当者の視点から申請管理システムの導入効果と具体的な選定ポイントを詳しく解説します。

自治体が直面する申請業務の課題

デジタル社会の進展により、住民からは「いつでも、どこでも」利用できるサービスが求められています。従来の紙ベースでの申請や窓口対応中心の運用では、職員の負担増加と住民の利便性低下という二重の課題が顕在化しています。本節では、現状の申請業務における具体的な問題点とその解決に向けた取り組みの必要性を解説します。

窓口業務の非効率性とその影響

多くの自治体では申請受付から承認まで紙ベースの処理が中心となっており、職員の事務負担が深刻化しています。手書き申請書の内容確認、システムへの再入力、書類の物理的な保管管理など、付加価値の低い作業に多くの時間を費やしています。

さらに、申請内容の不備による差し戻しや再提出が頻発し、住民と職員双方にとって非効率な状況が続いています。これらの課題は職員のモチベーション低下につながり、サービス品質にも影響を与えかねません。

窓口業務の効率化については、次の記事も参考にしてください。

窓口DXで実現する住民サービス改革 ~先進事例に学ぶ、効果的な自治体DX推進のポイント~

窓口対応時間の制限と住民ニーズのギャップ

コロナ禍をきっかけに、住民の間では非対面で手続きを済ませたいという要望が今も強く残っています。しかし、多くの自治体では平日の限られた時間帯のみの窓口対応が続いており、働く世代の住民にとって利用しにくい状況が続いています。

特に子育て世代や高齢者にとって、必要な手続きのために何度も庁舎に足を運ぶ負担は大きく、住民満足度の低下要因となっています。デジタル化の遅れは若い世代の転出や企業誘致にも悪影響を与える可能性があります。

法的要件への対応の重要性

デジタル手続法(デジタルファースト法)の施行により、自治体には行政手続きのオンライン化が法的に求められています。また、自治体DX推進計画では2025年度末までに重点手続きのオンライン化完了が目標とされています。

これらの法的要件への対応は待ったなしの状況であり、計画的なシステム導入が急務となっています。対応の遅れは住民サービスの質だけでなく、国からの評価や交付金配分にも影響する可能性があります。

申請管理システムとは何か

申請管理システムは住民からの各種申請を電子的に受け付け、承認プロセスを効率化するためのITソリューションです。単なるデジタル化ツールではなく、業務プロセス全体を最適化し、住民サービスの質を向上させる基盤システムとして機能します。本節では、システムの基本的な仕組みと主要な機能について説明します。

システムの基本構成と仕組み

申請管理システムは、一般的に住民向けのフロントエンド画面、職員向けの管理画面、そして既存の基幹システムとの連携機能で構成されています。住民はWebブラウザやスマートフォンアプリから24時間365日の申請手続きが可能となります。

入力された申請データは自動的にデータベースに保存され、設定された承認フローに従って関係部署に振り分けられます。職員は管理画面で申請状況を一元的に確認でき、進捗管理や承認処理を効率的に行えます。

主要機能とその効果

現代の申請管理システムには、申請フォーム作成機能、ワークフロー管理、進捗通知、電子決裁などの豊富な機能が搭載されています。特に重要なのは、申請内容の自動チェック機能により入力ミスや必要書類の不備を申請時点で検出できることです。

マイナンバーカードとの連携により本人確認や住民票情報の自動取得も可能となり、申請者の入力負担を軽減できます。また、申請状況をリアルタイムで確認できる機能により、住民の不安解消にもつながります。

NTTデータ関西では、住民向けの電子申請サービス「e-TUMO APPLY」を提供しています。スマートフォンやパソコンからの各種行政手続きの申請が可能で、申請管理システムとの自動連携を実現します。

従来手法との違いとメリット

紙ベースの申請と比較して、申請管理システムは処理時間の短縮、ミスの削減、保管コストの削減など多面的なメリットを提供します。特に重要なのは、申請データの再利用により複数の手続きで共通する情報の重複入力が不要になることです。

職員にとっては、申請内容の検索性向上により過去の類似案件の参照が容易になり、判断の一貫性向上にもつながります。また、統計データの自動生成により、政策立案に活用できる貴重な情報資産の蓄積も可能となります。

システム導入で得られる具体的な効果

申請管理システムの導入により、自治体は住民サービスの向上業務効率化を同時に実現できます。導入効果は短期的な作業時間削減から、長期的な組織変革まで多岐にわたります。

住民の申請負担軽減と利便性向上

システムの導入により、住民は自宅や職場からいつでも手続きが可能となります。多くの自治体で、申請完了までの所要時間が従来の3分の1以下に短縮されています。特に子育て関連の手続きでは、乳幼児を連れた外出の負担軽減効果が高く評価されています。

申請状況の見える化により、住民は処理の進捗を随時確認でき、不安や問い合わせの削減につながっています。また、申請内容の事前チェック機能により、不備による再提出が大幅に減少し、住民の手続きストレスが大きく軽減されます。

職員業務の効率化と働き方改革

申請データの自動取り込みにより、職員の手入力作業が不要となり、1件当たりの処理時間が大幅に短縮されています。これにより、職員はより付加価値の高い住民対応や政策検討業務に時間を割けるようになります。

承認フローの電子化により、決裁者の外出時でも迅速な承認が可能となり、処理の停滞が解消されます。また、申請データの検索性向上により、住民からの問い合わせ対応時間も大幅に短縮されています。

コスト削減と予算効率化

紙代、印刷代、郵送費などの直接的なコスト削減に加え、書類保管スペースの削減効果も大きな要素です。多くの自治体で年間数百万円規模のコスト削減を実現しています。

さらに重要なのは、職員の時間コスト削減です。事務処理時間の短縮により、残業時間の削減や職員配置の最適化が可能となり、人件費の効率的活用につながります。

データ活用による政策立案支援

申請データの蓄積により、住民ニーズの傾向分析や政策効果の測定が可能となります。たとえば、特定の制度利用者の属性分析により、より効果的な広報戦略の立案や制度改善のヒントが得られます。

リアルタイムでの申請件数把握により、繁忙期の予測や職員配置の最適化も実現できます。これらの情報は、限られた予算の中で最大限の住民サービス向上を図るための重要な判断材料となります。

システム選定時の重要ポイント

申請管理システムの選定には技術的な要件だけでなく、自治体固有の業務要件や将来的な拡張性を総合的に評価する必要があります。失敗しないシステム選定のために、事前に整理すべき要素と具体的な評価基準を解説します。

業務要件の明確化

システム選定の第一歩は、現在の申請業務の詳細な分析と将来あるべき姿の明確化です。各部署の申請種類、処理件数、承認フロー、関連システムとの連携要件を整理する必要があります。

特に重要なのは、住民にとって使いやすいユーザーインターフェースと、職員にとって効率的な管理機能のバランスです。システムベンダーとの要件定義では、具体的な業務シーンを想定した機能確認を行うことが成功の鍵となります。

既存システムとの連携と拡張性

既存の基幹システムとの連携への対応は必須の確認事項です。住民情報システム、財務システム、人事システムなどとのデータ連携により、申請処理の自動化レベルが大きく左右されます。

クラウド型とオンプレミス型の選択も重要な判断ポイントです。初期投資を抑えられるクラウド型が主流となっていますが、セキュリティ要件や既存システムとの親和性を総合的に評価する必要があります。

セキュリティとコンプライアンス

個人情報を扱う申請管理システムでは、最高水準のセキュリティ対策が求められます。データの暗号化、アクセス制御、ログ管理、バックアップ体制などの技術的対策に加え、運用面での管理体制も重要です。

また、自治体情報セキュリティ対策の基準への適合性や将来的な法改正への対応能力も選定時に確認すべき要素です。システムベンダーのセキュリティ認証取得状況や過去のインシデント対応実績も重要な判断材料となります。

導入・運用コストの総合評価

システム導入時の初期費用だけでなく、5年から10年の長期的な運用コストを含めた総所有コスト(TCO)での評価が重要です。ライセンス費用、保守費用、カスタマイズ費用、職員研修費用などを総合的に算出する必要があります。

特にクラウド型システムでは、利用量に応じた従量課金モデルが一般的です。将来的な申請件数の増加を見込んだコスト試算により、予算計画の精度向上を図ることができます。

導入プロセスと成功のための準備

申請管理システムの導入成功には、綿密な計画と段階的なアプローチが不可欠です。多くの自治体で共通する導入時の課題と、それらを回避するための具体的な準備方法を詳しく解説します。

プロジェクト体制の構築

システム導入プロジェクトでは、情報システム部門、各申請業務所管部署、そして住民対応部門の連携が成功のカギとなります。プロジェクトマネージャーには、技術的知識と業務知識の両方を持つ人材を配置することが理想的です。

外部コンサルタントやシステムベンダーとの協力体制も重要な要素です。定期的な進捗会議と課題解決のためのエスカレーションルールを事前に設定し、プロジェクトの着実な推進を図ります。

段階的導入のアプローチ

全申請手続きを一度に電子化するのではなく、影響範囲が限定的で効果の見えやすい手続きから段階的に導入することを推奨します。住民票の写しや印鑑登録証明書などの定型的な申請から開始し、徐々に複雑な手続きに展開していきます。

パイロット導入期間を設けることで、システムの動作確認と業務フローの検証を行い、本格運用前に課題を解決できます。この段階での住民と職員からのフィードバック収集がシステム改善の重要な情報源となります。

職員研修と住民周知

システム導入の成功は、利用者である職員と住民の理解と協力にかかっています。職員向けにはシステム操作研修だけでなく、変更される業務フローの理解促進が重要です。

住民向けには、オンライン申請のメリットを分かりやすく伝える広報戦略が必要です。高齢者や情報機器に不慣れな住民への配慮として、操作説明会の開催や窓口でのサポート体制整備も検討すべき要素です。

運用開始後の改善サイクル

システム運用開始後も継続的な改善が必要です。申請件数の推移、処理時間の変化、エラー発生状況などのKPIを定期的に測定し、システムと業務プロセスの最適化を図ります。

住民からの意見や職員からの改善要望を組織的に収集し、システムの機能改善や新たな申請手続きの電子化に活用します。この改善サイクルの継続により、長期的な効果の最大化を実現できます。

今後の展望と自治体DXの加速

申請管理システムの導入は、自治体DX推進の重要な一歩となります。今後の技術進歩と制度変更を見据えた戦略的な取り組みにより、さらなる住民サービス向上と業務効率化を実現できます。本節では、将来を見据えた申請管理システムの発展方向を展望します。

AI・RPAとの連携による高度化

AI技術の進歩により、申請内容の自動審査や承認判定の支援が可能となってきています。定型的な申請についてはAIによる自動処理により、職員の判断を必要とする案件により多くの時間を割けるようになります。

RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)との連携により、申請データの基幹システムへの自動登録や関連する事務処理の自動化も実現できます。これらの技術導入により、さらなる業務効率化が期待されます。

マイナンバーカードの普及拡大効果

マイナンバーカードの普及率向上にともない、本人確認の自動化や各種証明書の添付省略がより一般的になります。将来的には申請時の本人確認がすべて電子的に完結し、住民の利便性が大幅に向上することが予想されます。

マイナポータルとの連携強化により、国の制度と自治体独自の制度を一元的に利用できる環境の整備も進むでしょう。これにより、住民にとってより分かりやすく使いやすいサービス提供が可能となります。

NTTデータ関西が提供する「申請管理システム」は、マイナポータルとの連携を標準機能として実装しており、マイナンバーカード普及にともなう利便性向上を最大限に活用できます。

広域連携による効率化

近隣自治体との共同システム構築やクラウドサービスの共同利用により、システム導入・運用コストの削減が可能となります。特に小規模な自治体にとって、広域連携は重要な選択肢となります。

標準化された申請フォームや承認フローを全国の自治体で共通化することで、住民が別の自治体に移っても、これまでと同じ画面や操作方法で行政サービスを利用できるようになると期待されています。

住民のニーズに応じたサービス提供

申請管理システムの蓄積データを活用した住民ニーズの分析により、より住民志向のサービス設計が可能となります。住民からのフィードバック収集機能の充実により、継続的なサービス改善のサイクルが確立されます。

将来的には、住民一人ひとりのライフステージに応じたパーソナライズされた申請案内や予防的な行政サービスの提供も実現できるでしょう。これにより、真の住民中心の行政運営が実現されることが期待されます。

まとめ:効果的な申請管理システム導入に向けて

システム導入の成功には、明確な目標設定適切なシステム選定、そして組織全体での取り組みが重要です。住民サービスの向上と業務効率化を両立させるため、段階的で計画的なアプローチが求められます。

申請管理システムの導入は単なる業務のデジタル化ではなく、住民との新しい関係性を築く重要な転換点です。技術的な導入だけでなく、組織文化の変革と職員の意識改革をともなうプロジェクトとして取り組むことで、真の効果を実現できます。

NTTデータ関西では、行政手続きのオンライン申請システム「ぴったりサービス」を通して申請されたデータを自治体の基幹システムに一気通貫で連携できるパッケージ製品「申請管理システム」を提供しています。

また、住民向けの電子申請サービス「e-TUMO APPLY」で、スマートフォンやパソコンから24時間365日、各種行政手続きの申請に対応しています。申請管理システムとの連携により、申請から基幹システムへのデータ反映まで一貫したデジタル化を実現します。