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変革にチャレンジ!
段階的な業務改革推進によるアナログ、
属人化からの脱却

南満州鉄道の物流部門として1929年に設立された日満倉庫を前身に、国内最大手の埠頭会社へと発展してきた東洋埠頭。倉庫業・港湾運送業・自動車運送業・国際物流事業などを幅広く手掛ける同社は、2019年に業務改革プロジェクトを立ち上げ、業務改善や基幹システムの刷新に着手しました。業務効果の見込みの高い領域から段階的にシステム化を実行することとした同社は、まずは海貨業務のワークフローシステムの導入を決定。その基盤として選ばれたのが、intra-mart上で稼働するNTTデータ関西の「海貨業務システム」でした。
業務改革プロジェクトは、2023年4月に新設されたデジタル推進部に引き継がれ、変革へのチャレンジを実行中です。

課題

オフコンベースの旧態依然のシステムになっていたため、時代に即した機能追加が柔軟に行えず、刷新が急務。

海貨業務がシステム化されておらず、拠点ごとに異なる方法・手順・フォーマットで行われており属人化が蔓延。

効果

  • 各拠点・各部門で個別化されていた海貨業務を統一

    海貨業務システムの利用率は8割以上に達し、業務の標準化を実現。
    適切な人事配置、社内人材流動の活発化を可能に。
  • 二重入力の負担が軽減

    入力したデータを収支計上まで一気通貫で活用することにより、各工程における二重入力の負担を軽減。

海貨業務システムを導入した背景は?

川勝氏

当社では、1980年代に自社で開発したオフコンベースの基幹業務システムを導入し、長年にわたって運用していました。
しかし、従来のシステムでは時代の要請に対応できないこともあり、2012年から新たな基幹業務システムのスクラッチ開発を進めてきました。業務標準化・効率化を目指してシステムの全面的な刷新に取り組んだものの、大規模なシステム開発が初めての経験のため手探りで進めていった結果、およそ6年の開発期間をかけても完成しないという状況でした。本来ならば業務標準化・効率化を実現する手段であるはずのシステム開発がいつしか目的化してしまい、もともと決まっていた要件も時間を追うごとに膨れ上がって収拾がつかない状態に陥りました。

そこで2019年に改めて「業務改革プロジェクト」を立ち上げ、システム刷新に再挑戦することにしました。大規模な基幹業務システム全体を一気に作り直そうとした前回の反省を踏まえ、今回のプロジェクトでは業務プロセスを把握するところから始め、業務の手順やルールを見直してシステム化が必要な部分の優先順位を決めながら段階的に業務改革、システム構築を進めることとしました。
そして、プロジェクトの第一弾として取り組んだのが、海貨業務システムの導入です。従来の海貨業務は紙ベース・手作業で行われているものが多く、処理方法や手順が現場担当者ごとに属人化しているという課題を抱えていました。この領域のシステム化を進めることが、現場の業務負荷を低減する効果が最も見込めると考え、最初に取り組むことにしたわけです。

能美氏

当社が長年運用してきた基幹業務システムは、会計システムをベースに入出庫・在庫管理などをシステム化したものでした。
一方で顧客から受けた注文書類を関係各所に回して発注するといった輸出入関連の海貨業務はまったくシステム化されておらず、それぞれの現場担当者が自分のやり方で行うアナログな業務となっていました。そのために書類を回した、回していないといったトラブルが起きたり、書類を余計にコピーしてどれが正本なのか分からなくなったりということが起こり、トラブル防止のために紙書類にわざわざ各担当者の印鑑を押して回らなければならないという状態でした。
また、従来の海貨業務は請求・支払といったやり取りの情報を基幹業務システムに入力する必要があるのですが、システム化されていないが故に担当者が書類を見て手作業で打ち直さなければならず、誤入力のリスクもありました。
こうした課題を解決するために、業務改革プロジェクトでは、まず海貨業務のワークフローをシステム化するところから着手することにしました。

NTTデータ関西をパートナーに選定した経緯

川勝氏

前回のスクラッチ開発では、システム機能面の充足度を満たすことに重点が置かれ、業務目線での効率化が疎かになったことなど現場とのコミュニケーションが不足していました。
今回のプロジェクトでは質・量ともに十分な専従者を置くとともに、各拠点・各部門からもメンバーを出してもらって要件定義から現場が関与する組織体制とし、ボトムアップで業務改革を推進していくことにしました。
また、実現可能性を高めるために、外部コンサルタントにもプロジェクトへの参加を委託し、伴走してもらうことにしました。そのうえで海貨業務をシステム化するにあたっての要件を整理し、それをRFP(提案依頼書)にまとめて海貨業務に実績のある複数のベンダーに声をかけました。

能美氏

海貨業務のなかでも、まずはワークフローのシステム化に取り組みたいと考えていたので、業務ワークフローに強みのあるNTTデータイントラマートに問い合わせをしました。そこで同社のintra-mart上で稼働する海貨業務システムがあると紹介され、その提供元であるNTTデータ関西に声をかけました。
NTTデータ関西に話を聞いたところ、海貨業務に特化したテンプレートを利用してそれを当社の業務に合わせて柔軟にカスタマイズできるという魅力的なソリューションであることが分かりました。
NTTデータ関西の熱のこもったプレゼンテーションやデモンストレーションの内容は素晴らしく、導入後の利用イメージも描くことができました。
現場から参加したプロジェクトメンバーの評判も非常に良かったこともあり、機能・コスト・品質とNTTデータグループというネームバリューの高さを総合的に判断し、NTTデータ関西をパートナーに選びました。

川勝氏

海貨業務システムの導入作業は、業務改革プロジェクトのフェーズ1として2020年12月に開始しました。システム開発等というとどこか機械的な作業に感じますが、実はコミュニケーションの塊です。ちょうどコロナ禍と重なってしまったため、導入に向けた要件定義や設計、構築などはリモートでコミュニケーションを図らないといけなくなりました。当初は慣れない環境に四苦八苦しましたが、当社とコンサルタント、NTTデータ関西の間で認識違いが生じないように「これくらいは言わなくてもわかるだろう」という甘い認識を捨てて、考えていること、感じていることを徹底的に言語化するように意識しました。

能美氏

海貨業務システム導入の一番の目的は、業務プロセスを標準化することです。従来の海貨業務はアナログで行われていたこともあり、もともと業務プロセスに標準はありません。そのため、各拠点・各部門の要望をまとめて標準となる業務プロセスを決めるところが大きなポイントになりました。前回は一度決めたにもかかわらず、システムの稼働直前になってひっくり返されることが頻発したので、その懸念を払拭するために現場のメンバーにも当初から検証に加わってもらいました。
具体的な進め方としては要件定義の内容が机上の空論にならないように、実際に開発したシステムの画面を見ながら改善を繰り返すという形にしました。日々の業務があるにも関わらず検証を担当するメンバーを送り出してくれた各部門長、無理な修正依頼にも迅速に対応してくれたNTTデータ関西にはとても感謝しています。

本番運用開始後に得られた導入効果は?

川勝氏

業務改革プロジェクトのフェーズ1に位置付けた海貨業務システムの導入作業は2022年5月に完了し、運用を開始しました。フェーズ1で対象としたのは、一般貨物・冷蔵冷凍貨物の輸出入業務に関する海貨業務システムです。引き続きフェーズ2では、独特な貨物特性のある輸入青果物にも海貨業務システムを適用し、こちらは2023年9月に運用を開始しました。
海貨業務システムが稼働したことにより、各拠点・各部門で個別化されていた海貨業務が統一化されるとともに、業務ワークフローを全拠点・全部門で横断的に利用できるようになりました。その結果、従来の拠点間・部門間で人事異動があるたびに一から仕事のやり方を引き継いで習得しなければいけないという無駄と業務の属人化を排除し、適切な人事配置、社内人材流動の活発化を可能にするという効果が得られたと考えています。

能美氏

海貨業務システム導入の定量的な効果を計測するために、システム利用率に関して統計を取っています。最新の統計では、全体の約8割がワークフローを利用しており、拠点によっては9割を超えているところもあります。顧客の特性によって従来のアナログな業務も残っていますが、現在は完全移行を目指してフォローアップに力を入れています。
現場からは「業務が標準化されたことで、この人でなければ分からないという仕事がなくなった」といった声が寄せられており、すでに海貨業務システムが業務の一部として定着したと実感しています。

業務改革プロジェクトの今後の展望は?

川勝氏

海貨業務システムの導入から始まった業務改革プロジェクトは現在、本丸とも言うべき基幹業務システムの全面的な刷新に向けて動き出しています。業務改革自体はまだ途上にありますが、当社の強みであるお得意さまへのきめ細かな対応力とノウハウを継承しつつ、環境の変化を捉え変わり続けられる組織を目指して、プロジェクトを推進していきたいと思います。

能美氏

海貨業務システムの導入により、当社はintra-martという業務システム基盤を持つことができ、社内においては、情報の連携を重視したワークフローの仕組みを構築することができました。今後は社外との連携、例えば国内標準の貿易プラットフォームの「Cyber Port」や「TradeWaltz」、税関行政手続システムの「NACCS」との接続も進めていこうと計画しています。
さらに、現在構築を進めている新しい基幹業務システムとつないで、入出庫・在庫管理などもうまく連携できるように海貨業務システムを拡張することも視野に入れています。

システム概要図

※本文中表記のお客様の部署名・ご担当者などの諸情報は、取材当時のものです。