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2025年の崖とは?直面する課題と回避方法を詳しく解説

 |  DX

DX推進に取り組む際、2025年の崖という言葉を耳にすることがあります。2025年が迫るなか、2025年に何がどうなるのでしょうか。直面するかもしれない問題点とはどういったものなのでしょうか。
一方、DXを推進することが2025年の崖を回避することにもなるともいわれています。なぜDX推進が2025年の崖を回避することにつながるのでしょうか。
本記事では、2025年の崖についてその概要や提起されている課題、回避する方法について解説します。
さらにDX推進を成功させるポイントについても解説していくので、ぜひ参考にしてみてください。

2025年の崖とは

「2025年の崖」とは、日本のDX推進がうまく運ばなかった際、その経済損失が年間12兆円にも及ぶという危機的状況を表した概念です。

2025年の崖は、2018年に経済産業省が公表した「DXレポート」のなかで使用された言葉です。DXレポートでは、日本のDX推進における課題や方針がまとめられています。

2025年以降も既存のシステムに依存している状態でDX推進の取り組みが進まなければ、十分にデータを活用できる環境が構築できません。

企業は、この2025年の崖に陥らないよう、旧態依然とした体制から脱却し、新しいデジタル環境を整備することが求められています。

従って2025年の崖は、DX推進において乗り越えるべき重大な課題なのです。

改めてDXの定義

狭義・広義における考え方がありますが、本記事ではDXを下記のように定義します。

DXとは、 企業がデータとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズに対応しながら継続的に発展できるようにビジネスモデルを変革していくこと です。

また、そうした企業の変革によって、個人の生活をより快適なものにすることだといえるでしょう。

つまりDXとは、単なるIT化を進めて業務の効率化をめざすだけのものではありません。 新たな競争力を獲得し、社会貢献も含めた企業活動の活性化を目的 としています。

そして、企業の活動の活性化やICTが一般生活のなかに浸透することによって、個人の生活がより快適になります。DXは現状より暮らしやすい社会の実現も目指しているといえるでしょう。

DXの概念や成功のポイントは次の記事でも詳しく解説しています。

DX徹底解説。定義と目的、導入時の手順と課題のほか、成功事例を紹介

なぜ2025年なのか

「崖」に直面するのが2025年であるといわれている理由は、多くの基幹システムが2025年あたりでサポートを終了するからです。

基幹システムの稼働期間は21年以上にも及ぶものも多く、システムの老朽化が進んでいます。同時に、最新のテクノロジーの発展も進んでいるため、2025年にサポートを終了してしまうシステムも多いのです。

現状でも基幹システムのメンテナンスに多大なコストを必要としていると考えられます。その上、ベンダーからのサポートが終了するとなると、基幹システムの維持にさらに大きなコストがかかると予想されます。

また、サポートの終了した基幹システムをメンテナンスしたり、使いこなしたりするには、その古いシステムを技術的に扱える人材も必要です。

では、具体的に2025年になるとどのような状況になると予想されているか「人材面」と「技術面」からみておきましょう。

人材面

IT人材の不足が問題視されて久しいのですが、2015年の段階では約17万人が不足していると言われていました。

それが2025年には、IT人材不足は約43万人に拡大すると予測されています。

この状況に陥れば、先端IT人材を供給できなくなります。また、古いプログラミング言語を使いこなせる人材が不足して、使い続けている既存システムのメンテナンスも行えなくなります。

技術面

コンピュータを起動させているOSやさまざまなアプリケーションは次々と新しいものが登場し、古くなったOSやアプリケーションに対するサポートが終了します。

たとえば、2014年にはWindowXPのサポートが終了し、2020年にはWindow7のサポートも終了しています。サポートが終了したOSを使っていたシステムは全体の見直しが必要です。

さらにMicrosoft社は2025年10月をもってWindows10のサポートを終了するとしています。

そうなればシステム全体の見直しが必要となるケースもでてくるでしょう。

旧システムのサポート終了と同時に、新技術も次々に登場しています。

2020年には5Gが実用化されました。また、AI技術が進化し一般利用も開始されています。

膨大かつ精度の高いデータが蓄積できるため、今後はさらに高精度な予測や分析が可能になるでしょう。

また、このデータを一部署だけでなく、各領域と連携し情報共有することで、さらなる効率化や利便性を追求できます。

つまり近い将来、新システムやテクノロジーの導入は当たり前になり、データ活用が十分に行えない企業は事業継続が難しくなるリスクもあるのです。

人材面や技術面の変化においても、既存システムを維持できている2025年までの間に、システムを刷新する必要があるといわれています。

これからのビジネス環境として前提となるのは、膨大なデータを活用した事業展開が主流になるということです。

そうしたなかで、 競争力を高めるには、たとえば市場の変化に対応した迅速な決断と判断をするために、データドリブン経営をめざす必要があります。 つまり、 基幹システムや生産管理システム、会計システムなど、さまざまなシステムが連携できる状態で、かつ、一元管理ができ、市場や社会の動き、顧客ニーズの予想が的確に行える環境を構築 しておく必要があります。

データドリブン経営に関する詳細は次の記事が参考になります。

データドリブン経営で社会・消費者のニーズに応える企業になる

他社に勝つ経営、マーケティング戦略のカギはデータ分析〜目的に合った分析手法を紹介〜

また、NTTデータ関西が提供している 「データ分析・活用ソリューション」はデータドリブン経営の実現に向けたサービス です。次のサイトやインタビュー記事もご参考ください。

▼ データ分析・活用ソリューションの詳細について

データ分析・活用ソリューション | NTTデータ関西

▼ ご利用企業様のインタビュー

NTTドコモの「全社データドリブン経営」推進を支える、NTTデータ関西のダッシュボード開発、データマネジメント支援

2025年の崖に直面するとどうなる?

では、上記で説明したように2025年に生ずるおそれのある状況を回避しないまま、2025年の崖に直面するとどうなるのでしょうか。

システムを使用しているユーザー企業の立場、システムを提供しているベンダー企業の立場でみておきましょう。

ユーザー企業のリスク

セキュリティに関わるシステム更新がされなくなると、サイバーセキュリティへの備えが脆弱となります。

その結果、 ユーザー企業では情報漏洩やデータの改ざん、機密情報の窃盗などのリスク が高まります。

また、既存システムの保守・運用を担う人材やIT人材が不足すると、災害発生やシステムトラブル発生などに迅速に対応できなくなるリスクもあります。

さらに、 膨大なデータを活用することができず、DX推進もスムーズに実施されない状態になれば、市場における優位性が保てなくなります。

こうしたリスクを回避するためには、既存システムを刷新するための投資が必要です。

特に、中小企業や個人事業主では費用負担が大きな課題になる可能性もあるため、予算の確保や導入するシステムの選定は慎重に進めましょう。

ベンダー企業のリスク

ベンダー企業は、 新たなシステムの開発や新サービスの企画など、新規事業に対応できるIT人材を確保しにくくなるというリスク があります。

ベンダー企業は、新しいサービスや機能を搭載したクラウド型などのアプリケーションを開発して提供することで利益の一部を生み出しています。

ところが、取引先企業の多くがレガシーシステムを使い続けていると、その対応に追われることになります。

レガシーシステムは個別にカスタマイズされていることも多いです。そのため、保守・運用において、企業ごとのカスタマイズを把握したうえで、対応方法を変更する手間が発生します。

こうした対応にIT人材をさかれると、今後成長が期待できる分野に人材を確保できなくなるリスクが生じます。

2025年の崖で提起されている課題|DX推進の足かせとなっているものとは

日本は国をあげて、デジタル技術を使って企業が新たなビジネスを生み出し、競争力を強化し、それを利用する消費者が個人の生活を向上させることができる社会へと改革することを進めています。そうした取り組みをDXと定義づけています。

現在、DXの推進の必要性を感じ、動き始めている企業も多いですが、うまく取り組めていないと感じている企業も存在します。

そのDX推進の足かせとなっている原因や課題は、2025年の崖で提起されている課題とも重なります。

どういった課題が問題視されているのか、一つずつ見ていきましょう。

既存システムのレガシー(老朽)化

DX推進の大きな壁となっているのが「既存システムのレガシー(老朽)化」です。

レガシーシステムとは何か、そしてレガシーシステムが存在することでどんなリスクや課題があるのかを見ていきましょう。

レガシーシステムとは

レガシーシステムとは「新システムの登場により、相対的に古くなってしまったシステム」を指します。

具体的には、開発されてから長年たっており、システム品質や機能が劣化したことで、現状のデータ処理に対応しにくくなっているものです。

また使用する中で、必要に応じてカスタマイズがされていたり、複雑に他のシステムと連携していたりすることで、システム構造が肥大化・複雑化しているケースもあります。

さらに問題は、そうしたカスタマイズされて複雑化したシステムが、カスタマイズした担当者以外に詳細な仕組みがわからなくなる「属人化・ブラックボックス化」していることです。

システムの改善・修復、または新しいシステムへの変更を検討する際、どこからどう手をつければよいのかわからなくなっています。

「現在の運用はベンダー企業に任せているからベンダー企業に問い合わせれば解決する」と思っている方も多いでしょう。

しかし、そうしたベンダーからのサポートも2025年までには終了してしまうため、はやめに対策しないと手遅れになりかねません。

レガシーシステムが存在することによるリスクや課題

経済産業省が公開している「DXレポート〜ITシステム「2025年の崖」の克服とDXの本格的な展開〜」を参照しながら、レガシーシステムが存在することでどのようなリスクや課題が発生するのかみておきましょう。

まず、深刻な課題の一つとして「IT人材の不足」が挙げられます。

多くの企業が、現在もレガシーシステムを使用し続けています。

レガシーシステムは老朽化していたり、古いシステムが’残っていたりするので定期的なメンテナンスが必要です。そのため、最新のシステムに比べて保守・運用に多くの人材リソースを割く必要があります。

今後新しいシステムを導入することになった場合、体制を整えるために多くのIT人材資源が必要になると予想されます。

そして、レガシーシステムによる課題は人材不足にとどまりません。事業の環境変化や新しい事業へ対応できなくなっていることも大きな課題です。

レガシーシステムの保守や運用などの業務は属人化していることが多く、ほかの従業員への引き継ぎが困難です。そのため、業務全体の見直しも進めにくくなり、継続が困難であると考えている企業は6割以上にも及ぶといいます。

また、システム改善の更新サポートが終了すると、セキュリティ面のリスクも問題となるでしょう。

2025年に終了する代表的なOS

多くの企業で利用されているOSのひとつである「Windows10」のサポートが、2025年10月14日で終了するといわれています。期日まではセキュリティアップデータと機能改善や不具合の修正プログラムが提供される予定ですが、期日以降はサポートが停止されます。

サポートが終了する10月以降もWindows10を使用することは可能です。

しかし、サポートが受けられないことやセキュリティのアップデートがなされない状態で使用しつづけるのは、サイバー攻撃などを受けるリスクが高まります。加えて、不具合が生じた場合、保存されたデータや機密情報などが使えなくなるおそれもでてきます。そのほか、アプリケーションやデバイスの動作が保証されなくなるため、業務に支障をきたすことも考えられます。

終了することがわかっているOSやアプリケーションについては、サポートが継続されるバージョンへのアップデートや他のものへの移行を早急に検討しておく必要があります。

デジタル技術を効果的に活用するという観点での経営戦略の不足

DXを進めていくためには、新たなデジタル技術を活用して、どのようにビジネスを変革していくのかといった経営戦略がなくてはなりません。

しかし、デジタル化の推進の必要性は認識していても、それをどのようにビジネスの改革につなげていけばよいのか、具体的な方向性と効果的な手段や手順を模索している企業が少なくありません。こうした経営戦略の不明瞭さがDXの推進の足かせのひとつになっています。

IT人材の不足

どの分野においても労働力の不足が慢性的になりつつある現状では、IT人材も需要に対して数が足りない状況です。

さらに、IT需要の拡大がIT人材不足に拍車をかけています。新たな技術は日進月歩開発され、それらを使いこなすためのスキルを身に付けたIT人材はかなり限られているのが現状です。 こうしたなか、企業においては既存のシステムの運用や保守に、IT人材を充てることで精一杯の状態です。そのため、新たなデジタル技術を導入し、全社的なシステムを構築することが難しくなっています。

上記のように、自社の従業員のなかにシステムに精通した人材やマネジメントができる人材が不足しているため、ベンダー企業にIT環境の構築などを依存してきた企業は少なくありません。こうした結果、自社のIT人材の確保と教育を充実させられていない現状を招いています。

さらに、自社でIT化を進めてきた段階から基幹系システムを構築し、運用、保守を担ってきたITエンジニアたちがつぎつぎと定年を迎え、既存システムを管理できるIT人材の数が減少しています。それに加え、日本全体の傾向として労働人口の減少によってIT人材の確保が困難な状況が続いています。2025年にはIT人材不足は約43万人にまで拡大するといわれています。

システムのレガシー化の項でも触れましたが、多くの企業は業務の効率化を図るためにベンダー企業と契約をしてシステムの開発・運用・保守を委託してきました。つまり、既存のシステムに対応できる技術者の多くはベンダー企業が確保していることになります。そうした状況が自社にITエンジニアが少ないという状況を招いています。

デジタルテクノロジーの急速な発展

これまでに比べ、デジタルテクノロジーはめまぐるしい進化を遂げています。この急速な発展についていけず、DX推進が進んでいない企業も多いようです。

5Gが実用化され、高速で大量のデータが送受信できるようになりました。また、チャットボットやAIなど、身近なところでもデジタルテクノロジーを駆使したアプリケーションが生活様式を大きく変化しているのを実感している方も多いのではないでしょうか。この発展により「新システムを導入したのにまだ次のシステムが開発された」「全くなじみのない技術で使い方がわからない」などどのツールや技術を導入していいのかわからず混乱してしまう企業も多いのです。

このようなデジタルテクノロジーの急激な発展は、ビジネスモデルを大きく変えます。

逆にいえば、デジタルテクノロジーを活用して、既存のビジネスモデルを変革できないままでいると、市場から取り残されてしまうということでもあります。そうした状況を回避するためには既存のシステムを刷新し、激変する市場や消費者ニーズを的確に捉え、対応できる体制を構築する必要があります。

こうした動きは世界でも確認できます。インダストリー4.0と呼ばれるドイツ政府が2011年に発表した国家プロジェクトもそのひとつです。このプロジェクトは製造業を中心とした第4次産業革命とも呼ばれ、IoTやAI、ロボットなどのIT技術を製造プロセスに組み込んで、効率的で自律的な生産を実現しようとするものです。

インダストリー4.0が進展すれば、産業界はデータ活用や自動化、AI技術の導入が加速され、その結果として競争が激化すると予想されています。

この波に乗り遅れると、市場競争に加われないばかりでなく、事業活動の存続が危ぶまれるおそれもでてきます。

2025年の崖を回避し、DXを推進するためのシナリオ

DX推進を阻む原因でもあり、2025年の崖を招く要因でもあるレガシーシステムの改善やIT人材不足への対策としてどのような手立てを講じればよいのでしょうか。

その解決策となる7つのシナリオについて解説していきます。

1.DX推進システムガイドラインを策定

まず、 新たにDXを実現するために基盤となるITシステムを構築することが必要 です。そのためのアプローチや行動を考えるにあたり、自社独自のガイドラインを作ります。

ITシステムを構築するためのガイドラインを策定するにあたって、まずは大まかな方向性を決定します。具体的な課題解決に向けて、いつ、どの部署に、どのようなシステムを導入するのか、といった具体的な対処法や細かなスケジュールは示しません。

めざすゴールやそのプロセスにおけるルールを示すのがガイドラインの役割です。

策定するときに注意すべきところは次のような点です。

  • このガイドラインが何のためのものであるのかを明確にします。
  • DXが実現できたときの、企業の理想の姿を示します。
  • ゴールにたどりつくまでの大まかな流れを示します。どの取り組みをいつまでに達成することをめざす、程度の大まかな流れを示しておきます。
  • 行動を起こすときの基本的な考え方や方向性を示します。
  • ガイドラインはアップデートしながら業務内容や取り組みの進捗状況に応じて更新をしていきます。

ガイドラインを策定したのち、具体的な取り組みやスケジュールを決めるためにロードマップを作成するとゴールへの道のりも明確になります。

2.システムの見える化

問題点を明らかにし、DX移行状況をわかるようにします。

企業内のITシステムの全体像を把握するために「見える化」します。

たとえば、サーバー構成やライセンスの使用状況を明らかにしていきます。どれくらい古いシステムであるのかを明らかにして、運用保守費の年次推移を確認します。さらに、サポート切れのリスクも洗い出します。そのほか、管理方法がどうなっているのか、更新状況や固定化された担当者しかわからない状況なのかどうかといった運用方法についても確認しましょう。

3.刷新後の実現すべきイメージを共有

システムを刷新し、新たなデジタル技術を活用するときには、まず刷新した後にどのような状況になるのが理想と考えているのか、めざすべきゴールをイメージしておく必要があります。

新しいシステムやデジタル技術を実際に使用し、業務を遂行するのは現場の担当者です。

そうした現場で業務にあたる従業員全員の理解を得ることが重要です。刷新後にはどのように業務プロセスが変更され、どのような利便性が享受されるのか、などの具体的な改善点を示しながらイメージを共有しておくことが必要です。

そして、めざすべきゴールや企業があるべき姿として描いているものは、経営者、事業部門、プロジェクトに関わるすべてのステークホルダでも認識を共有します。

4.自社に導入するシステムを選択

DX推進システムガイドラインを踏まえつつ、自社が保有しているデータ資産を評価・仕分けし直して、それらが最大限活用できる環境構築を目指します。

そのために不必要な既存システムは破棄することも必要です。こうした取捨選択することで無駄のない最適な環境が構築できます。

自社に導入すべきシステムを選ぶ際には、次の点を確認しましょう。

  • 現状の課題は何か
  • その課題を解決する優先順位をどうするか
  • 導入するシステムに課題解決ができる機能は搭載されているか
  • 新しく導入するシステムは、既存のシステムで継続使用するものと連携できるのか
  • 導入時のコストや維持コストは適正であるか
  • 現場の担当者が使いやすいものであるか
  • ベンダーからのサポートや導入前の試用はできるのか

たとえば、基幹業務を網羅でき、 一元管理できるシステムを導入することで、業務間の連携とデータ共有を推進したいと考えた場合、ERPの導入が有効 でしょう。

ERPには「販売業務」「生産業務」「会計業務」「人事業務」「物流業務」といったさまざまな業務に関わる機能が搭載されています。 ERPを活用する利点は、業務システムを統合することで、データを一元管理できる ことです。

たとえば、既存のシステムで他の業務との連携がうまくできていない環境では、同じ顧客に関するデータを部署ごとで別々に入力し、管理しなければなりません。各部署がそれぞれ異なるシステムを使って業務を進めている状態ででは、データが孤立してしまうサイロ化という状況に陥りやすくなります。

また、入力ミスが発生していても、個別のデータとして扱われることがあるため、発見が困難であったり、遅れたりして、大きなトラブルを引き起こす危険もあります。統合されたシステムで同じデータを共有できれば作業効率が向上するのは明らかだといえるでしょう。こうした業務改善と負担軽減を目的に導入されるのがERPです。

このように自社の現状で抱えている課題を明確にして、どのようなシステムを導入すれば、どのような効果が期待できるのかを想定したうえで、システムを選ぶことが大切です。

上記の事例として、NTTデータ関西が提供するWeb ERPソリューション「BIZXIM製番」も選択肢の一つになるでしょう。

BIZXIM製番は、 多品種少量生産形態を行う「個別受注生産業」に特化 した、製造業向けのソリューションです。パッケージソフトに近い形態のため、基本的な必要機能の多くが搭載されています。

また、パッケージでありつつも、 Iaasやオンプレミスで利用できるため、自社の環境にあわせて自由なカスタマイズが可能 です。フルスクラッチ型のように開発に時間と手間をかけることなく、自社にとって必要な機能のみを用意できます。

BIZXIM製番には、次のような特長があります。

  • 受注生産業務に特化したパッケージソリューションであるため、受注生産型に必要とされる標準機能、オプション機能、事例テンプレートを数多く有しています。
  • 内部統制強化を実現する業務フローの設計が提案できるソリューションです。たとえば、見積承認、受注承認、購買承認など、業務処理ポイントの起案や、承認のチェックをする機能が付いています。
    そのため、統制強化を図ることが可能です。
  • 販売管理・生産管理・財務管理までが一元化されたERPパッケージソリューションであるため、引合いから会計に至る基幹業務プロセスを一気通貫に管理でき、「見える化」を強力に推進します。

▼ BIZXIM製番の詳細について

BIZXIM製番の特長 | NTTデータ関西

また、下記の社内インタビュー記事にて、BIZXIM製番を含む基幹システムについて具体的な導入の流れやサポート体制などについて語っています。

▼ 社内のインタビュー

「2025年の崖」を乗り切るだけでなく、その先も見据えた基幹システム更改に

5.ベンダー企業との新たな関係を構築

新たなデジタル技術や導入したシステムを最大限活用するためには、ベンダー企業との良好な関係を構築することが重要です。

契約に関しても、既存のままでシステムだけをアップデートして継続するのではなく、見直しが必要です。システム開発のプロジェクトメンバーやその役割、進行方法についても、改めて検討してみましょう。

6.IT戦略やシステム構築に必要な人材を確保する、育成

DXを実行できる人材の育成を充実させます。そのために求めるスキルを整理し、最適な教育体制を整えます。

たとえば、ベンダー企業に任せてしまうのではなく、自社の人材も参加した形でのアジャイル開発の実践も良いでしょう。業務を遂行するために必要な技術と知識を自社に蓄積していくことが重要です。

DX推進に必要な人材に関する詳細は以下の記事が参考になります。

DX推進をリードするDX人材に求められる能力とは

リスキリングとは?リスキリングを成功させるポイント

7.移行するスケジュールを決定

ITシステムを刷新するには中長期の見通しを立てておく必要があります。その際、リスク管理もふくめて整理しておきます。すべての既存システムを一気に最新システムに移行することは不可能なので、実行しやすい部分からはじめます。

DX推進を成功させるポイント3つ

DX推進を成功させるためのポイントは大きく分けて次の3つです。

1.ビジョンや目的を明確にする

DXへの取り組みは経営戦略としてどのような意義があるのかを明確にし、全社で共有します。ビジョンを明確にした段階で、全社に周知するようにしましょう。

ビジョンや戦略設計のやり方がわからない方や、質を高めたい方は「デジタルガバナンス・コード2.0」の活用 もおすすめです。

デジタルガバナンス・コードとは、経済産業省が企業のDXに関する自主的取り組みを促すために経営者に求められる対応をまとめたものです。

デジタル技術による社会変革を踏まえた経営ビジョンの策定・公表について記載されています。

「デジタルガバナンス・コード」は、2020年11月に取りまとめられ、その2年後に必要な改訂を施した「デジタルガバナンス・コード2.0」が公表されました。

2022年にまとめられたデジタルガバナンス・コード2.0は「DX推進ガイドライン」と「デジタルガバナンス・コード」を統合したものでもあります。

こうしたデジタルガバナンス・コード2.0は企業がDXをそのように推進していけばよいのかに関する手引き書のようなものです。

構成は4つの柱で示されています。

  • ビジョン・ビジネスモデル
  • 戦略
    • 組織づくり・人材・企業文化に関する方策
    • ITシステム・デジタル技術活用環境の整備に関する方策
  • 成果と重要な成果指標
  • ガバナンスシステム

ここに示された考え方や方策を参考に、自社のDXへの取り組みに活用しましょう。

下記の記事では、DX戦略に活用できるフレームワークも紹介していますので、参考にしてみてください。

DX戦略とは。立案ポイントと活用できるフレームワーク

2.DXに必要な知識やスキルを共通化する

DX推進をけん引する組織を作ることは重要です。

しかし、担当する組織のメンバーだけに任せてしまうと、結局、全社に共通認識が定着しません。情報を全社で共有し、社内のリテラシーギャップを埋めていくことが必要です。

自社に専門性のあるメンバーがいない場合は、外部からの支援を受けるのも良いでしょう。

はじめは支援を受けながら、徐々の自社のやり方を見つけていくことをおすすめします。

NTTデータ関西でも、豊富な経験とさまざまなソリューションについての 専門知識を生かして、貴社の課題にあわせたご提案が可能 です。これからのデジタル社会に向けて、 お客様のITを構想するコンサルティングサービスやIT企画、最適な情報システム・サービスを提供 しています。

▼ IT構想策定サービスの詳細について

IT構想策定サービス|NTTデータ関西

DX推進の支援サービスやコンサルの選び方は下記の記事で詳しく解説しています。

本気でDX実現をめざすときDX支援企業はどう選ぶべきか 〜支援サービスの種類や選ぶときの注意点を解説〜

DXコンサルの計画的な活用でDX推進を加速させる

3.DXの進捗状況や成果を定期的に振り返る

経済産業省が策定し公開している「DX推進指標」を活用して、DXへの取り組み状況を自己判断しながら、着実に推進していきましょう。

DX進捗指標の使い方

  • 認識共有・啓発
    「DXのための経営の仕組み」と「その基盤としてのITシステムの構築」に関して、関係者が集まって議論をしながら、認識の共有を図り、方向性の議論を活性化することが重要です。
  • アクションにつなげる
    自社の現状や課題を把握して認識を共有したうえで、あるべき姿をめざすために次に何をするべきか、アクションについて議論をします。そして、実際にアクションを起こすことが重要です。
  • 進捗管理
    翌年度に再度診断を行って、アクションの達成度合いを継続的に評価します。それによりDX進捗のための取り組みの経年変化を把握し、自社のDXがどのように、どれくらい進捗しているのかを管理します。

DXを推進するための取り組みについては、全体にいきなり実施するのではなく、小さな取り組みを徐々に広げていきます。レガシーシステムの刷新においても、新しく置き換えやすいところから進め、成功体験を得ることで、意欲も高まります。

DX成功事例や成功のポイントについては以下の記事が参考になります。

DX推進・成功事例から実施のヒントを探る~国内・海外成功事例22選~

まとめ:DXを推進して2025年の崖を回避しよう

デジタル技術を活用して新たなビジネス機会をつかみ、市場における競争力を拡大していくことは、どの企業にとっても命題です。

しかし、DXを実現させる重要性は認識していても、取り組み方がわからない場合もあれば、人材を割くことができず推進できない場合もあります。一気にすべての部署でDXを進めるのではなく、2025年の崖に着目しながら優先順位を決めた上、DX推進の計画を設計しましょう。

今回紹介したように、2025年の崖と言われている問題は、多くの企業が抱えているレガシーシステムへの対応を検討する機会でもあります。

競争力を高め、ビジネスモデルを見直し、理想として描くあるべき姿へと変革するためには、システムの刷新が必要になるケースもあるでしょう。

しかし、業務全体への影響が大きいと考えられる基幹システムを刷新することは難しいものです。レガシーシステムで問題となっている点を洗い出し、解消できるがどうかの検討も必要です。

まずは、システムの現状とIT人材の確保状況を確認し、自社に適したIT環境を構築してDXを実現するためには、どのように進めていくかのシナリオを描くことからはじめましょう。