ホーム / D×KNOWLEDGE / 輸出入通関もスムーズになる貿易物流業務DXへの動き

D×KNOWLEDGE

DX、IT戦略などITに関わる課題解決に
役立つコンテンツをお届け
~お客様とともに新しいしくみや
価値を創造する、オウンドメディア~

輸出入通関もスムーズになる貿易物流業務DXへの動き

 | DX

貿易物流には多くの業務プロセスと書類が存在します。また、そうした業務に関わる企業も多く、業務内容は煩雑です。煩雑になる原因のひとつは法律に規定された内容に関わる業務が多いことです。商品ひとつをとっても、それが食品なのか、雑貨なのか、精密機器なのかといった種類の違いによって、法律で細かく規定されており、それを証明するための書類や申請書類は膨大な数になります。これだけ煩雑な業務ではミスも発生しやすく、業務プロセスのどこかで修正が生じた場合、すぐには対応しきれない場合もあります。こうした貿易物流業務を見直し効率化するための動きが、政府からもそれぞれの企業からも出始めています。今回は輸出入通関もスムーズになる貿易物流業務のDXの取り組みと動きをみていきましょう。

貿易物流には多くの企業や無数の書類が関わる

通常、商品を取引する際には、売買契約の締結から、商品の輸送、商品代金の決済といった基本的な流れが生じます。この大きな流れは国際取引でも同じですが、貿易特有の書類や手続きが存在します。たとえば、輸出地と輸入地での通関が必要となることです。こうした貿易の特別な手続きがあることで、国際的な貿易物流業務においては、国内取引以上に多くの企業(ステークホルダー)が関係することになります。また、こうした企業間での手続きや申請は紙の書類が使用されており、IT化が進められている現在も従来のやり方が踏襲されているところが多く残っています。改めてざっと貿易物流に関わる企業と必要な書類についてみておきましょう。

貿易物流に関わる主な企業

商品を輸出する企業と輸入する企業の間に存在する主な関係企業・組織はこれだけあります。

銀行
貿易取引における決済に関わる業務を行います。
倉庫業者
商品を輸出するまで保管し、配送手配などに関わります。また、輸入許可の下りた商品についての保管を担います。
配送業者
倉庫から荷出を行い、国際的な輸送を行うまでの商品輸送を担います。国際的な輸送がされた商品を輸入する企業へと配送を行います。
船会社および航空会社
商品を輸入する企業の国まで輸送を担います。
フォワーダー
貨物利用運送事業法に基づいて、国土交通大臣の許可を受けた利用運送事業者を指します。
商品の輸出入に関する手続きや手配業務を代行します。
通関業者
フォワーダーと似た役割を担いますが、通関業者は通関法という法律の規程にのっとり、税関に関する業務を担います。つまり、税務関係の代理手続きを行う業者といえます。
税関
海外から輸入される商品、海外へ輸出される商品が適正に手続きを踏んだものであるかどうか、違法性の有無などを書類によってチェックを行っています。

貿易物流に関わる主な書類

商品の輸出入で必要となる主な書類は以下のものがあります。

インボイス
商品の送り状のことを指します。荷送人(輸出者)が荷受人(輸入者)に対して発行します。輸出品の記号、商品名、数量、契約条件、単価、仕向人、仕向地、代金支払い方法などが記載されます。
この書類は輸入者側では仕入書としても活用されます。
パッキングリスト
梱包してある輸出入貨物の明細書を指します。少量の貨物の場合は、インボイスで兼用されます。パッケージごとの商品名、個数、重量、荷姿、保険金額などが記載されます。
船積依頼書
シッピングインストラクションという言い方で貿易実務現場では使用されることの多い書類で、通関手続きをするさいに、インボイスやパッキングリストとともに提出するものです。船積依頼書には荷送人、荷受人、出港地、入港地、船名、出港日、品名、数量といった内容を記します。
また、この書類の内容がB/LやAir Waybillに記載される情報のもとになります。
B/L(船荷証券)またはAir Waybill(航空貨物運送状)
B/Lは国際海上輸送の際に、荷主と運送人との間で運送契約を結んだことを証明する書類を指します。B/Lは権利証券なので、同書類を受け取った輸入者は貨物の引き渡し請求権を受け取ったことになります。運送人はこの書類を所持している輸入者に貨物を引き渡す義務があり、引き渡した後、この書類を回収します。
Air Waybillは荷送人から荷受人への貨物輸送通知書です。荷送人は荷受人にAir Waybillは渡しませんので、貨物を受け取る際は運送人に荷受人であることを証明して、受け取ることになります。
為替手形
一定期日に指定金額を支払う義務を表明した書類です。
貨物到着案内(Arrival Notice)
輸出された貨物が輸入港に到着する前日、あるいは数日前に輸送を請け負っている船会社が発行する貨物到着案内のことです。

輸出する企業はこれらの書類をそろえ、手続きを依頼するフォワーダーに渡します。書類を受け取ったフォワーダーは輸送の手続き、税関への輸出申告などの必要な手続きを代行します。

商品を輸入する企業は輸出する企業からの書類を受け取ったら、フォワーダーに依頼をして、輸入通関と商品の引き取りを代行してもらうことになります。その後、輸入許可が下りた段階で、商品を引き取り、適正に決済がなされる、というのが貿易の基本的な流れです。

貿易物流業務の課題

ここで注目しておきたいのは、こうした関係企業の多さと、それぞれの業務において、手続きがアナログであることや紙の書類が多く使われていることです。こうした現状では、荷主、物流業者、船舶・航空会社、保険会社など、多くの関係企業(ステークホルダー)に密にコミュニケーションをとる必要があります。しかし、その手段の多くは、メールやFAXを利用しており、情報の一元管理がされていません。

また、それぞれの手続きを行う段階で紙の書類をもとにした手入力をすることで人的ミスが発生しやすい状況が生まれます。そうした状況のなかで、それぞれが連携し、ミスのない手続きをしなければ、商品が予定通りに輸送されなくなります。こういった現状が貿易物流の時間的経費的な負担となっています。

具体的な課題としてあげられるのが、以下の項目です。

管理体制の違い:
国や品目、商品が輸出入される港や空港ごとに管理情報が違うので、それぞれの要件を踏まえた手続きを行う必要があります。どこかの段階で入力ミスが発生すれば、すべて確認し直して書類の作り直しをしなくてはなりません。
書類フォーマットの違い:
通関書類のフォーマットにも違いがあるので、それぞれに対応する必要があります。こうした作業は属人化しやすく、担当者不在の場合は業務がスムーズに進みません。
変更履歴の確認がしにくい:
受け取った紙の書類をもとに、必要な書類の作成を手作業で行っていると、修正や変更が生じた場合、変更履歴が残らないケースが発生します。
受注・出荷・船積情報が一元管理できない:
それぞれの段階でExcelやWordなどを活用して必要書類を作成し、それらを紙に出力して次の手続きへと送ったり、FAXで送ったりしていると、進捗が把握しにくくなるほか、情報履歴が確認できなくなるケースが発生します。

貿易物流に関わる業務は法規制に関わることが多く、事故やトラブルが発生すると、その取引についての損失だけではなく、関わった企業の信用も落としてしまうおそれがあります。

貿易物流DXへの動き

上記で確認したように貿易物流には多くの企業やそこで使われる無数の紙の書類が存在しています。また、商品を輸出入する企業の多くは商社や製造業で、企業数や扱う商品の種類は膨大です。一方で、荷物の輸送を担う物流業者は荷主となる企業よりも数が少ないので、物流業者1社が複数の荷主企業と取引をすることになります。

膨大な商品に注目しても、その種類、たとえば、精密機械なのか食品なのかによっても検疫の有無、荷姿、輸送期間の保存状態など、それぞれ異なる対応が必要になり、非常に煩雑な作業が発生します。

こうした現状における課題を解決して業務を効率化し、貿易物流の円滑化するのが貿易物流のDXです。

デジタルフォワーダーの登場

非常に煩雑な貿易物流業務が抱える課題を解決する方法のひとつが、業務のIT化です。この動きのなかで貨物の動静確認や書類の受け渡しといった業務を、クラウド型プラットフォームを活用して行うデジタルフォワーダーが登場してきています。

政府が取り組む輸出入手続きに関わるIT化

政府も貿易に関わる業務の煩雑さを解消するために輸出入の行政手続きをオンラインで行えるシステムを運用しています。それがNACCS(Nippon Automated Cargo and Port Consolidated System)です。

現在のNACCSは2017年から稼働している第6次NACCSです。海上貨物と航空貨物の両方の行政手続きやそれらに関連する民間手続きを処理することができます。2025年には第7次NACCSへとシステム更新が行われる予定です。

NACCSが登場したのは1978年。航空貨物の輸入手続きを行うためのシステムとして登場したAir-NACCSが最初です。その後、1991年にSea-NACCSが会場貨物の輸出入通関システムとして稼働しはじめます。さまざまな機能が追加され、現在の第6次NACCSに移行してきました。

プラットフォームの活用で業務改善を図る

非常に煩雑な貿易物流業務が抱える課題を解決する方法のひとつが、業務のIT化です。たとえば、NTTデータ関西が20年以上にわたりWebアプリケーションプラットフォーム「intra-mart」を用いてご提供してきた海貨業務システムは、Webブラウザを利用したアプリケーションであり、端末を更改する際の入れ替え作業なども必要ないという近年にやっと当たり前になってきた仕様を、オンプレミスが主流だった当時から業界の先駆け的に展開してきたものです。また、海貨業務システムを核として、さまざまな業務システムをまとめて統一したプラットフォームとして活用することができます。

また、NTTデータ関西が提供している貿易物流に特化した貿易書類プラットフォームサービス「B2B TradeCloud®」を活用することで、ステークホルダーとやり取りするための貿易文書を作成、共有、保管、検索することに関しても業務効率化を図ることができます。

貿易書類のやり取りは荷送人、運送人、フォワーダー、荷受人が互いに書類をメールやFAXで行っていました。そのため、輸出品を発送するまでにも必要書類を揃え確認し、それぞれの相手に間違いなく送らなくてはなりません。どこか一つでも書類にミスがあると、すべてを見直し、修正をしてやり直しをしなければならないケースも出てきます。こうした業務を「B2B TradeCloud」で一元管理することで情報共有ができるので、書類を互いにやり取りする必要がなくなります。

具体的には貿易書類作成を自動化することや、「B2B TradeCloud」上に貿易書類を連携することで、関連企業にメール通知が自動で送られます。さらに、貿易書類は「B2B TradeCloud」上で管理できるので、属性検索やインボイス番号などを検索キーワードとして関連書類を一括で確認することも可能です。そのため、税関検査にもスムーズに対応することができます。

このように、いままで業務に精通したスタッフが対応しなければ行えなかった貿易業務が効率的に行えるようになります。

▼ 「B2B TradeCloud」の詳細について

共同利用型貿易書類プラットフォームサービス B2B TradeCloud | ソリューション | 株式会社NTTデータ関西

貿易業務DXの事例

貿易業務のDXを進めるにあたっては、政府が運用しているNACCSとの連携や自社内の貿易業務の効率化が必須です。ここでは具体的な事例をみながら貿易業務効率化やDXの取り組みのポイントを探ってみましょう。

営業力強化へとつながった業務効率化。それを実現させた海貨業務システムの導入(株式会社ジャパンエキスプレス)
商船三井グループの総合物流会社である株式会社ジャパンエキスプレスでは、業務が一元管理できておらず、情報がリアルタイムに共有できない状態だったため、ムダな労力や作業時間が発生し、業務全体の流れも煩雑なものでした。とくに海貨業では、送り状や船荷証券といった書類が膨大に存在しますが、それらデータ管理ができていない状態だったのです。こうした状況が長年改善されなかった背景には、現場では書類さえあれば業務が進んでいくという体制・現場の常識のようなものが存在していたからだといえるでしょう。つまり、手で書いた書類でもその場にありさえすれば問題がなかったわけです。しかし、伝票が複数存在したり、ミスが後々に判明したりといったケースもありました。
こうした業務のムダ解消やトラブル回避も期待して、NACCSとの連携システム導入をしました。いくつかの選択肢のなかから、自社の業務に最適化できる「intra-mart」を導入しました。NACCSとの連携を想定するにあたり、将来的に柔軟にカスタマイズできるシステムであることが選択の決め手です。
導入後は受注、出荷、売上、入金の管理が一気通貫で行えるようになりました。最初に営業が入力した情報を全社で共有でき、他部署の入力の手間が削減できました。NACCSへの登録から伝票発行までの手間も1回で完了できるようになりました。今後は港の24時間フル稼働も視野に入れて、NACCSの進化が予想されるので、そうした体制にも柔軟に対応できるようにシステムおよび組織体制、社員意識を高めていきたいと考えています。

▼ 本事例の詳細について

株式会社ジャパンエキスプレス様 | 導入事例 | 株式会社NTTデータ関西

複雑に連携させていた業務システムを一本化。(義勇海運株式会社)
国内外の主要な港湾都市を拠点に物流業や通関業を展開している義勇海運株式会社は、業務の効率化をめざして抜本的にシステムの再構築を行いました。
30数年前から自社開発したシステムを業務に使っていました。システムを構築するOSやコンピュータ言語は一昔前のもので、社外から受け取ったデータを連携させようとすると、社内システムに対応したものへと手を加えないと連携できない状態でした。
また、必要が生じる都度にカスタマイズを繰り返してきたシステムは、扱える人材が限定され、将来的には誰もシステムを保守できなくなるということが目に見えていました。そのうえ、業務ごとにシステムが構築されていたため、連携が複雑で効率化を図るにも手が着けられない状態でした。
これらの課題を解決するために、業務システムを整理し、すべての事業拠点で統一したシステムが利用できるようにしました。
業務内容から一般的な業務システムの導入は難しいと判断し、カスタマイズしやすく、豊富な経験と事例のあるNTTデータ関西の「海貨業務システム」を選択しました。また、税関が使っているシステムNACCSにも精通しているNTTデータ関西に依頼することで、自社に適したシステム開発がのぞめると考えました。
新システムの導入前は、複数のシステムが存在していたことでミス発生時には、情報の再入力が必要でしたが、導入後は統一システムで一元管理が可能になったため、再入力の手間が削減できています。社外からのデータもダイレクトに連携できるようになったため、トラブルやミス発生が軽減されています。
さらに、システムが統一されたことで、各拠点の状況も見える化され、作業工程のムリ・ムダを削減できるようになりました。

▼ 本事例の詳細について

義勇海運株式会社様 | 導入事例 | 株式会社NTTデータ関西

まとめ: 貿易業務のシステム化や貿易書類の電子化によって、国際的なビジネスの活性化につながる

多くの企業において貿易業務の煩雑さと紙の書類の膨大さを課題とし、一元管理しやすいシステムの導入とペーパレス化が課題解消につながるとしています。また、貿易業務DXを推進するためのシステムを導入するべきだとしている企業が95%を超えていることがある貿易業務支援サービスを提供している企業の調査でも明らかになっています。

政府もこの課題を解消するためにNACCSを運用しているほか、intra-martを基盤とした「海貨業務システム」や「B2B TradeCloud」といったシステム、サービスも活用する企業が増えてきました。

今後、こうしたIT化の動きを加速させ、アナログで行われていた貿易業務がIT化されれば、世界の国々がそれぞれ法的、社会的な取引の違いをストレスなく対応でき、さらなる市場の活性化につなげることもできるでしょう。

まずは、自社の貿易業務を見直し、支援体制の整った企業と連携しながら、IT化を進めましょう。