【自治体向け】地域活性化の成功事例と必要な3つのポイントとは?
地域活性化は、少子高齢化や人口減少に直面する地域にとって重要な取り組みです。
地域活性化に取り組む担当者の中には、将来への不安を感じながらも、何からすれば良いのかわからないといった状況に陥っているかもしれません。
しかし、全国には、観光、まちづくり、教育、移住など、さまざまな分野で工夫を凝らした取り組みが実を結んでいるケースも多数存在します。
そこで、本記事では、地域活性化を成功させるために、先進事例を「観光まちづくり」「教育」「移住」の3つの分野に分けてご紹介します。また、成功のための3つの重要ポイントについても解説しますので、ぜひ最後まで読み進めてみてください。地域の未来を切り拓くヒントが、きっと見つかるはずです。
目次
地域活性化とは
地域活性化とは、地域が抱えるさまざまな課題を解決し、持続的な発展を目指す取り組みの総称です。
下記を代表とした多岐にわたる分野での活動が含まれます。
- 地域固有の自然、文化、歴史を活かした観光資源の開発
- 地域の企業や団体と連携したキャリア教育の実施
- 定住・移住促進
- 少子高齢化や人口減少に対応した地域コミュニティの形成
- 福祉サービスの充実
- 伝統文化の保存・継承、地域の歴史や文化を活かしたイベントの開催
こうしたさまざまな分野での活動を通じて、地域の課題解決と魅力向上を図り、住民が誇りを持って暮らせる持続可能な地域社会の実現を目指すことが地域活性化の目的です。
なぜ地域活性化が必要なのか
地域活性化が重要視される背景には、さまざまな社会問題の背景があります。
たとえば、少子高齢化と人口減少、経済のグローバル化、地域コミュニティの弱体化、老朽化などが挙げられるでしょう。
多くの地域で少子高齢化が進行し、人口減少が加速する中、特に地方部では若者の都市部への流出が顕著で、地域の活力低下につながっています。
人口減少や高齢化は地域コミュニティの維持を困難にし、コミュニティの弱体化は地域の安全安心や福祉、文化の継承などにも影響を及ぼします。
これらの複合的な問題に対応し、地域の持続可能性を高めていくためには、地域の課題を直視し、地域の強みを活かした地域活性化の取り組みが不可欠です。
地域活性化は単なる経済振興にとどまらず、地域社会の再生と発展に向けた総合的な取り組みだといえます。
各地域が自らの特性を活かした地域活性化を進めることで、地方と都市の格差是正、ひいては日本全体の持続的な発展にもつながります。
地域活性化の成功事例【観光まちづくり】
地域活性化の成功事例として、観光まちづくり分野の事例をご紹介します。
長崎県|古民家再生とワンストップ窓口設立で観光客増加を実現
長崎県小値賀島では、豊富な地域資源があるにもかかわらず、観光客の滞在時間が短く、観光消費につながっていないという課題がありました。
その地域資源の一つである古民家を観光資源として再生するべく「古民家ステイ」「古民家レストラン」を展開しました。「暮らすように旅をする」ための拠点とプライベート空間を提供しています。
また、「食」「泊」「過ごす」の3つをすべて受注型企画旅行として手配できるワンストップ窓口機能を有する日本版DMO「おぢかアイランドツーリズム」を設立しました。
その結果、平成23年から平成28年にかけて、宿泊客数が約58%増加、観光入込客数が約21%増加するなど、着実な成果を上げています。
地域資源を発掘・活用に成功した事例です。
埼玉県|小江戸ブランドを生かしたまちづくり
埼玉県川越市では、古くから「小江戸」と称される中心市街地に多くの観光客が訪れていました。しかし、交流人口の増加に対して小売販売額が停滞し、滞在時間も短いという課題を抱えていました。
この状況を打開するため、公益社団法人小江戸川越観光協会は川越産品のブランド認定品を販売したり、イベントを企画したりすることで、ブランド認知の拡大を目指しました。
また、滞在時間の延長を図るべく、南北に分断されていた縦長の中心市街地域に、新たな回遊拠点「小江戸蔵里(くらり)」を設置しました。小江戸蔵里では、飲食、物販、観光案内、イベントスペースなどの多様なサービス機能を有する施設として整備されています。
この一連の取り組みにより、小江戸蔵里は地場産業、観光、歴史文化など多様な要素が集まる町の拠点として機能するようになり、住民や観光客のまちなか回遊も向上しています。また、小江戸川越ブランドの浸透と、地域産業の競争力強化にもつながっています。
本事例の成功要因としては、ブランドの認定により全国的なPRを行うことで地元事業者の意欲と集客力を高めたことが挙げられるでしょう。
地域活性化の成功事例【教育】
地域活性化として、教育分野での取り組みも進んでいます。
2つの成功事例をご紹介していきます。
島根県|高校を核に離島の特性を生かした島おこし
島根県立隠岐島前高等学校は、少子高齢化の影響による入学者数の激減で統廃合の危機に直面していました。高校の存続は地域の存続と直結することもあり、地域総がかりでさまざまな取り組みを実施しました。その取り組みの一つが「島前高校魅力化プロジェクト」の発足です。
プロジェクトでは、地域に根ざしたキャリア教育「地域創造コース」を新設し、地域の課題解決授業を実施しています。また、地域と高校の連携型公営塾「隠岐國学習センター」を設立し、教育環境の整備にも取り組んでいます。さらに、全国・海外から生徒を募集する「島留学」を実施するなど、異文化や多様性を取り込む工夫も特徴的です。
その結果、生徒、そして人口も増加しており、地域に大きな変化をもたらしました。また「いずれ島に戻り、世界のモデルとなる町にしたい」と夢をもって進路を選択する生徒が増えるなど、若者の意識にも変化が表れています。
高知県|高校生のアイデアを元にした地域課題の解決
大方商業高校の廃校の決定により、同校が地域最大の「空き家」になることを懸念した地域住民が、教職員とともに「学校の未来を語る会」を設置しました。新たな高校の開校に向けて、基本方針や教育課程まで議論した上で、地域活性化の拠点とすることを目指しました。その結果、「高知県立大方高等学校」として、新たな高等学校の開校を実現しています。
大方高等学校では、高知大学と連携して開発した「自立創造型課題解決学習プログラム」が実践されました。企業やNPO、町役場の人々から提案される地元課題に関連した「ミッション」に高校生が取り組み、解決策を検討・発表するというプログラムです。また、地域の資源を活かした「砂浜美術館」や「潮風キルト」を学校設定科目に設定し、高校生が地域に出て行く機会を提供しています。
こうした地域と連携した授業展開より、生徒の地域理解も深まっています。さらに、高校生が提案したさまざまな商品が地域のPRにつながり、地域の課題解決や活性化に大きく寄与している好例です。
高校存続の危機という難局を、地域との連携によって新たな学校づくりの転機とした成功モデルといえるでしょう。
地域活性化の成功事例【移住】
続いては、移住分野の地域活性化に成功した事例をご紹介します。
北海道|「住民ファースト」な定住・移住促進
北海道上士幌町では、平成の大合併の際に他市町村との合併を選択しなかったことで、将来的な人口減少が危惧されていました。
そこで、上士幌町は、住民の暮らしやすさを重視した取り組みを進めることで、定住・移住者を増加させるまちづくりを実施しています。具体的には、子育て支援の充実や、認定こども園の開設、無料職業紹介サイトの運営などに取り組んでいます。
また移住相談窓口を設けることで、移住希望者に寄り添ったサポートも提供しました。
このような新しい移住者に向けた働きかけに加えて、住民が住み続けられる魅力的なまちづくりを地道に進めることが、中長期的には移住・定住促進に繋がることを示した好事例といえるでしょう。
福井県|移住と空き家対策の一体的な取り組み
福井県池田町では、人口減少が続く中、集落機能の維持・発展のために地域の抱える課題を住民とともに考え、解決策の一つとして空き家を活用した移住者の受け入れを進めています。
町では、移住と空き家対策を一体的に捉え、移住希望者と空き家所有者をつなぐ総合窓口「いけだ暮LASSEL(いけだくらっせる)」を役場内に開設しました。この窓口では、移住に関する情報提供や相談対応に加え、空き家の有効活用を望む所有者の相談にも対応しています。その結果、移住希望者と空き家所有者のマッチングも円滑に進むようになりました。
また、池田町では、特別移住者向けの支援制度は設けず、住民全体を対象とした独自の支援制度を充実させることで定住者の増加も図っています。
地域活性化の成功に必要な3つのポイント
今回ご紹介した成功事例をはじめ、地域活性化の成功している自治体は、どのようなポイントを実践しているのでしょうか。3つのポイントについて詳しく見ていきましょう。
地域資源の発掘と活用
地域活性化を成功させるためには、まず地域資源の発掘と活用が欠かせません。歴史、文化、自然、産業など、地域に眠る魅力的な資源を再評価し、磨き上げることが重要です。そして、それらの資源を観光振興や特産品開発、まちづくりなどに効果的に活用していくことが求められます。
各団体との連携・協働
地域活性化は、行政だけでなく、住民、企業、NPO、大学など、多様な団体との連携・協働なくしては実現できません。
各団体が持つ知見やノウハウ、ネットワークを持ち寄り、アイデアを出し合い、協力して取り組みを進めていくことが欠かせないでしょう。そのためには、対話の場づくりやビジョンの共有、信頼関係の構築などが重要となります。
デジタル技術を積極的に活用したDX推進
地域活性化において、デジタル技術の活用も大きな可能性を秘めています。ICTを活用した情報発信やマーケティング、遠隔教育の実施、スマート農業の推進など、さまざまな分野でデジタル技術を導入することで、地域活性化の取り組みに革新をもたらせるでしょう。
手回りの業務を一つひとつデジタル化することで、新たな価値創造やその他の重要な業務に時間を割くことも可能になります。
愛知県西尾市では、デジタル田園都市国家構想を積極的に推進しており、その一環として既存の電子申請システム 「e-TUMO APPLY」 にLINE連携機能を追加 しました。この取り組みにより、 市民の利便性向上 と オンライン申請利用率の増加 を実現し、行政手続きのデジタル化を大きく前進させました。
さらに、この成功モデルは愛知県の他市町村へも横展開しやすいという利点があり、地域全体のデジタル化推進に貢献することが期待されています。導入前の課題や効果については以下の記事をご参照ください。
▼ 事例の詳細について
日本初!e-TUMO APPLYとLINEを連携。申請から決済、受け取りまでの一気通貫システムで市民の利便性と職員の業務効率化を向上させる
自治体業務のDXについては以下の記事でも詳しく解説しています。
まとめ:地域活性化の成功には資源とデジタル技術の活用が不可欠
地域活性化は、地域の持続的な発展にとって欠かせない取り組みです。
観光、まちづくり、教育、移住など、さまざまな分野で先進的な事例が生まれています。
地域資源の活用、多様な団体の連携・協働、デジタル技術の活用が、地域活性化の成功には重要です。
地域の個性を活かした創意工夫と、関係者の熱意と行動力が結集されるとき、地域の未来は切り拓かれるでしょう。
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