相続手続きのオンライン化で金融機関が実現する業務改革と競争優位性の構築

相続手続きのオンライン化は、金融機関にとって業務効率化と顧客体験向上を同時に実現する戦略的施策です。高齢化社会の進展により相続案件は年々増加しており、それに伴う手続き業務の負荷が金融機関の経営課題となっています。オンライン相続サービスの導入により、持続可能な業務運営が可能になります。
本記事では、相続手続きのオンライン化の具体的な実装方法と、それがもたらす競争優位性について解説します。
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目次
相続手続きのオンライン化が金融機関の経営課題となる背景
金融機関を取り巻く環境は急速に変化しています。人口動態の変化がもたらす影響は、相続手続きにおいて特に顕著です。
死亡者数は2040年にピークを迎えると予測され、相続案件は今後大幅に増加すると考えられます。同時に生産年齢人口は減少を続け、1人当たりの業務負担は加速度的に増大する見通しです。
デジタル資産の普及も新たな課題を生んでいます。ネット銀行、証券会社、暗号資産など、従来の枠組みでは把握しきれない資産が急増しています。電子交付の普及により紙の通帳や取引明細書が減少し、相続人が故人の金融資産を特定できないケースが増加しているのです。
これらの課題に対し、従来の対面中心の業務体制では限界があります。相続手続きのオンライン化は、持続可能な業務運営を実現するための解決策として注目されています。
相続手続きのオンライン化がもたらす価値
相続手続きのオンライン化は、金融機関に複層的な価値をもたらします。業務効率化という目に見える効果だけでなく、顧客との関係性の質的転換やデータ活用による戦略的な経営判断まで、幅広い領域で成果を生み出すことが期待されます。
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業務処理能力の飛躍的な向上
オンライン化により、同じ人員で処理できる案件数が増加します。システムによるチェック機能は、書類確認の時間を従来の半分以下に短縮可能です。
また、進捗管理の可視化により、案件の状況把握が容易になります。どの段階で滞留しているか、追加書類が必要な案件はどれかといった情報が簡単に把握でき、適切なフォローアップが可能になります。
複数の相続人が関与する案件でも、オンライン上で情報共有ができます。郵送や対面での調整が大幅に削減でき、手続き完了までの期間が短縮されます。
利便性向上による顧客満足度の向上
オンラインサービスは、顧客との関係性を根本から変えるポテンシャルがあります。24時間365日いつでもアクセス可能な環境は、働く世代の相続人にとって大きな価値があります。仕事の合間や夜間でも手続きを進められるため、平日の来店が困難な人々の負担を軽減できるのです。
進捗状況のリアルタイム確認機能は、不安の軽減につながります。「今どの段階まで進んでいるのか」「あとどれくらいで完了するのか」が分かるだけで、相続人の心理的負担は大きく和らぎます。相続手続きは精神的に負担の大きい状況になりがちなため、透明性の高いサービスが顧客の信頼獲得に直結するのです。
さらに、デジタルチャネルでの接点が増えることで、追加サービスの提案機会も拡大します。相続手続きの過程で把握した資産状況をもとに、相続した資産の運用相談や相続税対策など、付加価値の高いサービスへの誘導が自然な流れで実現できます。
データ活用による経営判断の高度化
相続手続きのオンライン化は、業務データの蓄積を促進します。案件ごとの処理時間、つまずきやすいポイント、顧客からの問い合わせ内容といった情報が蓄積されていきます。
こうしたデータを分析することで、業務改善の優先順位を明確にできるといわれています。どの工程に時間がかかっているのか、どの書類で不備が多いのか、定量的な根拠に基づいた改善施策の立案が可能になるためです。
また、案件の傾向分析により、繁忙期の予測や適切な人員配置の判断にも活用できます。年齢層、地域、資産規模などの属性と手続きの特徴をひも付けることで、業務プロセス全体の最適化につながると考えられています。
こうした業務データの活用は、相続手続きに限らず、金融機関のデジタル化全般において重要な副次的効果として注目されています。
相続手続きのオンライン化を成功に導く組織づくり
技術的な実装と並行して、組織体制の整備が欠かせません。人材戦略の再構築、業務プロセスの標準化、移行管理の徹底という3つの観点から、組織全体の変革アプローチを解説します。
人材育成戦略の再構築
デジタル化により業務内容が変わるため、人材育成の方向性も見直す必要があります。定型業務が自動化されることで、行員にはより高度な判断力やコミュニケーション能力が求められます。
特に、相続に関する顧客対応力の強化が重要になります。税務や法律の基礎知識を身につけ、必要に応じて専門家につなぐ橋渡し役としての能力開発が求められます。また、相続した資産の運用相談など、付加価値の高いサービスを提案できる人材の育成も課題となります。
業務プロセスの標準化
オンライン化を機に、業務プロセス全体を見直す好機です。これまで各支店や担当者ごとに異なっていた手順を標準化することで、サービス品質の均一化が実現します。
ナレッジの体系的な蓄積も可能になります。ベテラン行員の経験知をシステムに組み込むことで、組織全体のノウハウとして活用できます。
標準化された業務フローは、新入行員の教育期間短縮にも寄与します。システムが適切な手順を案内してくれるため、経験の浅い担当者でも一定水準のサービスを提供できるようになります。
移行管理の徹底
デジタル化への移行期には、現場の不安や抵抗が生じることがあります。経営層のコミットメントを明確に示し、取り組みの必要性を丁寧に説明することが重要です。成功事例の共有により、前向きな雰囲気を醸成できます。先行導入した拠点での成果を可視化し、全体に展開することで推進への機運を高めます。
継続的な改善のサイクルを確立することも大切です。現場からのフィードバックを積極的に収集し、システムやプロセスに反映する仕組みを作ります。
競合優位性の確立と将来展望
相続手続きのオンライン化は、金融機関の競争力を左右する重要な要素となります。早期に取り組むことで得られる先行者利益、新たな収益機会の創出、進化するテクノロジーへの対応という3つの視点から長期的な競争優位性の構築方法を解説します。
先行優位性の確保
業界内で早期に高品質なオンラインサービスを提供することは、差別化要因のひとつになります。既存顧客の満足度向上や新規顧客への訴求力強化につながる可能性があります。
利用者からの評価が高いサービスは、口コミを通じて認知度が高まることも期待できます。特に相続という重要な局面で丁寧なサポートを受けた顧客は、他の家族や知人に推薦する傾向があります。
早期の取り組みにより蓄積されたノウハウは、後発組との差を生み出します。データの蓄積量、改善の回数、組織の習熟度など、時間をかけて構築される優位性は容易には模倣できません。
新たな収益機会の創出
相続手続きの効率化により生まれた時間を、付加価値の高いサービスに振り向けられます。相続税対策、資産運用、信託サービスなど、専門性の高いコンサルティングへの注力が可能になります。
相続を起点とした長期的な顧客関係の構築も視野に入ります。次世代への資産承継支援や家族信託の提案など、世代を超えた関係性を築けます。
データ分析に基づいてパーソナライズされたサービスの提供も実現できます。顧客の資産状況や家族構成に応じた最適な提案により、クロスセルの機会が拡大します。
NTTデータ関西では、相続人が複数の金融機関に対し、オンライン上で一括申請できる受付サービス「TSUGI+(つぎたす)」を提供しています。金融機関は対面受付業務の負担を軽減でき、より付加価値の高いサービスに時間をあてることができます。
TSUGI+(つぎたす)| 相続オンラインプラットフォーム|NTTデータ関西
テクノロジーの進化への対応
生成AIの活用により、さらなる高度化が見込まれます。複雑な相続案件に対する最適な手続きフローの自動提案や顧客からの問い合わせへの自動応答など、AI技術の進展は新たな可能性を開きます。
ブロックチェーン技術の応用も期待されています。遺言書や重要書類の改ざん防止、スマートコントラクトによる自動執行など、信頼性と効率性を両立する仕組みが構築できます。
AIを活用した業務効率化については、こちらの記事もご覧ください。
AIで実現する業務効率化の実践ガイド - 導入事例と成功のポイント
相続手続きオンライン化の実装
効果的な実装には、技術選定だけでなく組織全体の見直しを含めた計画が必要です。システムの選定、セキュリティ対策、段階的な導入計画という3つの側面から、実装を成功に導くポイントを解説します。
導入システムに求められる要件
相続手続きのオンラインシステムを選定する際は、利用者にとっての使いやすさと金融機関側の運用負荷のバランスが重要です。
相続人が直感的に操作できるインターフェース設計により、手続きに不慣れな方でもスムーズに申請を完了できることが重要です。複数の金融機関への一括申請機能があれば、相続人の負担を大幅に軽減できます。
金融機関側では、受け付けた申請データを既存の業務フローに組み込みやすいかたちで取得できることが重要です。CSV形式などの汎用的なフォーマットでのデータ出力に対応していれば、既存システムとの柔軟な連携が可能になります。
また、クラウド型のシステムであれば、導入時の初期投資を抑えられるだけでなく、システムメンテナンスの負担も軽減できます。
セキュリティとコンプライアンスの両立
相続手続きではきわめて機密性の高い情報を扱います。多層防御の考え方に基づいたセキュリティ設計が欠かせません。
本人確認の強度は特に重要です。多要素認証や電子署名などを組み合わせることで、なりすましのリスクを最小化できます。また、通信時や保存時のデータ暗号化により、万が一の情報漏えい時にも内容が保護される仕組みが必要です。
アクセス管理の観点では、監査証跡の自動記録が欠かせません。誰がいつどの情報にアクセスしたかを追跡可能にすることで、コンプライアンス対応だけでなく、内部不正の抑止にも効果を発揮します。金融機関向けのセキュリティ基準をクリアしたシステムを選ぶことが、安全な運用の前提条件となります。
段階的な導入によるリスク低減
全面的な切り替えではなく、段階的なアプローチが現実的です。一部の店舗での先行導入により、実運用での課題を早期に発見できます。現場からのフィードバックを反映しながら改善を重ねることで、本格展開時のリスクを軽減できます。
案件の複雑さに応じた段階的な適用も有効です。相続人が単独で資産もシンプルな案件から開始し、複雑な案件は対面とオンラインのハイブリッド対応とする方法もあります。
まとめ:相続手続きのオンライン化で切り拓く金融機関の未来
相続手続きのオンライン化は、金融機関にとって優先度が高い課題です。人口動態の変化がもたらす業務負荷の増大に対し、持続可能な運営体制を構築する解決策といえます。
業務効率化、顧客体験向上、新たな収益機会の創出という3つの価値を同時に実現できる投資として、経営層の強いコミットメントが求められます。
技術的な実装だけでなく、組織改革を伴う取り組みであることを認識し、全社的なプロジェクトとして推進することが重要です。
NTTデータ関西が提供する「TSUGI+」は、相続人が複数の利用金融機関に対し、オンライン上で一括で相続手続きを申請できる受付サービスです。相続人は銀行窓口へ何度も足を運ぶことなく、共働き世帯や遠方に住む相続人にとって便利なサービスとなっています。金融機関は対面受付業務の負担を軽減でき、被相続人や相続人へのコンサルティング業務など、より付加価値の高いサービスに時間をあてることができます。
相続手続きのオンライン化の具体的な実装方法やシステム導入についてのご相談は、お気軽にお問い合わせください。








