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デジタルサービスプラットフォーム構築で
近鉄グループのシナジーを創出し、
顧客起点の事業収益を拡大

鉄道事業をはじめ、流通、ホテル・レジャー、不動産、国際物流などの幅広い事業を展開する近鉄グループ。人口減少が進む中、リアルとデジタルの融合による顧客接点サービスで新たな事業利益の創出と拡大を図るべく、「デジタルサービスプラットフォーム戦略」を推進しています。その第一フェーズ施策のひとつとして各保有データの「連携・収集」「蓄積・加工」「利活用」といった機能を網羅したデータ分析基盤(CDP) を構築しました。
データに基づき顧客起点で発想し、生活視点で寄り添い、グループシナジーの創出による施策を展開し、さらには地域発展にも貢献していく基盤を目指しています。

課題

少子高齢化の流れに歯止めはかからず、近鉄沿線においても人口減少は避けられない中で、新たな事業収益の確保が急務になっていた。

各事業の店舗や施設ごとに、顧客情報や会員情報、購買情報などのデータがばらばらに管理されており、グループを横断した利活用が困難だった。

効果

  • 各保有データの連携・収集、蓄積・加工の実現

    デジタルサービスプラットフォーム構想の要として、近鉄グループホールディングスのデータマネジメントによるグループ横断データ利活用を進めるために必要な、データ分析基盤(CDP) を整えることができた。
  • アジャイルなデータ利活用を実現

    このCDPを活用することにより、グループ会社を含め事業部門が必要なデータを入手するまでに要していた数日のリードタイムを解消。事業部門のユーザーが主体となって分析を行い、迅速な意思決定とアクションを起こせる環境を整えた。

デジタルサービスプラットフォーム構築の背景は?

吉嵜氏

コロナ禍によって激減した鉄道のお客様も、ようやく回復基調にあります。しかし少子高齢化の流れに歯止めはかからず、近鉄沿線においても人口減少は避けられません。そうした中で、新たな収益を確保するためには、お客様の利便性を向上し、今まで以上に高い価値を提供していかなければなりません。
端的に言えば、お客様とのつながりをリアルとデジタルの融合によって実現する新たな顧客接点の創出が、デジタルサービスプラットフォーム戦略です。これは、お客様に多様なサービスを提供する「地域DX基盤」を目指し、社会環境の変化や行動変容にデジタルシフトで対応をすすめていくことが、中期経営計画でも重要施策の一つに位置づけられています。

岡田氏

具体的には運輸(鉄道)、流通(百貨店、スーパーなど)、ホテル・レジャー、不動産、旅行の各事業における店舗や施設ごとに、ばらばらに管理されてきた顧客情報や会員情報に対して、同じくデジタルサービスプラットフォーム構築にて導入した「近鉄グループ共通 ID(Kintetsu-ID)」をキーとして横串を刺します。これによりOne to Oneのデジタルマーケティングや、グループ間のクロスセルを実践していきたいと考えています。

GOATUS サービス開始
図1 近鉄沿線デジタルプラットフォームの構築

貴社の戦略におけるCDPの位置づけは?

岡田氏

デジタルサービスプラットフォーム構築の要となるのが近鉄グループの多種多様なデータを収集・蓄積する基盤となるCDPです。近鉄グループでは、近鉄百貨店、近商ストアをはじめ近鉄電車、近鉄グループ各店舗や施設などで共通利用いただける「KIPSポイントサービス」をすでに展開しており、このデータを分析できるデータベース基盤を有していました。
今回、CDP構築にあたっては、グループ全体のデータにスコープを拡大し、既存の基盤を刷新しました。

CDP構築において、NTTデータ関西を選定した経緯

岡田氏

一口にCDPといっても、グループ各社のシステムからデータを集めてくる「連携・収集」、集めたデータを一元的に管理する「蓄積・加工」、蓄積したデータを分析できる状態にしてグループ会社に提供し、デジタルマーケティングなどの施策につなげていく「利活用」といった複数の機能から構成されています。
NTTデータ関西に期待したのは、これらの機能全体をカバーした幅広いソリューションを組み合わせた最適な提案です。
例えば、セキュリティを考慮したデータウェアハウス、さらには従来から使用してきたTableauを用いたデータ可視化やマーケティングなど目的別のデータマートの基盤として、今回Snowflakeを導入しましたが、私たちは元々こうしたクラウドデータプラットフォームに関する知見を持ち合わせていたわけではありません。「データ利活用の範囲が拡大していった際にも、柔軟に対応できる基盤がほしい」という私たちの要望に対して、腹落ちできる方策として導き出されたのがこのプラットフォームであり、NTTデータ関西の提案を採用しました。

吉嵜氏

もっとも、最初から決め打ちでNTTデータ関西を選定したわけではありません。実際、大手コンサルティングファームから提案されたソリューションとの比較検討を行っています。CDPを構成するプラットフォームの優劣だけでなく、ベンダーとしてのプロジェクト管理能力や個々のメンバーの技術力など、総合的な評価を行った結果として、NTTデータ関西にCDP構築をお願いすることにしました。

GOATUS サービス開始
図2 システム構成のイメージ図
※データレイクはAWS S3、DWH・データマートはSnowflake、ETL機能はAWS Glueにて実装し、
データ加工処理(クレンジング、フィルタ等)は、分析者(サイエンティスト・アナリスト等)
でも操作しやすいAWS Glue DataBrewを採用

CDP構築プロジェクトのスケジュールは?

岡田氏

プロジェクトがキックオフしたのは2022年12月で、2023年2月までの約3ヶ月をかけて要件定義を実施。その内容を受けて同年3月から開発フェーズに入り、9月いっぱいでCDPを完成し、本番稼働を開始しました。以降、現在にいたるまでNTTデータ関西には、個別の分析要件を検討したり、データウェア/データマートの追加・変更に対応したりする伴走支援をお願いしています。
前述したとおり、各保有するデータの「連携・収集」「蓄積・加工」「利活用」のすべての領域にまたがる非常にボリュームの大きい開発作業となりましたが、NTTデータ関西は関連ベンダーをリードして遅延なくプロジェクトを推進し、CDP構築を完了してくれました。

向井氏

NTTデータ関西の卓越したプロジェクト管理能力は、現在の伴走支援フェーズにおいても存分に発揮されています。
デジタルサービスプラットフォーム戦略の全体計画の中では、CDP構築と並行して近鉄グループ共通ID(Kintetsu-ID)を活用したサービスの開発を進めています。例えば、KIPSの新サービスとしてのKIPSアプリや、観光スポットやルートの検索、デジタルチケットの購入・利用からクーポン入手・利用まで、すべてをスマートフォンだけで完結できる伊勢志摩観光型MaaS「ぶらりすとデジタルチケットサービス」もその1つです。
私たちはかなりタイトなスケジュールを設定しているにもかかわらず、NTTデータ関西は複数のアプリ開発プロジェクトを的確にコントロールし、遅滞なくリリースへと導いてくれています。

CDP本番稼働後に得られた効果は?

向井氏

従前はKIPSポイントサービスのデータをグループ会社が利活用するためには、システム運営部門に依頼する必要があり、データが手元に届くまでには数日要していました。
CDPが稼働を開始したことで、このリードタイムは解消されています。グループ会社は必要なデータをすぐに入手し、事業部門のユーザーが主体となって分析を行い、迅速なアクションを起こせる環境が整いました。

吉嵜氏

少し違った角度から述べると、事業部門含め我々はデータ利活用に対する緊張感が高まっているといえるかもしれません。
これまでは経営陣からさまざまな施策の現状報告を求められても、「データが揃っていないので・・・」と言わざるを得ない状況でした。
しかし、CDPが稼働を開始した現在では、KIPSポイントをはじめとしたさまざまなサービスのデータがリアルタイムに近い形で更新され、客観的な数値が否応なしにつまびらかになります。事業サイドからの能動的なデータ利活用によってアジャイルな意思決定やデータドリブン経営の実現を後押ししていくといった、近鉄グループの新たな企業文化を醸成していく基盤として、CDPにはますます大きな期待が高まっています。

CDP構築プロジェクトの成功要因は?

吉嵜氏

近鉄グループホールディングスの要望に対して、NTTデータ関西は、段階的な成長を可能とする柔軟性・弾力性のあるアーキテクチャの設定、適正なコストで高品質なシステムの導入を実現してくれました。
また、個人情報や様々なデータを利活用する上で、専門家による情報活用ルール策定やデータガバナンス環境整備などにも、寄り添い伴走しながら支援をしてくれました。さらに別の観点として、NTTデータ関西は、CR営業という顧客単位の営業がついてくれます。近鉄グループを理解してくれているCR営業が常に寄り添ってくれていることも、今回のプロジェクトの成功要因の1つだと思っています。

CDPを活用した今後の展望は?

吉嵜氏

CDP構築の第一弾として、まずはKIPSポイントサービスのデータを取り込むことに注力してきましたが、グループ会社には相互に共有して利活用することで、より大きな効果が期待できるデータが、まだ数多く埋もれています。そうした有益なデータをできるだけ早期に洗い出し、CDPに実装していきたいと考えています。
もう1つの大きなテーマは、デジタルサービスプラットフォーム戦略を自分たちが主体となって実践していく内製化の推進です。その観点から、NTTデータ関西に伴走支援の一環として実施していただいているCDP基盤および分析ツールの基礎教育、開発者教育といった研修・トレーニングは非常に大きな貢献を果たしており、着実なスキルアップにつながっています。
私たちが独り立ちできるようになるまでには、まだしばらく時間がかかるかもしれませんが、NTTデータ関西には引き続き手厚いサポートを期待しています。