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育成研修などを活用し、各種データ分析を内製化
メンテナンス業務の変革や
デジタルマーケティングの活性化を推進

鉄道などのモビリティサービス事業をはじめ流通・物販飲食、ホテル、旅行などの幅広い事業を手がける西日本旅客鉄道株式会社(以下、JR西日本) は、鉄道輸送のさらなる安全性向上を追求するとともに、ライフデザイン分野の事業拡大に挑戦しています。
挑戦のうえでは欠かせないデジタル技術を活用推進していくうえで目指しているのが、「データ分析・活用」であり、グループ全体での人財層を拡大するため、2017年よりデータを活用した人財育成に向けたデータ分析研修を開始。毎年ブラッシュアップを重ねながら受講者を拡大しており、データドリブンの組織文化をさまざまな事業のフィールドに根付かせています。

課題

鉄道設備のメンテナンス業務において、デジタル技術を活用した業務変革を主導していく人財の発掘、育成

鉄道を利用する顧客の人流や購買履歴などのデータを分析し、デジタルマーケティングを推進していく人財の育成

効果

  • 研修の受講者数は累計で500人を突破

    データ分析の素養をもった人財の発掘に大きく寄与。会社としてデジタルの取り組みとも相まって、データの民主化を果たすべく、適切な意思決定を進めていく文化が徐々に根付いている。

データ分析研修が必要となった背景は?

松本氏

JR西日本では、将来にわたって持続的に価値創造していく企業グループに成長すべく、「JR西日本グループ長期ビジョン2032」のもと、鉄道の安全性向上を取り組みの基盤とし、鉄道の活性化を図るとともに、ライフデザイン分野の拡大にも挑戦していこうとしています。
企業として大きな転換期を迎えている中で、多様性をもった人材を育成し、確保していく必要があります。データを活用できる人財育成もその一環で、グループ全体を対象とした研修を開始しました。

どんな人財を育成するのか?

松本氏

大きく2つの軸があります。まず着手したのは鉄道設備(車両・施設・電気)のメンテナンス業務でデータ分析を主導していく人材の発掘、育成です。例えば工務系と言われる線路をメンテナンスする部門は鉄道の安全を根底から支える重要な役割を担っていますが、生産年齢人口の減少に伴い当社でも保守要員の人手不足は深刻な問題となっています。
そうした中で目指しているのが、TBM(時間基準保全)からCBM(状態基準保全)への転換です。設備の故障や異常の予兆を検知した迅速な対処を行うもので、より効率的な保全を実現します。デバイスを通じて収集した多様なセンサーデータや膨大に蓄積された過去の検査データ、さらに気象情報など外部データまで含め、AIを駆使した複合的な分析を通じて予兆検知を行い、的確な保全計画を立てられる人材を育てたいと考えています。
もうひとつが、デジタルマーケティングを主導する人材の育成です。鉄道を利用するお客様の人流や購買履歴などの実データを分析し、一人ひとりに寄り添った新たなCX(顧客体験価値)を提供するための仕掛けづくりを進め、グループシナジーを最大化します。

岩本氏

データ分析研修は、グループの全社員を対象とした公募型の研修制度として2017年度より開始し、現在に至ります。当初はデータ分析の基礎的な知識を身につけてもらうため、統計学などの座学からスタートしましたが、コロナ禍を経た事業環境の変化に伴い、当社グループでもデジタル変革のさらなる加速による価値創出が求められるようになりました。
これを受けて現在は、データを読み解いて仮説を立て、具体的なアクションを起こし、さらにその結果を検証するサイクルを自ら回していく力をもった人材を育成すべく、より実践的な内容を重視した研修へと舵を切っています。

パートナーにNTTデータ関西を選んだ理由は?

松本氏

先に述べたとおり、当社の取り組みはCBMを主導できる人財を確保することを目指してスタートし、複数のベンダーにサポートを打診しました。しかし、そこから寄せられた提案のほとんどが、CBMそのものに対するコンサルティングでした。
これに対して、「ゆくゆくはデータ分析・活用を内製化したい」という私たちの意を汲み取り、人財育成の基盤となる研修を提案してくれたのがNTTデータ関西だったのです。
また、 NTTデータグループ内でも非常に幅広い人財育成の研修が行われていることを聞き、そのノウハウを当社も取り入れたいと考えました。

岩本氏

実践を重視した研修へ舵を切ったと述べましたが、 毎年のように行っている研修内容の見直しはいつも苦労します。2017年に研修を開始してからすでに7年が経過したこともあり、数理統計などデータ分析の基礎知識をもった人財層は、グループ全体を通じてかなり厚くなってきました。したがって毎年同レベルの研修を繰り返していたのでは、受講者は「物足りない」という印象をもつことになります。とはいえ、レベルを上げ過ぎると消化不良のままで研修を終えてしまいます。そもそも受講者ごとに知識やスキルに格差があるため、どの水準に合わせばよいのか本当に悩みます。
また、実践を重視した研修を行うとなれば、一般論ではなく実際の業務をイメージしたデータ分析の講義や演習を組み立てなくてはなりません。この点に関してNTTデータ関西は、鉄道業務知見のある講師のアサインなど、きめ細かな配慮をしながら、常に寄り添い、進めてくれています。

研修によって得られた成果は?

松本氏

データ活用の素養をもった人財の発掘に、大きく寄与できたと考えています。2017年度に研修をスタートしたときの受講者は十数名程度でしたが、2023年度末までの累計では500名を超えています。

岩本氏

そうした人財がそれぞれの職場に戻り、 研修で学んだデータ分析の知識やスキルを周りに広げていくことで、グループ全体の意識が変わりつつあることを感じています。年度ごとにステップアップしていくデジタルの取り組みとも相まって、データドリブンで業務を進めていく組織文化が徐々に根付いています。
もちろん、当初からの目標であったCBMを主導する人財、デジタルマーケティングを推進する人財も確実に増えています。

村上氏

私自身も2021年に本研修を受けたことがきっかけとなって、データに対する世界観が大きく変わりました。研修を通じてデータへの向き合い方を学んだことにより、各案件の課題解決に適したデータは何かを検討する際の発想の幅も大きく広がった気がします。 こうした個人的な経験も生かしながら、現在はデータ分析研修の事務局として新たなプランの策定に臨んでいます。

研修を活用した今後の展望は?

村上氏

データ分析研修は、JR西日本の中で高度デジタル人財を育成するための全社戦略の位置づけにあり、ますます実践的なレベルの研修が求められています。
また、研修を一時的なもので終わらせるのではなく、それぞれの職場で水平展開や定着化を図っていくための取り組みも重要です。これを後押しするために、たとえば受講者に対する定期的な振り返り研修などもさらに充実させていく必要があると考えており、NTTデータ関西には引き続き、私たちと一体となったサポートを期待しています。

松本氏

データなどデジタル技術を用いて業務変革を行う内製化を推進していく観点から、専門組織を組成し、現在では30名規模へと成長しました。JR西日本グループには連結で約4万5,000人の従業員がいます。理想的にはその一人ひとりが、例えばデータに基づいた判断や行動変容できるようにしていきたいと思います。
具体的には、さまざまな事業を行う社員をデータ分析専門組織のメンバーが草の根的に支援することで、一人ひとりがデータ分析に関心を持ち、それぞれの業務で新たな価値を生み出していく役割を担えるようにしたいと考えています。この取り組みを推進していくうえでも、これまでの研修をさらにブラッシュアップしていくともに、今後ともNTTデータ関西の伴走サポートが不可欠だと考えています。