ホーム / D×KNOWLEDGE / 相続申請のデジタル化が金融機関の競争力を左右する理由

D×KNOWLEDGE

DX、IT戦略などITに関わる課題解決に
役立つコンテンツをお届け
~お客様とともに新しいしくみや
価値を創造する、オウンドメディア~

相続申請のデジタル化が金融機関の競争力を左右する理由

金融 サービス 業務効率化

死亡者数の増加と労働力人口の減少により、金融機関では一人当たりの相続業務負担が大幅に増加しています。相続申請の業務効率化は金融機関にとって喫緊の経営課題です。デジタル化により相続手続きの標準化と業務負担の軽減を実現できれば、顧客満足度の向上と人材不足への対応が同時に可能になります。

本記事では、相続申請のデジタル化を推進するための戦略と実装方法を詳しく解説します。

なぜ今、相続申請のデジタル化が求められるのか

金融機関における相続業務は、これまで属人的なスキルに依存してきました。しかし、その状況は大きく変わりつつあります。

2040年までに死亡者数はピークを迎え、相続件数の大幅な増加が予測されています。同時に労働力人口は大きく減少する見通しです。死亡者数の増加と労働力不足が重なることで、一人当たりの相続業務負担は大幅に増加します。

さらに重大な問題があります。インターネット取引の普及により、金融機関からの書類は電子交付が主流となりました。紙の通帳や取引報告書が手元に残らないため、相続人が故人の口座を把握できないケースが増えています。

デジタル資産の増加も無視できません。ネット銀行、ネット証券、仮想通貨、電子マネーなど、従来の相続手続きでは対応しきれない資産が急増しています。

これらの課題に対応しなければ、顧客満足度の低下だけでなく、事務負担の増大によるコスト増加は避けられません。

相続申請業務の現状と課題

金融機関の相続業務には、主に3つのプロセスが存在します。

第一に、被相続人と相続人の確認です。出生から死亡までの戸籍謄本を取り寄せ、法定相続人を特定する作業は膨大な時間を要します。遺言書の有無確認も含め、この段階で多くの手間がかかります。

第二に、被相続人が保有する金融財産の残高情報提供です。複数のシステムから情報を収集し、死亡日時点での時価評価を行う必要があります。システムが統合されていない場合、この作業は特に煩雑になります。

第三に、資産の移転手続きです。遺産分割協議の内容に基づき、名義変更や払い戻しを実行します。

これらの業務は案件ごとに内容が異なり、定型化が困難です。相続人の構成、保有資産の種類、遺言書の有無などにより、必要な書類や手続きが変わります。

結果として、経験豊富な役席者(支店長や副支店長などの管理職)に業務が集中し、若手や一般職では対応できない状況が生まれています。対応のバラつきが顧客からの苦情につながるケースも少なくありません。

相続手続き業務のシステム導入による効率化についてより詳しく知りたい方は、こちらの記事もご覧ください。

銀行(金融機関)の相続手続き業務をデジタル化|システム導入で実現する業務効率化と顧客体験向上

ワンストップサービス実現への道筋

相続手続きの利便性を高めるうえで、複数の金融機関をまたいだワンストップサービスの実現が理想的です。

現状では、相続人は各金融機関に個別に連絡し、類似の手続きを繰り返さなければなりません。これは相続人にとって大きな負担となっています。

金融機関によるコンソーシアム型のサービスがひとつの解決策です。業界全体で協力し、共通のプラットフォームを構築すれば、相続人の手間を大幅に軽減できます。

デジタル庁主導の行政サービスとの連携も視野に入れるべきです。死亡届の提出から相続手続きまでをシームレスにつなぐことで、真の意味でのワンストップサービスが実現します。

法律や商習慣の壁は依然として存在しますが、デジタル化できる部分から着実に進めることで業務効率化が可能になります。

参考:死亡・相続手続のオンライン・デジタル化|デジタル庁

システム選定と導入のポイント

相続業務支援システムを選定する際は、いくつかの重要な観点があります。

まず、既存の勘定系システムとの連携機能です。スムーズなデータ連携ができなければ、かえって業務負担が増加します。CSVデータの入出力など、既存システムとの柔軟なデータ受け渡しに対応できることが重要です。

コストについては、初期投資だけでなく、ランニングコストも含めた総所有コストで判断すべきです。業務効率化による人件費削減効果と比較し、投資対効果を算出します。

法規制と今後の制度変更への対応

2024年4月に義務化された相続登記制度により、不動産を相続した場合、相続の開始を知った日から3年以内に登記申請が必要になります。

この制度変更は、金融機関にとっても影響があります。顧客への情報提供や手続き支援の体制を整える必要があります。

戸籍情報のデジタル化も段階的に進行しています。法務省とデジタル庁が連携し、死亡・相続ワンストップサービスの実現に向けた検討が続いています。

金融機関としては、これらの制度変更を注視し、システムの柔軟な対応を確保することが重要です。制度改正のたびに大規模なシステム改修が必要になるようでは、コスト負担が重くなります。

将来的な拡張性を考慮したシステム設計が長期的な競争力の源泉となります。

顧客満足度向上と事業機会の創出

相続業務の効率化はコスト削減だけでなく、顧客体験の向上を通じた事業機会の創出にもつながります。

スムーズな相続手続きは、顧客にとって大きな価値です。相続という困難な時期に迅速で丁寧な対応ができれば、顧客ロイヤルティは大きく向上します。

相続をきっかけに新たな資産運用ニーズが生まれることもあります。相続した資産の運用相談や相続税対策の提案など、クロスセル機会も豊富です。

デジタル化により空いた時間をこうした付加価値の高い業務に振り向けることができます。事務処理に追われるのではなく、顧客との対話に時間を使えるようになります。

また、相続手続きの透明性を高めることで、顧客との信頼関係も強化されます。進捗状況をオンラインで確認できる仕組みや必要書類のデジタル提出など、利便性の高いサービスは差別化要因になります。

人材育成と組織体制の見直し

システム導入と並行して、人材育成も欠かせません。

相続業務の標準化により、若手や一般職でも対応可能な体制を構築できます。役席者は複雑な案件や顧客折衝に集中し、定型業務はジュニアスタッフが担当する役割分担が可能になります。

研修プログラムの整備も重要です。システムの操作方法だけでなく、相続手続きの基礎知識、関連法規、顧客対応のスキルなど、包括的な教育が必要です。

組織体制の見直しも検討すべきです。相続業務を専門に扱う部署を設置し、ノウハウを集約する方法もあります。営業店の負担を軽減しながら、専門性の高いサービスを提供できます。

まとめ:相続申請のデジタル化推進に向けて

相続申請のデジタル化は、今後ますます重要性を増す経営課題です。

2040年に向けた人口動態の変化は確実に訪れます。死亡者数の増加と労働力人口の減少という二重の圧力に対処するには、今のうちに準備を始める必要があります。

デジタル化により実現できるメリットは明確です。業務の標準化、事務負担の軽減、顧客満足度の向上、そして新たな事業機会の創出です。

一方で、法規制の変化や技術の進展にも柔軟に対応しなければなりません。将来を見据えたシステム設計と継続的な改善体制こそが重要です。

他社に先駆けて相続業務のデジタル化を推進することは、競争優位性の確立につながります。顧客から選ばれる金融機関として、次世代のスタンダードをつくり出すチャンスです。

相続申請のデジタル化は、単なる業務効率化プロジェクトではありません。顧客との長期的な関係を構築し、持続的な成長を実現するための戦略的投資なのです。

金融機関の包括的なDX推進についてより詳しく知りたい方は、次の記事を参考にしてください。

金融業界に新たなビジネスモデル創出とデータドリブン経営を実現するためにもDXは必要

地域金融機関の具体的な取り組みや新しいビジネス領域への挑戦については、こちらの担当者インタビューもあわせてご参照ください。

NTTデータ関西では、相続人が複数の利用金融機関に対し、オンライン上で一括で相続手続きを申請できる受付サービス「TSUGI+(つぎたす)」を提供しています。

相続人は銀行窓口へ何度も足を運ぶことなく、共働き世帯や遠方に住む相続人にとって便利なサービスです。また、手続きに不慣れな人でも安心して利用できる使いやすい操作性になっています。

金融機関は対面受付業務の負担を軽減でき、被相続人や相続人へのコンサルティング業務など、より付加価値の高いサービスに時間をあてることができます。

詳しくは以下を参照ください。

相続非対面受付サービス「TSUGI+(つぎたす)」NTTデータ関西