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マイナポータル連携で実現する自治体DX! 導入手順から運用までの実践ガイド

自治体 業務効率化 DX

マイナポータル連携により、自治体は行政手続きのオンライン化を大幅に進展させ、住民サービスの向上と業務効率化を同時に実現します。デジタル庁の推進により、2025年度末までに全自治体での標準化対応が求められるなか、マイナポータルとの連携は避けて通れない重要施策となっています。特に子育て・介護・引越しなどの優先手続きでは、すでに多くの自治体が連携を開始し、申請件数の増加と処理時間の短縮を実現しています。

本記事では、技術的な連携方法から補助金活用、他自治体の成功事例、導入検討から運用開始後に必要となる実践的な情報を網羅的にお伝えします。

マイナポータル連携とは

マイナポータル連携とは、政府が運営するオンラインサービス「マイナポータル」と自治体の基幹システムを接続し、行政手続きの電子申請から処理までを一貫してデジタル化する仕組みです。この連携により、住民は24時間365日いつでもオンラインで行政手続きが可能になり、自治体も申請データを自動的に基幹システムに取り込めるため、業務効率が飛躍的に向上します。

参考:行政手続のオンライン化|デジタル庁

基本的な仕組みと構成要素

従来、住民は役所の窓口に出向いて書類を提出する必要がありましたが、マイナポータルとの連携により完全オンライン化が実現しました。提出後の申請データは、安全な通信経路を通じて自治体システムに送信され、自動的に処理を開始されます。

連携の中核となる「ぴったりサービス」は、全国共通の電子申請プラットフォームとして機能します。住民はマイナンバーカードを使って本人確認を行い、必要事項を入力するだけで各種申請が完了します。一方で、自治体は申請データをAPI経由で受け取り、既存の業務システムと連動させて処理を進めます。

NTTデータ関西では、「ぴったりサービス」から申請されたデータを、自治体の基幹システムへ自動連携できる「申請管理システムを提供しています。本システムは、デジタル庁の標準仕様に準拠しており、ガバメントクラウド環境にも対応しています。申請管理システムを活用することで、基幹システムの標準化や統一を進めながら、マイナポータル経由の申請情報を一元管理し、統一的に基幹システムへ連携することで、スムーズな導入と運用が可能となります。

対象となる主要手続き

デジタル庁は、児童手当の現況届や保育所の入所申請など、子育て関連の15手続きを特に重点化しています。これらの手続きは申請頻度が高く、添付書類も多いため、デジタル化による業務改善効果が大きいことが実証されています。

介護保険関連では要介護認定申請や負担限度額認定申請、引越し関連では転入転出手続きなども順次対応が進んでいます。今後は税務申告や各種証明書発行など、より幅広い手続きへの展開が予定されています。

導入のメリットと効果

マイナポータル連携により、住民の利便性向上と自治体の業務効率化が同時に達成され、導入自治体では窓口対応時間を30%~40%削減、申請処理時間の80%短縮といった具体的な成果が報告されています。

連携にあたっては、自治体の既存環境に適したソリューション選択が重要です。

NTTデータ関西では、「ぴったりサービス」を通じて申請したデータを自治体の基幹システムへ一気通貫で自動連携できる申請管理システム」を提供することで、自治体のDX推進と住民サービスの向上に寄与します。また、住民の電子申請受付やマイナンバー連携を含む一連の手続きを一元管理できる電子申請サービス「e-TUMO APPLY」により、住民の申請負担と自治体の作業負担を軽減できます。

住民サービスの向上効果

住民にとって最大のメリットは、役所への来庁が不要になることです。仕事や育児で忙しい世代にとって、深夜や休日でも手続きができる環境は大きな価値を持ちます。申請状況をリアルタイムで確認できるため、処理の進捗に対する不安も解消されます。

スマートフォンから簡単に申請できることで、若い世代の行政サービス利用率が向上し、入力支援機能により高齢者でも迷わずに手続きを完了できます。申請自体はオンラインで完結し、添付書類の電子化も段階的に進んでいることで手続きの大幅な効率化が実現しています。

業務効率化とコスト削減

自治体職員の業務負荷軽減効果も顕著に表れています。紙の申請書からシステムへの転記作業がなくなったことで、1件あたり15分程度かかっていた処理時間が3分程度に短縮された事例もあります。業務効率化により、繁忙期の残業時間削減や、より付加価値の高い相談業務への人員シフトも可能になります。

登録データの精度向上も重要な効果のひとつです。例えば、従来悩まされていた手書き文字の判読ミスや転記ミスがなくなり、事前チェック機能により申請内容の不備が大幅に減少します。その結果、差戻しや再申請といった非効率な作業が激減し、職員は本来の業務に集中できるようになります。さらに、紙の印刷費用や郵送費、保管スペースなどの直接的なコストに加え、窓口対応時間の短縮により人件費が削減され、中規模の自治体では年間数百万円の費用削減を実現した事例も報告されています。

システム要件と技術仕様

マイナポータル連携を実現するには、API接続環境の構築や、セキュリティ対策など、既存システムとのデータ連携基盤の整備が不可欠です。これらの要件を満たすことで、安全かつ効率的な電子申請システムを構築できます。

ネットワークとセキュリティ要件

技術的な要件として、まずLGWAN-ASP(自治体専用のセキュアクラウド基盤)を経由した安全な通信環境の確立が必要です。申請情報はJSONというデータ形式で送受信されるため、この形式に対応したデータ変換機能が必要です。

セキュリティ面では、総務省のガイドラインに準拠した多層的な対策が必須となります。まず基本となるのが通信の暗号化、アクセス制御、ログ管理といった標準的な対策ですが、マイナポータル連携では、加えてなりすまし防止のための電子署名検証機能の実装も求められます。特に重要なのが個人情報の取り扱いで、データの保管期限や削除ルールを明確に定めることで、情報漏えいリスクを最小限に抑える体制を構築する必要があります。

システム間連携の設計ポイント

既存システムとの連携では、住民記録システムや税システムなど複数の基幹システムとのデータ連携が発生します。各システムのデータ形式やコード体系の違いを吸収する中間処理層の構築が重要です。中でもマスタデータの同期処理や、エラー発生時のリカバリ処理は設計段階で十分に検討する必要があります。

性能要件としては、申請が集中する時期でも安定的に稼働するよう十分な処理能力を確保する必要があります。一般的に、ピーク時で秒間10件程度の申請処理能力があれば、人口10万人規模の自治体でも問題なく運用できます。また、レスポンスタイムは3秒以内を目標とし、利用者にストレスを与えないよう設計します。

マイナポータル連携も含めた包括的な申請管理システムの選定方法や導入アプローチについては、次の記事で詳しく解説しています。

申請管理システムで自治体DXを加速。導入効果と選定ポイントを解説。

段階的な導入アプローチ

マイナポータル連携の導入は、現状分析から始まり、設計、開発、テスト、本番移行まで、通常6~12か月の期間が必要となります。段階的なアプローチにより、リスクを最小限に抑えながら着実な導入を実現できます。

導入計画の策定手順

計画初期段階では、連携対象とする手続き内容の選定が重要です。申請件数が多く、定型的な処理が可能な手続きの連携から着手することで、早期に効果を実感できます。児童手当や保育所申請など、国が推奨する優先手続きから始めることで、先行事例やサポート情報も豊富に活用できます。

次に要件定義では、業務フローの見直しも同時に進めます。単純にシステム化するだけでなく、オンライン処理に適した業務プロセスへの変革が重要なポイントとなります。例えば、承認ルートの簡素化や添付書類の削減など、住民と職員双方にメリットのある改善を検討します。

開発とテストの進め方

開発フェーズでは、アジャイル手法を採用する自治体が増えています。この手法では、小規模な機能から段階的にリリースし、利用者のフィードバックを反映しながら改善を重ねることで、より実用的なシステムを構築できます。試作モデルを早期に作成し、実際の業務担当者による運用検証を重ねることも重要です。

テスト段階では、機能テストだけでなく実際の申請データを想定した総合テストを実施します。繁忙期を想定した負荷テストやシステム障害を想定した切り替えテストも欠かせません。また、住民向けの体験会を開催し、使い勝手を確認することも効果的です。

本番移行と並行運用

本番移行では、段階的な切り替えアプローチが推奨されます。まず特定の手続きや地域から開始し、問題がないことを確認してから全面展開します。従来の窓口申請との並行運用期間を設け、住民が選択できる環境を維持することも重要です。

移行期間中は問い合わせ対応体制を強化します。コールセンターの設置や窓口でのサポート要員配置により、スムーズな移行を支援します。初期トラブルへの迅速な対応は住民からの信頼獲得につながります。

予算計画と補助金の活用

デジタル田園都市国家構想交付金などの補助制度を活用することで、導入費用の最大2分の1から3分の2の財政支援を受けることが可能です。効果的な補助金活用により、財政負担を軽減しながら導入を進められます。

構想については、次の記事を参考にしてください。

デジタル田園都市国家構想とは?目的やポイント・4つの事例をわかりやすく解説

必要予算の算出方法

予算の目安として、システム構築費、既存システム改修費、研修費用などの初期導入費用、導入後の年間の運用費用を見込む必要があります。

また、費用対効果の算出では、直接的な削減効果だけでなく、住民満足度の向上や職員の働き方改革など、定性的な効果も含めて評価します。申請1件あたりのコスト削減額を算出し、年間申請件数や投資回収期間を明確にすることで、財政部門の理解を得やすくなります。

補助金申請のポイント

補助金申請では、事業計画の具体性と実現可能性が重要な審査ポイントとなります。KPIの設定では、オンライン申請率や処理時間短縮率など、定量的な目標値を明確に示します。他自治体との広域連携や民間企業との協業を含む計画は、より評価が高くなる傾向があります。

申請書類の作成では、導入による波及効果を具体的に記載します。地域経済への貢献やデジタルデバイド解消への取り組み、災害時の業務継続性向上なども評価対象となります。過去の採択事例を参考に、説得力のある申請書を作成することが重要です。

段階的投資による負担軽減

段階的な投資計画も有効です。初年度は最小限の機能でスタートし、効果を確認しながら機能拡張を進めることで、リスクを抑えながら着実に成果を上げることができます。例えばクラウドサービスの活用により、初期投資を抑制することも可能です。

また、リース契約やサブスクリプション型のサービス利用により、大規模な初期投資を避ける選択肢もあり、運用費として計上することで予算確保が容易になる場合があります。長期的な総コストを比較検討し、最適な調達方法を選択することが重要です。

成功事例と導入のコツ

先行している自治体では、導入後1年でオンライン申請率が30%向上、窓口業務時間が40%削減した実績があります。先行事例から成功のポイントを学ぶことで、効果的な導入と運用を実現できます。

自治体による行政手続きオンライン化の先進事例については、次の記事も参考にしてください。

【自治体DX】6つの先進事例から学ぶDXを成功させるポイント!

都市部での展開事例

東京都港区では、子育て関連手続きを中心にマイナポータル連携を推進し、年間1万件以上のオンライン申請を処理しています。申請データの自動取込により、職員の入力作業が大幅に削減され、より専門的な相談業務に注力できる環境を実現しました。

神奈川県横浜市では、大規模自治体ならではの課題に対応するため、区役所との連携体制を強化しました。各区の特性に応じたカスタマイズを実施し、地域住民のニーズに合致したサービスを提供しています。多言語対応により、外国人住民の利用率向上も実現しています。

地方自治体の工夫と成果

愛知県西尾市では、LINE連携を活用し、オンライン申請の利用率を向上させました。2021年2月にLINE公式アカウントと電子申請サービス「e-TUMO APPLY」を連携させたところ、過去11年間で29件だった特定手続きの申請が、導入後4か月間で22件に急増するという成果を達成しました。

申請完了通知や処理状況もLINEメッセージで確認できるため、住民は普段使い慣れたコミュニケーションツールで行政手続きを完結できるようになりました。西尾市の取り組みは「夏のDigi田甲子園」で愛知県代表に選出されるなど全国的にも高く評価されています。

▼この事例の詳細については、次の記事をご参照ください。

西尾市様 | 導入事例

成功要因の分析

成功要因として共通するのは、首長のリーダーシップによる現場職員の巻き込みです。トップダウンの推進体制を確立しつつ、実務担当者の意見を積極的に取り入れることで、実用的なシステムを構築しています。プロジェクトチームに若手職員を参加させることで、新しい発想を取り入れることも効果的です。

また、住民への周知活動も重要な成功要因です。特に効果的なのは、自治会や子育て支援団体といった地域コミュニティと連携した草の根的な普及活動です。これらの団体を通じて実際の利用者の成功体験を共有してもらうことで、「難しそう」という先入観を払拭し、他の住民の利用意欲を自然に高めることができます。さらに、若い世代に対してはSNSを活用した情報発信を展開することで、世代に応じた最適なアプローチを実現しています。

運用における注意点

運用開始後は、利用率向上施策の実施、継続的なシステム改善、職員のスキル向上が持続的な運用に不可欠となります。適切な運用体制の構築により、持続可能なサービス提供を実現できます。

利用促進と普及活動

利用率向上には、住民への継続的な周知活動が不可欠です。広報誌やホームページでの案内に加え、窓口での積極的な誘導も効果的です。マイナンバーカードの取得支援と連動させることで、相乗効果を生み出すことができます。

高齢者向けのスマートフォン教室と組み合わせた普及活動も有効です。実際に操作を体験してもらうことで、心理的なハードルを下げることができます。成功体験を共有する場を設けることで、口コミによる利用拡大も期待できます。

オンライン申請の推進と並行して、来庁する住民への窓口サービスも改革することで、デジタル・アナログ両面から住民サービスの質を向上させることができます。窓口DXの具体的な推進方法と先進事例については、次の記事を参考にしてください。

窓口DXで実現する住民サービス改革 ~先進事例に学ぶ、効果的な自治体DX推進のポイント~

システム保守と改善活動

システムの安定運用には、定期的なメンテナンスと障害対応体制の確立が必要です。24時間365日稼働するサービスであるため、夜間休日の監視体制も整備します。軽微な障害でも住民サービスに影響するため、迅速な復旧と代替手段の準備が重要です。

継続的な改善には、利用者からのフィードバック収集が欠かせません。実際の利用者が感じる使いにくさや要望を把握することで、改修ポイントが明確になります。これらの声をもとに操作性の改善や新機能の追加を行うことで、サービスの質は着実に向上していきます。また、定期的なアンケート調査で満足度を数値化することにより、改善効果を客観的に評価し、次の施策立案につなげることができます。

人材育成と体制強化

職員のスキル向上も継続的な課題です。新任職員への研修はもちろん、システム更新時の再教育も計画的に実施します。デジタルに不慣れな職員へのフォロー体制を整え、組織全体のデジタルリテラシー向上を図ることが重要です。

また、専門人材の確保も検討が必要です。情報システム部門だけでなく、各業務部門にもデジタル化推進の核となる人材を配置します。外部専門家の活用や民間企業との人材交流により、最新の知見を取り入れることも効果的です。

まとめ:次世代行政サービスへの第一歩

マイナポータル連携は行政サービスの在り方を根本から変革する取り組みです。住民の利便性向上と職員の業務効率化を同時に実現し、限られた行政リソースを最大限に活用する道筋を示しています。

導入には一定の投資と労力が必要ですが、補助金の活用や段階的な展開により、着実に成果を上げることが可能です。先行自治体の知見を生かしながら、自治体の規模や特性に応じた最適な導入計画を立案することが成功への近道となります。

今後、デジタル社会の進展とともに、オンライン手続きは標準的なサービスとして定着していきます。早期に取り組みを開始し、ノウハウを蓄積することで、将来的な行政DXの基盤を確立することができます。

NTTデータ関西では、住民の電子申請受付やマイナンバー連携を含む一連の手続きを一元管理できる電子申請サービスe-TUMO APPLY」を提供しています。さらに、住民が「e-TUMO APPLY」や「ぴったりサービス」を通じて申請したデータを自治体の基幹システムへ一気通貫で自動連携できる申請管理システム」により、自治体のDX推進と住民サービスの向上に寄与します。