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デジタルデバイド対策の進め方|自治体担当者のための実践ガイド

自治体 DX  サービス

デジタルデバイドとは、インターネットやデジタル技術を使いこなせる人とそうでない人の間に生じる「情報格差」のことです。自治体のデジタル化が加速するのに伴い、高齢者・障がい者・低所得者層が行政サービスから取り残されるリスクが高まっています。

本記事では、デジタルデバイドの定義と現状、自治体が直面する課題、そして具体的な解消策と先進事例をわかりやすく解説します。

自治体のDX推進については、次の記事も参考にしてください。

自治体のDX実現で、誰一人取り残さない、人に優しいデジタル社会をめざす

【自治体DX】6つの先進事例から学ぶDXを成功させるポイント!

デジタルデバイドとは何か?自治体が知るべき定義と現状

デジタルデバイドとは、デジタル技術へのアクセスや活用能力の差を指します。「情報格差」とも呼ばれ、単にインターネットに接続できるかどうかだけではありません。スマートフォンやパソコンを使いこなせるか、オンラインサービスを適切に活用できるか、といった活用能力の差まで含む幅広い概念で、放置すると社会的格差や経済的格差の拡大につながりかねません。

総務省の「通信利用動向調査(2024年)」によれば、インターネット利用率は80代で3割強にとどまり、60代でも1割弱が「使わない・使えない」と回答しています。一方で、政府はマイナンバーカードの普及や行政手続きのオンライン化を推進しており、利用できない層の取り残しリスクは拡大しています。

参考:総務省|令和7年版 情報通信白書|インターネット

デジタルデバイドの3つの段階

デジタルデバイドは「アクセス格差」「利用格差」「成果・結果の格差」の大きく3段階に分類できます。自治体の施策を検討するうえで、どの層・どの格差に対処するかを明確にすることが重要です。

アクセス格差は、インターネット回線やデバイスを持っているかどうかの差です。農村部、離島、過疎地域ではインフラ整備が不十分な地域も残っています。

利用格差は、機器やネットにアクセスできても、使いこなせるかどうかの差です。高齢者や障がい者はもちろん、デジタルリテラシーの低い層全般が該当します。

成果・結果の格差は、同じサービスを使っていても、得られる恩恵に差が生じる状態です。電子申請の操作に不慣れなため、より多くの時間やコストがかかるケースが典型例です。


デジタルデバイドの3つの段階

自治体が直面するデジタルデバイドの課題

自治体がデジタル化を進めるうえで、デジタルデバイドはどのような形で問題になるのでしょうか。担当部署ごとに直面する課題は異なります。

行政手続きのオンライン化で生じる「置き去りリスク」

行政手続きをオンライン化すると、デジタルを使えない住民が必要なサービスにアクセスできなくなる恐れがあります。

住民票の取得、各種給付金の申請、転入・転出届など、生活に直結する手続きが続々とオンライン化され、いつでもどこでも簡単に手続きが完結できる便利な環境が整いつつあります。しかし、スマートフォンを持っていない高齢者や操作に不安を感じる住民にとっては、むしろ手続きの難易度が上がるケースも少なくありません。

「デジタル化したら窓口に来る人が減る」という期待とは裏腹に、現場では「使い方がわからないので来た」という住民が増えている自治体もあります。オンライン化と並行して、デジタルを使えない人への支援策を整備することが欠かせません。

情報システム担当者が抱える「アクセシビリティ対応」の壁

行政システムのアクセシビリティ対応は義務化が進んでいますが、実装レベルの格差が大きいのが現状です。

2021年に改正された障害者差別解消法により、自治体は「合理的配慮の提供」が義務化されました。Webサイトや電子申請フォームのアクセシビリティ対応はその一環です。しかし、システム改修のコストと工数、ベンダーとの調整、担当者自身のノウハウ不足が重なり、対応が進んでいない自治体が多いのが実情です。

デジタルデバイドの解消とアクセシビリティ対応は表裏一体の課題です。情報システム担当者は、調達仕様書の段階からアクセシビリティ要件を明記することが求められています。

DX推進計画における「誰一人取り残さない」原則の具体化

DX推進計画にデジタルデバイド対策を盛り込む際、「誰一人取り残さない」という原則を具体的施策に落とし込む必要があります。

デジタル庁が策定した「自治体DX推進計画」では、デジタルデバイドへの対応が重点事項のひとつに位置づけられています。しかし、計画書に「デジタルデバイドの解消に努める」と記載しても、具体的な数値目標や担当部署が明確でなければ、絵に描いた餅になりかねません。

DX推進担当者には、住民の属性データを分析し、どの層にどの支援が必要かを定量的に把握したうえで、他部署と連携した実行可能な施策を立案する役割が求められます。

デジタルデバイド解消に向けた自治体の具体的な対策

デジタルデバイドの課題を把握したうえで、次に考えるべきは具体的な対策です。先進的な自治体の取り組みを参考に、実践的なアプローチを整理します。

デジタル活用支援員の配置と相談窓口の設置

デジタルを使えない住民に対して、直接支援できる人材を配置することが最も即効性の高い対策です。

総務省は「デジタル活用支援推進事業」として、スマートフォンの使い方講座や相談窓口の設置を支援しています。図書館、公民館、携帯電話ショップなどを活用した出張相談会を定期開催することで、行政窓口に来られない住民にもリーチできます。

民間企業やNPOとの連携による支援も有効です。自治体単独では対応できない規模の需要に対して、地域のデジタルリテラシー向上を地域全体で担う仕組みを構築することが長期的な解決につながります。

自治体窓口業務の効率化については、次の記事も参考にしてください。

窓口DXで実現する住民サービス改革 ~先進事例に学ぶ、効果的な自治体DX推進のポイント~

オンラインと対面のハイブリッド型サービス設計

デジタルと対面の両方で同等のサービスを提供する複数チャネル設計が、取り残しゼロを実現する基本原則です。

オンライン申請を導入する際、「紙の申請書も継続して使える」「電話での申請も可能」という選択肢を残すことが重要です。デジタル化の目的は住民サービスの向上であり、手段の強制ではありません。

ただし、選択肢を増やすだけでは運用コストが増大します。段階的な移行計画を設け、利用状況データをモニタリングしながら対面対応の縮小と支援策の拡充を並行して進めるアプローチが現実的です。

多言語・やさしい日本語対応による情報バリアフリー

外国籍の住民や識字に困難を抱える住民も含めて、情報が届く設計が真のデジタルデバイド解消です。

「やさしい日本語」とは、外国人や高齢者にもわかりやすいよう、難しい表現や漢字を避けた表現方法です。行政文書やWebサイトにやさしい日本語を導入することで、デジタルデバイドの一因となる「情報理解の格差」を縮小できます。

AIを活用した自動翻訳や読み上げ機能の実装も、アクセシビリティ向上に効果的です。システム調達の際に、これらの機能を標準要件として仕様書に組み込むことを検討してください。


デジタルデバイド解消ロードマップ

デジタルデバイド解消ロードマップ

デジタルデバイド対策事例:先進自治体の取り組みに学ぶ

デジタルデバイドの解消に向けた取り組みは、すでに多くの自治体で始まっています。支援員の配置、アプリの活用、講座の開催など、アプローチはさまざまです。ここでは、現場で成果を上げている事例を取り上げ、自治体担当者がすぐに参考にできる実践的なポイントを紹介します。

高齢者向けスマートフォン講座の開催

スマートフォンの基本操作から行政アプリの使い方まで、段階的に学べる講座が高齢者のデジタル活用を大きく後押しします。

複数の自治体で地域の公民館や商業施設でスマートフォン体験講座を定期開催し、延べ数百人規模の参加者を集めています。単発のイベントではなく、「入門→基礎→応用」とステップアップできるカリキュラム設計が継続参加につながるポイントです。

講師には地域の若者や学生を起用するケースも増えており、世代間交流の促進という副次効果も生まれています。行政単独ではなく、教育機関、地域コミュニティ、民間企業との連携がポイントです。

参考:高齢者による高齢者のためのスマホ教室|デジ田メニューブック|デジタル田園都市国家構想

行政アプリを活用した情報アクセス改善

スマートフォンアプリを通じて住民が必要な情報に直接アクセスできる環境を整えることが、デジタルデバイド解消の近道です。

近年、複数の自治体で住民ポータルアプリの導入が進んでいます。ゴミ収集日の通知、避難情報の配信、公共施設の予約など、日常生活に直結するサービスや情報の提供をひとつのアプリに集約することで、「アプリを開く習慣」が自然に形成されます。

アプリの活用が日常化すると、電子申請や行政手続きへのハードルも下がります。住民がデジタルサービスに慣れる最初のきっかけとして、使いやすいポータルアプリの整備は非常に効果的です。

スマートフォンアプリを活用した情報共有の取り組みについては、次の記事も参考にしてください。

【事例あり】自治体が活用するスマートフォン用アプリとは?メリットや課題と対応策も解説

NTTデータ関西でも、住民一人ひとりに最適な情報を届けることができるスマートシティアプリEYE-Portal」を提供しています。

スマートシティポータルアプリ EYE-Portal | NTTデータ関西

デジタルデバイド対策とDX推進を両立するポイント

デジタルデバイドへの配慮はDX推進の足かせではなく、持続可能なDXの条件です。デジタルデバイドへの配慮を組み込むことで、住民全体の利便性向上と行政の効率化を同時に実現できます。

「デジタルファースト」と「デジタル配慮」の両立設計

デジタルファーストとは、デジタルを最優先の手段とすることであり、デジタルを唯一の手段にすることではありません。

2019年に施行されたデジタル手続法(情報通信技術活用法)は「デジタルファースト原則」を定めましたが、同時に「デジタルデバイドへの配慮」も規定しています。法的根拠に基づいてデジタル対応と支援策の両方を位置づけることで、議会や上層部への説明責任を果たしやすくなります。

行政手続きのオンライン化率と、支援を必要とする住民へのリーチ率をセットのKPIとして設定することが、バランスのよい施策運用につながります。

データ活用による対象層の可視化

誰がデジタルを使えていないかを把握するために、住民属性データとサービス利用データの掛け合わせ分析が有効です。

電子申請の利用率を年齢別や地区別に分析すると、支援が必要な層の分布が見えてきます。窓口来庁者数の推移と組み合わせることで、オンライン化の進展によってどの層が窓口に残っているかも把握できます。

データに基づいた施策立案は、予算獲得の根拠としても有力です。「感覚的な判断」から「データドリブンな行政運営」への転換は、DX推進の本質でもあります。

行政総合サービスの一元化で住民利便性を向上

行政サービスの窓口を一元化することで、住民の手続き負担を減らすと同時に、デジタル活用の入口を広げられます。

複数の部署にまたがる手続きをワンストップで完結させる仕組みは、デジタルを使いこなせる住民にとっての利便性を高めるだけではありません。手続きの複雑さそのものを減らすことが、デジタルデバイドの原因のひとつである「使い方がわからない」という障壁の解消にも役立ちます。


NTTデータ関西の行政総合サービスポータル「e-TUMO」は、電子申請・施設予約・情報発信などの機能を統合したフロントシステムです。住民が場所や時間を問わずさまざまな手続きを完結できる環境を構築することで、デジタルデバイドの解消と業務効率化を同時に実現できます。

行政総合サービスモール「e-TUMO」~自治体のDXを推進 | ソリューション

まとめ:デジタルデバイド解消は、住民全体のDXを完成させる最後のピース

デジタルデバイドとは、デジタル化の恩恵を社会全体に届けるための、行政にとっての責任ある課題でもあります。

行政手続きのオンライン化、情報システムのアクセシビリティ対応、DX推進計画への組み込みといった、それぞれの取り組みで直面する課題は異なりますが、目指す方向は同じです。「誰一人取り残さないデジタル社会」の実現に向けて取り組みましょう。

よくある質問(FAQ)

Q. デジタルデバイドと情報格差の違いは何ですか?

デジタルデバイドは情報格差の一形態で、特にデジタル技術へのアクセスや活用能力の差に焦点を当てた概念です。

情報格差は書籍、テレビ、新聞なども含む広義の概念ですが、デジタルデバイドはインターネットやスマートフォン、パソコンなどのデジタル機器に限定した格差を指します。行政DXの文脈では「デジタルデバイド」の用語が一般的に使われます。

Q. 自治体がデジタルデバイド対策に活用できる国の補助金はありますか?

総務省の「デジタル活用支援推進事業」をはじめ、複数の補助・交付金制度を活用できる可能性があります。

具体的には、スマートフォン相談・講習会の開催費用補助、マイナンバーカード普及促進交付金、地域デジタル社会推進費補助金などがあります。デジタル庁や総務省の最新情報を確認したうえで、自治体の施策に組み込むことをおすすめします。

Q. デジタルデバイド対策の効果はどのように測定すればよいですか?

電子申請利用率、窓口来庁者数の変化、デジタル支援講座の参加者数などを指標として組み合わせることで、多角的な効果測定が可能です。

単一指標での評価は偏りが生じやすいため、アクセス/活用/成果の3層に対応したKPIを設定することが理想的です。住民満足度調査に「デジタルサービスの使いやすさ」といった項目を加えることも有効な手段です。

Q. 高齢者以外にデジタルデバイドの対象となる層はありますか?

高齢者のほかに、障がい者・外国籍住民・低所得者層・農山漁村居住者などが対象となります。

デジタルデバイドは年齢だけの問題ではありません。視覚、聴覚、肢体などの障害による操作困難、日本語を母語としない住民への言語障壁、経済的理由によるデバイス未保有なども含まれます。支援策の設計では、こうした複合的な要因を考慮することが重要です。