売って終わりではない スマート面談AIナビ「AiBou」開発の舞台裏にある、NTTデータ関西の寄り添う力

近年、自治体では業務の効率化や住民サービスの向上に向けて、さまざまな分野でデジタル活用が進んでいます。一方で、面談業務の現場では、住民から必要な情報を丁寧に聞き取りながら記録し、面談後には報告書として整理する必要があります。特に、決まった様式のない面談や、業務ごとに報告書の形式が異なる領域では、聞き取り・記録・報告書作成に多くの時間と手間がかかり、職員の大きな負担となっています。
「現場の手間を減らし、職員が専門性を生かして住民に寄り添う時間をもっとつくれないか」—そうした思いから生まれたのが、NTTデータ関西が開発したスマート面談AIナビ「AiBou(アイボウ)」です。本サービスの根底にあるのは、単なる自動文字起こしツールにとどまらない、NTTデータ関西ならではの「現場に寄り添う思想」と「住民ファースト」への強い想いです。
今回は、AiBouの開発・設計を担う正野とプロダクトオーナーを務める南に、自治体業務の最前線で抱える課題をともに乗り越えてきた開発の舞台裏や、プロダクトに込めた想い、サービスの未来について語ってもらいました。
インタビューに答えた方

正野敦嗣(しょうのあつし)
株式会社NTTデータ関西 第一公共事業部 行政サービスデザイン担当
自治体業務の現場理解を強みに、サービスデザインと新規事業開発に従事。基幹システム開発や大規模再構築、政令市向けBPOビジネス創出で培った知見を生かし、「ぽーち」「ねすりあ」「AiBou」など最先端の技術を使った課題解決で自治体DXサービスの企画・開発・事業化を推進している。

南和輝(みなみかずき)
株式会社NTTデータ関西 第一公共事業部 行政サービスデザイン担当
自治体業務の現場課題に寄り添いながら、新規事業である「AiBou」のプロダクトオーナーとしてサービス企画・機能向上・新規顧客開拓に従事。自治体職員の業務効率化と住民サービス向上を目指し、AIを活用した新たな価値創出と事業拡大を推進している。
目次
現場のリアルな声からたどり着いた、住民との「心と心の対話」を支える理想のパートナー「AiBou」
質問:面談支援アプリ「AiBou」を開発することになったきっかけを教えてください。
正野:もともと私たちは、自治体職員や地域の皆さまと共創しながら新しい行政サービスを生み出す「じちえる」という活動を通じて、住民サービスの向上を目指すために、職員の業務効率化を図るサービスを開発しておりました。
その中でも業務の大きな部分を占める面談業務を支援するサービスとして介護認定業務を支援する「ねすりあ」や、生活保護ケースワーカーを支援する「さぽとも」などを展開していました。
これらは、紙に手書きで行っていた調査・面談の記録をタブレット上で入力することで、面談後にメモの内容をシステムへ転記する「二重入力の負担を軽減する」サービスです。いずれもあらかじめ決まった様式(フォーマット)に沿って、面談の記録をタブレットに手入力・電子化するものでした。
ただ、展示会や日々の打ち合わせを通じて、さまざまな業務を担う職員の皆さまと対話を重ねるなかで、共通する課題が見えてきました。それは、様式のない面談や、業務ごとに報告書の形式が異なる領域に対して、既存のサービスでは十分に対応しきれないということです。
これらは一つひとつの業務規模が小さいこともあり、専用システムの導入が難しい領域です。「手軽に効率化できるツールはないか」と多くの自治体職員の方々から相談いただいていたところ、一関市様から「AIを活用して生活保護業務の現場を改善したい」とお声がけいただいたことが、AiBouの開発のきっかけになりました。
質問:一関市様との共創では、どのように開発を進められたのですか?
正野:一関市様とは、ワークショップを通じて何度もディスカッションを重ねました。技術的な制約はいったん脇に置き、「現場にとって本当に理想の仕組みとは何か」を徹底的に掘り下げました。
そこで出てきたのが、「面談を支援してくれるパートナーがほしい」という声でした。
「メモ作成や確認事項の提示、面談内容の要約を代わりに行ってくれる存在がいれば、職員は住民との対話に集中できる。さらに写真撮影などの事務作業もサポートしてもらえれば、私たちは本来注力すべき『傾聴』や『判断』に時間を使える」
──そんな理想像が語られました。
こうした業務の最前線の声を形にするために、まず仮のシステム案を作って実証実験を行い、ほかの自治体や他業務でも活用できるようブラッシュアップを重ねた結果、現在の「AiBou」が誕生しました。
▼一関市との取り組み事例
住民と向き合う時間を取り戻す - 一関市×NTTデータ関西が共創したスマート面談AIナビ「AiBou」誕生の軌跡
実証実験で気づいた、「住民との対話に集中できる体験」の大切さ
正野:一関市様での実証実験は、私たちの仮説が覆る気づきの連続でした。
たとえば、会話の文脈から確認できていない項目をAIが提案してくれる「ヒアリングサジェスト機能」です。当初は「ベテラン職員が横で常に指示してくれるような体験がよいはずだ」と考え、会話中ずっと画面に提案を生成し続ける仕組みを作りました。
しかし実際に試してみると、職員の皆さまは目の前の住民の方との対話に集中したいものの、次の指示が気になってしまう状況がありました。さらに、初期のサジェスト機能では参考法令を含む詳細な情報が表示されていたため、かえってタブレットを見る時間が長くなるケースもあったのです。
現場からは「これでは本末転倒だ」という率直な声もいただきました。その声を受けて、私たちは「住民との対話に集中できる体験」をAiBouの開発における最優先事項として位置付けました。現在のAiBouの考え方や機能設計は、こうした現場の声から生まれています。
南:現場のリアルな反応を受け、すぐに仕様を「面談終了時に聞き漏れがないか確認するフロー」へ切り替えました。あらかじめ確認すべき項目を整理しておき、AIが会話を読み取って自動で確認を進め、最後に残った未確認事項だけを提示する仕組みです。このかたちにして初めて、「対話と傾聴に集中できる体験」に近づけることができました。

特別なITスキルは不要。訪問面談に必要な機能をひとつにまとめたAiBouの強み
質問:世の中には無料で使える議事録ツールや汎用AIツールがありますが、それらとの違いはどこにあるのでしょうか。
正野:一般的な議事録ツールは「音声を文字起こしして要約する」ものが多く、汎用AIを使いこなすにはAIへの指示(プロンプト)に関するある程度の知識やスキルが必要です。そのため、途中で活用を断念してしまうケースも少なくありません。
一方で、AiBouは、職員や担当者がAIにどのような指示を出せばよいかを考える必要がありません。「面談の記録」「聞き漏れの確認」など、業務の流れに合わせてAIがサポートするようにシステムが設計されています。そのため、特別なITスキルがなくても、AiBouの画面に沿って普段どおりに面談を進めるだけで、誰もが自然にAIを業務で活用できるようになります。
また、AiBouは、登録されたベテラン職員のノウハウをベースに、AIが会話の文脈を読み取って必要な確認事項を自動でチェック(確認)してくれるため、訪問面談での聞き漏れや、案内ミスを防ぎやすくなります。
南:ほかのツールとの違いとして、「現場起点で細部までこだわった機能設計をしている」点も挙げられます。
たとえば、生活保護の訪問調査で「エアコンが壊れた」との連絡を受けてお宅に伺う場合、文字で状況を細かく記録するよりも、写真1枚のほうが状況を正確に伝えられる場合があります。
ただ、ここで課題になるのが写真の管理です。自治体業務では、訪問調査を数日かけて行い、後日まとめて報告書を作成するケースが少なくありません。また、複数の訪問を終えて帰庁した頃には定時を過ぎており、報告書作成が翌日以降になることもあります。そのため、後から作業を再開した際に「この写真は誰のお宅の、何を確認したものだったか分からない」という声を多くいただきました。「AiBou」なら、面談時の音声やテキストに加え、写真も含めてひとつの面談情報としてセットで管理できます。さらに、撮影したその場で「家の外観」「エアコン」といった写真を説明する管理タグをすぐに付与できるため、後から見返す際の手間も省けます。業務の一連のプロセスで生じる困りごとを自然と解消できるよう、現場で本当に使える機能を徹底的に追求しています。
「売って終わり」ではない、現場に「寄り添い続ける伴走型の文化」
質問:一関市様からは「要望をその場ですぐに対応してくれる圧倒的なスピード感」が評価されていました。この寄り添いの姿勢はどこから来ているのでしょうか。
正野:NTTデータグループ全体の文化だと感じています。私たちはコンサルティングや調査をして「こうした方がよい」と提案だけして終わるわけでも、製品を売り切って終わるスタイルでもありません。提案から製造、保守、そして次のサイクルまで一気通貫で伴走します。
もともとNTTグループは、電話事業から始まっています。電話は、「一度使って終わりではなく、使い続けていただくことで価値を提供する」サービスです。だからこそ、お客さまだけでなく、その先の利用者の皆さまとも長く向き合い、ともに歩んでいく文化が根付いていると感じています。
南:売って終わりではなく、長期にわたってコミュニケーションを取り続けるからこそ、お客さまからは「こんな使い方をしたら便利だった」という具体的な活用事例が数多く寄せられます。そうした現場ならではの気づきやアイデアが、新たな価値創出やプロダクト改善のヒントになっています。
質問:まさに「共創」ですね。プロジェクトをともに進めるうえで大切にしていることはありますか?
正野:「なぜやるのか、どうなりたいのか(目的)」という熱い想いを同じ目線で共有することです。「流行りの生成AIを使って何かできないか」といった技術主導の発想では、ツールを導入しても結局使われなくなってしまいます。
「こういう未来を目指したい、だからこのかたちにする」とのビジョンをお客さまとともに掲げ、ツールを使う文化の醸成やルール作りまで一緒に取り組むことを大切にしています。ホワイトボードに描いた「あったらいいね」がかたちになり、お客さまに喜んでいただけたときのやりがいは何物にも代えがたいものです。
導入自治体の拡大、そして「あらゆる対面業務の現場」を支える相棒へ
質問:AiBouは、ほかの自治体にも導入されているのでしょうか。
南:現在、滋賀県草津市様、広島県三原市様、大阪府枚方市様への導入が進んでいます。また、東京都北区様にて実証実験やその他多くの自治体でトライアルでの効果検証を実施いただいております。草津市様は別のソリューションのご提案から「AiBou」につながり、枚方市様は一関市様の事例をご覧になったうえでお問い合わせをいただきました。
質問:自治体での共創から生まれたAiBouは、今後どのような展開を考えているのでしょうか。
正野:開発当初は自治体向けを想定していましたが、最近では金融・保険・信用金庫といった民間企業からも多くのお問い合わせをいただいています。
「対面商談の後、オフィスに戻ってから膨大な報告書をまとめる負担」や、「そのために商談管理システムへの入力が後回しになり、現場の情報が十分に蓄積・活用されなくなる」という課題は、民間企業でも共通していました。
質問:民間企業でも、報告書作成や情報の属人化に関する課題は共通しているのですね。
正野:はい。「AiBou」を使えば、日々の商談のリアルな会話が自然と正確にデータ化されていきます。「現場に負担をかけずに優れたノウハウを型化できる」強みを生かせば、ベテランの暗黙知を組織全体に横展開し、営業力を底上げするツールにもなり得ると考えています。
南:民間企業であれば、自治体のような厳しいネットワークセキュリティ制約をクリアしやすいメリットもあります。たとえば、面談終了後に「Salesforce」などの後続システムへAPIでデータを自動連携するなど、「AiBouを入り口にした業務全体の効率化」も実現しやすくなります。
社内の「生成AIコンテスト」でビジネスインパクト賞を受賞した際には、その将来性への期待の声もいただきました。ゆくゆくは自治体の職員にとどまらず、「より多くの職種にとっての相棒」に育てていきたいと思っています。
生成AIコンテスト開催と受賞写真

質問:最後に、読者である自治体や企業のDX担当者に向けてメッセージをお願いします。
南:私たちは、お客さまである行政機関や民間企業にサービスを提供していますが、その先には必ず「住民(生活者)」がいます。サービスの価値は、最終的にはそうした住民に還元されなければならないと考えています。住民対応や顧客対応を担う人たちに時間的・精神的な余裕がなければ、どれほど優れたビジョンがあっても住民に真に寄り添うことはできません。
「AiBou」の役割は、現場の負担を徹底的に減らすことで、業務に余白を創り、その先にいる住民の皆さまへより高品質なサービスを届ける「好循環」を生み出すことです。汎用AIを使いこなす特別な知識がなくても、誰もが自然にAIを業務で活用できる設計にしています。「うちの現場も同じ課題を抱えている」と感じたら、ぜひ一歩を踏み出して、私たちにそのお悩みをお聞かせください。
正野:私たちは、アイデアを出して終わりではなく、現場の壁をお客さまとともに乗り越え、最後まで伴走し続けるチームです。「AiBou」だけでなく様々なサービスを現場の方と共に創り出してきた実績があります。
皆さまが実現したい現場の未来やビジョンを、ぜひ私たちにお聞かせください。その「あったらいいな」を、私たちは最後まで伴走しながら形にしていきます。
▼AiBouについて
▼岩手県一関市様との取り組みについて









