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「国際競争力の低下」「進まない無形固定資産への投資」などの課題を解決!DXは製造業にとっても重要な理由と事例を紹介

 |  DX

デジタル社会をめざして動き出している日本において、企業が社会貢献し、国際的な競争力を高め、持続可能な経営を実現するためにはDXへの取り組みは不可欠だといえるでしょう。製造業も例外ではありません。今回は、日本のGDP(国内総生産)の二割を占める製造業において、現在どのような課題があるのかを知り、DX推進によって、どのような変化が起こるのかを確認していきましょう。

DX実現までのフローを確認

さまざまな分野の企業がDX推進に取り組んでいます。こうした動きのなか、よくいわれるように DXは単に業務フローをデジタル化することではありません。それぞれの業務フローを見直し、デジタルを活用できる環境へと再構築し、組織力を高め、競争力を発揮できる企業をめざすことがDXの目的 です。DX実現までのフローを簡単に、確認しておきましょう。

デジタイゼーション → デジタライゼーション → DX となります。つまり、 現状の業務を見直して、紙媒体で利用していた情報をデジタル化する「デジタイゼーション」を経て、業務のプロセスをデジタル化する「デジタライゼーション」へと進め、その取り組みを継続的に実行する先にDXでめざす組織 の姿が見えてくる、という図式です。それぞれの段階でなにがどう変わるのかをもう少し具体的にみておきましょう。

デジタイゼーション:アナログ・物理的な情報をデジタル化して活用できるデータへと移行していくこと
いままで紙媒体で業務記録を残していたり、帳票が紙ベースで扱われていたりするものをデジタルデータとして保存できるように変更していく段階です。製造業においては、従業員の勤務状態や状況、部品の注文履歴や発注履歴、取引履歴といったものをデータで保存できる環境へと整えるのがこの段階です。
さまざまな情報をデジタルデータとして扱える形にすることで、既存の業務のなかにあるムリ、ムダやミスの発生原因を取り除きやすくなり、業務を効率化できます。
デジタライゼーション:それぞれの業務や製造プロセスをデジタル化していくこと
さまざまな情報がデジタルデータとして扱えるようになると業務や製造のプロセスを自動化できます。この段階がデジタライゼーションです。
製造業においては、たとえば、IoT技術やAIを活用したスマートファクトリーの実現などもこの段階の取り組みです。工場で稼働している機械にIoTやAIを導入することで、さまざまな情報を得られるほか、従業員が対応していた熟練が必要な検品作業なども自動化が可能になります。
このようにデジタライゼーションが実現されると、人的リソースの有効活用ができます。つまり、従業員はより生産性の高い業務やクリエイティブな作業に集中できるようになり、新しい価値創造への可能性が広がるのです。
DX:組織全体の業務や製造プロセスのデジタル化を実現して、新しい価値創造ができる環境になるために、ビジネスモデルや事業を変革すること
デジタイゼーション、デジタライゼーションと段階をおって業務を見直し、デジタル化を進めながらDXを推進していくと、多くの情報がデジタルデータとして蓄積されるようになります。それらを社内で共有しながら、さらに業務を効率化し、自動化することで、新しい事業の可能性を見いだす機会も増えていくでしょう。ビジネスモデルを時代や社会、消費者のニーズに即して変革しやすくもなります。こうした創造するための力を高めた組織へと変革することがDXの目的です。
DXの定義や成功へのポイントについては以下の記事も参考になります。

「DX(デジタルトランスフォーメーション)とは?定義と導入時の課題、成功へのポイントについて」

「DXを単なるIT化で終わらせないために。失敗例から成功のカギを探る」

「製造業におけるDX実現にむけて、工場のIoTを考える」

製造業の抱える課題

DX推進のフローを確認したうえで、製造業にとってDX推進がより良い環境へと改革することになるのかを考えるために、現状と課題を確認しておきましょう。

国際競争力の低下

日本の製造業は国際競争力が低下してきています。理由のひとつには、低コストで生産ができる海外企業が増え、しかもそうした新興国の技術レベルが上昇してきていることが挙げられます。 製造品のなかでも大量に生産される家電などは製品のライフサイクルが短いため、価格競争では太刀打ちできなくなります。 一方、精密機器や工作機械など、製造工程が複雑で最新の技術を搭載する製品については、日本の技術力が優位性を保つ分野もありますが、それでも、楽観視はできない状況です。

少子高齢化による人材不足

内閣府が公表している「令和4年版高齢社会白書」によると生産年齢人口は1995年をピークに減少を続けており、生産年齢人口(15歳〜64歳)は2021年で7,450万人と示され、さらに2025年には7,170万人に減少すると予測されています。この影響は多くの企業で人材不足として現れてきており、製造業においても例外ではありません。

また、全国平均有効求人倍率をみると、職業計では1.12倍、製造業が該当する生産工程の職業では平均1.69倍(2023年6月時点)です。この数値は、製造業への就職を希望する人が少ない状況であることを示しています。

技術継承の問題
厚生労働省の「2022年版ものづくり白書」によると、製造業における高齢就業者の割合は2021年では8.7%となりました。動向をみると、20年前の2012年の4.7%から緩やかに上昇を続けています。一方、34歳以下の就労者の割合をみると2002年には31.4%であったものが、2021年には25.2%へと減少し、全体に高齢化傾向にあることが伺えます。こうした若手従業員が少なくなる傾向にあると、専門性の高い技術の継承にも支障がでてくる懸念があります。

進まない無形固定資産への投資

厚生労働省の「2022年版ものづくり白書」のなかに示されている「設備投資」の状況をみると、製造業の設備投資は2015年と2020年で比較すると、有形固定資産(土地、建物、機械・備品、車両など)も無形固定資産(ソフトウェア、システム、特許など)も投資をしている企業の割合は増加傾向にあります。

有形固定資産と無形固定資産それぞれの投資状況をみると、有形固定資産への投資については、2020年では7割を超える企業が投資を行っています。有形固定資産への投資の目的の多くは「老朽化設備の更新・補強」「生産設備の更新」といったものです。

一方、無形固定資産への投資をみると、2020年において、4割強の企業が投資を行っていますが、半数以上の企業では投資ができていません。 無形固定資産の投資目的の多くは「業務効率化やコスト削減」「旧来型の基幹システムの更新や維持メンテナンス」 となっています。

DXを推進するためのシステムの刷新やテレワーク環境の構築のためのデジタル環境構築、または、 工場のIoT化などへの取り組みに関連する無形固定資産への投資が半数以上の企業で進んでいないという現状 が伺えます。

サプライチェーンの分断が即影響

サプライチェーンの分断による製造業の業務遅延については、新型コロナウイルス感染症が拡大した2020年から2021年にかけての状況が記憶に新しいところです。たとえば、半導体不足によって、世界中の製造現場が影響を受けました。日本の製造業の中心でもある自動車産業も、製造停止の状態が続く状況でした。その影響は2023年にもおよび、注文を受けてもすぐには納品できず、長期の納期を見込んでおく必要のある状態が続いています。

この理由は製造業が原材料や部品といった製造に関わるすべてのものは調達、生産、物流、販売というサプライチェーンによって成立しているからです。また、その サプライチェーンが固定化された状況であることも、突然の災害やパンデミックに脆弱な原因 だといえます。

DX推進によるメリットと課題解決

DXを推進することで理想とする企業の姿を実現するためには、 方向性の確認、対策の実行、対策の見直し、修正、新たな対策の実行を繰り返すことが必要 です。またこうした取り組みの各段階で、デジタイゼーション、デジタライゼーションを実現していくことで、生産性を向上させることや、働き方を改革することも可能になります。具体的に、DX推進で得られるメリットをみていきましょう。

データ活用によって生産体制を安定やサプライチェーンの再構築も可能になる

在庫の確認、稼働状況といったさまざまなデータが蓄積されることで、生産体制を安定させられます。 在庫に関しても、最適な量を稼働状況や市場状況などから予測し、ムダなく確保できるようになります。また、 IoT技術やAIを活用することで、不良品の発生リスクの軽減をはじめとした品質の安定性を確保する ことも可能です。

また、 データを分析、活用することで、繁忙期と閑散期といった時期に合わせた調整や物流の最適化も図ることができます。 このように、原材料や資材の調達方法の見直しや、物流の見直しにもつなげることで、サプライチェーンの再構築も可能になります。

作業負担の軽減や属人化の防止も可能になる

従来、 人が行ってきた検品作業や、経理業務のようなバックオフィス業務を自動化することによって、作業の負担が軽減されるだけでなく、属人化を防げます。

また、専門性の高い技術がデータ化されれば、技術継承にも役立てられます。

そうした環境が構築できれば、人的リソースの有効活用が可能になり、テレワークといった働き方の選択肢を増やすことにもつながります。

人的作業の負担が軽減されれば、最先端技術の更新や研究開発といったビジネスチャンスの可能性を広げる分野にリソースが割けられます。このことで、国際競争力を高めることにもつながるでしょう。

時間とコストの削減が可能になる

IoTを活用してさまざまなデータを蓄積し、AIによって分析することで、製品開発をするために必要な時間やコストを削減できます。また、市場の動向や顧客のニーズの変化、社会の変化にも迅速に対応できるようになり、製品開発も効率的に行える可能性が高まります。

製造業DX推進事例

DX推進に取り組み、具体的な効果を上げた企業の取り組み事例をみてみましょう。

微生物の力を高度に利用するものづくりを実現し、循環型社会に貢献する(株式会社フジワラテクノアート)

醸造を原点とした微生物インダストリーを共創する企業として、微生物の力を高度に利用するものづくりを、さまざまなパートナーと共創し、心豊かな循環型社会に貢献することを経営ビジョンとする株式会社フジワラテクノアートは、その実現の手段としてDXに取り組みました。

取り組みを進めるときの基本として、つねにビジョン実現という目的に立ち返り、デジタル化計画を策定し、自社主導でDXを推進しました。その結果、社内にDX推進体制が確立され、DXが各従業員にとって「自分事」となっていきました。こうした従業員の変化が、デジタル人材を社内で増員させる結果へと結びついています。

具体的な取り組みとしては3年間で21システム・ツールを導入して全工程の見直しをしました。このことで、人的作業が軽減され、価値創造のための業務に時間を費やせるようになりました。

製造、工数・事務作業・ミスの削減、メンテナンス用部品の納期短縮、ペーパーレス化、デジタル人材育成といったところで成果を実感できました。

開発から製造販売、保守まで。一気通貫のシステムで業務の効率化を実現(島津システムソリューションズ株式会社)

世界的な市場で活躍する精密機器メーカーの島津製作所は、 機器開発から製造、販売、保守までを一貫体制 で行っています。その過程で、多様な情報が蓄積されますが、それらをどのように管理し、活用するのかが経営のテーマになっていました。

また、製品群のなかで、 受注生産品と繰り返し品という異なる群の効率的な管理についても課題 を抱えていました。

こうした、 業務に発生するムダを解消すべく選択したのが、新たな情報システムの導入 です。具体的に導入に踏み切ったのは 「BIZXIM製番」 でした。

導入後は 原価管理の効率化が図れたほか、営業に関する情報が共有できるようになったため、活動密度やスピードが向上 しました。 正確な会計業務が可能になったことにより、人的ミスの危険性を抑えたり、新たなムダの発生を抑えたりできる体制も構築できた といえます。

システムの選定において重視したのは、製造業や現代のビジネス要点にどれくらいマッチしているかという点です。また、自社の業務に適していることも重要でした。導入後にどう変わるのかをイメージしながら、システムを選んだり、ベンダー企業との打ち合わせを進めたりすることも、システム導入が成功するかどうかを左右すると感じています。

▼ 本事例の詳細について

島津システムソリューションズ株式会社様 | 導入事例 | 株式会社NTTデータ関西

▼ BIZXIM製番の詳細について

個別受注生産管理システム「BIZXIM製番」 | ソリューション | 株式会社NTTデータ関西

デジタル技術を活用し、少人員でも効率的なものづくりができる企業をめざす。(株式会社土屋合成)

プラスチック製品製造業として精密機構部品や時計の外装部品などを製造している株式会社土屋合成では、「24時間停まらない工場」「新たなビジネスモデルの創出」をめざして、製品すべての製造情報をデジタル技術で自動取得する製造の仕組みを構築しています。その取り組みにはデジタルの活用と、従業員のITスキル向上、理解が欠かせません。

一方、こうした業務の変更は、従業員にとっては新たな仕事が増えるのではないかという嫌悪感が発生する、あるいは、自分は不要になるのではないかとの不安感がつのることにもつながりました。そこで、この変革が従業員のためであることの理解を深めるために、時間を掛けました。デジタルの活用が仕事を効率化するという成功体験を得られるように、小さな改善活動から実施し、現場の手作業を順次、自動化しました。そして、全社員がデジタルの知識を自身の仕事に活かす業務環境へと変革していきました。また、こうした環境の変化は、データを必要なときに、部門を超えて全社最適で活用できる体制実現へと結びつきました。

結果的に業務効率化で生まれたリソースは新製品の試作や量産化に対応するという付加価値の高い製品生産へと活かせています。

全工程を一気通貫で連携できる基幹システムを導入。各種数値の見える化によって販売戦略立案なども可能に(池田食品株式会社)

豆菓子やかりんとうなどを製造販売する池田食品株式会社では、長年培ってきたノウハウと技術力、品質の高さを新たな時代に継承しつつ、世界市場への拡大をDXの目的として掲げました。しかし、現状では、多くの作業が手作業で行われていたため、正確な数値の把握や、情報を全工程で共有したり次の活動に活かしたりすることが不十分な状態でした。こうした現状を分析したうえで、 デジタル化は目的ではなく、ビジョン達成のための手段であることを意識して、従業員一人ひとりがオーナーシップをもって行動する ことを促してきました。

また、受発注・生産・在庫などの管理を一気通貫で可能にする基幹システムを開発し、全工程が連携できる環境へと改変しました。その結果、従来なら全工程を人力で数える在庫確認の作業負担が軽減され、確認の時間が大幅に削減されました。同時に、正確な原材料在庫数の把握が可能になったため、少量多品種生産が容易になりました。

独自のルールを脱却。ブラックボックスを解消して合理的な業務フローを実現(フシマン株式会社)

個人経営の工場から115年にわたるバルブ製造ひとすじのフシマン株式会社では、長い経営履歴のなかで積み重なった独自ルールが乱立した状態でした。また、それぞれの業務にはブラックボックス化したものがあり、 簡単には業務の透明性、一元化、標準化を進められませんでした。 こうした状況が影響して、 販売・生産管理と財務会計を別のシステムが管理をしていたため、コストも手間も二重 にかかっていました。また、各部署の動きを一元的に把握し、各部署で発生するムダの削減もしにくい状況とも言えました。

このような状況での ムダを解消するために、部分的な改善ではなく、会社全体としての業務を見直す ことを検討しました。

そこで、根付いた習慣を一掃するために、一般的なパッケージのフローをベースとして、業務を合わせるという改善方法を選択しました。実施にあたってはトップダウン式で、社長をトップとして各部署からメンバーを招集し、プロジェクト化しました。

まず、導入する製品とベンダー選定においては、標準仕様のレベルが高い製品と、カスタマイズに対応してもらえるベンダーであることを条件にしました。

導入を決定したのはNTTデータ関西が提供する 「BIZXIM製番」です。ACCESSなどを使ってオリジナルでデータ分析ができ、出力しやすいのも便利 だと判断しました。

導入後は、受注から一連の流れが把握できるようになり、部品の在庫削減に成功 しました。さらに、現場における工数を増やすことなく、製造の進捗管理ができるようになりました。その結果、業務全体に余裕が生まれたといえます。

▼ 本事例の詳細について

フシマン株式会社様 | 導入事例 | 株式会社NTTデータ関西

事例のほか、DX推進を加速させるための情報を探す場合は、次の記事も参考になります。

「DXコンサルの計画的な活用でDX推進を加速させる」

まとめ: DX推進によって国際的競争力を高め、自社のビジョンを実現させる

DXは継続的な取り組みと、 定期的な振り返りを繰り返すことで実現され、一気に実現できるものではありません。 デジタイゼーション、デジタライゼーションを経て、業務の見直しや見える化を実施しながら、めざす企業の姿へと変革していく必要があります。

重要なのは 各段階で、業務の効率化やリソースの有効活用、働き方改革といった効果を実現 していくことです。自社内で意識を高め、独自な方法で実現することも可能です。また、専門的な知識と豊富な事例をもった企業に協力を仰ぐことも選択肢のひとつです。事例をヒントに、自社にとっての最適解を見つけてください。

製造業の置かれた現状を改めて理解したうえで、自社に適したプロセスと方法で、DX実現をめざしましょう。