DX内製化の重要性とは?メリットと進め方・3つの成功事例
デジタルトランスフォーメーション(DX)の推進において、自社のリソースを最大限活用し、業務の効率化を図ることは重要な課題です。DXを進めるうえでアウトソーシングを選択する企業も多いですが、近年では内製化にも注目が集まっています。
DX内製化とは、自社内のリソースを活用してDXを進めることを指します。
本記事では、DX内製化の重要性とメリットや進め方のポイント、さらに成功事例を3つご紹介します。DXを最適なコストで成功させたい企業様は、ぜひ参考にしてください。
DXの内製化の重要性
いま、DXの内製化に注目が集まっています。DXの内製化にはどのような重要性があるのか見ていきましょう。
DXの内製化とは
まずDXとは、デジタル技術やデータを活用して、企業文化やビジネスモデルを変革する取り組みです。
単にデジタル化を進めることや、業務を自動化することが目的ではありません。ビジネスに新しい価値を付加できる体制を継続的に維持、向上させていくことが本来のDXの目的です。
そのDXの内製化とは、DXを推進するために必要なデータ活用や価値創造の環境を、自社内で構築することを指します。従来は、業務の効率化やシステム構築のために、外部のシステムベンダーへの委託やエンジニアへのアウトソーシングするケースも多くありました。しかし、内製化は、これらのプロセスを自社内で完結させることを意味します。
なぜDXの内製化が注目されているのか
ではなぜ、アウトソーシングを選択するのではなく、内製化に注目が集まっているのでしょうか。主な理由を確認していきましょう。
企業文化の変革にもつながるため
DXを推進するためには、単にシステムを導入するだけでなく、企業文化そのものを変革していく事が重要です。アウトソーシングに頼るだけでは、社内の意識改革や業務プロセスの見直しが進みにくいことがあります。
内製化することで、社員自らがDXの意義を理解し、主体的に取り組むようになります。ITの活用方法を自ら考え、試行錯誤しながら業務を改善していく過程で、イノベーティブな発想も生まれやすくなるでしょう。
目まぐるしい市場環境の変化にすばやく対応するため
現代のビジネス環境においては、市場の変化のスピードが非常に速いことが特徴です。新たなトレンドに迅速に対応しなければ、競争優位性を維持することが難しくなります。
しかし、DXをアウトソーシングに頼る場合、対応の遅れが生じる可能性があります。外部ベンダーに依頼してから実際にシステムが稼働するまでには、一定の時間を要するためです。さらに、外部ベンダーへの過度な依存は、自社の意向とベンダーの方針にズレが生じるリスクをはらんでいます。ベンダーロックインの状態では、自社の戦略に沿ったシステム開発が困難になる恐れがあります。
DXの内製化で、 自社でシステムを開発すれば、市場の変化に迅速に対応し、自社の意向に沿ったシステムをタイムリーに構築できるようになります。
NTTデータ関西では、システム開発の内製化をサポートする「intra-mart内製化支援サービス」を提供しております。
多様な業務のDX推進に取り組める システム共通基盤(業務改善プラットフォーム)である「intra-mart」を活用し、お客様によるシステム企画、開発、教育・研修、運用・保守まで、システムライフサイクル全体をサポート します。
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intra-mart内製化支援サービスの特長|NTTデータ関西
DXリテラシーを全社において向上させるため
DXリテラシーを全社において向上させるため
DXの本質を理解し、全従業員が自分事として取り組むためには、従業員のDXリテラシーの向上が不可欠です。内製化により、DXの実現プロセスや、その効果を直接体験することで、DXの推進方法や知識を習得できます。DX実現にはどんな手順で、どのようなアクションを起こせばよいのかを考えながら行動すれば、従業員一人ひとりのITレベルも高められるでしょう。
DX人材の概要や、リスキリングについては以下の記事を参考にしてみてください。
DXの内製化のメリット
DX内製化のメリットは、以下の3つです。
- 社内にナレッジやノウハウが蓄積できる
- システムのブラックボックス化を防止できる
- 開発のためのコストが削減できる
ひとつずつ見ていきましょう。
社内にナレッジやノウハウが蓄積できる
DXの内製化により、社内にDXを推進するためのノウハウや知見が蓄積されます。外部委託やアウトソーシングに頼ると、自社内にノウハウが残らず、継続的に委託せざるを得ない状況に陥ります。
これは、自社の意向に沿ったタイミングで業務改善を行うことを難しくします。内製化を進めることで、情報共有のための組織連携やDXの推進ノウハウが自社内に蓄積され、長期的な事業発展に役立つ貴重な財産となります。
システムのブラックボックス化を防止できる
システム開発を外部に委託すると、メンテナンスやカスタマイズの際に、社内だけでは対応が難しくなる場合があります。現場の従業員の意見を取り入れ、最適なシステムを構築したくても、ベンダーへの相談や委託に時間と労力がかかります。この状況では、システムのブラックボックス化を迅速に解消することが難しくなります。一方、内製化することで、業務に携わる従業員がシステムの操作を習得し、現場でメンテナンスやカスタマイズを行えるようになります。これにより、現場に最適な環境を整備し、システムのブラックボックス化を防ぎやすくなるでしょう。
開発のためのコストが削減できる
システム開発を外注したり、専門のエンジニアに依頼したりするには、費用も開発期間も必要です。また、仕様変更や修正が生じた場合、追加の費用が発生し、予算を超過するリスクがあります。
一方、内製化により、自社の人材や資源を活用することで、コストを抑えながら、柔軟かつ短期間での開発が可能になります。自社の開発チームが、ビジネスの要件や優先順位を深く理解している場合は、無駄なく効率的に開発を進められるでしょう。
DXの内製化の進め方
具体的なDXの内製化の進め方を見ておきましょう。
1.社内で関係者から合意を得る
DXの内製化は組織全体で取り組むべきプロジェクトであり、既存の業務フローや働き方の変革を伴います。従業員の抵抗を最小限に抑えるために、内製化のメリットや効果を丁寧に説明し、協力を得るための環境整備が必要です。
具体的には、経営層からの明確なメッセージ発信、社内説明会の開催、従業員からのフィードバックの収集などが考えられます。また、内製化の推進チームを結成し、各部門の代表者を巻き込むことで、組織全体の理解と協力を得やすくなるでしょう。
2.アウトソーシングしているものを見える化する
DXを内製化するには、現状でどのような業務をアウトソーシングしているのかを把握する必要があります。
アウトソーシングしている業務の内容、委託先、コストなどを可視化します。これにより、内製化の優先順位付けがスムーズになります。
3.目的と対象業務を明確にする
アウトソーシングの現状を踏まえ、内製化の目的と対象業務を明確にします。優先順位は、難易度が低く、効果が実感しやすいものから着手するのが望ましいでしょう。内製化の目的として、以下のようなものが考えられます。
- コスト削減
- 開発スピードの向上
- 自社のビジネスに特化したシステムの構築
- ノウハウの内部蓄積
目的に応じて、優先的に内製化する業務を決めましょう。
4.全体計画書を作成する
内製化の目的と対象が決まったら、プロジェクト全体の計画を立てます。
ゴールから逆算し、各段階でのアクションを明確にしましょう。また、各アクションの責任者と担当者を割り当てます。全体計画には「プロジェクトのゴール」や「各段階のアクションと期限」「必要なリソース」などを盛り込みましょう。
5.開発環境、品質管理体制を整える
内製化を進めるうえで、開発環境と品質管理体制の整備は欠かせません。開発言語や開発ツール、サーバーなどを適切に選定し、効率的な開発環境を構築しましょう。
また、品質管理体制の確立も欠かせません。開発プロセスを標準化し、各工程で適切な品質チェックを行える体制を整備します。さらに、リソース調整なども重要なポイントです。プロジェクトに必要な人材や予算を適切に配分し、円滑な開発を実現しましょう。
これらの点を多角的に検討し、開発環境と品質管理体制を整備することで、内製化の基盤を固められます。
6.アウトソーシングを段階的に削減する
体制が整ったら、優先順位に沿って、アウトソーシングを段階的に削減していきます。一度に全てを内製化するのではなく、段階的に着実に進めることが重要です。
7.内製化を完了させる
全てのアウトソーシングを内製化し、問題なく業務が遂行できる体制が整ったら、内製化は完了です。ただし、ここで終わりではなく、継続的な改善が必要です。振り返りと再アクションを繰り返すことで、内製化に関する知見やノウハウが蓄積されます。
アウトソーシングのひとつとして、コンサルティングサービスを利用されている方や一部の業務のみにコンサルティングの導入を検討されている方もいるでしょう。下記記事では、DXコンサルのメリット・デメリットについて解説しているので、適切なアウトソーシングを行う参考にしてみてください。
DX内製化の3つの成功事例
具体的に企業が取り組んだDX内製化の事例を見ていきましょう。
1.株式会社NTTドコモ
NTTドコモの事例は、内製化の体制づくりはパートナーと一緒に進行し、その体制を生かして社員が積極的に業務改善に取り組んだ事例です。
同社では、データ利用のフローが非効率的で、全国のドコモショップ数千店分ものデータ加工作業が各所で発生していました。また、全国のドコモショップへデータが届くまでにタイムラグがあり、 データをうまく業務に活用できていないという課題 がありました。
こうした状況を改善するために、BIツール 「Tableau」 を利用し、誰もが素早く簡単に状況確認できる定型レポート「ダッシュボード」と、誰もが気軽にデータ分析できる自由レポート「セルフ BI」という用途別の2つのフォーマットを作りました。こうしたシステムを内製化することで、ドコモショップ各店が簡単に自店のデータを確認できるようになり、特性に合わせたデータ加工が各自で行えるようになりました。
こうした内製化の改革によって、店舗ごとにデータを活用した業務への改善意識が向上されたことも大きな効果です。
DXを効率的に進めるために、初期段階ではパートナーを頼り、段階的に内製化を成功させた事例と言えるでしょう。
▼ 事例の詳細について
NTTドコモの「全社データドリブン経営」推進を支える、NTTデータ関西のダッシュボード開発・データマネジメント支援
NTTドコモの事例のように、データ分析・活用基盤の構築と全社的な定着は、企業のDX推進にとって重要な要素です。
NTTデータ関西では、データ分析・活用基盤の構想策定・構築・運用・全社定着までトータルサポートが可能です。
貴社の課題にあわせて最適なソリューションでご支援いたしますので、ぜひお気軽にご相談ください。
▼ データ分析・ソリューションの詳細はこちら
2.株式会社竹中工務店
竹中工務店でも、パートナー企業と協力して内製化の体制を整えました。
同社では、 働き方改革と人材不足の解消を課題としており、デジタル技術を活用した解決を目指していました。
具体的には下記を目標としています。
- 約30年稼働している会計システムの会計基準変更
- 会計処理関連担当者の業務効率・改善
- 月次処理のためのタイムリーな情報把握
- メインフレームによる運用コストと維持管理コストの削減
こういった課題に対して実施したのが、会計システムの刷新プロジェクト立ち上げと、NTTデータ関西が提供する会計パッケージ 「Biz∫(ビズインテグラル)」 の採用です。
システムの要件整理や連携テストには社内の担当者も携わり、粘り強くシステムの最適化に取り組んでいます。その結果、伝票・帳票及びワークフローを電子化し、業務を大幅に効率化しています。
また、システムの設計をパートナーに任せきりにせず、社内担当者が関わったことで、内製化を効率的に進められました。体制構築後も、安定稼働を見据えながら業務効率化を推進しています。
▼ 事例の詳細について
ワークフロー電子化でスマートワークに適した基盤を構築。業務効率化・簡略化に成功し、内部統制強化も実現
3.ダイハツ工業株式会社
ダイハツ工業株式会社では、従来の仕事の仕方を改変するために全社的なAI展開を検討していました。しかし、ノウハウが少なく、取り組みが効率的に進められないという課題がありました。
そんな状況下で見つけたのが、NTTデータ関西が提供している DataRobot というソリューションでした。
DataRobotは、 AIの専門的な勉強をしなくてもAIが使えるようになるということを知り、大きな可能性を感じ、本格的に導入 を進めることになりました。
DataRobotを導入したことによって、半年かかっていた予測モデルの生成が、わずか1クリックで完成できるようになりました。またDataRobotは操作性も高いため、AI活用へのハードルも下がり、AI活用の効果が社内に浸透しています。
使いやすく効果的なツールを導入することで、内製化を大きく成功に近づけやすくなるでしょう。
▼ 事例の詳細について
自動生成された高精度な予測モデルで開発業務をスピードアップ。AI活用がグループ全体に広まる
以下の記事では、DXの失敗例についても解説しています。成功事例とあわせて参考にすることで、より成功のコツをつかみやすくなります。
DXを単なるIT化で終わらせないために。失敗例から成功のカギを探る
DXの内製化を進めるうえでの課題と対策
DXの内製化を進めるうえで、どんな課題があるのか見ていきましょう。課題とあわせて、対策方法もご紹介しますので、ぜひ参考にしてみてください。
課題1:スキルや経験がある人材の不足
内製化を成功させるためには、システム開発やITツールの活用を得意とする人材が不可欠です。しかし、多くの企業では、そうした人材が不足しているのが現状です。さらに、優秀かつ自社の目的や条件にマッチするIT人材を確保しようとすると、すぐには適切な人材を確保できない可能性もあります。
対策:人材育成
即戦力となる人材の確保が難しい場合、内部人材の育成に注力するのが有効な手段の一つです。また、専門性のない従業員でも対応しやすいシステムやツールの導入も効果的でしょう。
例えば、システム開発においては、 ローコード開発 やノーコード開発という、専門的なプログラミング知識を必要としない開発手法を活用したツールがあります。こうした開発ツールを使用しながら、内部人材のなかから適任者を抜擢します。DXの内製化を担う人材として育てるために、教育・研修の機会も提供しましょう。
従業員をレベルアップさせるリスキリングの方法については、下記で解説しています。
課題2:プロジェクトが思うように進まない
DXの内製化は従来の業務フローを変える必要があるため、社内の抵抗にぶつかることがあります。また、一時的に業務負担が増えることへの不満から、プロジェクトが停滞する可能性もあります。
対策:DXの目的・方向性の明確化と共有
DXの内製化を成功させるためには、従業員全員の理解と協力が必要です。
そのためプロジェクトを開始する前に、以下のようなポイントを明確にし、社内で共有することが重要です。
- DX内製化の全体像と目的
- 内製化によって期待される変化とメリット
- プロジェクトの進め方とスケジュール
上記を共有したうえで、従業員から意見の吸い上げを行うことも効果的です。双方向のコミュニケーションを通じて、従業員の理解と協力を得られるような体制を構築していきましょう。
まとめ:DXの内製化で長期的な競争力を持つ企業へ
DXの内製化は、自社の魅力を高め、持続的な競争力を獲得するために重要な取り組みです。業務の委託やアウトソーシングに頼り続けると、ノウハウの蓄積が進まず、自社の強みを築くことが難しくなるケースもあります。
一方、DXの内製化に取り組むことで、自社に必要な変革の方向性が明確になります。業務の効率化やシステムの最適化に向けて、積極的に行動する意識が社内に根付くでしょう。
ただし、内製化を実現させるためには、従業員の理解を得たり、進行を妨げるさまざまな課題をひとつずつ解決したりしていく必要があります。DXの内製化は、一朝一夕で実現できるものではありません。長期的な視点を持ち、着実に取り組みを進めていくことが求められます。そうすることで、自社のDXを加速し、競争力のある企業へと成長していけるでしょう。
NTTデータ関西では、 システム開発の内製化をサポートする「intra-mart内製化支援サービス」を提供 しております。
intra-martとは、ローコード開発機能やワークフロー開発機能など多くのモジュール(機能部品)を活用してデジタル化や自動化などを行うことで、多様な業務のDX推進に取り組めるシステム共通基盤(業務改善プラットフォーム)です。 業務に合わせたカスタマイズが容易で、開発が速く、システム間の連携がしやすいのが特徴 です。
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以下では、intra-martの特徴やDX推進の現状や課題について詳しく語っています。
▼ インタビュー記事