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データ分析の手法を徹底解説。課題別アプローチと具体的な活用事例

 |  データドリブン

DX(デジタルトランスフォーメーション)の進展により、企業には「データを活用した経営への貢献」が強く求められています。しかし、データ分析の手法は多岐にわたり、具体的にどの手法を選択し、どのように活用すれば効果的なのか判断に迷うことも少なくありません。本記事ではIT部門の実務者視点から、代表的なデータ分析手法とその選び方、実践的な活用方法を解説します。

データドリブンの基本概念について詳しく知りたい方は、以下の記事もご参照ください。

【基礎編】データドリブンとは?いま注目の理由と必要なツール8選をわかりやすく解説

システム部門が直面するデータ分析の課題

デジタル化の加速により、組織全体でデータを活用した経営判断が求められています。しかし、分析手法の選択から、組織の体制作り、経営層への価値提示まで、さまざまな課題に直面しています。本節では、データ分析に取り組む目的と組織が担うべき重要な役割を解説します。

データ分析が重要な理由

経営判断のスピードが求められる現代において、 データに基づく意思決定の重要性 が高まっています。システムの運用データやログデータ、業務データなど、社内には有益な情報が眠っており、これらを適切に分析することで、コスト削減やリスク予測、業務効率化など、具体的な経営課題の解決につながります。

業務効率化について詳しく知りたい方は、こちらの記事もご覧ください。

なぜ業務効率化が必要なのか?そのメリットと進め方を解説

システム部門に求められる新たな役割

システム部門は従来のシステム運用管理に加えて、データ活用の推進役としての役割が期待されています。技術的な知見を生かしながら経営層や事業部門と協働し、データドリブン型の組織づくりを支援することが重要です。特に、データの品質管理やガバナンス体制の確立は、システム部門だからこそ担える重要な責務となっています。

データドリブン経営についてより詳しく知りたい方は、こちらの記事もご覧ください。

データドリブン経営で社会・消費者のニーズに応える企業になる

データ分析手法の全体像

データ分析手法は、目的によって大きく「 記述的分析 」「 診断的分析 」「 予測的分析 」「 処方的分析 」の4つに分類されます。本節では、それぞれの分析手法の特徴と、システム部門が押さえておくべき重要なポイントを解説します。また、各手法を支えるテクノロジーやツールについても触れ、実務での適用方法を具体的に示します。

4つの分析手法の特徴と使い分け

それぞれの分析手法には明確な特徴があり、目的に応じた手法の使い分けに注力すべきです。

  • 記述的分析: 「何が起こったか」を明らかにするための基本的な分析。
  • 診断的分析: 「なぜそれが起こったのか」を特定するための分析。
  • 予測的分析: 過去のデータを基に将来を予測する分析。
  • 処方的分析: 予測結果に基づき、最適な行動を提案する分析。

これらを組み合わせることで、より深い洞察を得ることができます。

各手法を支えるテクノロジーとツール

分析手法ごとに最適なツールは異なります。たとえば、 記述的分析には TableauPower BI などのBIツール、予測的分析には DataRobot などの機械学習プラットフォームが有効 です。

ツール選定では、ビジネス要件との適合性、使いやすさ、スケーラビリティ、既存システムとの統合性、コスト、セキュリティの観点から検討することが重要です。適切なツールを選ぶことで、データ分析の効果を最大化し、組織の意思決定を効果的にサポートできます。

分析手法 ツール 特徴
記述的分析 Tableau、Power BI ドラッグ&ドロップで直感的に操作できるBIツール
Looker Google Cloudとの連携に優れた中堅企業〜エンタープライズ向けプラットフォーム
オープンソース R言語のggplot2やPythonのMatplotlibなど
診断的分析 R言語 統計解析に特化した言語とRStudioの組み合わせ
Python pandasやstatsmodelsによる柔軟な分析環境
SPSS GUIベースで統計に詳しくないユーザーでも使いやすい
プロセスマイニング Celonisなどで業務フローの問題点を可視化
予測的分析 DataRobot ノーコードで高度な機械学習モデルを構築できるAutoMLプラットフォーム
Python scikit-learn、TensorFlow、PyTorchなどの機械学習ライブラリ
クラウドML AWS SageMaker、Google AI Platform、Azure MLなど
処方的分析 最適化ソルバー Gurobi、CPLEXなどでリソース配分や在庫最適化
シミュレーション AnyLogicやPythonのSimPyで様々なシナリオを検証
デジタルツイン 物理環境のデジタル表現で最適な意思決定を支援
データ基盤
ツール
ETLツール Talend、Informaticaなどでデータ統合
データウェアハウス Snowflake、BigQuery、Redshiftなど
データカタログ・品質管理 Alation、Collibraなどでガバナンス強化

課題別データ分析アプローチ

システム部門が直面する典型的な課題に対して、最適な分析手法とその実践的なアプローチを紹介します。コスト最適化、業務効率化、リスク管理など、具体的なユースケースをもとにデータ分析の実践的な進め方を解説します。

コスト最適化のためのデータ分析

ITインフラのコスト最適化では、まずリソース使用状況の可視化( 記述的分析 )から始めます。サーバーやストレージの利用率、ネットワークトラフィックなどのデータを集計・可視化し、過剰リソースや低使用率システムを特定します。

次に、低使用率の原因を詳細に調査・特定( 診断的分析 )し、過去のトレンドとビジネス計画から将来需要を予測( 予測的分析 )します。

この分析結果をもとに、クラウドリソースの自動スケーリングやオンプレミス環境の適正化計画を立案( 処方的分析 )します。これらのプロセスをダッシュボード化し、継続的なモニタリングを実施( 記述的分析 )してPDCAサイクルを回します。

このプロセスでは、 クラウドサービスの活用や仮想化技術、オートメーションツールの導入も考慮し、冗長性の見直しを行うことで、さらに効果的なコスト最適化が可能 です。

業務効率化を実現するデータ分析

業務効率化では、まずプロセスマイニング技術を使って業務の流れを可視化( 診断的分析 )します。社内システムのログデータから業務プロセスのボトルネックや非効率な部分を特定します。また、KPIをダッシュボード化して現状を把握( 記述的分析 )し、業務量の予測モデルを構築( 予測的分析 )します。

次に、AIによる自動化の可能性を検討し、最適な実施計画を策定( 処方的分析 )します。定型業務の頻度や判断基準の明確さを分析し、RPAやAIの適用範囲と期待効果を予測します。実装後は処理時間やエラー率などの指標で効果を測定( 記述的分析 )し、継続的に改善を重ねることで多くの企業で効率化を実現しています。

これにより、定型作業から解放された従業員がより付加価値の高い業務に注力できるようになります。蓄積された効果測定データは、次の改善施策の優先順位付けや効果予測にも活用できます( 予測的分析と処方的分析 )。

AI活用による業務効率化については、次の記事をご覧ください。

業務効率化のカギはAIの有効活用。事例に学ぶ成功のポイント

AIによるデータ分析を使いこなすには?メリットや重要性、活用手法を徹底解説

データ分析プロジェクトの進め方

データ分析プロジェクトを成功に導くためのフレームワークと実践的なステップを紹介します。要件定義から運用まで、システム部門が押さえるべきポイントを具体的に解説します。

プロジェクトの標準的なタイムライン

データ分析プロジェクトは以下の6つのフェーズで進行します。各フェーズの所要期間は、プロジェクトの規模や複雑さによって変動する場合があります。

1. 企画フェーズ(1-2ヶ月)

経営課題を特定し、分析目標とプロジェクトの範囲を定めます。この段階で主要なステークホルダーとの合意形成を行います。

2. 要件定義フェーズ(1-2ヶ月)

分析に必要なデータと手法を選定し、プロジェクトの成功指標を設定します。

3. データ収集・準備フェーズ(2-3ヶ月)

必要なデータを収集し、分析可能な形に整備します。データの品質検証も実施します。

4. 分析フェーズ(2-3ヶ月)

設定した手法でデータ分析を実施し、結果の検証と評価を行います。必要に応じて分析手法の改善も行います。

5. 実装フェーズ(1-2ヶ月)

分析モデルを本番環境に実装し、実用性の検証と運用手順の整備を行います。

6. 運用・改善フェーズ(継続的)

効果測定を実施しながら、モデルの監視と更新を継続的に行います。

プロジェクト推進のためのチーム体制

データ分析プロジェクトの成功は、システム部門、現場部門、データサイエンティストの「三位一体」体制がカギとなります。システム部門はデータ基盤と品質管理を、現場部門は業務知識とデータの意味付けを、データサイエンティストは分析手法の選定と実装を担当します。

プロジェクトマネージャーがこれらをコーディネートし、定期的な進捗会議で3者の知見を融合させます。さらに経営層を意思決定機関として巻き込むことで、組織全体でデータドリブンな意思決定を推進する体制が整います。

プロジェクトのコスト管理と投資対効果

データ分析プロジェクトでは、インフラ投資、ツール導入、人材育成など、さまざまなコストが発生します。効果的なコスト管理には、段階的な投資アプローチが有効です。まずは小規模な実証実験から始め、効果を確認しながら投資を拡大します。 クラウドサービスを活用することで、初期投資を抑えつつ柔軟なスケーリングが可能 になります。また、 コスト削減額や業務効率化などの具体的な指標を設定し、投資対効果を定量的に評価 することで、継続的な改善と最適な資源配分を実現できます。

データ品質の確保とガバナンス

データ分析の信頼性を高めるには、 データ品質の管理適切な管理体制(ガバナンス)の確立 が不可欠です。収集段階ではデータの正確性と完全性を確保し、メタデータ(データの作成日時、作成者、更新履歴などの管理情報)を整備します。保管段階ではデータの鮮度管理とバージョン管理を徹底し、利用段階ではアクセス権限の管理とトレーサビリティを確保します。さらに、定期的な品質監査を実施し、継続的な改善サイクルを回すことで高品質なデータ分析基盤を維持します。

成功事例に学ぶ実践的なポイント

実際の企業がデータ分析をどのように活用し、成果を上げているのか、具体的な事例を通じて解説します。成功のポイントと、よくある課題への対処法を紹介します。

製造業での活用事例

製造業のデータ分析活用は、予知保全と品質管理で大きな成果を上げています。設備センサーから収集したデータをAIで分析し、故障の予兆を検知することで、計画外の停止を防ぎ、安定した生産体制を実現しています。また、製造ラインの品質データをリアルタイムで分析することで、不良品の発生を早期に発見し、製品品質の向上につなげています。

NTTデータ関西では、 製造現場での品質管理や設備保全で、AIを活用して自動的に異音を検知する「IoTone」 を提供しています。

▼IoToneの詳細について

異音検知ソリューション IoTone/アイオートーン | NTTデータ関西

金融業での活用事例

金融業界では、リスク管理と顧客サービスの向上にデータ分析を活用しています。ある大手銀行では、AIを搭載した文書作成システムを導入し、効率化と精度向上を実現しました。また、クレジットカード会社では、取引データの分析により不正利用の検知精度を向上させ、顧客の資産保護と業務効率化を同時に達成しています。顧客の取引履歴や資産状況のデータを分析することで、個々のニーズに合わせた金融商品の提案を行い、顧客満足度の向上につなげています。

小売業での活用事例

小売業では、顧客データと販売データの分析により、個別化されたマーケティングと在庫管理の最適化で成果を上げています。ある大手スーパーマーケットでは、商品の組み合わせ分析により、異なる顧客層向けの商品を並べて販売することで売上が増加しました。また、レストランチェーンでは注文データを分析して売れ筋商品と仕入れ量を予測し、廃棄を大幅に削減することに成功しています。

これらの取り組みにより、顧客満足度の向上とコスト削減を同時に実現しています。

今後の展望とシステム部門の役割

データ分析の将来像と、システム部門に求められる新たな役割について展望します。AIやIoTの進化がデータ分析にもたらす可能性や、それに向けた準備について解説します。

DXにおけるデータ分析の位置づけ

DXの成功は、データに基づく意思決定の仕組み作りによって実現できます。システム部門には、単なるデータ基盤の構築だけでなく、ビジネス価値を創出するためのデータ活用推進が求められています。そのためには データ分析の専門知識に加え、ビジネス課題を理解し、関係部門と協働できるコミュニケーション能力を強化することで、効果的なデータ活用が実現 できます。

DXの本質的な理解を深めたい方は、以下の記事もご参照ください。

DX徹底解説。定義と目的、導入時の手順と課題のほか、成功事例を紹介

データ分析基盤の構築・運用のポイント

データ分析を効果的に実施するには、適切な基盤の構築と運用が必要になります。本節では、システム部門が押さえるべきデータ分析基盤の要件と具体的な構築・運用のポイントを解説します。クラウドサービスの活用から、セキュリティ対策、さらにはデータガバナンスの確立まで、実践的なアプローチを紹介します。

クラウドサービスを活用したデータ分析基盤

クラウドサービスを活用することで、柔軟でスケーラブルなデータ分析基盤を構築できます。主要クラウドプロバイダーは、データレイク、分析ツール、機械学習基盤などをマネージドサービスとして提供しており、初期投資を抑えながら高度な分析環境を実現できます。また、オンプレミスシステムとの連携も考慮し、ハイブリッドクラウド環境として構築することでセキュリティと利便性の両立が可能です。

NTTデータ関西が提供する 「xCooS」は、クラウド環境の構築から運用までをワンストップでサポートするサービス です。お客様の要件に最適なクラウド環境の構築を支援します。

▼xCooSの詳細について

xCooS(クロスコース) - クラウドおまかせワンストップサービス | NTTデータ関西

xCooSについての社内インタビューもあわせてご覧ください。

NTTデータグループのプロフェッショナルが伴走するクラウド活用支援サービス「xCooS(クロスコース)」

セキュリティとコンプライアンスへの対応

データ分析環境の構築には、適切なセキュリティ対策とコンプライアンス要件への対応が不可欠です。データの収集から保管、分析、そして結果の共有まで、各段階でアクセス制御と暗号化を徹底します。特に個人情報を含むデータの取り扱いでは、国内法規制やGDPRなどのグローバルな規制にも配慮し、適切なデータガバナンス体制を整備することが重要です。

情報セキュリティについては次の記事も参考になります。

情報セキュリティの概要と対策の具体例とは。サイバーセキュリティとの違いも解説

GDPR対応については次の記事も参考になります。

GDPR対応とは?日本の企業が注意すべきポイントを紹介

NTTデータ関西では、最新のセキュリティ対策のご提案から導入・運用まで一貫してサポートするサービスを提供しています。セキュリティ対策に課題感をお持ちの方は、ぜひご相談ください。

▼本サービスの詳細について

セキュリティソリューション導入 / 運用支援 / 監視サービス | NTTデータ関西

効果的なデータ分析の実現に向けて

本記事では、システム部門の視点からデータ分析手法の選択と活用について解説しました。データ分析の成功には、適切な手法の選択、実践的なアプローチ、そして堅牢な基盤の構築が重要です。これらの要素を組み合わせることで、より効果的なデータ活用が可能になります。

また、プロジェクトを自社リソースで進めるか外部の専門家を活用するかという選択も成功の鍵を握ります。詳しくは以下の記事をご参照ください。

データ分析のはじめ方:自社推進とコンサル活用、成功への最適な選択は

NTTデータ関西では、データ分析・活用基盤の構想策定、構築・運用から全社定着まで支援する「 データ分析・活用ソリューション 」を提供しています。

▼担当者インタビューもあわせてご参照ください。

構想から定着までデータ活用の道のり -お客様と共に歩むNTTデータ関西