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窓口DXで実現する住民サービス改革 ~先進事例に学ぶ、効果的な自治体DX推進のポイント~

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自治体窓口のDX(デジタルトランスフォーメーション)は、デジタル技術を活用して住民サービスそのものを変革し、新たな価値を創出する戦略的な取り組みです。人口減少や高齢化による職員不足、コロナ禍での非接触ニーズなど、自治体が直面する課題は増大・複雑化しています。本記事では、 窓口DXの本質的な価値から具体的な実践手法 、さらには 先進自治体の成功事例 まで包括的に解説します。デジタル技術を活用した住民サービスの抜本的な変革と、持続可能な行政運営の実現に向けた道筋を探ります。

自治体のDX推進については、次の記事も参考になります。

自治体のDX実現で、誰一人取り残さない、人に優しいデジタル社会をめざす

自治体窓口DXの本質と価値

従来の窓口業務は、申請・受付・処理・交付という定型的な流れの中で、限られた価値しか生み出せていませんでした。窓口DXでは、 デジタル技術を基盤としながら、 住民一人ひとりのニーズに応じたサービスの提供 や、 行政データの戦略的な活用を通じた新たな価値創出 を実現します。例えば、ライフイベントに応じた必要手続きの一括処理や、AIによる要望予測など、従来は不可能だった革新的なサービスの提供が可能となります。

窓口DXがもたらす3つの価値

第一に、住民の利便性向上 が挙げられます。来庁時間の削減や24時間365日の手続き受付が可能となり、働く世代や子育て世代にとって大きなメリットとなります。

第二に、職員の業務効率化 により、より付加価値の高い業務に注力できるようになります。

そして 第三に、蓄積されたデータの分析により、住民ニーズに即したサービス改善 が可能となります。

従来の窓口業務が抱える構造的課題

繁忙期の長時間待ち、紙の申請書による記入ミス、バックオフィス業務の非効率性 など、従来の窓口業務にはさまざまな課題が存在します。これらは運用の問題だけにとどまらず、アナログベースの業務プロセスに起因する構造的な課題です。窓口DXは、これらの課題を根本から解決する手段となります。

窓口DX推進の具体的アプローチ

窓口DXの実現には、体系的な導入戦略と技術的な整備が不可欠です。本節では、住民と職員の双方に受け入れられる窓口DXの段階的な推進方法と既存システムとの効果的な連携手法を解説します。自治体の規模や状況に応じた実践的なDX推進のロードマップを提示します。

段階的な導入戦略

窓口DXの導入は、現状分析から本格展開まで、段階的に進めることが重要です。まず、最初の2~3ヶ月で、窓口業務の実態調査や住民ニーズの把握を行います。住民アンケートや職員へのヒアリングを通じて、優先度の高い手続きを特定することが成功の鍵となります。

続く2~3ヶ月では、具体的な実行計画を策定します。ここでは短期・中期・長期の目標設定に加え、必要な予算規模の算出や人員配置計画の立案を行います。待ち時間の削減率や電子申請率などのKPIを設定し、効果測定の基準を明確にしておくことが重要です。

システム選定と環境整備には通常3~4ヶ月を要します。この期間中にRFIによる情報収集や調達仕様書の作成、ベンダー選定などを実施します。選定したシステムのパイロット導入では、特定の手続きに限定して試験運用を行い、職員研修や住民向け説明会を通じて、円滑な運用手順を確立します。

最終的な本格展開は6ヶ月以降から段階的に進めていきます。対象手続きを徐々に拡大しながら定期的な効果測定と改善を繰り返すことで、持続可能な仕組みを構築していきます。

なお、これらの期間は自治体の規模や対象となる手続きの範囲によって変動する可能性があり、特に人口30万人以上の自治体では、より慎重な準備期間を設けることが望ましいでしょう。

予算計画と費用対効果

窓口DXの予算計画では、初期費用としてシステム導入費、機器購入費、環境整備費、職員研修費などを考慮する必要があります。また、継続的な運用費用としてシステム利用料、保守運用費、サポート費なども計上しておくことが重要です。これらの具体的な金額は、自治体の規模や導入するサービスの範囲、既存システムの状況などによって大きく異なるため、先行事例の調査や事業者への事前相談を通じて適切な予算規模を見極めることが賢明です。

一方で、 導入後の効果としては、窓口業務時間の削減、紙の使用量削減、住民の来庁時間短縮、職員の時間外勤務削減などが期待 できます。これらの効果を定量的に把握し、投資対効果の説明材料として活用することで、庁内での合意形成もスムーズに進めることができます。

基幹システムとの連携

窓口DXシステムと既存の基幹システムを連携させる方式には、主に以下の3つのアプローチがあります。

1. API連携方式

自動化された標準的なインターフェースを通じてシステム間でデータをやり取りする方式です。リアルタイムでの連携が可能で信頼性も高いのが特徴ですが、開発コストは3つの方式の中で最も高くなります。

2. ファイル連携方式

定期的にCSVなどの形式でデータファイルを出力・取り込みすることで連携を行う方式です。開発コストを抑えられ導入がしやすい反面、リアルタイム性に欠けるため即時の反映が必要なケースには適しません。

3. データベース直接連携方式

基幹システムのデータベースに直接アクセスしてデータを読み書きする方式です。柔軟な連携が可能である一方、基幹システムの内部構造に依存するため、システムの安定性や将来の保守性に課題が生じる可能性があります。

これらの方式は、 業務要件や予算、システムの更新サイクルなどを考慮 して選択します。セキュリティ面では、 LGWAN接続要件や個人情報保護条例との整合性を確認 しつつ、適切なセキュリティレベルを設定することが重要です。さらに、今後の運用を見据え、データ標準化への対応も考慮に入れる必要があります。

株式会社NTTデータ関西は、電子申請サービス「 e-TUMO APPLY 」から 申請されたデータを自治体が運用している基幹系の各種システム側から取得できるよう、「e-TUMO APPLY」にAPIを実装するサービス を提供しています。e-TUMO APPLYは、API連携により、 申請データを業務システムに取込んだり、処理結果で申請データを更新したりする作業を自動化 でき、かつ、 LGWAN対応によるセキュリティ強化を実現 できます。

詳細は以下のお知らせをご参考ください。

「e-TUMO APPLY(電子申請サービス)」で業務システム連携APIを提供~電子申請と業務システム間のデータ連携自動化を実現~

先進自治体の成功事例に学ぶ

理論だけでなく、実践に基づく知見こそが窓口DX成功の鍵となります。本節では、特徴的な取り組みで具体的な成果を上げた自治体の事例を紹介します。それぞれの事例から効果的な導入プロセスと成果測定の実際を学び取ることができます。

栃木県の事例:数百種類におよぶ行政手続きの変革

栃木県では、NTTデータ関西の 電子申請サービス「e-TUMO APPLY」を活用し、行政サービス全体の変革を推進 しています。この取り組みにより、以下の効果が得られました。

  • 業務効率の向上: 申請内容の集計が自動化され、処理時間が大幅に短縮されました。
  • 処理時間の削減: 電子収納機能の導入により、15分かかっていた業務が2分で完了するようになりました。
  • 利用者の利便性向上: 24時間365日、どこからでも申請が可能になり、キャッシュレス決済も導入されました。
  • 多様な用途: 約140種類の申請手続きと約450種類のイベント申込やアンケートに導入されています。
  • 職員の負担軽減: 現金取り扱いの機会が減少し、業務の正確性も向上しました。

この事例について詳しくは、次のページをご覧ください。

栃木県様 | e-TUMO APPLY導入事例 | NTTデータ関西

e-TUMO APPLYについて詳しくは、次のページをご覧ください。

電子申請・オンライン申請サービス | NTTデータ関西

埼玉県所沢市の事例:マイナンバーカード交付の効率化とセキュリティ強化

埼玉県所沢市では、 マイナンバーカードの交付予約・管理業務の効率化を目指し、個人番号(マイナンバーカード)交付予約・管理サービス「e-TUMO MYNUM」を導入 しました。従来のエクセルによる管理では受付枠の変更に柔軟性がなく、セキュリティ面での課題もありましたが、新システムの導入により、これらの問題が解決されました。

特に、製造管理番号を活用したIDとパスワードの自動化やLGWAN対応によるセキュリティ強化など、実務面での改善が顕著でした。また、交付状況の一元管理や柔軟な日程変更が可能になり、 市民の持参物の忘れも減少 しました。 複数の職員による同時利用も可能になり、業務効率の大幅な改善 を実現しました。

この事例について詳しくは、次のページをご覧ください。

所沢市様 | 導入事例 | NTTデータ関西

e-TUMO MYNUMについて詳しくは、次のページをご覧ください。

個人番号(マイナンバーカード)交付予約・管理サービス | NTTデータ関西

埼玉県志木市の事例:粗大ごみ回収の受付業務を職員2名で対応可能に

埼玉県志木市は、 粗大ごみ回収業務の効率化と住民サービス向上を目指し、「e-TUMO ECOLIFE」 システムを導入しました。その結果、 情報の一元管理により専任職員2名での運営が可能 となり、 ネット申し込みの自動化やごみ回収日時の調整機能により業務効率が大幅に向上 しました。

住民サービス面では、スマートフォン対応の操作性向上や問い合わせへの迅速な対応が実現しました。また、予約ルールの徹底により、サービス利用の公平性も確保されました。

収集業務においても、デジタル地図を活用したルート設定の最適化やタブレット端末による現場と管理部門間の情報共有が強化され、より効率的な運営が可能になりました。

この事例について詳しくは、次のページをご覧ください。

志木市様 | 導入事例 | NTTデータ関西

e-TUMO ECOLIFEについて詳しくは、次のページをご覧ください。

粗大ごみ収集・持込・搬入予約サービス | NTTデータ関西

愛知県西尾市の事例:LINEと連携した行政サービス改革で約10倍の電子申請数を達成

愛知県西尾市では、 電子申請サービス「 e-TUMO APPLY 」とLINEを連携した「Nishioスマート申請」で行政サービス改革 を推進しました。この革新的なアプローチにより、市民の利便性向上、行政業務の効率化、情報発信力の強化を同時に実現しています。

多くの住民が使い慣れているLINEを活用することで電子申請の敷居を下げた結果、多くの市民が電子申請サービスを利用するようになり、同規模自治体の約10倍の電子申請数を達成 しています。

この事例について詳しくは、以下のページをご覧ください。

西尾市様 | 導入事例 | NTTデータ関西

(ニュースリリース)愛知県西尾市がLINEを活用した行政手続きのオンライン申請を2月1日に開始~全国800団体で利用される電子申請サービスのLINE連携機能を初導入~

窓口DX成功のための重要ポイント

窓口DXの本質的な成功には、テクノロジーの導入だけでなく、それを 効果的に活用する組織づくりと、実際の利用者である住民の視点に立ったサービス設計が不可欠 です。本節では、多くの自治体のDX推進において見落とされがちな重要な要素について掘り下げます。

職員の意識改革と組織づくり

窓口DXの成功には、現場職員の積極的な参画が不可欠です。業務効率化の本質的な価値を共有し、職員自身が改善の担い手となる組織文化の醸成が重要です。先進自治体では、若手職員を中心としたDX推進チームの設置や部門横断的な改善提案制度の導入などが効果を上げています。

住民視点のUX設計

操作性の高いインターフェースとわかりやすい案内表示の実現が重要です。特に高齢者や障がい者など、デジタル機器の操作に不慣れな方々への配慮が必要です。実際の利用シーンを想定した丁寧なUX設計により、住民満足度の向上につながります。

段階的な変革管理の実践

急激な変化は組織に混乱をもたらす可能性があります。成功する自治体は、小規模なパイロット導入から始め、成果を可視化しながら段階的に展開を広げています。また、定期的なフィードバックセッションを設け、現場の声を反映した継続的な改善を行うことで持続可能な変革を実現しています。

デジタルデバイド対策の具体化

窓口DXの推進において、デジタル機器の利用に不安を感じる住民への対応は重要な課題です。先進自治体では、対面サポート窓口の設置、高齢者向けのデジタル活用講座の開催、多言語対応の充実など、きめ細かな支援策を展開しています。これにより、誰一人取り残さないDXを実現しています。

セキュリティと利便性の両立

個人情報を扱う行政サービスでは、高度なセキュリティ確保が必須です。しかし、過度なセキュリティ対策は利便性を損なう可能性があります。成功している自治体では、リスクアセスメントに基づく適切なセキュリティレベルの設定と、使いやすさを両立させる工夫を行っています。例えば、二要素認証の導入やシングルサインオンの活用など、セキュリティと利便性のバランスを重視した設計を採用しています。

まとめ:持続可能な行政サービスの実現に向けて

窓口DXは、自治体の未来を左右する重要な取り組みです。成功に導くためには 段階的な導入計画職員の意識改革住民目線のサービス設計 、そして 適切なツールの選択が不可欠 です。ご紹介した先進事例が示すように、 窓口DXは住民サービスの向上と業務効率化の両立を可能にするだけでなく、データに基づく政策立案や地域課題の解決 にもつながっていきます。

NTTデータ関西では、自治体向け行政総合サービス「e-TUMO」を通じて、 高度なセキュリティと利便性を両立させた 電子申請サービスを提供しています。マイナポータルとの連携やいつでもどこでも利用可能なサービス提供により、住民目線に立った自治体DXの実現をサポートしています。

▼e-TUMOの詳細について

行政総合サービスモール「e-TUMO」~自治体のDXを推進