大規模なマイナポイント付与キャンペーンなどの後押しもあって、大きく普及が進んだマイナンバーカード。
しかし、それはマイナンバーカード施策の“最前線”に立って申請の受付や交付を行う自治体にとって、業務の大幅な増加を伴うものでもあります。業務を効率化してスムーズに交付を行えるようにすることは、マイナンバーカードの保有率向上、ひいては各種の行政サービスの質の向上に向けたキーポイントとも言えます。
そこで所沢市様(埼玉県)は、NTTデータ関西の個人番号カード交付予約・管理サービス「e-TUMO MYNUM」を導入しました。
課題
エクセルによるマイナンバーカードの交付に関する一連の管理は操作性・検索性が低く、業務効率が悪かった
受付枠を変更したくても、ベンダーに依頼せねばならず柔軟な対応が難しかった
昨今のセキュリティ強化の流れを受けて、システムの見直しが必要だった
効果
製造管理番号を活用できるため、IDとパスワードの振り出し作業がなくなり、業務負担が大幅に低減
- 申請者にIDとパスワードを伝える通知書の作成や確認等、煩雑だったIDとパスワードの振り出し作業が不要になり、個人番号カードの製造管理番号を活用し登録ができるようになった。
自由度の高いシステムにより、受付枠の拡大が簡単に行えるようになった
- 多くの交付が見込まれる時期に受付枠を拡大するためには、システム上でカレンダーの編集が必要。この作業を以前はベンダーに依頼していたが、e-TUMO MYNUMでは自分たちで簡単に操作できる。そのため、状況に合わせて柔軟に受付枠を変動できるようになった。
LGWAN対応でセキュリティも安心
- セキュリティの強固さが従来にも増して求められるなか、LGWAN(総合行政ネットワーク)に対応していることはe-TUMO MYNUMの大きな安心材料。なおかつ、職員アカウントライセンスフリーでシステムを利用できるという利便性がスムーズな業務を実現している。
e-TUMO MYNUMを導入する狙いは?
- 谷野氏
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所沢市では2016年のマイナンバーカード交付開始の時期から、市民の皆さまが市役所に受け取りに来られる日を予約するためのシステムを導入していましたが、昨今のセキュリティ強化の流れを受けて、より高度にセキュリティ対策されたシステムが求められており、業務効率化の観点からも新しいシステムの検討を始めました。
旧システムはあくまでも交付日を予約するためのシステムでした。「カードがJ-LISから市役所に届く」「交付の準備ができたことを市民に通知する」「市民が市役所などに出向いてカードを受け取る」という交付に関する一連のステータスは、別途、エクセルで管理していました。エクセルは検索性が劣るうえ、1つのファイルを複数人が同時に開くこともできません。業務効率という点で課題が大きかったです。
通常の平日での交付に加えて、交付数の増加が見込まれる時期によっては平日の夜間(17:30から19:00まで)、土曜日や日曜日にも交付を行っています。このとき、システムにも「○日は臨時に交付を受け付けます」と案内を掲載し、カレンダーに受付枠の設定をする必要があります。この操作を、旧システムではベンダーに依頼する必要がありました。市役所の職員が自分たちで設定できるようにすることで、柔軟に対応したいという思いがありました。
e-TUMO MYNUMを導入後、どのような効果が現れましたか?
- 谷野氏
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職員の業務負担が大幅に減りました。以前は市役所にマイナンバーカードが届くと、申請者1人ひとりにIDとパスワードを振り出したうえで登録を行っていました。この作業が非常に煩雑だったのです。
また、IDとパスワードを申請者に伝える通知書の作成は手作業で行っていました。手作業である限りはミスのリスクもありますから、確認に十分な時間をかける必要がありました。それに対してe-TUMO MYNUMでは、製造管理番号をIDとして活用することができます。煩雑だった作業が一気に簡略化し、職員からは非常に好評です。
交付までの状況は、すべてシステム上で一元管理されています。そのため、「この人には通知はいつ送ったのだろう?」などといったことも、すぐに調べられるのです。これはエクセルで管理していた以前とは大きな違いです。
カレンダーの変更を自分たちで簡単に行えるようなったのはありがたいですね。現在の交付枠数は、本庁舎で1日100件、市内に10カ所ある出先機関で1カ所あたり10件の合計200件です。これを標準としながら、交付が増えそうな時期には週末にも受付を行っています。最盛期には1日670件を受け付けたこともあります。交付に向けた事務作業が効率化されたことに加えて、受付枠の追加を簡単に行えるようになったことが、これだけの数を交付できた要因ではないでしょうか。
e-TUMO MYNUMでは、交付の予約を行うにあたって「持参物一覧」を表示し、その画面を見て、「持参物について理解した」という旨のチェックボックスにチェックを入れないと次の画面に進むことはできません。この機能のおかげで、交付当日の忘れ物は減りました。
e-TUMO MYNUMはLGWAN(総合行政ネットワーク)に対応しているため、懸案であったセキュリティへの対応はしっかりと担保できています。アカウントライセンスフリーで複数の職員が同時にログインして利用できることも便利です。
今後の課題・展望は?
- 谷野氏
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マイナンバーカードの交付業務は複数の職員が担当しています。担当者が変わったときにもスムーズに業務を引き継げるように、e-TUMO MYNUMには申し送り事項を書き込める機能があります。
ただし、それは交付の予約を行った際だけに使える機能です。申請を行ったときや、カードが市役所に届いたときにも同じように申し送り事項を書き込める機能がほしいです。
また、所沢市では、予約枠を時間ごとに細かく設定しています。これをe-TUMO MYNUMに入力する作業が、もっと簡単になればありがたいです。
NTTデータ関西さんは定期的に機能向上を実施されており、その点も魅力の1つです。更なる利便性の向上を楽しみにしています。
e-TUMO MYNUMは予約の変更を市民様が自ら行うこともできますが、交付を行う現場の職員にとって悩ましいことも起こり得ます。先ほどのお話にもありましたが、所沢市では本庁に加えて10カ所の出先機関でも交付を行っています。柔軟に予約を受け付けたい一方で、直前になって交付場所の変更を要望されてしまうと予約日制限がかかり、「指定の交付場所で予約できない」という事態になってしまうのです。交付に向けた準備期間を見越して、予約日の数日前からは変更不可になるのですが、時に運用でカバーしていることもあり設定内容を変更しながら運用を模索しています。
最後に所沢市では、写真撮影なども含めて申請のお手伝いをするサービスを行っています。半期に一度のペースで、市内の各所を回ってお手伝いをする「出張サポート」も実施しています。この出張サポートは電話のみで予約をしてもらったうえで行っていたのですが、e-TUMO MYNUMでインターネット予約ができるので、便利な機能を余すことなく活用し、普及率のさらなる向上を目指したいです。