photo

事務手続きの業務負担を実質ゼロにまで低減
多彩な連携機能の利用により、使いやすさを向上

2020年9月に「笠間市デジタルトランスフォーメーション(DX)計画」を策定し、「多様なライフスタイルに対応した行政サービス」「効率化を追求した行政運営」「デジタル化の実現のための環境整備」に取り組む笠間市(茨城県)。具体的な計画には「行政手続きの原則オンライン化」「手続きの簡略化」なども定められています。
ここで大きな力を発揮しているのが、NTTデータ関西の電子申請サービス「e-TUMO APPLY」です。

効果

  • 1件あたり10~15分かかっていた受付業務を大幅に効率化

    新型コロナワクチンの接種予約を受け付けた際は、始業時間から終業時間まで電話が殺到。
    また、聞き取った内容をパソコンに入力する作業なども含めると、1件あたり10~15分が必要だった。e-TUMO APPLYで予約できるようにしたところ、電話対応の負担が低減。職員の入力作業が不要になったため、受付に伴う業務を大幅に効率化できた。
  • LINEとの連携により手軽さと安心感を提供

    「LINEアカウントさえあればe-TUMO APPLYが利用できる」「手続き完了のお知らせが確実に届く」といったメリットのあるLINEとの連携。手軽さ、安心感、そして手続きの「入口」の多様さを実現することで、行政サービスの質を高めることができた。

  • オンライン申請の定着を目指す

    第1次DX計画では、e-TUMO APPLYの利用によるオンライン申請の環境整備を進めた。
    今後はオンライン申請と窓口申請の比率を逆転させることを目標とし、第2次DX計画では、e-TUMO APPLYをはじめとしたデジタルツールを使いこなせる人材の育成にも注力する。

e-TUMO APPLYの利用状況は?

吉川氏

証明書の交付申請や国民健康保険関係の手続き等、市の基幹業務に直結する約470種の手続きのうちのおよそ140種がオンラインで申請できるようになっています。e-TUMO APPLYを通じた手続きの受付数は年間約8,000件。コロナ禍を経て大幅に増加しました。

コロナ禍においては、事業者向けにも個人向けにもさまざまな補助金や一時支援金といった助成金が設けられました。それらの申し込みに対して、e-TUMO APPLYが活躍してくれました。コロナ禍以降も、物価高対策としての大学生向け生活支援金支給事業をはじめとした各種の経済対策が打ち出されており、それに対する応募にe-TUMO APPLYが利用されています。その他にも公民館が主催する市民講座などのイベントのように、現在は用途が大きく広がりました。

また、以前から、「粗大ごみの回収申し込みをオンラインで行えるようにしてほしい」という市民の声がありました。そこでe-TUMO APPLYを使って申し込みの仕組みを導入しました。非常に好評で、受付開始以降申込件数は毎月、先月を更新しているぐらいです。

e-TUMO APPLYによって、どのような効果が現れていますか。

吉川氏

電子申請サービスは窓口に出向く必要なく24時間いつでも利用・申請ができます。市民にとっての利便性という面では、大きな効果がありました。特に自宅にいながら非対面で申請できるというのは、コロナ禍において重要な役割を果たしてくれました。

鈴木氏

職員の業務負担も大きく低減されました。印象的だったのは、新型コロナワクチンの接種予約を受け付けたときのことです。当初は電話で受け付け、情報は紙で管理する体制でした。
ところが、市役所の業務が始まる8:30から終業の17:15まで、電話が鳴りっぱなしになってしまったのです。昼ごはんを食べる時間すらないという時期が続きました。「何とかできないのか」と検討したとき、解決策として浮上したのがe-TUMO APPLYの利用です。

吉川氏

申請フォームは半日ほどで作成しました。必要だった準備時間はほぼそれだけです。接種を希望する時間ごとにURLを発行し、ホームページに掲載しました。申請者はそこをクリックすることで申請画面へと進んでいくことができるように設定しました。
この仕組みにより、状況ががらりと変わりました。電話で受け付けていた際は、聞き取った内容をメモし、パソコンに入力していくという作業が必要でした。1件の受付あたり、10~15分かかっていました。
それに対してe-TUMO APPLYでは、申請者が自分で情報を入力してくれて、しかも、その情報がシステム上に一元管理されています。職員の作業時間は、実質的にゼロと言っていい状況になったのです。

LINE連携をはじめ、各種の拡張機能を積極的に活用されています。

吉川氏

オンラインで申請を行うには、従来は利用者の方にe-TUMO APPLY用のアカウントを作っていただく必要がありました。それに対してLINEとの連携では、LINEアカウントさえあればe-TUMO APPLYを利用いただくことができます。LINEとの連携で利便性が大きく高まりました。
また、e-TUMO APPLYでは、申請を行った後に「申込完了メール」が利用者に届く仕組みになっています。
しかし、迷惑メール対策などの受信設定で、完了メールが届かないということも起こり得ます。対するLINE連携では、完了メールに相当するお知らせがLINEで届きます。このお知らせが届かないということはまずないので、「ちゃんと申請できた」という安心感につながっています。

GビズIDが使える仕組みも搭載しています。事業者様が行政手続きなどの申請を行う際の仕組みとしては電子証明書もあるのですが、専用の端末が必要になるなど、利用にあたってのハードルが高いという声もありました。そこで、より手軽に使っていただけるようにとの思いから、IDとパスワードのみで利用可能なGビズIDと連携させました。

吉川氏

現在準備を進めているのが、マイナポータルの機能である「ぴったりサービス」との連携です。ぴったりサービスも、e-TUMO APPLYと同じように行政手続きをオンラインで行うことができる仕組みです。
三相分離の考えから、市の基幹系システムとe-TUMO APPLYは別ネットワーク上にあるため、基幹系システムを利用する手続きでは、申請データを基幹系システムに送付する手間がかかりました。
それに対してぴったりサービスでは申請データが基幹系システムに自動連携されるという強みがあります。当市ではe-TUMO APPLYからの申請が多いので、ぴったりサービスの方で展開している手続きをe-TUMO APPLYでも受付できるようにすれば更なる利用が見込めると考えています。
ぴったりサービスAPI連携を使えば、e-TUMO APPLYからの申請データがぴったりサービスに送られるので、「e-TUMO APPLYからの申請であってもデータが基幹系システムに自動連携される」という両者の強みを同時に享受できると考え導入を決めました。

鈴木氏

パソコン環境や使い慣れたアプリは人それぞれです。そういった背景を踏まえ、「できるだけ多様な入口を用意しておく」という考え方を私たちは大切にしています。LINEやGビズIDとの連携はその一例だと言えます。

今後の展望をお教えください。

吉川氏

e-TUMO APPLYの「ワークフロー」機能に注目しています。電子決裁システムは導入済ですが、e-TUMO APPLYの申請に対して、情報共有に近い簡易な決裁を行いたいという要望が一部の部署からあがっているので、今後、機能への理解を深めて導入に向けた検討を行いたいです。

鈴木氏

笠間市には市役所の本庁舎のほかに、2つの支所があります。そして3つ目の支所として、市のホームページ上に「デジタル支所」を開設しました。さまざまな手続きをオンラインで行うことができるデジタル支所は、「スポーツ施設予約」「子育て・福祉相談ウェブ予約」など、テーマごとに“窓口”を分類しています。
e-TUMO APPLYで行う手続きについては、現状「行政手続きのオンライン申請」という窓口名で表示しe-TUMO APPLYのトップ画面へ遷移する仕様なのですが、当初の構想としてはe-TUMO APPLYで設定した分類別検索の画面に遷移するようにすればより便利になると考えていました。残念ながらe-TUMO APPLY側の制約により分類別検索の画面に遷移することができないとのことでした。NTTデータ関西さんにはぜひ、検討いただきたいです。

現在は、オンラインより窓口での申請のほうがまだ多いですが、その比率を逆転させることが当面の目標です。
そのためにも、各部署に使い方の説明に行き、疑問などに丁寧に対応するといった活動にこれまで以上に注力していきます。現場の職員に伴走することが、オンライン申請を定着させるためのカギではないでしょうか。

子どもの予防接種のように、決まった時期に必ず予約などの手続きが発生するものがあります。それらの手続きについて、例えば出生届の提出をオンラインで行ったとすると、その情報を基にして「そろそろ予防接種の時期ですよ」「小学校の入学に向けた手続きの時期ですよ」という案内を送り、オンラインでの手続きを促すことができるような仕組みができればと思います。
システムならではの強みを活かすことでどのような行政サービスが可能になるかを、NTTデータ関西さんの知恵を借りながら考えていきたいです。

2020年9月に始まったDX計画は3年を経て、現在は「第2次DX計画」に進んでいます。
第1次計画は、ツールの導入をはじめとした環境の整備に軸足を置いていました。そこではe-TUMO APPLYも大きな役割を果たしています。
第2次計画では、ツールを使いこなすことに軸足を移しています。そこで重要になるのが、行政の仕事とデジタルツールの両方を理解した人材です。そのような人材を育成して市役所業務の実情に即したDXを進めることによって、より良い行政サービスを実現していきたいです。