「行かずに完結」できる手続きにより
県民の利便性が大幅に向上
ミス抑制と職員の負担軽減で業務の質も高まる
岡山県は2021年10月に策定した「岡山県DX推進指針」のもと、行政のデジタル化推進を通して“すべての県民が明るい笑顔で暮らす「生き活き岡山」の実現”に取り組んでいます。
「岡山県DX推進指針」には重点的に取り組む事項として、「AI・RPA等のICTツール利用推進」や「テレワークの推進」などと並んで「行政手続きのオンライン化」が掲げられています。ここで大きな役割を果たしているのが、NTTデータ関西の電子申請サービス「e-TUMO APPLY」です。
効果
職員の業務効率・県民の利便性の向上により、2年間で利用件数が倍増
- 2020年度に約28万件だった年間利用件数は、2022年度には約56万件と倍増。コロナ禍における申請業務を支えた。
職員と県民の両者に電子申請の便利さが認知されたことに加え、押印義務付けの廃止や収入証紙の廃止という県の施策を追い風にして、さらなる利用増を目指している。
財務会計システムとの連携により収納業務が効率化
- 申請にともなって手数料などの支払いが必要となる手続きでは、e-TUMO APPLYと財務会計システムが連携することによって入金情報の消し込み処理が自動化され、職員の負担軽減とミスの抑制が可能になった。
電子収納機能により「行かずに完結できる」手続きが実現
- 窓口に出向くことなく、24時間365日申請ができることに加えて、手数料などの支払いもオンラインで可能に。証明書などを発行してもらう際は自宅などへ郵送してもらうことも可能。一連の手続きがすべて「どこにも行かずに完結」できるようになり、利用者の利便性が高まった。
e-TUMO APPLYの利用状況は?
- 河合氏
-
岡山県では2013年にe-TUMO APPLYを導入し、市町村と共同で利用しています。年間の利用件数は、2020年度が約28万件、2022年度は約56万件でした。2020年度から2022年度という2年間は、新型コロナウイルス感染症の感染拡大にともなう出勤抑制やワクチン接種など、「申請をオンラインで行う」という流れを後押しする出来事が相次いだ時期でした。それが結果として、2年間で倍増という伸びにつながりました。
どのような手続きで利用されていますか?
- 河合氏
-
e-TUMO APPLYは、納税証明書の交付申請や職員採用試験の申込みなどのいわゆる行政手続のほか、研修会やセミナー等への申込み、アンケートの回答など、いろいろな用途で利用されています。最近では、他県に様々な施策の状況などを問い合わせて調査を行う「他県照会」で利用することも増えてきました。
ただ、オンライン化の対応は手続き所管課の職員からすると慣れていないことが多いです。そのため、デジタル推進課の職員が雛形の申請フォームや手順書の作成をしていくことで、各課と協力して、今後もオンラインで手続きができる件数を増やしていきたいです。
e-TUMO APPLYの利用は、どのような効果が現れているでしょうか?
- 河合氏
-
様々な面において、職員の負担低減・業務効率の向上という効果が出ています。
例えば前述した研修の申込みやアンケート、他県照会は、少し前までは、紙の用紙を用意したり、エクセルで作った回答シートをメールに添付したりして送るということをしていました。それが今では、「このURLやQRコードにアクセスのうえご回答ください」と案内するだけで済むようになっています。回答もシステム上に自動的に集約されるので、集計作業が非常に楽になりました。
また、手続きの申請が行われた際は、各部署の担当者はその申請内容をすぐに把握して内容を確認することができます。仮に申請内容などに不明点があって申請者に問い合わせる必要があるときも、システムを通じてすぐにメールで問い合わせ内容を送ることができます。
スピーディーに対応できるようになったことは、業務効率が高まっただけでなく、行政サービスの質の向上という効果にもつながっています。
岡山県ではe-TUMO APPLYと財務会計システムと連携しているとのことですが?
- 河合氏
-
財務会計システムとの連携も、業務効率の向上に貢献しています。申請によっては、県に対して手数料などの支払いが発生するものがあります。
岡山県では、e-TUMO APPLYで申請のあった手続きの手数料などをクレジットカードとペイジーでのオンラインによる支払いが可能になっています。e-TUMO APPLYが財務会計システムと連携していることで、入金情報の消し込み処理が自動化され、経理担当者の負担の軽減かつ正確に業務を行えるようになっています。
岡山県が利用している財務会計システムは、NTTデータ関西さんとは別のベンダーが運用保守を行っていますが、安定的な運用を行うにあたり、密に連携いただいていることは大変助かっています。
県民のみなさまにはどのような効果が現れているでしょうか?
- 河合氏
-
システムの利用者である県民のみなさまにもメリットを提供できています。
e-TUMO APPLYを経由して24時間365日いつでも県民は申請ができます。その代表例が、「行かずに完結する」手続きです。岡山県の電子申請サービスには、前述したとおり、オンラインでの支払いが可能になっています。これにより、手数料などの支払いが必要な手続きの場合も、その場で支払いができます。証明書などを発行してもらう際も、郵送料まで含めて支払いをしておけば、自宅へ郵送してくれるものもあります。従来は窓口へ出向いて申請しなければならなかったものが、どこへも出かけることなく完結できるようになったのです。
今後の展望をお教えください。
- 河合氏
-
電子申請の利用をさらに広めていきたいです。岡山県では行政手続のオンライン化の実現に向け、2020年度から支障となっていた押印の義務付けの廃止に着手し、約3,400手続の押印の義務付けを廃止しました。
また、2023年10月には、手数料の支払いなどに利用していた収入証紙を廃止しました。これにより、オンラインで申請できる手続きの対象が大幅に増えたことになります。各部署に対してこれまで以上にe-TUMO APPLYの利用を呼びかけ、使い方などのサポートをしながら件数を増やしていきたいです。
e-TUMO APPLYへの要望などがあれば教えてください。
- 河合氏
-
e-TUMO APPLYは、使い慣れた人からは「いろいろなことができて便利」という声が届いています。
しかしながら、使い始める最初の段階では「敷居が高そう」という声があることも事実です。他のシステムとの連携など、便利な機能を搭載すればするほど、初心者へのハードルは高くなるかもしれません。
そこでe-TUMO APPLYには、あらかじめ初期値等が入力されて、最小限の入力で誰もが気軽に申請フォームの作成ができる「簡易版」のような設定画面の検討をいただきたいです。簡易版で操作に慣れるとともに、e-TUMO APPLYの便利さを実感することで「もっと利用しよう」という気持ちになってもらえば、電子申請の普及はさらに進むのではないでしょうか。
私たちが財務会計システムとの連携で実感したように、e-TUMO APPLYが他の業務システムと連携することは、職員の業務負担の低減に確実につながります。負担が減った分のマンパワーは、対面でしか行うことができない業務へと振り向けることができます。つまり、県民へより良い行政サービスを提供することにつながるのです。
e-TUMO APPLYには、今まで以上に他システムと連携ができる機能や、自治体の業務に関する多彩なニーズに対応する機能を提供していただけるように期待しています。差し当たり岡山県では、マイナンバーカードの利活用が大きなテーマになっています。
ぜひ、新たな機能や使い方をご提案ください。