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電子申請受付システムを県域全体で共同利用
山梨県市町村総合事務組合を中心に
県・市町村と連携した取り組み

山梨県内全ての市町村で構成される山梨県市町村総合事務組合(以下、「事務組合」)は、平成15年4月に電子自治体推進室を設置し、平成16年度から「やまなしくらしねっと(山梨県・市町村電子申請受付共同システム)」の運用を開始。行政手続きの電子化の共同処理に取り組んでいます。
今回は、この取り組みについて、事務組合と県の担当者にお話を伺いました。

効果

  • 来庁不要で、住民の利便性が向上

    今まで窓口や郵送に行政手続きの申請は限られていたが、時間や場所にとらわれずにいつでもどこでも手続きが可能に。
  • 手数料納付にも対応

    電子納付の仕組みを活用し、手数料が必要な手続きでも事務処理の負担を大幅に軽減。

  • 様式作成機能の活用で全市町村へ展開

    事務組合が作成した様式を市町村に提供する「様式作成パッケージサービス」により、手続きのオンライン化を促進。

導入までの経緯と課題は?

事務組合

事務組合では、平成16年から県及び県内全市町村が参加する「やまなしくらしねっと」の運用を開始しました。運用を開始するにあたって、比較的小規模な市町村が多い山梨県の実情を踏まえ、コストや運用面でのメリットを考慮し、共同化の方向性を模索するため県及び県内の全市町村で協議し、検討を重ねてきました。
最終的に事務組合が事業主体となって「やまなしくらしねっと」の設計・開発・運用を担うことで、市町村の負担軽減を図り、県全体で電子化を推進することとなりました。その後、5年に1度のシステム更新を経て、令和7年4月からは「第5期やまなしくらしねっと」の運用を開始しています。

山梨県

行政手続きの申請の受付は窓口や郵送に限られていましたが、「やまなしくらしねっと」が稼働してからは「来庁や郵送の手間がかからない」「曜日や時間帯に関係なくいつでも手続きができる」といった声をいただいています。
特に「行政デジタル職の職員採用試験」の手続きでは、県外にいる受験希望者からの応募が容易になるとともに、受験票の発行等までシステムを活用して一括で行っていることから、募集から受験票発送までの事務手続きは100%オンラインで完結出来ました。

事務組合

窓口に来てもらって手続きすることは、住民には移動時間もかかることで大きな負担を掛けており、一方で職員の事務処理の効率も決して良くなかったと感じています。

利用状況は?

山梨県

県独自の手続きは約3,700種類ありますが、そのうち約3,000をオンライン化しています。「やまなしくらしねっと」を活用しているのは約2,300で、残りは国・県等が運営する個別のシステム、あるいはメールでの受付となっています。

事務組合

事務組合としては、入札参加資格や職員研修の受付などを電子申請で行っており、年間3,000件を超える申請があります。

どのような効果を感じていますか?

山梨県

県では令和3年3月に「山梨県行政手続オンライン化方針」を策定し、原則すべての手続きをオンライン化することを目指しています。紙とオンラインの手続きが併用されているため、具体的な業務削減量を数値で示すのは難しいですが、事務処理の効率化には確実につながっています。
また、「やまなしくらしねっと」では電子納付の仕組みが使えるため、手数料が必要な手続きについても非常に効果的です。
今後、収入証紙の廃止が進められる予定なので、さらに活用の幅が広がると考えています。

どのような手続きで利用されていますか

事務組合

事務組合の共同受付事務で行っている入札参加資格申請手続きでは、2年に1度の資格更新時に登録事業者から一斉に申請が来るため、大量一括処理機能を活用しています。これがあることで、申請を一件ずつ処理する手間が省け、事務処理が非常にスムーズになります。
また、市町村では職員の人間ドックの申込みや検診手続きなどでも利用が増えています。LGWAN回線で運用できるため、情報漏えい等の心配が少なく、安心して使える点が利用率の増加につながっていると思います。
さらに、パワハラやセクハラなど非常にセンシティブな内容のアンケートも、無記名式の手続きとして活用されています。

活発な利用の背景にあるものは

事務組合

電子申請に踏み出せなかった各市町村にとって、手続き様式の作成が最初のハードルです。NTTデータ関西が全国の他自治体の様式を公開してくれていることが、取り組みのきっかけになっていると感じています。
また、当組合としても市町村に様式作成を支援する取り組み「様式作成パッケージサービス」を提供しています。
市町村には、公開されている様式から希望に近いものを選んでもらい、独自の要望を設定依頼シートで提示してもらいます。私たちが市町村の試験環境に入り、様式を作成することで、市町村側は確認だけで済み、事務負担が大きく軽減されます。この1年で約80件の様式依頼に対応しました。

山梨県

県でも委託事業により、各所属が所管する手続きの様式作成を支援しており、これまで約1,800種類の様式を作成しました。

今後の展望は

山梨県

今後もオンライン化方針に基づき、新たに発生する手続きについては原則オンライン申請を可能とする予定です。
事務組合と連携しながら、庁内や市町村向けの説明会・研修を通じて、「やまなしくらしねっと」の周知に努めていきたいと考えています。

事務組合

事務組合の強みは、県を含めた全市町村の活用状況が把握できていることです。活用が進んでいない団体には、職員説明会を積極的に開催し、他市町村の事例や「様式作成パッケージサービス」を紹介することで、利用促進を図っていきたいと思います。
最近では、国の「ぴったりサービス」や、低コストで良質なクラウドサービスを選択できる環境が整ってきており、各市町村のニーズもますます多様化しています。そうした状況を踏まえると、今後の「やまなしくらしねっと」のあり方についても、改めて検討していく必要があると感じています。